性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 関西地方
具体的な御職業:鍼灸師
お問い合わせ内容 : いつもお世話になっています。
ブログが7月15日から見ていなかったのでそれ以降のをさきほど見ました。
自分の質問もかなり失礼だったと反省しております。自分は鍼灸師2年目でアトピーなど難病が増えてきて、何とか治したいとネット検索していたら先生のページを見つけました。
先生が心無いメール・電話(自分も含まれると思います)で傷ついているのを見たので、先生の助言のおかげで自分の周りで起こっている真実を報告します。
本当にアトピーが軽減して、人生を楽しんでいる人が出てきています。つい難病になると先生に頼ってしまい、自分も反省しております。
先生のおかげで助かっている人が自分の周りで多いのでそれだけお伝えしたくてメールしました。
すみません、失礼します。
ヒゲジジイのお返事メール:メールのお問合せの問題を論じたものではありませんので、ご安心下さい。
仕事中に毎日のようにかかる不躾で営業妨害に等しいロクデモない問い合わせの電話を問題にしているのです。
それこそ大事なだいじな常連さんやお馴染みさんの電話がたくさん入るのに、それらの大事な電話の妨害にもなるから、ブログで吠えたまでのことです。
その点、メールでの質問は、こちらが気が向いた時間にお返事できるので、楽なものです。
電話と違ってメールで仕事中の貴重な時間を奪われることはありませんので、ナンセンスなメールであれば没にすれば済みます。
お気遣いは無用ですのでご安心下さい。
2007年07月21日
ナンセンスなメールであれば没にすれば済みます
posted by ヒゲジジイ at 00:16| 山口 🌁| 中医漢方薬学問答
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2007年05月04日
英国の漢方事情
英国の漢方鍼灸医さんより
ヒゲジジイの質問に対するお返事 : イギリスは、中国、香港から移住して、クリニックを開いている中国人が多いので(イギリス政府は、香港返還時に60万世帯にビザを発行しました。)、鍼灸、TUI NAとセットで湯液もという感じです。
ですから、必然的に中医が中心です。
また、中国の大学では、中国政府の援助のもと、西洋の留学生を受け入れて教育するシステムがしっかりしていますので、私のカレッジの同僚も卒業後、短期で勉強に行くケースが多いです。
現在の問題点は、動物、鉱物が方剤の中に使用することができないことです。木通や、附子も使用できませんし、麻黄の使用量にも制限が設けられています。
これは、現在では、漢方医に対する法的な資格が明確でないために、充分な知識がなくても、漢方を処方できるためです。
ここ、数年のうちには、法的な資格も明確になり、上記の漢薬の使用を許可されてくると期待しているのですが。。。。
漢方に対する認知度は、英国はじめ、ヨーロッパでは、まだまだというところです。
ヒゲジジイのお礼のメール:拝復
新鮮な情報、ありがとうございます。
お国によってそれぞれの問題もあるわけですね、当然でしょうけれども。
ブログの継続にも大分厭きアキしている折柄、大変興味深い情報、感謝申し上げます。
頓首
ヒゲジジイの質問に対するお返事 : イギリスは、中国、香港から移住して、クリニックを開いている中国人が多いので(イギリス政府は、香港返還時に60万世帯にビザを発行しました。)、鍼灸、TUI NAとセットで湯液もという感じです。
ですから、必然的に中医が中心です。
また、中国の大学では、中国政府の援助のもと、西洋の留学生を受け入れて教育するシステムがしっかりしていますので、私のカレッジの同僚も卒業後、短期で勉強に行くケースが多いです。
現在の問題点は、動物、鉱物が方剤の中に使用することができないことです。木通や、附子も使用できませんし、麻黄の使用量にも制限が設けられています。
これは、現在では、漢方医に対する法的な資格が明確でないために、充分な知識がなくても、漢方を処方できるためです。
ここ、数年のうちには、法的な資格も明確になり、上記の漢薬の使用を許可されてくると期待しているのですが。。。。
漢方に対する認知度は、英国はじめ、ヨーロッパでは、まだまだというところです。
ヒゲジジイのお礼のメール:拝復
新鮮な情報、ありがとうございます。
お国によってそれぞれの問題もあるわけですね、当然でしょうけれども。
ブログの継続にも大分厭きアキしている折柄、大変興味深い情報、感謝申し上げます。
頓首
ラベル:英国の漢方事情
posted by ヒゲジジイ at 19:57| 山口 🌁| 中医漢方薬学問答
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2007年05月01日
イギリスからのお便り
性別 : 男性
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : イギリス
具体的な御職業 : 鍼灸漢方医
お問い合わせ内容 : 村田先生はじめまして、初めてお便りさせていただきます。
小生、3年前に英国のカレッジで中国医学の鍼灸と漢方の資格をとり診療を始めました。
先生のブログは、毎日、読ませていただいており、先日、アマゾンを介して、先生の「求道と創造の漢方」を購入しました。
私には、漢方の師を持つ機会が未だなく、自分で本を読みながらの勉強が主なやり方なので、先生の治療に対する精神が感じられる本書は、私の毎日の診療にとても役立っております。ありがとうございます。
これからも、宜しくお願いします。
お返事メール:拝復
拙著をアマゾンで購入されたそうで恐縮です。古書店にも出回っているようですが、新刊でもまだ売られているのでしょうね?!
内容は古方派時代のものがメインで次第に中医学に目覚め始める過渡期の内容なので、あまりご参考にはならないかもしれません。
ところで、イギリスの漢方は、やはり中医学でしょうか?
フランスでは中医学熱が盛んなようで、織田啓成著『漢方医学概論』(たにぐち書店刊)の序文には、
『フランスから医学校を卒業して日本へ漢方を学びに来た女医さんが、一年程滞在し帰国する時、私に、「日本に来るより、フランスにいた方がよほど勉強になった」というのです。フランスの方が漢方理論に関する本が多く、それに基づいていろいろと展開した書物があり、用いている言葉の概念が共通しているというのです。
ところが日本の場合は理論的な説明が明確でなく、先生方によって言葉の概念が異なるので、なんだかさっぱりわからないというわけです。』
と書かれていますが、日本の国内事情はいまだに恥ずかしい限りです。
フランス国内にいたほうが、日本で学ぶよりもましだったと言われる現状は、実にお寒い。中医学を認めようとせず、漢方医学の伝統を墨守するだけでは、進歩はないと思います。
ダブルスタンダードでも構わないから、中医学理論を日本漢方にもっともっと取り入れるべき時代にきていると思うのですが。
あらゆる理系方面では優越性を誇れる日本ですが、こと漢方に関しては実にお寒い現状だと思います。
イギリスの漢方事情をお聞かせ下さればさいわいです。
頓首
村田恭介拝
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : イギリス
具体的な御職業 : 鍼灸漢方医
お問い合わせ内容 : 村田先生はじめまして、初めてお便りさせていただきます。
小生、3年前に英国のカレッジで中国医学の鍼灸と漢方の資格をとり診療を始めました。
先生のブログは、毎日、読ませていただいており、先日、アマゾンを介して、先生の「求道と創造の漢方」を購入しました。
私には、漢方の師を持つ機会が未だなく、自分で本を読みながらの勉強が主なやり方なので、先生の治療に対する精神が感じられる本書は、私の毎日の診療にとても役立っております。ありがとうございます。
これからも、宜しくお願いします。
お返事メール:拝復
拙著をアマゾンで購入されたそうで恐縮です。古書店にも出回っているようですが、新刊でもまだ売られているのでしょうね?!
内容は古方派時代のものがメインで次第に中医学に目覚め始める過渡期の内容なので、あまりご参考にはならないかもしれません。
ところで、イギリスの漢方は、やはり中医学でしょうか?
フランスでは中医学熱が盛んなようで、織田啓成著『漢方医学概論』(たにぐち書店刊)の序文には、
『フランスから医学校を卒業して日本へ漢方を学びに来た女医さんが、一年程滞在し帰国する時、私に、「日本に来るより、フランスにいた方がよほど勉強になった」というのです。フランスの方が漢方理論に関する本が多く、それに基づいていろいろと展開した書物があり、用いている言葉の概念が共通しているというのです。
ところが日本の場合は理論的な説明が明確でなく、先生方によって言葉の概念が異なるので、なんだかさっぱりわからないというわけです。』
と書かれていますが、日本の国内事情はいまだに恥ずかしい限りです。
フランス国内にいたほうが、日本で学ぶよりもましだったと言われる現状は、実にお寒い。中医学を認めようとせず、漢方医学の伝統を墨守するだけでは、進歩はないと思います。
ダブルスタンダードでも構わないから、中医学理論を日本漢方にもっともっと取り入れるべき時代にきていると思うのですが。
あらゆる理系方面では優越性を誇れる日本ですが、こと漢方に関しては実にお寒い現状だと思います。
イギリスの漢方事情をお聞かせ下さればさいわいです。
頓首
村田恭介拝
posted by ヒゲジジイ at 20:15| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2007年04月14日
お手本となる弁証論治による治験例の御報告
お便りメール:東海地方の内科医師
前略
黄砂が来てから、気道系をいためて受診なさるかたが急増していますが、幸い麦門冬系を処方してほとんどが改善されます。もちろん、五臓系のバランスを配慮して治療するようになってから打率が向上している印象です。
これも、村田薬局のホームページに遭遇してからのことですので、深く感謝しています。
本日は個人的に大変興味深く感じた患者さんについてご報告いたします。
60歳台の女性ですが、不眠を主訴にして受診なさいました。 家庭内にさまざまな事情があってのことだそうです。
心療内科にも受診してみえまして、うつ病と診断を受けたことがあるそうです。
ただ、個人的経験からほとんどの西洋薬に副作用の経験(一時は死ぬか生きるかの間をさ迷ったことがあるそうです)をお持ちで、当クリニックへ受診なさったわけです。
外見的にも大変虚弱な印象のかたで、舌は淡紅で肥大気味、脈は沈で弱とういう感じで、腹部は腹直筋緊張はあり軽く胸脇苦満を認めましたが、腹力は軟弱という所見でした。
お話のようすも元気は全くなく、ため息をつきながらのお話で、終始うつむき状態でした。
排便は数日の便秘がウサギの糞状にコロコロとでる程度だったそうです。
脾肺気虚と評価し、補中益気湯からスタートしました。
投薬後に、イライラがひどいことをお話になられましたので、ヨクカンサンカシンピハンゲを加えました。
イライラは多少改善したが、なんとなくパットしないということでサイコカリュウコツボレイトウに変更したのですが、かえって悪化してしまいました。
ごく最近の受診日に、いろいろなお話のなかから、不眠と関連して、明確な夢をみる、ということを聞きまして、カンバクタイソウトウを合方しました。
すると次の受診日(1週あと)から、すっかり様子が改善し、お元気になり、姿勢もシャンとしていましたし、語気もでてきました。
なにより、ご本人が「この数十年で経験したことがないことを体験したのです。いろいろな問題に対面しても悲観的に考えなくてすむようになり、自分でも驚いて、大変こころが平安です」とおっしゃってくださいました。
41(補中益気湯)+83(抑肝散加陳皮半夏)+72(甘麦大棗湯)が著効した患者さんです。
いわゆる漢方医学の枠だけでは到底得られなかった効果で、村田さんのご助言に従って『中医病機治法学』を読み、自分なりに中医学的な病態評価(弁証論治)をし始めて可能になった印象を持たせていただいています。あらためて深く感謝いたします。
今後も幼稚な弁証のうえでのご相談をさせていただくと思いますが、これまでと同様に寛容の精神でご助言くださいますようにお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
大変お見事なお手並みで、心から敬服申し上げます。
また『中医病機治法学』には無限の可能性を秘めた宝庫であり、小生自身、これまで出会った本の中では最高であると思っていますが、先生にも価値を認めて頂くと、我がことの様に嬉しく思います(笑)
ブログをはじめて1年半、HP類の世界に参入して二年半近くになりますが、そろそろ厭きアキしかかっていたところへ、中医学に目を向けられる先生に(メール交換の上だけとはいえ)出合って、お陰さまでブログの存続の励みとなっています!
大学医学部では漢方医学(日本漢方)ばかりが採用される異様な日本国内にあって、正統な中医学に目を向けられる医師の先生方の存在こそ、将来の日本漢方の改革の狼煙となることを期待している次第です。
麦門冬湯は、小生のところでも以前大いに愛用していたものが、年々使用頻度が減少しているところへ、今年になって急に気管支関連ではなく、吐き気や嘔吐恐怖症など、肺胃陰虚証というよりも胃気陰両虚証タイプの複数の人に応用する機会があり、実に不思議な年だと感じていたところです。
ご報告頂いた患者さんの
>ほとんどの西洋薬に副作用の経験(一時は死ぬか生きるかの間をさ迷ったことがある)
と言われる同様な方は、世間には想像以上に多いことと思います。(当方にもそのような方が多く集まってきています。)
ところで先日、某大学病院の二つの科から合計17種類の合成医薬品が投与されている某疾患の方が、人に紹介されて来局されましたが、さすがにその種類の多さには絶句してしまいました!
当方とて常時、頭をかかえる複雑の御相談の数々に悪戦苦闘している修業の身ですから、一緒に勉強させて頂くつもりでおりますので、今後も御遠慮なくお便り下さいます様、よろしくお願い申し上げます。
頓首
前略
黄砂が来てから、気道系をいためて受診なさるかたが急増していますが、幸い麦門冬系を処方してほとんどが改善されます。もちろん、五臓系のバランスを配慮して治療するようになってから打率が向上している印象です。
これも、村田薬局のホームページに遭遇してからのことですので、深く感謝しています。
本日は個人的に大変興味深く感じた患者さんについてご報告いたします。
60歳台の女性ですが、不眠を主訴にして受診なさいました。 家庭内にさまざまな事情があってのことだそうです。
心療内科にも受診してみえまして、うつ病と診断を受けたことがあるそうです。
ただ、個人的経験からほとんどの西洋薬に副作用の経験(一時は死ぬか生きるかの間をさ迷ったことがあるそうです)をお持ちで、当クリニックへ受診なさったわけです。
外見的にも大変虚弱な印象のかたで、舌は淡紅で肥大気味、脈は沈で弱とういう感じで、腹部は腹直筋緊張はあり軽く胸脇苦満を認めましたが、腹力は軟弱という所見でした。
お話のようすも元気は全くなく、ため息をつきながらのお話で、終始うつむき状態でした。
排便は数日の便秘がウサギの糞状にコロコロとでる程度だったそうです。
脾肺気虚と評価し、補中益気湯からスタートしました。
投薬後に、イライラがひどいことをお話になられましたので、ヨクカンサンカシンピハンゲを加えました。
イライラは多少改善したが、なんとなくパットしないということでサイコカリュウコツボレイトウに変更したのですが、かえって悪化してしまいました。
ごく最近の受診日に、いろいろなお話のなかから、不眠と関連して、明確な夢をみる、ということを聞きまして、カンバクタイソウトウを合方しました。
すると次の受診日(1週あと)から、すっかり様子が改善し、お元気になり、姿勢もシャンとしていましたし、語気もでてきました。
なにより、ご本人が「この数十年で経験したことがないことを体験したのです。いろいろな問題に対面しても悲観的に考えなくてすむようになり、自分でも驚いて、大変こころが平安です」とおっしゃってくださいました。
41(補中益気湯)+83(抑肝散加陳皮半夏)+72(甘麦大棗湯)が著効した患者さんです。
いわゆる漢方医学の枠だけでは到底得られなかった効果で、村田さんのご助言に従って『中医病機治法学』を読み、自分なりに中医学的な病態評価(弁証論治)をし始めて可能になった印象を持たせていただいています。あらためて深く感謝いたします。
今後も幼稚な弁証のうえでのご相談をさせていただくと思いますが、これまでと同様に寛容の精神でご助言くださいますようにお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
大変お見事なお手並みで、心から敬服申し上げます。
また『中医病機治法学』には無限の可能性を秘めた宝庫であり、小生自身、これまで出会った本の中では最高であると思っていますが、先生にも価値を認めて頂くと、我がことの様に嬉しく思います(笑)
ブログをはじめて1年半、HP類の世界に参入して二年半近くになりますが、そろそろ厭きアキしかかっていたところへ、中医学に目を向けられる先生に(メール交換の上だけとはいえ)出合って、お陰さまでブログの存続の励みとなっています!
大学医学部では漢方医学(日本漢方)ばかりが採用される異様な日本国内にあって、正統な中医学に目を向けられる医師の先生方の存在こそ、将来の日本漢方の改革の狼煙となることを期待している次第です。
麦門冬湯は、小生のところでも以前大いに愛用していたものが、年々使用頻度が減少しているところへ、今年になって急に気管支関連ではなく、吐き気や嘔吐恐怖症など、肺胃陰虚証というよりも胃気陰両虚証タイプの複数の人に応用する機会があり、実に不思議な年だと感じていたところです。
ご報告頂いた患者さんの
>ほとんどの西洋薬に副作用の経験(一時は死ぬか生きるかの間をさ迷ったことがある)
と言われる同様な方は、世間には想像以上に多いことと思います。(当方にもそのような方が多く集まってきています。)
ところで先日、某大学病院の二つの科から合計17種類の合成医薬品が投与されている某疾患の方が、人に紹介されて来局されましたが、さすがにその種類の多さには絶句してしまいました!
当方とて常時、頭をかかえる複雑の御相談の数々に悪戦苦闘している修業の身ですから、一緒に勉強させて頂くつもりでおりますので、今後も御遠慮なくお便り下さいます様、よろしくお願い申し上げます。
頓首
posted by ヒゲジジイ at 01:45| 山口 ☀| 中医漢方薬学問答
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2007年02月20日
胸、背中内部の熱感に対する漢方薬
性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 医療・福祉関係
簡単なご住所 : 関東地方
具体的な御職業 : 薬剤師(漢方相談)
お問い合わせ内容 : 村田漢方堂薬局 村田恭介先生 前文失礼しますはじめまして。
私は●●在住の漢方相談薬局に勤める薬剤師です。漢方相談歴がまだ半年でして、まだまだ使いこなせる処方も少なく、毎日が勉強の生活を送ってます。
村田先生のHPを拝読してはいるのですが、どうしても方向性が導かれず、行き詰っている方がおりまして、助言をいただきたく、メールいたしました。
大変お忙しいところ、申し訳ないですが、宜しくお願い申し上げます。
八十代前半の男性 ???cm ??kg がっちりとした体格。
主訴: 体温は平熱(36度台)なのですが、3年位前から、上半身の特に胸、背中の内部に熱感をひどく感じ、燃えるような感じがおさまらない。午後以降がひどくなり、夜は眠れない。
皮膚表面には熱はなく、むしろ手足は冷えている。内科受診し臓器的な問題はないとのこと。睡眠導入剤は服用中。喘息体質らしいですが、今は沈静しています。
3年前に大腸ポリープ手術。嗜好品 酒・毎日コップ1杯ほど たばこ20本少し肌は乾燥気味で、のどの渇きもありますが、水を飲みたいほどではないです。
白内障で眼圧も高い。最近は食欲があまりない。便秘気味で便は少し固め。排尿は1日10回(夜間2回)。
舌質・紅暗 苔・白賦。
加味逍遥散処方にて、夜中の熱が憎悪。
来店時、風邪を引いていて鼻水が出るというので、+黄連・桂皮・桃仁を加味。しかし、まだ熱は抑えられないので、黄連解毒湯+石膏・牡丹皮 を処方。
さらに憎悪したらしく、今は服薬後2時間すると、熱を感じ、口が渇き冷たいものを欲するようになった。
尿などの症状は初めと変わらず、食欲もない。こめかみあたりも痛くなってきたとのこと。
実熱ではなく虚熱であると考えて次回は滋陰清熱の処方を考えてはいますが、どうも落とし込める処方がありません。
なにか助言いただけたらと思います。厚かましいお願いかとは存じますが、宜しくお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
読んだ瞬間に浮かぶ処方はまず、第一に小陥胸湯です。但し、この場合、白膩苔ではなく黄膩苔でなくてはなりません。もしも僅かでも苔に黄色味があれば、可能性は高いと思います。
次に考えられるのは、釣藤散あるいは大柴胡湯、あるいは両者の合方です。
苔の白膩に(みられる)明らかな痰湿の存在といい、眼圧が高いことといい、不眠症であり高齢であることから、釣藤散証がベースにあるようにも思われます。
舌の紅暗は紫舌の別表現ですから、血瘀(けつお)の存在は明らかだと思われます。大黄には優れた活血化瘀作用がありますので、白膩苔に黄色味がわずかでもかかっているようなら、大柴胡湯証であることも十分に考えられます。便秘気味でもあることですし、大柴胡湯証の存在はないかを検討する余地があるかもしれません。
また、釣藤散に地竜を加えるのも有効かもしれません。地竜には清熱熄風、鎮驚、清肺平喘、行経通絡、利水通淋など、釣藤散とはとても相性のよい薬味です。喘息体質にもマッチします。
地竜単独でも有効かもしれませんが、白膩苔というのがちょっと気になるところです。
以上の乱雑な書き殴りが少しでもヒントになればさいわいです。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
【編集後記】 お問合せの文面に「実熱ではなく虚熱であると考えて次回は滋陰清熱の処方を考えてはいます」とあるが、あきらかな白膩苔があり食欲もあまりない人に、滋陰清熱を行うのは疑問である。
折り返し頂いたメール:昨日は突然のメールにも関わらず、早急にお返事いただいたこと大変感激しております。ありがとうございました。
直前の処方で実熱は少しでもおさえられると思ったのに、全く
奏効せず、それどころか憎悪したので、虚熱と判断したのは浅
はかでした。
もう一度、先生から頂いたヒントをもとに処方検討をして、症
状が改善するよう努めたいと思っております。
お忙しい中、本当にありがとうございました。
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 医療・福祉関係
簡単なご住所 : 関東地方
具体的な御職業 : 薬剤師(漢方相談)
お問い合わせ内容 : 村田漢方堂薬局 村田恭介先生 前文失礼しますはじめまして。
私は●●在住の漢方相談薬局に勤める薬剤師です。漢方相談歴がまだ半年でして、まだまだ使いこなせる処方も少なく、毎日が勉強の生活を送ってます。
村田先生のHPを拝読してはいるのですが、どうしても方向性が導かれず、行き詰っている方がおりまして、助言をいただきたく、メールいたしました。
大変お忙しいところ、申し訳ないですが、宜しくお願い申し上げます。
八十代前半の男性 ???cm ??kg がっちりとした体格。
主訴: 体温は平熱(36度台)なのですが、3年位前から、上半身の特に胸、背中の内部に熱感をひどく感じ、燃えるような感じがおさまらない。午後以降がひどくなり、夜は眠れない。
皮膚表面には熱はなく、むしろ手足は冷えている。内科受診し臓器的な問題はないとのこと。睡眠導入剤は服用中。喘息体質らしいですが、今は沈静しています。
3年前に大腸ポリープ手術。嗜好品 酒・毎日コップ1杯ほど たばこ20本少し肌は乾燥気味で、のどの渇きもありますが、水を飲みたいほどではないです。
白内障で眼圧も高い。最近は食欲があまりない。便秘気味で便は少し固め。排尿は1日10回(夜間2回)。
舌質・紅暗 苔・白賦。
加味逍遥散処方にて、夜中の熱が憎悪。
来店時、風邪を引いていて鼻水が出るというので、+黄連・桂皮・桃仁を加味。しかし、まだ熱は抑えられないので、黄連解毒湯+石膏・牡丹皮 を処方。
さらに憎悪したらしく、今は服薬後2時間すると、熱を感じ、口が渇き冷たいものを欲するようになった。
尿などの症状は初めと変わらず、食欲もない。こめかみあたりも痛くなってきたとのこと。
実熱ではなく虚熱であると考えて次回は滋陰清熱の処方を考えてはいますが、どうも落とし込める処方がありません。
なにか助言いただけたらと思います。厚かましいお願いかとは存じますが、宜しくお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
読んだ瞬間に浮かぶ処方はまず、第一に小陥胸湯です。但し、この場合、白膩苔ではなく黄膩苔でなくてはなりません。もしも僅かでも苔に黄色味があれば、可能性は高いと思います。
次に考えられるのは、釣藤散あるいは大柴胡湯、あるいは両者の合方です。
苔の白膩に(みられる)明らかな痰湿の存在といい、眼圧が高いことといい、不眠症であり高齢であることから、釣藤散証がベースにあるようにも思われます。
舌の紅暗は紫舌の別表現ですから、血瘀(けつお)の存在は明らかだと思われます。大黄には優れた活血化瘀作用がありますので、白膩苔に黄色味がわずかでもかかっているようなら、大柴胡湯証であることも十分に考えられます。便秘気味でもあることですし、大柴胡湯証の存在はないかを検討する余地があるかもしれません。
また、釣藤散に地竜を加えるのも有効かもしれません。地竜には清熱熄風、鎮驚、清肺平喘、行経通絡、利水通淋など、釣藤散とはとても相性のよい薬味です。喘息体質にもマッチします。
地竜単独でも有効かもしれませんが、白膩苔というのがちょっと気になるところです。
以上の乱雑な書き殴りが少しでもヒントになればさいわいです。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
【編集後記】 お問合せの文面に「実熱ではなく虚熱であると考えて次回は滋陰清熱の処方を考えてはいます」とあるが、あきらかな白膩苔があり食欲もあまりない人に、滋陰清熱を行うのは疑問である。
折り返し頂いたメール:昨日は突然のメールにも関わらず、早急にお返事いただいたこと大変感激しております。ありがとうございました。
直前の処方で実熱は少しでもおさえられると思ったのに、全く
奏効せず、それどころか憎悪したので、虚熱と判断したのは浅
はかでした。
もう一度、先生から頂いたヒントをもとに処方検討をして、症
状が改善するよう努めたいと思っております。
お忙しい中、本当にありがとうございました。
ラベル:熱感
posted by ヒゲジジイ at 00:40| 山口 | 中医漢方薬学問答
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2006年12月26日
内風と外風との関係
御質問者:北陸地方の鍼灸師
2006年12月06日 の続き。
いつもご指導有難うございます。
めまいの方ですがほとんどめまいが出なくなってきましたが、ちょっと無理をすると(寝不足や飲食の不摂生)すこしフワッとする程度出る感じですが、ひどくはなりません。
ただ寒くなってきたせいか頭痛(側頭部から後頭部にかけて)が出る回数が多くなってきました。
そこで半夏白朮天麻湯や釣藤散と同系列の参蘇飲の使用はどうかと考えています。
症状として少し寒気があるのと胃の調子が今ひとつとの事なので初期の風邪があるのかと考えています。 ただ喉の痛みとかはありません。
この様な場合出ている頭痛が風痰上擾なのか他の要因なのか判断に苦しみます。
こういうのは臨床では結構悩むところではないかと思いますが、先生はどの様に考えられるのでしょうか?
半夏白朮天麻や釣藤散で治まるかと思ったのですがどうもそうではないので少し考えあぐねています。
頭痛といえども考えだすと難しく自分の勉強不足を感じています。どうかアドバイスのほど宜しくお願いいたします。
また頭痛の事に詳しい中医学の本などお勧めがありましたら教えて頂けないでしょうか。宜しくお願いいたします。
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
風痰上擾の誘因となった虚の状況に乗じて寒風(風寒の邪気)の侵襲を許してしまうことは往々にして見られる現象ですので、参蘇飲や藿香正気散(カッコウショウキサン)などの併用は大いにあり得ることです。(追記:併用ではなくて配合方剤の変更こそ大いにあり得る!)
内風と外風の違いとともに、これらの錯綜関係を簡単に述べた拙論としては、
続命湯を代表とする外中風邪と脳血管障害の関係
が少し参考になるかもしれません。
つまり、常に現実の疾患というのは、複雑多変であるかわりに、複雑なものが意外な単方で対処できる時もあれば、単純に見える疾患が意外にも複雑な五臓六腑のアンバランスが原因となっているために、かなり複雑な配合を要してみたり、ケース・バイ・ケースであることは言うまでもありません。
ところで、以前、中医学の原書を読んでいたらシバシバ出てきた言葉に、「頭痛を治すのに頭痛薬を投与するのはヤブである」と言った意味のことが繰り返し目に付いていました。確かに、頭に病状が現れているからと言っても、病の根源は頭にはなくて五臓六腑・気血津液のいずれに問題があるのかを冷静に弁証論治する必要があると思います。
頭痛だけの専門書というよりも、「疼痛」関連を主体に書かれた中医学書(原書)もありますが、燎原書店さんや東方書店さんの在庫目録などを取り寄せて、興味ある書籍を無駄になるくらい買い込むことが、無駄の効用になることと思います。(それがヒゲジジイ流の無駄な積読による勉強方法であり、それが大いに無駄の効用を発揮してくれたものでした。お陰で住居や書庫など合わせて4棟いずれも鬱蒼とした書籍の山で、客室という名の付く部屋は十年以上も前に完全に消滅してしまいました。でも、最近はグウタラ爺に成り下がっています。)
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返し頂いたメール:拝復
お返事大変有難うございました。 ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。 実は恥ずかしい話し、ギックリ腰になり数日寝たきり状態でした。
医者の不養生とはこの事で、患者さんにひやかされるやらバカにされるやらで散々でした。芍薬甘草湯を服用するも効果なく、あきらめて寝ておりました。
今はやっと立って動けるくらいになりました。 寒い土地柄のせいか周りでも何人かおられます。
先生におかれましてもお身体をお大事下さい。(私みたいに自分を治療できないヘボとは違うとは思いますが)
まずはお礼まで 有難うございました。
2006年12月06日 の続き。
いつもご指導有難うございます。
めまいの方ですがほとんどめまいが出なくなってきましたが、ちょっと無理をすると(寝不足や飲食の不摂生)すこしフワッとする程度出る感じですが、ひどくはなりません。
ただ寒くなってきたせいか頭痛(側頭部から後頭部にかけて)が出る回数が多くなってきました。
そこで半夏白朮天麻湯や釣藤散と同系列の参蘇飲の使用はどうかと考えています。
症状として少し寒気があるのと胃の調子が今ひとつとの事なので初期の風邪があるのかと考えています。 ただ喉の痛みとかはありません。
この様な場合出ている頭痛が風痰上擾なのか他の要因なのか判断に苦しみます。
こういうのは臨床では結構悩むところではないかと思いますが、先生はどの様に考えられるのでしょうか?
半夏白朮天麻や釣藤散で治まるかと思ったのですがどうもそうではないので少し考えあぐねています。
頭痛といえども考えだすと難しく自分の勉強不足を感じています。どうかアドバイスのほど宜しくお願いいたします。
また頭痛の事に詳しい中医学の本などお勧めがありましたら教えて頂けないでしょうか。宜しくお願いいたします。
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
風痰上擾の誘因となった虚の状況に乗じて寒風(風寒の邪気)の侵襲を許してしまうことは往々にして見られる現象ですので、参蘇飲や藿香正気散(カッコウショウキサン)などの併用は大いにあり得ることです。(追記:併用ではなくて配合方剤の変更こそ大いにあり得る!)
内風と外風の違いとともに、これらの錯綜関係を簡単に述べた拙論としては、
続命湯を代表とする外中風邪と脳血管障害の関係
が少し参考になるかもしれません。
つまり、常に現実の疾患というのは、複雑多変であるかわりに、複雑なものが意外な単方で対処できる時もあれば、単純に見える疾患が意外にも複雑な五臓六腑のアンバランスが原因となっているために、かなり複雑な配合を要してみたり、ケース・バイ・ケースであることは言うまでもありません。
ところで、以前、中医学の原書を読んでいたらシバシバ出てきた言葉に、「頭痛を治すのに頭痛薬を投与するのはヤブである」と言った意味のことが繰り返し目に付いていました。確かに、頭に病状が現れているからと言っても、病の根源は頭にはなくて五臓六腑・気血津液のいずれに問題があるのかを冷静に弁証論治する必要があると思います。
頭痛だけの専門書というよりも、「疼痛」関連を主体に書かれた中医学書(原書)もありますが、燎原書店さんや東方書店さんの在庫目録などを取り寄せて、興味ある書籍を無駄になるくらい買い込むことが、無駄の効用になることと思います。(それがヒゲジジイ流の無駄な積読による勉強方法であり、それが大いに無駄の効用を発揮してくれたものでした。お陰で住居や書庫など合わせて4棟いずれも鬱蒼とした書籍の山で、客室という名の付く部屋は十年以上も前に完全に消滅してしまいました。でも、最近はグウタラ爺に成り下がっています。)
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返し頂いたメール:拝復
お返事大変有難うございました。 ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。 実は恥ずかしい話し、ギックリ腰になり数日寝たきり状態でした。
医者の不養生とはこの事で、患者さんにひやかされるやらバカにされるやらで散々でした。芍薬甘草湯を服用するも効果なく、あきらめて寝ておりました。
今はやっと立って動けるくらいになりました。 寒い土地柄のせいか周りでも何人かおられます。
先生におかれましてもお身体をお大事下さい。(私みたいに自分を治療できないヘボとは違うとは思いますが)
まずはお礼まで 有難うございました。
posted by ヒゲジジイ at 22:05| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年12月13日
中医学の初心者向けの参考書の御質問
性別 : 男性
年齢 : 40歳〜49歳
ご職業 : 医療・福祉関係
具体的な御職業 : 薬剤師
簡単な御住所:関東地方
お問い合わせ内容 : 中医学を独学していますが初心者向けの参考書がありましたら教えてください。どの本を読んだら良いかが種類があまりにも多すぎて良くわかりません。よろしくお願いいたします。
お返事メール: 同様な御質問がちょうど一年前にもありました。
当時、5回くらいの往復メールをブログに掲載していますので、それを参考にされると良いかと思います。
特に、中医学問答(4) このページに書かれている関口善太先生の著された「やさしい中医学入門」と同じく関口先生の「東洋医学のしくみ」というのが良いかもしれません。
その後の読書は、濫読するくらいのつもりで、御自分の好みの書籍を選択すべきだと思いますが、小生が実際に助けになった書籍は、このブログに掲載しているカテゴリ「中医学問答」の5回分くらいあるブログをすべて御覧になると、多少はヒントになるかもしれません。
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/12378511.html
このサイトマップの下のほうに「中医学問答」というカテゴリの最初の五回分です。
以上、取り急ぎお返事まで。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
年齢 : 40歳〜49歳
ご職業 : 医療・福祉関係
具体的な御職業 : 薬剤師
簡単な御住所:関東地方
お問い合わせ内容 : 中医学を独学していますが初心者向けの参考書がありましたら教えてください。どの本を読んだら良いかが種類があまりにも多すぎて良くわかりません。よろしくお願いいたします。
お返事メール: 同様な御質問がちょうど一年前にもありました。
当時、5回くらいの往復メールをブログに掲載していますので、それを参考にされると良いかと思います。
特に、中医学問答(4) このページに書かれている関口善太先生の著された「やさしい中医学入門」と同じく関口先生の「東洋医学のしくみ」というのが良いかもしれません。
その後の読書は、濫読するくらいのつもりで、御自分の好みの書籍を選択すべきだと思いますが、小生が実際に助けになった書籍は、このブログに掲載しているカテゴリ「中医学問答」の5回分くらいあるブログをすべて御覧になると、多少はヒントになるかもしれません。
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/12378511.html
このサイトマップの下のほうに「中医学問答」というカテゴリの最初の五回分です。
以上、取り急ぎお返事まで。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
posted by ヒゲジジイ at 19:57| 山口 ☔| 中医漢方薬学問答
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沈香についての御質問
御質問者:東海地方の内科医師
今日は、仕事場からメールしています。
いつも貴重で臨床の益となるご助言ありがとうございます。
本日は、ある製薬メーカーさんから沈香なる生薬について情報の提供を
受けました。
本来は自分で検索すべきことですが、いかなるものか、使用するに耐えられるものであった場合、どのような適応があるのか、についてご教示いただければ幸いです。
いつも生き字引に頼ってしまって恐縮です。
お返事メール:
沈香は、辛・苦・温の性質で、帰経は脾・胃・腎、効能は、行気止痛散寒・温中止嘔、温腎補陽納気・降逆平喘などで、禁忌は気虚下陥(補中益気湯証など)や陰虚火旺(知柏腎気丸証など)で、このような体質の人には使えません。
沈香と肉桂はよく比較され沈香は理気に優れ気滞の解決に長じ、肉桂は温陽に長じて陽虚や散寒に長じると言われます。
それゆえ、寒涼薬によって生じた氷伏を解消するには、肉桂とともに沈香も有効であることは間違いありません。
氷伏を防ぐ薬物としては肉桂よりも行気作用が優れているだけに、未然に防止する薬物としては肉桂よりも刺激性が少なく温和かもしれません???
明らかな氷伏が生じて以後は、肉桂の方がシャープなように感じます。
蛇足ながら日本で桂枝や桂皮として使用されているのは、すべて中医学における肉桂が使用されています。
以上、簡単ながらお返事まで。
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返しのメール:沈香について詳細にお教えくださいましてありがとうございました。
今日は、仕事場からメールしています。
いつも貴重で臨床の益となるご助言ありがとうございます。
本日は、ある製薬メーカーさんから沈香なる生薬について情報の提供を
受けました。
本来は自分で検索すべきことですが、いかなるものか、使用するに耐えられるものであった場合、どのような適応があるのか、についてご教示いただければ幸いです。
いつも生き字引に頼ってしまって恐縮です。
お返事メール:
沈香は、辛・苦・温の性質で、帰経は脾・胃・腎、効能は、行気止痛散寒・温中止嘔、温腎補陽納気・降逆平喘などで、禁忌は気虚下陥(補中益気湯証など)や陰虚火旺(知柏腎気丸証など)で、このような体質の人には使えません。
沈香と肉桂はよく比較され沈香は理気に優れ気滞の解決に長じ、肉桂は温陽に長じて陽虚や散寒に長じると言われます。
それゆえ、寒涼薬によって生じた氷伏を解消するには、肉桂とともに沈香も有効であることは間違いありません。
氷伏を防ぐ薬物としては肉桂よりも行気作用が優れているだけに、未然に防止する薬物としては肉桂よりも刺激性が少なく温和かもしれません???
明らかな氷伏が生じて以後は、肉桂の方がシャープなように感じます。
蛇足ながら日本で桂枝や桂皮として使用されているのは、すべて中医学における肉桂が使用されています。
以上、簡単ながらお返事まで。
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返しのメール:沈香について詳細にお教えくださいましてありがとうございました。
posted by ヒゲジジイ at 19:45| 山口 ☔| 中医漢方薬学問答
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2006年12月10日
アトピー性皮膚炎の冬季悪化についての御質問
御質問者: 東海地方の内科医師
すこしご無沙汰しました。新規の患者さんで晩秋のころに当診療所を受診なさったかたの多くが、清熱剤+チョレイトウ+インチンコウトウの併用でかなりいい感じになってきていたのですが、一様に、ごく最近になって(11月下旬ごろから)、やや増悪している傾向にあります。
教科書的には冬季に悪化する、と記載はありますが、その説明については、乾燥程度のことしか見当たりません。それはともかくにして、当診療所にとっては増悪している患者さんや患児のかたの皮膚をよくして差し上げなければいけないわけです。
ここでご教示いただければと思うのですが、このような状況の場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。あまりに漠然とした質問で恐縮です。
具体的な病状についてご説明できれば、ご返答しやすいとは思っていますが、これまでの経験からアドバイスをお願いできれば幸いです。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
この問題こそ、小生がアトピー関連で最初に書いた拙論の最も反省させられる部分で、
アトピ−性皮膚炎の中医漢方薬学療法
この拙論の最初に反省として書いている「清熱剤の黄連解毒湯をやや乱用気味であり、すべてを鵜呑みにして使用すると、たとえ初期に即効を得たとしても、時に氷伏(ひょうふく)を生じることもあり得るので」の問題点です。この清熱剤はインチンコウトウも含めて、そのまま使用し続けると、往々にして効果が途中で突然途絶えてしまうことがありえます。
「清熱剤+チョレイトウ+インチンコウトウ」の配合には、氷伏を未然に防ぐ活血化オの薬物が大黄以外にはないことが問題のようです。できれば温性の活血薬、単純には桂枝程度でもかなり氷伏を避けることができます。
あるいは、デリケートなアトピーに対してはインチンコウトウの加方がやや強すぎるのかもしれません。
もう一つの可能性は、もしも子供さんのアトピーが多いようでしたら、食物アレルギーが顕著な例では補中益気湯が適応する場合が意外に多く、過去にも重症のアトピーの幼児で淡白舌で胖大、舌先は紅に「黄連解毒湯+補中益気湯」で速効を得て効果が途絶えることなく治癒しています。この場合、補中益気湯中の当帰などで氷伏を避けることが出来ます。
食物アレルギーの子供さんには弁証論治を正確に行えば、補中益気湯証が基礎にあることが多いように感じます。
以上、メールを拝見して感じたことを取り急ぎお返事申し上げる次第です。
頓首
折り返しの御質問:前略
いつも早速のご返事ありがとうございます。
お忙しいとは存じますが、氷伏(ひょうふく)についてもうすこしご教示ください。
本日受診なさったかたのなかに、先のメールにて質問するきっかけとなった乾燥した頑固な咳の患者さんがいらっしゃったのですが。「どうも着実に改善しています」とのことでお顔の表情も良くなっていました。
まことに有難い経験です。村田さんには感謝しています。
ヒゲジジイのお返事メール:
寒涼薬を過剰に投与すると氷伏を生じやすいということは、張景岳(葉天士)が警告した言葉だったと思いますが、具体的に解説された日本語書籍の記憶がないので、小生の把握しているイメージを以下に述べさせて頂きます。
シバシバ生じるのが寒涼剤による寒凝血オや腎陽の損傷で、これまでの効果が0になる。これを未然に防ぐには温性の活血薬で、その代表的なものが桂枝や桂皮だというものです。
実際に氷伏が生じた例として
アトピー性皮膚炎における去風薬配合上の問題点(『中医臨床』誌1993年3月号に発表分)(引用⇒透明な分泌物の出現と寒冷蕁麻疹の併発をみたために,黄連解毒湯・滑石茯苓湯・桂枝加黄耆湯加白朮の三者合方に変え,最終的には黄連解毒湯合桂枝加黄耆湯加茯苓白朮としてほぼ軽快するに至った症例がありましたが,これは明らかに軽症者に対する寒凉薬過剰投与による誤治によるものでした。)
および、脾肺病としてのアトピー性皮膚炎(1996年:東洋学術出版社発行『アトピー性皮膚炎の漢方治療』より) における症例1番目の考察のところで、黄連解毒湯の乱用により愚息の腎陽損傷のケースを述べています。(引用⇒以前,当時14才の愚息の流感による高熱に対し,銀翹散製剤と黄連解毒湯で即効的に治癒させたことがあるが,治癒後もだらだらと続服させていたら,夜間尿の回数が急増して困ったことがある。黄連解毒湯を中止し,腎陽を強力に温補する海馬補腎丸を飲ませて治癒させたが,黄連解毒湯などの清熱瀉火薬を連用する場合は,衛気の来源である腎陽を損傷しないように細心の注意が必要である。
『霊枢』営衛生会篇に「衛は下焦より出ず」とあるように,衛気は腎から生じる元気がもとになっており,腎陽の蒸騰気化を通じて水穀の精微から化生し,肺の宣発によって全身に散布されるので,衛気が正常に機能するには,@腎精が充足し,A脾が管轄する水穀の精微が充足し,B肺の宣発機能が正常に働く必要がある。)
濫読した当時の中医学書に張景岳葉天士が警告した言葉として引用されていたと思うのですが、その文献(実は清の周学海著「読医随筆」)を思い出せません。手元の書籍をチョット調べてみても意外に一般の中医学書には書かれてないようなので、書庫のどこかに眠っている本で読んだものと思われます。
確実な資料が出てきた時にはご連絡申し上げます。
追伸: もっと的確な表現が思い浮かびました。
黄連解毒湯や石膏剤のような寒涼薬を多用すると「気血を凝滞させる」ということを「氷伏」と表現したものと思われます。
それゆえシナモン(桂枝)などは温性の優れた行気活血薬でもあるので、氷伏を防ぐ代表的な薬物と言えるのかもしれません。
ともあれ、寒涼薬を多用すると、往々にして気血凝滞を引き起こすので、その時点でそれまで有効に作用していた効果が突然途絶えてしまうようです。
村田恭介拝
折り返し頂いたメール:
”氷伏”についてお返事のメールありがとうございます。
ご説明を拝読しますと、清熱剤をはじめとした寒涼薬を投与しつづけている患者さんのなかに結構該当するかたがいることに気が付きました。寒凝血オや腎陽の損傷が疑われるケースがありそうです。
さっそく、ケイヒを加えるなどして対応して見ます。
いつも参考となるご助言ありがとうございます。これで、「成人式にはきれいな顔で出席したい」
とおっしゃってみえた若い患者さんのご意向が叶うかもしれません。
すこしご無沙汰しました。新規の患者さんで晩秋のころに当診療所を受診なさったかたの多くが、清熱剤+チョレイトウ+インチンコウトウの併用でかなりいい感じになってきていたのですが、一様に、ごく最近になって(11月下旬ごろから)、やや増悪している傾向にあります。
教科書的には冬季に悪化する、と記載はありますが、その説明については、乾燥程度のことしか見当たりません。それはともかくにして、当診療所にとっては増悪している患者さんや患児のかたの皮膚をよくして差し上げなければいけないわけです。
ここでご教示いただければと思うのですが、このような状況の場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。あまりに漠然とした質問で恐縮です。
具体的な病状についてご説明できれば、ご返答しやすいとは思っていますが、これまでの経験からアドバイスをお願いできれば幸いです。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
この問題こそ、小生がアトピー関連で最初に書いた拙論の最も反省させられる部分で、
アトピ−性皮膚炎の中医漢方薬学療法
この拙論の最初に反省として書いている「清熱剤の黄連解毒湯をやや乱用気味であり、すべてを鵜呑みにして使用すると、たとえ初期に即効を得たとしても、時に氷伏(ひょうふく)を生じることもあり得るので」の問題点です。この清熱剤はインチンコウトウも含めて、そのまま使用し続けると、往々にして効果が途中で突然途絶えてしまうことがありえます。
「清熱剤+チョレイトウ+インチンコウトウ」の配合には、氷伏を未然に防ぐ活血化オの薬物が大黄以外にはないことが問題のようです。できれば温性の活血薬、単純には桂枝程度でもかなり氷伏を避けることができます。
あるいは、デリケートなアトピーに対してはインチンコウトウの加方がやや強すぎるのかもしれません。
もう一つの可能性は、もしも子供さんのアトピーが多いようでしたら、食物アレルギーが顕著な例では補中益気湯が適応する場合が意外に多く、過去にも重症のアトピーの幼児で淡白舌で胖大、舌先は紅に「黄連解毒湯+補中益気湯」で速効を得て効果が途絶えることなく治癒しています。この場合、補中益気湯中の当帰などで氷伏を避けることが出来ます。
食物アレルギーの子供さんには弁証論治を正確に行えば、補中益気湯証が基礎にあることが多いように感じます。
以上、メールを拝見して感じたことを取り急ぎお返事申し上げる次第です。
頓首
折り返しの御質問:前略
いつも早速のご返事ありがとうございます。
お忙しいとは存じますが、氷伏(ひょうふく)についてもうすこしご教示ください。
本日受診なさったかたのなかに、先のメールにて質問するきっかけとなった乾燥した頑固な咳の患者さんがいらっしゃったのですが。「どうも着実に改善しています」とのことでお顔の表情も良くなっていました。
まことに有難い経験です。村田さんには感謝しています。
ヒゲジジイのお返事メール:
寒涼薬を過剰に投与すると氷伏を生じやすいということは、
シバシバ生じるのが寒涼剤による寒凝血オや腎陽の損傷で、これまでの効果が0になる。これを未然に防ぐには温性の活血薬で、その代表的なものが桂枝や桂皮だというものです。
実際に氷伏が生じた例として
アトピー性皮膚炎における去風薬配合上の問題点(『中医臨床』誌1993年3月号に発表分)(引用⇒透明な分泌物の出現と寒冷蕁麻疹の併発をみたために,黄連解毒湯・滑石茯苓湯・桂枝加黄耆湯加白朮の三者合方に変え,最終的には黄連解毒湯合桂枝加黄耆湯加茯苓白朮としてほぼ軽快するに至った症例がありましたが,これは明らかに軽症者に対する寒凉薬過剰投与による誤治によるものでした。)
および、脾肺病としてのアトピー性皮膚炎(1996年:東洋学術出版社発行『アトピー性皮膚炎の漢方治療』より) における症例1番目の考察のところで、黄連解毒湯の乱用により愚息の腎陽損傷のケースを述べています。(引用⇒以前,当時14才の愚息の流感による高熱に対し,銀翹散製剤と黄連解毒湯で即効的に治癒させたことがあるが,治癒後もだらだらと続服させていたら,夜間尿の回数が急増して困ったことがある。黄連解毒湯を中止し,腎陽を強力に温補する海馬補腎丸を飲ませて治癒させたが,黄連解毒湯などの清熱瀉火薬を連用する場合は,衛気の来源である腎陽を損傷しないように細心の注意が必要である。
『霊枢』営衛生会篇に「衛は下焦より出ず」とあるように,衛気は腎から生じる元気がもとになっており,腎陽の蒸騰気化を通じて水穀の精微から化生し,肺の宣発によって全身に散布されるので,衛気が正常に機能するには,@腎精が充足し,A脾が管轄する水穀の精微が充足し,B肺の宣発機能が正常に働く必要がある。)
濫読した当時の中医学書に
確実な資料が出てきた時にはご連絡申し上げます。
追伸: もっと的確な表現が思い浮かびました。
黄連解毒湯や石膏剤のような寒涼薬を多用すると「気血を凝滞させる」ということを「氷伏」と表現したものと思われます。
それゆえシナモン(桂枝)などは温性の優れた行気活血薬でもあるので、氷伏を防ぐ代表的な薬物と言えるのかもしれません。
ともあれ、寒涼薬を多用すると、往々にして気血凝滞を引き起こすので、その時点でそれまで有効に作用していた効果が突然途絶えてしまうようです。
村田恭介拝
折り返し頂いたメール:
”氷伏”についてお返事のメールありがとうございます。
ご説明を拝読しますと、清熱剤をはじめとした寒涼薬を投与しつづけている患者さんのなかに結構該当するかたがいることに気が付きました。寒凝血オや腎陽の損傷が疑われるケースがありそうです。
さっそく、ケイヒを加えるなどして対応して見ます。
いつも参考となるご助言ありがとうございます。これで、「成人式にはきれいな顔で出席したい」
とおっしゃってみえた若い患者さんのご意向が叶うかもしれません。
posted by ヒゲジジイ at 00:07| 山口 ☔| 中医漢方薬学問答
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2006年11月27日
11月23日のメマイ(めまい)の漢方薬[風痰上擾]の続き
メマイ(めまい)の漢方薬 〔風痰上擾の場合〕 の続き
ご質問者:北陸地方の鍼灸師
村田恭介先生
ご返信ありがたく拝見いたしました。
お忙しい中、本当にありがとうございます。
頭の中でゴチャゴチャしていたのがスッキリしたのと同時に、自分の弱点というか、今勉強しなきゃいけない分野がわかりました。(分かった気になってるだけかもしれませんが…笑)
一つ一つの薬味 の性質や病機の把握が全然出来てないと思いました。(どうしても日本流の名残りにとらわれています)
質問の件に関してのご指摘いただいた「めまい」の程度ですが、じっとしていれば大丈夫なのですが、動いたり立っていて下を向いたり、横を向いたりするとふらつくというよりフワッという感じになら、それが多いと悪心があるそうです。
あ と後頚部から肩にかけての凝り感が平常時より強く、うっとおしいのと、記載してませんでしたが、朝起きると背中がふつうより寒く、ちょうど第3から第6胸椎辺り一体がシャワーなどのお湯をかけると、明らかに冷たいのが分かるそうです。(留飲が有るのでしょうか?)
重ねてお聞きしたいのですが、ソケイ部の湿疹は風痰上優と絡めて考えていいのでしょうか?
また、今出ている症状が治まってきた時、体質改善の目的で九味半夏湯の使用を考えて良いのでしょうか。 風痰上優になるという 事は少なからず体の状態的にそんな傾向があるのではと考えるのですが、先生ご指摘の桂枝と升麻は災いしないのでしょうか。
お忙しい事とは存じますが重ねてご指導宜しくお願いいたします。
頓首
折り返しヒゲジジイの逆質問: 白膩苔が明らかで、黄色味はまったくないのでしょうか?
それに舌質は紅か、あるいは淡紅なのか? それに舌形や大きさはどうでしょうか?
歯型はついてないのでしょうか?
その変の情報がはっきりしないともう一つ分析は不可能です。苔の生えている場所は全面か、奥だけかなども、
その辺をご返信願えれば、もう少し考察する材料になると思います。
折り返しのお返事: 村田先生
情報が足りなくてすいません。
舌診に関しては、先生のサイトを見出してから取りくみだしたものですから、未熟なのでしっかりしているかどうかわかりませんが、舌苔に関しては、膩はそんなにべっとりはなく、どちらかというと舌根部側にあり、黄色はありません。
舌体は胖傾向で、舌先部は紅、そのほかは淡紅なのか紫なのか微妙です。 舌先部にオ点があります。歯痕はありません。
以上よろしくお願いいたします。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
「舌体は胖傾向で舌先が紅で、そのほかは淡紅なのか紫なのか微妙」とあれば、また諸症状を参考にして風痰上擾傾向は明らかであるとしても舌先の紅からわずかに肝陽化火の傾向が見られるので、やはり釣藤散(舌先が紅により)に半夏白朮天麻湯(胖大に近ければ)を土台に、オ血があることが確実として少量の生薬製剤二号方かイスクラの冠元顆粒を加える方法が一つ。
あるいはオ血除去の目的部分は扁鵲で代用しても構わないかもしれません。牡丹皮と大黄は適度な活血化オ作用があります。また、風痰上擾であっても上述の二方剤にはそれぞれ釣藤鈎・天麻が含まれているので扁鵲の桂枝も升麻もそれほど邪魔することはなくなるはずです。
もしも顔が明らかに火照る傾向強ければ、黄連解毒湯を適量加えた方が無難です。舌先が紅いのですから。舌全体はたとえ淡紅でも明らかに舌先が紅い場合は、心系統に熱邪があり、淡紅部分(以下は淡紅を淡白と勘違いした為に錯誤したコメントが続くので参考にならない)は肺脾腎の虚寒などが考えられますが、このように各五臓それぞれの寒熱が異なることはザラにみられることなので、それ以上のことは直接御相談に乗られているT先生みずからが、考えてみて下さい。(肺脾腎の虚寒は半夏白朮天麻湯や扁鵲中の桂枝でカバーできます。)
また足の湿疹は、心系統の熱邪によるものであれば、適量の黄連解毒湯が効果を示すことと思います。
でも、これあくまで少ない情報からの推測に過ぎませんので悪しからず・・・
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
村田恭介拝
ご質問者:北陸地方の鍼灸師
村田恭介先生
ご返信ありがたく拝見いたしました。
お忙しい中、本当にありがとうございます。
頭の中でゴチャゴチャしていたのがスッキリしたのと同時に、自分の弱点というか、今勉強しなきゃいけない分野がわかりました。(分かった気になってるだけかもしれませんが…笑)
一つ一つの薬味 の性質や病機の把握が全然出来てないと思いました。(どうしても日本流の名残りにとらわれています)
質問の件に関してのご指摘いただいた「めまい」の程度ですが、じっとしていれば大丈夫なのですが、動いたり立っていて下を向いたり、横を向いたりするとふらつくというよりフワッという感じになら、それが多いと悪心があるそうです。
あ と後頚部から肩にかけての凝り感が平常時より強く、うっとおしいのと、記載してませんでしたが、朝起きると背中がふつうより寒く、ちょうど第3から第6胸椎辺り一体がシャワーなどのお湯をかけると、明らかに冷たいのが分かるそうです。(留飲が有るのでしょうか?)
重ねてお聞きしたいのですが、ソケイ部の湿疹は風痰上優と絡めて考えていいのでしょうか?
また、今出ている症状が治まってきた時、体質改善の目的で九味半夏湯の使用を考えて良いのでしょうか。 風痰上優になるという 事は少なからず体の状態的にそんな傾向があるのではと考えるのですが、先生ご指摘の桂枝と升麻は災いしないのでしょうか。
お忙しい事とは存じますが重ねてご指導宜しくお願いいたします。
頓首
折り返しヒゲジジイの逆質問: 白膩苔が明らかで、黄色味はまったくないのでしょうか?
それに舌質は紅か、あるいは淡紅なのか? それに舌形や大きさはどうでしょうか?
歯型はついてないのでしょうか?
その変の情報がはっきりしないともう一つ分析は不可能です。苔の生えている場所は全面か、奥だけかなども、
その辺をご返信願えれば、もう少し考察する材料になると思います。
折り返しのお返事: 村田先生
情報が足りなくてすいません。
舌診に関しては、先生のサイトを見出してから取りくみだしたものですから、未熟なのでしっかりしているかどうかわかりませんが、舌苔に関しては、膩はそんなにべっとりはなく、どちらかというと舌根部側にあり、黄色はありません。
舌体は胖傾向で、舌先部は紅、そのほかは淡紅なのか紫なのか微妙です。 舌先部にオ点があります。歯痕はありません。
以上よろしくお願いいたします。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
「舌体は胖傾向で舌先が紅で、そのほかは淡紅なのか紫なのか微妙」とあれば、また諸症状を参考にして風痰上擾傾向は明らかであるとしても舌先の紅からわずかに肝陽化火の傾向が見られるので、やはり釣藤散(舌先が紅により)に半夏白朮天麻湯(胖大に近ければ)を土台に、オ血があることが確実として少量の生薬製剤二号方かイスクラの冠元顆粒を加える方法が一つ。
あるいはオ血除去の目的部分は扁鵲で代用しても構わないかもしれません。牡丹皮と大黄は適度な活血化オ作用があります。また、風痰上擾であっても上述の二方剤にはそれぞれ釣藤鈎・天麻が含まれているので扁鵲の桂枝も升麻もそれほど邪魔することはなくなるはずです。
もしも顔が明らかに火照る傾向強ければ、黄連解毒湯を適量加えた方が無難です。舌先が紅いのですから。舌全体はたとえ淡紅でも明らかに舌先が紅い場合は、心系統に熱邪があり、淡紅部分(以下は淡紅を淡白と勘違いした為に錯誤したコメントが続くので参考にならない)は
また足の湿疹は、心系統の熱邪によるものであれば、適量の黄連解毒湯が効果を示すことと思います。
でも、これあくまで少ない情報からの推測に過ぎませんので悪しからず・・・
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
村田恭介拝
posted by ヒゲジジイ at 21:13| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年11月26日
18年前のC先生による「中医漢方薬学論」に対する評価
我が郷土、我が選挙区の安倍さんが首相の間に、既に故人になられたC先生からの18年前のお手紙を公開しておかねばならない(笑)
エビデンス漢方の道をひた走る日本漢方に、一日も早く中医学理論を導入して本来あるべき道に軌道修正すべきことを訴えるために!
C先生とは、小生の過去に書き散らした拙論を読まれている専門家の方なら、あの高名な中医学の大家であられるか!というのは直ぐに判明するはずであるが、敢えてお名前を伏せておく。
但し、以下に転載する先生の署名入りのお手紙の内容にあるように御高著やお手紙についても引用はご承諾済みである。
なお、先日公開を予定していたC先生にはじめてお手紙を頂くきっかけとなった拙論「漢方経験雑録━小柴胡湯と肝臓病」については、リンクしているように他サイトで公開済みである。
以下、18年前、小生の当時の拙論「日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱(平成元年の提言!)」をはじめとした内容に対する評価が含まれたC先生からのお手紙である。
でも、どうしても気分的には老人のつもりでいるのは、当時漢方界でご活躍だった先生方の多くが他界されたので、こちらまで老け込んだ気分に支配されるのだろうか。
漢方を始めた33年前は、大塚敬節先生や矢数道明先生、藤平健先生、皆さん小生の年齢とはお爺さんほどの開きがあったのは確かだが・・・今回のC先生とは21歳しか違わなかった。
エビデンス漢方の道をひた走る日本漢方に、一日も早く中医学理論を導入して本来あるべき道に軌道修正すべきことを訴えるために!
C先生とは、小生の過去に書き散らした拙論を読まれている専門家の方なら、あの高名な中医学の大家であられるか!というのは直ぐに判明するはずであるが、敢えてお名前を伏せておく。
但し、以下に転載する先生の署名入りのお手紙の内容にあるように御高著やお手紙についても引用はご承諾済みである。
なお、先日公開を予定していたC先生にはじめてお手紙を頂くきっかけとなった拙論「漢方経験雑録━小柴胡湯と肝臓病」については、リンクしているように他サイトで公開済みである。
以下、18年前、小生の当時の拙論「日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱(平成元年の提言!)」をはじめとした内容に対する評価が含まれたC先生からのお手紙である。
拝啓18年前には若手と言われた村田も既に56歳。年寄りゲ(笑)なイメージがあるかもしれない漢方界では、もしかしてヒゲジジイというにはまだ若いのかも?
先生には過分のご評価をいただき、大変恐縮しております。私の拙文で宜しかったら御遠慮なく御引用下さってかまいません。私もライフワークとしてこの日本に一人でも多くの医療関係者が中医学に御理解を願い、その普及と向上を志しております。
最近の先生のお書きになった論文を「和漢薬」「漢方の臨床」等の雑誌で拝見させていただきました。大変論理的でしかもきめ細かく展開しており、きっと多くの同道の志に大きなはげましになる事でしょう。
中医学はもともと薬学から発展しており、中国では、ごく最近まで大きな薬店の主人が著名な中医師になっていました。新中国になってからはそれぞれ分業するようになりましたが、今でも大きな薬店では中医師を雇って、待合室の一角で患者さんを診ている実状です。
又、現在の中国では、国内の少数民族の伝統医学を尊重し、その保護、育成に努めております。例えば、東医(朝鮮族)、蔵医(チベット族)、蒙医(蒙古族)等それぞれの特徴を生かした医学が発展しております。しかし、これ等は皆、中医学の理論を基礎にしている事は言うまでもありません。そういう意味では日本の古方派漢方は特異な存在と言わなければなりません。それに東洋哲学が全く無視されている不思議な存在でもあります。先生の論説には全く賛同しており、心から敬服しております。
傷寒、金匱のみをバイブル的存在とし、あくまで方証相対にこだわるならば、そこには理論の発展もないし、学問の進歩もなくなることになります。これでは既に学問ではありえないし、自ら科学を否定しているようなものに見られます。科学には絶え間ない進歩と発見がなければならない筈です。
これからの日本の伝統医学の発展の為には、今の漢方が東洋哲学を確立し、中医学の基礎理論を導入し、日本漢方の良いところと結合して、新しい日本の漢方医学をうちたてるべきだと信じております。
しかし、日本の現状はなかなか厳しく、一部の派閥的な感情的な意識を持つ人にはわれわれの絶え間ない働き掛けで中医学への理解をしていただくしかないのではないかと思っております。特に若手の専門家の中にそのような人がいる事は大変残念なことです。それでも、私が10年前に予想していた以上に中医学が普及してきた事は大変喜ばしい事ですし、時代の流れをひしひしと感じます。時代の流れに逆流する人は所詮蟷螂(とうろう)の斧にすぎません。
先生には若手の論客として非常に期待を寄せております。新事物の導入は一朝一旦には事は成りません。地味で絶え間ない努力が要求されます。私もまだ中医学については未熟ですし、勉強中の身です。まだまだ学習する事がいっぱいあります。これからも同学のよしみでお互いにガンバリましょう。
以上、私の率直な意見を遠慮なく述べさせていただきました。もし、失礼なところがありましたらご容赦下さい。
奥様には宜しくお伝え下さい。
敬白
1989年2月10日
C拝
でも、どうしても気分的には老人のつもりでいるのは、当時漢方界でご活躍だった先生方の多くが他界されたので、こちらまで老け込んだ気分に支配されるのだろうか。
漢方を始めた33年前は、大塚敬節先生や矢数道明先生、藤平健先生、皆さん小生の年齢とはお爺さんほどの開きがあったのは確かだが・・・今回のC先生とは21歳しか違わなかった。
posted by ヒゲジジイ at 01:50| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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小青竜湯の興味深い配合をされる先生からのおたより
昨日の東海地区の先生からのおたより: 甲状腺機能亢進症の考え方参考にさせていただきます。
とくに、いつも論じられている”五臓間における気・血・津液の生化と輸泄の連携の問題”について考慮にいれてみたいと思います。
それから過日お教えいただいた処方を参考として、慢性の乾燥した咳にたいする組み合わせ、滋陰降下湯+芍薬甘草湯+五味子をいれるために小青竜湯、を処方しましたところ、「今までになく咳が楽になった」と喜んでいただけました。まことにありがとうございます。
息子さんが血液内科に所属とのことですが、内科のいなかでは4K(苦しい、きたない、きつい、興味ぶかい)と当地域では評価されている診療科です。圧倒的に3Kが優位のところですので、くれぐれも体調にご留意くださいますよう機会がありましたらお伝えください。
ヒゲジジイのお返事メール: 乾燥咳の漢方処方、随分面白く興味深い配合で、こちらの方こそとても参考になります。小青竜湯も先生のようなバランスの取れた配合であれば、有用性が拡がるわけですね。
ところでブログを御覧頂いたらお気づきかもしれませんが、編集後記として、
たとえば「甲状腺機能亢進」における中西医結合による弁証分型をいつものように提示しない理由は、臨床の実際においては意外に現実にマッチしないところも多々あるのみならず、限りなく西洋医学に近づきすぎる「同病異治」の世界である。
それゆえ、日本古方派の数少ない優れた点の大きな一つ「異病同治」の観点からは、病名は参考にはしても中西医結合的な弁証分型にはこだわらずに、基礎理論はすべて中医学理論に基づきながら、常に「異病同治」の方向を主体にしているのが「中医漢方薬学派」のアイデンティティーなのである。
という駄文を加えておきました。
また、愚息への貴重なアドバイス、まことにありがとうございます。滅多に愚痴を言わない子のはずですが、通りで時に弱音の雰囲気がかすかに感じられる時があったことの意味が分かりました。医師になって5年になりますので、あの雰囲気では既に泥沼?に嵌ってしまったのかも知れません(笑)
頓首
編集後記: 上記の「滋陰降下湯+芍薬甘草湯+五味子をいれるために小青竜湯」という配合は、うかつに初心者やシロウトが真似してよい配合ではなく、あくまで弁証論治にもとづく専門家の配慮によってなされるべき配合である。これら三処方の配合によって甘草(カンゾウ)の配合分量が膨大なものになり、これによって水滞を生じやすくなるので、適応症があってはじめて成り立つ配合である。きっと配合比率を変化させるなどその辺の配慮はきめ細かくされておられるであろうから、継続服用が可能となるのである。
とくに、いつも論じられている”五臓間における気・血・津液の生化と輸泄の連携の問題”について考慮にいれてみたいと思います。
それから過日お教えいただいた処方を参考として、慢性の乾燥した咳にたいする組み合わせ、滋陰降下湯+芍薬甘草湯+五味子をいれるために小青竜湯、を処方しましたところ、「今までになく咳が楽になった」と喜んでいただけました。まことにありがとうございます。
息子さんが血液内科に所属とのことですが、内科のいなかでは4K(苦しい、きたない、きつい、興味ぶかい)と当地域では評価されている診療科です。圧倒的に3Kが優位のところですので、くれぐれも体調にご留意くださいますよう機会がありましたらお伝えください。
ヒゲジジイのお返事メール: 乾燥咳の漢方処方、随分面白く興味深い配合で、こちらの方こそとても参考になります。小青竜湯も先生のようなバランスの取れた配合であれば、有用性が拡がるわけですね。
ところでブログを御覧頂いたらお気づきかもしれませんが、編集後記として、
たとえば「甲状腺機能亢進」における中西医結合による弁証分型をいつものように提示しない理由は、臨床の実際においては意外に現実にマッチしないところも多々あるのみならず、限りなく西洋医学に近づきすぎる「同病異治」の世界である。
それゆえ、日本古方派の数少ない優れた点の大きな一つ「異病同治」の観点からは、病名は参考にはしても中西医結合的な弁証分型にはこだわらずに、基礎理論はすべて中医学理論に基づきながら、常に「異病同治」の方向を主体にしているのが「中医漢方薬学派」のアイデンティティーなのである。
という駄文を加えておきました。
また、愚息への貴重なアドバイス、まことにありがとうございます。滅多に愚痴を言わない子のはずですが、通りで時に弱音の雰囲気がかすかに感じられる時があったことの意味が分かりました。医師になって5年になりますので、あの雰囲気では既に泥沼?に嵌ってしまったのかも知れません(笑)
頓首
編集後記: 上記の「滋陰降下湯+芍薬甘草湯+五味子をいれるために小青竜湯」という配合は、うかつに初心者やシロウトが真似してよい配合ではなく、あくまで弁証論治にもとづく専門家の配慮によってなされるべき配合である。これら三処方の配合によって甘草(カンゾウ)の配合分量が膨大なものになり、これによって水滞を生じやすくなるので、適応症があってはじめて成り立つ配合である。きっと配合比率を変化させるなどその辺の配慮はきめ細かくされておられるであろうから、継続服用が可能となるのである。
posted by ヒゲジジイ at 00:11| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年11月25日
甲状腺機能亢進に対する漢方
ご質問者:東海地区の内科医師
慢性C型肝炎の患者さんを診せていただく機会が多くなってきた最近、肝炎の記述は大変興味深く拝見いたしました。
本日は甲状腺についてお教えください。
最近、動悸を主訴として受診され、甲状腺機能亢進症(バセドー病)と診断した患者さんにたいして、シャカンゾウトウ症と評価して投薬し、メルカゾールとβ遮断剤を併用しました。
個人的経験からは甲状腺ホルモンのレベルが正常化するのには最低でも2ー3ヶ月程度は必要なのですが、シャカンゾウトウ・メルカゾール・β遮断剤の併用1ヶ月目でフォローのために検査をしましたところ、ほぼ正常化していました。ご本人さんも大変喜んでみえまして、私もシャカンゾウトウの効果に驚いた症例です(開業するまえに血液内科をしていましたので白血球減少を心配してメルカゾールを通常量の半分の量で投与)。
ここで質問ですが、甲状腺機能亢進症の弁証の裏読み、五行学説での解釈についてご教示いただければ幸いです。
教科書を自分で検索しないといけないことですが、村田さんに頼ってしまい申し訳ありません。
お返事メール: 本日(24日)もちょうど関西から高血圧を治してほしいという中年女性が、よく問いただすと10年前に甲状腺機能亢進でメルカゾールなどで一旦治癒して「根治した」と医師からは断定されている人でした。
そうそうたやすく「根治」なんていえるはずもありませんので、けっきょくは190〜100の高血圧は問題だから、必ず再度、病院で諸検査して必要な降圧剤などを貰うように強く進言しつつ、せっかく遠路はるばる来られたのだから、弁証論治によって杞菊地黄丸と地竜で様子を見てもらうことにしました。
あきらかな肝腎陰虚がみられたからです。
中医学的教科書では様々な弁証分型が提示されていますが、小生はご存じ「中医漢方薬学派」ですから、中医学基礎理論は派手に駆使しますが、きまりきった弁証分型には現実味が乏しいので、あまり参考にしていません。やはりいつものように、
五臓間における気・血・津液の生化と輸泄(生成・輸布・排泄)の連係に異常が発生し、これらの基礎物質の生化と輸泄に過不足が生じたときが病態であるから、五臓それぞれの生理機能の特性と五臓六腑に共通する「通」という性質にもとづき、病機と治法を分析する。これにより、
@病因・病位・病性の三者を総合的に解明。
A気・血・津液の昇降出入と盈虚通滞の状況を捉える。
これらによって、定位・定性・定量の三方面における病変の本質を把握する、
という基本事項を厳守し、かつ基本方剤を大切にしながら、
病性の寒熱に対応した薬物を考慮しつつ、@発病原因を除去し、A臓腑の機能を調整し、B気血津精の疏通や補充を行う。
ということになります。
御質問の「甲状腺機能亢進」に関して言えば、例えば張先生の分析では、
タダ、小生も古方派時代が長かった分、この甲状腺機能亢進は、古方派でよく使用される炙甘草湯や柴胡加竜骨牡蠣湯、あるいは炙甘草湯合半夏厚朴湯など、的確に使用すればすぐれた効果を発揮するので、口訣漢方にも便利なところがあるようにも感じています。
(なお無関係なことですが、愚息も専門が血液腫瘍内科のようです。)
以上、あまり参考にはならないかも知れませんが、取り急ぎお返事まで。
頓首
編集後記: たとえば「甲状腺機能亢進」における中西医結合による弁証分型をいつものように提示しない理由は、臨床の実際においては意外に現実にマッチしないところも多々あるのみならず、限りなく西洋医学に近づきすぎる「同病異治」の世界である。
それゆえ、日本古方派の数少ない優れた点の大きな一つ「異病同治」の観点からは、病名は参考にはしても中西医結合的な弁証分型にはこだわらずに、基礎理論はすべて中医学理論に基づきながら、常に「異病同治」の方向を主体にしているのが「中医漢方薬学派」のアイデンティティーなのである。
慢性C型肝炎の患者さんを診せていただく機会が多くなってきた最近、肝炎の記述は大変興味深く拝見いたしました。
本日は甲状腺についてお教えください。
最近、動悸を主訴として受診され、甲状腺機能亢進症(バセドー病)と診断した患者さんにたいして、シャカンゾウトウ症と評価して投薬し、メルカゾールとβ遮断剤を併用しました。
個人的経験からは甲状腺ホルモンのレベルが正常化するのには最低でも2ー3ヶ月程度は必要なのですが、シャカンゾウトウ・メルカゾール・β遮断剤の併用1ヶ月目でフォローのために検査をしましたところ、ほぼ正常化していました。ご本人さんも大変喜んでみえまして、私もシャカンゾウトウの効果に驚いた症例です(開業するまえに血液内科をしていましたので白血球減少を心配してメルカゾールを通常量の半分の量で投与)。
ここで質問ですが、甲状腺機能亢進症の弁証の裏読み、五行学説での解釈についてご教示いただければ幸いです。
教科書を自分で検索しないといけないことですが、村田さんに頼ってしまい申し訳ありません。
お返事メール: 本日(24日)もちょうど関西から高血圧を治してほしいという中年女性が、よく問いただすと10年前に甲状腺機能亢進でメルカゾールなどで一旦治癒して「根治した」と医師からは断定されている人でした。
そうそうたやすく「根治」なんていえるはずもありませんので、けっきょくは190〜100の高血圧は問題だから、必ず再度、病院で諸検査して必要な降圧剤などを貰うように強く進言しつつ、せっかく遠路はるばる来られたのだから、弁証論治によって杞菊地黄丸と地竜で様子を見てもらうことにしました。
あきらかな肝腎陰虚がみられたからです。
中医学的教科書では様々な弁証分型が提示されていますが、小生はご存じ「中医漢方薬学派」ですから、中医学基礎理論は派手に駆使しますが、きまりきった弁証分型には現実味が乏しいので、あまり参考にしていません。やはりいつものように、
五臓間における気・血・津液の生化と輸泄(生成・輸布・排泄)の連係に異常が発生し、これらの基礎物質の生化と輸泄に過不足が生じたときが病態であるから、五臓それぞれの生理機能の特性と五臓六腑に共通する「通」という性質にもとづき、病機と治法を分析する。これにより、
@病因・病位・病性の三者を総合的に解明。
A気・血・津液の昇降出入と盈虚通滞の状況を捉える。
これらによって、定位・定性・定量の三方面における病変の本質を把握する、
という基本事項を厳守し、かつ基本方剤を大切にしながら、
病性の寒熱に対応した薬物を考慮しつつ、@発病原因を除去し、A臓腑の機能を調整し、B気血津精の疏通や補充を行う。
ということになります。
御質問の「甲状腺機能亢進」に関して言えば、例えば張先生の分析では、
実際の臨床では虚実挟雑の複雑な局面のことが多く、きめ細く分析して対処する必要がある。表面上は心肝胃の虚火の症状だが、その根底は腎陰虚による陰虚火旺のことが多い。腎陰虚の補益を主体に心肝の治療を合わせたらよいと思う。と述べられています。「臨床 中医学各論」(緑書房発行)より。
タダ、小生も古方派時代が長かった分、この甲状腺機能亢進は、古方派でよく使用される炙甘草湯や柴胡加竜骨牡蠣湯、あるいは炙甘草湯合半夏厚朴湯など、的確に使用すればすぐれた効果を発揮するので、口訣漢方にも便利なところがあるようにも感じています。
(なお無関係なことですが、愚息も専門が血液腫瘍内科のようです。)
以上、あまり参考にはならないかも知れませんが、取り急ぎお返事まで。
頓首
編集後記: たとえば「甲状腺機能亢進」における中西医結合による弁証分型をいつものように提示しない理由は、臨床の実際においては意外に現実にマッチしないところも多々あるのみならず、限りなく西洋医学に近づきすぎる「同病異治」の世界である。
それゆえ、日本古方派の数少ない優れた点の大きな一つ「異病同治」の観点からは、病名は参考にはしても中西医結合的な弁証分型にはこだわらずに、基礎理論はすべて中医学理論に基づきながら、常に「異病同治」の方向を主体にしているのが「中医漢方薬学派」のアイデンティティーなのである。
posted by ヒゲジジイ at 00:04| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年11月24日
19年前のC先生からの手紙:小柴胡湯と肝臓病について
血気盛んな正確には18年7ヶ月前、専門誌にも盛んに拙論を披露し続けていた頃にもらった京都大学医学部出身の医師、C先生からはじめてもらったときの手紙が出てきた。(同じ頃にしばしばお電話やお手紙を頂いていた同じ京大医学部出身の長崎県のM先生ではない。コチトラ大阪薬科大学出身だから学歴コンプレックス丸出しみたいだけど、当時はこのコンプレックスのお陰で強烈な向上心にも繋がっていたことは間違いありませんよ。)
当時の拙論に、まだ小柴胡湯と間質性肺炎問題が勃発する以前に、肝臓病に小柴胡湯を投与することの問題点を訴えた拙論がU社発行の和漢薬誌419号・1988年4月号の巻頭論文にあった。C先生の手紙を読んで再発見したところだ。
自分としてはまったく忘れていた拙論であるから、今読み直してみて驚いている。当時、よくもこれだけ書きまくったものだと我ながらあきれるくらいだ。
当時から拙論に対して、漢方界の著名なベテラン医師から、様々に応援のお手紙をもらっているが、不思議と医師ばかりで、同業の薬剤師は皆無なのが情けない。医師という立場からの余裕かもしれない。既に故人となられた方も多いが、現在も重鎮として活躍される先生方も多い。(と,ここまで書いて思い出したが、質問のお電話はシバシバ同業の薬剤師からかかっていたのだった。激励されるよりも質問され、アドバイスを求める声はとても多かったから、むしろ謙虚で勉強熱心な同業者が多かったことは間違いない。)。
故人となられた中には、C先生のように当時から御高著や、お送り頂いた手紙類の引用の全面的許可を頂いた署名入りの手紙も手元にある。
中には全文見事な日本漢方の問題点を論じて下さった名文もあるので、近々、本ブログで公開させて頂くつもりである。
当時(昭和63年4月27日)付けでC先生から頂いた手紙の全文を以下に転載する。
なお、C先生の御意見を参考にしつつも、現在は一般のC型慢性肝炎のみならずC型B型合併の肝硬変・腎不全併発の人達に、十数年前に更に発展した?弁証論治にもとづくかなり確立したオリジナルな方法で、皆さんに喜んでもらっている。
ともあれ、上記のようなC先生からお手紙を頂くきっかけとなった拙論については、全文公開したいと考えている。(やや時代遅れの感なきにしも非ずであるが、20年近く前の漢方界の時代状況が反映される貴重な資料ともなるかもしれない。)
当時の拙論に、まだ小柴胡湯と間質性肺炎問題が勃発する以前に、肝臓病に小柴胡湯を投与することの問題点を訴えた拙論がU社発行の和漢薬誌419号・1988年4月号の巻頭論文にあった。C先生の手紙を読んで再発見したところだ。
自分としてはまったく忘れていた拙論であるから、今読み直してみて驚いている。当時、よくもこれだけ書きまくったものだと我ながらあきれるくらいだ。
当時から拙論に対して、漢方界の著名なベテラン医師から、様々に応援のお手紙をもらっているが、不思議と医師ばかりで、同業の薬剤師は皆無なのが情けない。医師という立場からの余裕かもしれない。既に故人となられた方も多いが、現在も重鎮として活躍される先生方も多い。(と,ここまで書いて思い出したが、質問のお電話はシバシバ同業の薬剤師からかかっていたのだった。激励されるよりも質問され、アドバイスを求める声はとても多かったから、むしろ謙虚で勉強熱心な同業者が多かったことは間違いない。)。
故人となられた中には、C先生のように当時から御高著や、お送り頂いた手紙類の引用の全面的許可を頂いた署名入りの手紙も手元にある。
中には全文見事な日本漢方の問題点を論じて下さった名文もあるので、近々、本ブログで公開させて頂くつもりである。
当時(昭和63年4月27日)付けでC先生から頂いた手紙の全文を以下に転載する。
村田 恭介 先生上記の貴重なC先生によるアドバイスであったので、五味子の粉末をわざわざウチダ和漢薬さんに特注で製造してもらったものの、五味子の強烈な酸味にひるんで、どなたにも試してもらうことなく畑の肥やしにしてしまったのであった。
突然にお手紙を差し上げ、御無礼をお許し下さい。
実は、「和漢薬」419号の先生の「漢方経験録--小柴胡湯と肝臓病」を拝見し、非常に感銘致しました。そこで、先生の御参考にでもなればと愚見を提出したいと存じます。
1.最近の傾向として、小柴胡湯の肝臓病に対する効果が、あまりに強調されすぎる嫌いが見受けられます。小柴胡湯は確かに有効な一処方であることは間違いありませんが勿論、それだけが只一つの方法ではなく、より多くの方剤も有効な手段であることは言うまでもありません。そこには弁証がなく、短絡的に肝炎即ち柴胡剤と言う結論になるのだと思います。
2、中医学では、まず弁証して治法を論じるのは御承知の通りで、急性期では「湿熱」の問題が入りますので「」を合方し、慢性期では免疫の問題が突出してきますので「六味地黄丸」補腎を強力にしなければなりません。御説の通り、五行学説から言っても、腎(水)は肝(木)を助けるので、又、古くより「肝腎同源」「補則其母」と言われているように、慢性肝炎の治療に当たって、補腎は切って離せない存在だと確信しております。 3.その他に、近年、中国で評判になっている「五味子」の治療ですが、小生もこの数年間追試しましたところ、その効果はすばらしく、他の医師の先生方にも使用していただいた所、皆、評価は良かったとおっしゃっております。
今のところ、未だ確立された使用法がなく研究模索中です。私は、先ず五味子全部を粉末とし、一日5〜7g分二でやっております。GOT、GPTが確実に下がり始めます。
だが実際に肝炎そのものが良くなっているかどうかは未だ結論が出ていません。ただ数値そのものが下がりますので、患者さんは大変喜んでいただき、その心理的効果ははかりしれません。
4.小生の経験では、はっきり統計をまだしておりませんが、「六味地黄丸+疎肝、補肝剤」と「五味子末」で治療し、数例の慢性肝炎の患者が全く治癒しております。約3年位かかっております。五味子は煎じては効果なく、中の種ごと粉にすることが肝要です。
是非、一度お試しくだされば幸いです。
勝手な意見を遠慮なくかきならべ、重々の無礼をお許し下さい。 草々
昭和63年4月27日
C拝
なお、C先生の御意見を参考にしつつも、現在は一般のC型慢性肝炎のみならずC型B型合併の肝硬変・腎不全併発の人達に、十数年前に更に発展した?弁証論治にもとづくかなり確立したオリジナルな方法で、皆さんに喜んでもらっている。
ともあれ、上記のようなC先生からお手紙を頂くきっかけとなった拙論については、全文公開したいと考えている。(やや時代遅れの感なきにしも非ずであるが、20年近く前の漢方界の時代状況が反映される貴重な資料ともなるかもしれない。)
posted by ヒゲジジイ at 00:40| 山口 ☔| 中医漢方薬学問答
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2006年11月23日
メマイ(めまい)の漢方薬 〔風痰上擾の場合〕
性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 北陸地方
具体的な御職業 : 鍼灸師
お問い合わせ内容 :いつも村田先生のサイトを楽しく、またいろいろ勉強させて頂いてます。
わたくしは鍼灸院のかたわら、漢方を少しやっており、先生のサイトを見るようになってから中医学を勉強するようになりました。
(まだ全然初心者ですが)サイトを見ていて大変お忙しそうなので、質問をためらっていたのですが、意を決して送らせ頂きました。
何卒ご指導頂ければ幸いです。
当院に通う患者さんで年齢31歳で腰痛で通われてる方なんですが、以前からも時々あったのですが、寝不足などをすると、血圧が上がり、めまいを訴えられていたのですが、今回も4、5日前からその様な症状がでて、漢方での治療を依頼されました。
わたくしとしては、その方は太っていることもあり(165p105s堅太り)、また胸に痰を自覚的に感じており(出るわけではないです。)、舌苔が白膩で、時々便秘傾向、首筋が張った感覚があり、ソケイ部にかぶれ様の湿疹があります。
そこで、風痰上擾ではないかと思い、方剤として半夏白朮天麻湯もしくは導痰湯かと考えています。しかし、痰だけを除去するだけでなく、痰を作ってしまう病蔵にも働きかけるような方剤が必要なのではないか、また太っている事を考慮して、先生御推薦の九味半夏湯、もしくは防風通聖散(使いわけがよくわかっていませんが…)なども考えたら良いのか、はっきり言って大変迷っています。
古方派漢方の時は、とりあえず、高血圧だからこれみたいにやっておりましたが、中医学を意識しだしてから正直方剤選びに悩んでいます。
ましてや先程の未熟な見立もあっているのかどうなのか心配です。
どうかご指導頂けないでしょうか。宜しくお願いいたします。
また先生は痰やオ血などがあるかどうかは、どの様に判断されておられるのでしょうか?重ねてお願いいたします。
ちなみに以前わたくしも師匠に寒温統一論を読むように言われたことがあり、先生と同じ様に温病勉強しなきゃいけないと、しょっちゅう言われてました。そこで温病関係の本は幾つか持っていたのですが、宝のもちぐされ状態でした。
そこで先生のサイトを見るようになり、最近温病条弁を読んでいます。
お返事メール:拝復
明らかな風痰上擾の兆候があれば、漢方製剤を主体に考える場合は、
日本で常用される「風痰上擾」の治療方剤『半夏白朮天麻湯』『釣藤散』について これを参考にされると良いかと存じます。
ここに書いることは、現実の経験に基づいていますので、的確に配合すれば、比較的速やかに緩解するものと思います。
白膩苔があれば、少なくとも痰濁はそうとうにありそうですので、まずは肥満の問題を考えるよりも先に、忠実な弁証論治にもとづいて、例えば釣藤散に半夏白朮天麻湯を合方し、諸条件によっては、たとえば腎陰虚を伴っておれば六味丸系列の方剤を追加するなど、様々な配合が考えられるはずです。
但し、この方の眩暈症状はどの程度のものか? 天井がぐるぐる回るほどひどいものか、単にふらつく程度か、耳鳴りは伴うのか伴わないのか、悪心、嘔吐はどうなのか等、細かい点での情報不足ですので、何とも申しにくいわけです。
ところで「痰やオ血などがあるかどうかは、どの様に判断」しているのか?との御質問については、基本的には皆さんがされていることと大同小異だと思います。
ただ、特徴があるとすれば、根掘り葉掘りと、様々な視点から細かいところまで質問攻めで、あらゆる角度から検討しますので、かなり時間をかけたぶきっちょな漢方相談となっています。ですから病人さんは、表現力のある人、客観的な報告をする言語能力を必要とします。
だから、よく噂される神業のように「黙って座ればピタリと当た」る世界とは、まったく無縁の薬局で、こちらの納得が行くまで質問攻めに合わせてしまいます。
だから、本気で時間を惜しまず頑張れる人でなければ、漢方薬を販売することが出来ません。それほどブキッチョな漢方薬屋です。
なお、釣藤散合半夏白朮天麻湯合六味丸により、一週間に三日は寝込んで眩暈・耳鳴り、嘔吐を繰り返し、ひどい眼振のあった中年女性の重度の持病が数年間の服用で根治させれた人もあります。前後10年は続服し、廃薬後も十年間、未だに再発はみられていません。
風痰上擾による眩暈の重症例としては典型的でした。
ところで、もしもめまいなど軽症の方であれば、仰るとおり九味半夏湯加減方の扁鵲(ヘンセキ)程度でも十分治せる可能性があると思います。しかも肥満の解消を兼ねて!
但し、風痰上擾が明らかであれば、九味半夏湯加減方の扁鵲は、桂枝や升麻が配合されている為に風痰上擾には一切効果はなく、ましてや防風通聖散などは以ての外ということになりますので、いずれも使用すべではありません!
風痰上擾が明らかであれば、やはり
http://www.cyuikanpo.com/hu.html に沿った方法が無難と思います。
風痰上擾の判定としましては、眩暈がかなりひどく悪心や嘔吐を伴えば、白膩苔があることから、この場合は明らかに風痰上擾は間違いないことになります。
また、もしも白膩苔に黄色がかかっていれば、明らかな湿熱も同居していることになりますから、重症者の風痰上擾では、釣藤散に牛黄を加えたりする工夫も必要になるかと存じます。
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 北陸地方
具体的な御職業 : 鍼灸師
お問い合わせ内容 :いつも村田先生のサイトを楽しく、またいろいろ勉強させて頂いてます。
わたくしは鍼灸院のかたわら、漢方を少しやっており、先生のサイトを見るようになってから中医学を勉強するようになりました。
(まだ全然初心者ですが)サイトを見ていて大変お忙しそうなので、質問をためらっていたのですが、意を決して送らせ頂きました。
何卒ご指導頂ければ幸いです。
当院に通う患者さんで年齢31歳で腰痛で通われてる方なんですが、以前からも時々あったのですが、寝不足などをすると、血圧が上がり、めまいを訴えられていたのですが、今回も4、5日前からその様な症状がでて、漢方での治療を依頼されました。
わたくしとしては、その方は太っていることもあり(165p105s堅太り)、また胸に痰を自覚的に感じており(出るわけではないです。)、舌苔が白膩で、時々便秘傾向、首筋が張った感覚があり、ソケイ部にかぶれ様の湿疹があります。
そこで、風痰上擾ではないかと思い、方剤として半夏白朮天麻湯もしくは導痰湯かと考えています。しかし、痰だけを除去するだけでなく、痰を作ってしまう病蔵にも働きかけるような方剤が必要なのではないか、また太っている事を考慮して、先生御推薦の九味半夏湯、もしくは防風通聖散(使いわけがよくわかっていませんが…)なども考えたら良いのか、はっきり言って大変迷っています。
古方派漢方の時は、とりあえず、高血圧だからこれみたいにやっておりましたが、中医学を意識しだしてから正直方剤選びに悩んでいます。
ましてや先程の未熟な見立もあっているのかどうなのか心配です。
どうかご指導頂けないでしょうか。宜しくお願いいたします。
また先生は痰やオ血などがあるかどうかは、どの様に判断されておられるのでしょうか?重ねてお願いいたします。
ちなみに以前わたくしも師匠に寒温統一論を読むように言われたことがあり、先生と同じ様に温病勉強しなきゃいけないと、しょっちゅう言われてました。そこで温病関係の本は幾つか持っていたのですが、宝のもちぐされ状態でした。
そこで先生のサイトを見るようになり、最近温病条弁を読んでいます。
お返事メール:拝復
明らかな風痰上擾の兆候があれば、漢方製剤を主体に考える場合は、
日本で常用される「風痰上擾」の治療方剤『半夏白朮天麻湯』『釣藤散』について
半夏白朮天麻湯や釣藤散あるいは導痰湯や滌痰湯が適応する「風痰上擾」は、脾不運湿によって湿聚生痰し、痰濁が少陽三焦を阻滞し膜原を障害して肝風内動を誘発し、一方では脾虚不運によって肝陰を滋補できないために肝陽が遊離して肝風を生じ、少陽三焦を通路として肝風が痰濁を伴って上擾するものである。
脾胃論の半夏白朮天麻湯は、同名の方剤半夏白朮天麻湯(《医学心悟》【組成】 製半夏 陳皮 茯苓 甘草 白朮 天麻)に比べて薬味がかなり多く、日本で常用され、製剤化されたエキス製品も各種販売されている。補気健脾・淡滲利水・化痰熄風の効能があり、脾虚湿困・湿聚生痰・痰濁内阻・肝風内動・風痰上擾の病機に適応する。実際の臨床では、めまい・頭重・悪心・嘔吐のみならず、頑固な浮腫に、あるいは下痢や軟便傾向があり軽度の膵炎や潜在的に膵臓が弱っていると思われる者にも有効である。
釣藤散は日本では特に常用される化痰熄風の方剤であり、平肝清熱・補気健脾の効能を併せ持ち、脾虚肝旺・痰濁上擾・肝陽化風および化火の病機に適応する。但し、風痰による痰濁上擾が顕著であれば半夏白朮天麻湯を、肝陽化風の原因として明らかな肝陰虚が認められれば杞菊地黄丸を、肝陽化火が顕著であれば黄連解毒湯などを併用する必要がある。このような二〜三方剤を併用すべきものに、高血圧症や俗に言うメニエール氏症候群などがあり、脳血管障害の前兆の場合もあるので牛黄(ゴオウ)の併用も考える。血オの兆候がわずかでもみられれば、慎重に適量の『生薬製剤二号方』を併用する。
風痰証が遷延すると風痰証が残存したまま痰オ互結証に発展することが多く、脳血管障害の後遺症によくみられる。それゆえ、エキス剤を利用する場合は適宜ウチダの『生薬製剤二号方』を用い、あるいは牛黄製剤なども併用するとよい。牛黄には強力な熄風清熱および開竅と豁痰の作用もある。
但し、釣藤散証のように肝陽偏亢や肝陽化火の傾向がある場合は、血オの徴候がみられても単独で『生薬製剤二号方』を用いてはならず、併用する場合においても過量であってはならない。もしも単独で使用したり併用量が過剰であると肝陽偏亢を助長したり、あるいは肝火を盛んにし、却って逆効果となる場合があるので、杞菊地黄丸などの滋陰剤や黄連解毒湯などを併用するなどして、配合バランスを十分配慮して投与すべきである。
ここに書いることは、現実の経験に基づいていますので、的確に配合すれば、比較的速やかに緩解するものと思います。
白膩苔があれば、少なくとも痰濁はそうとうにありそうですので、まずは肥満の問題を考えるよりも先に、忠実な弁証論治にもとづいて、例えば釣藤散に半夏白朮天麻湯を合方し、諸条件によっては、たとえば腎陰虚を伴っておれば六味丸系列の方剤を追加するなど、様々な配合が考えられるはずです。
但し、この方の眩暈症状はどの程度のものか? 天井がぐるぐる回るほどひどいものか、単にふらつく程度か、耳鳴りは伴うのか伴わないのか、悪心、嘔吐はどうなのか等、細かい点での情報不足ですので、何とも申しにくいわけです。
ところで「痰やオ血などがあるかどうかは、どの様に判断」しているのか?との御質問については、基本的には皆さんがされていることと大同小異だと思います。
ただ、特徴があるとすれば、根掘り葉掘りと、様々な視点から細かいところまで質問攻めで、あらゆる角度から検討しますので、かなり時間をかけたぶきっちょな漢方相談となっています。ですから病人さんは、表現力のある人、客観的な報告をする言語能力を必要とします。
だから、よく噂される神業のように「黙って座ればピタリと当た」る世界とは、まったく無縁の薬局で、こちらの納得が行くまで質問攻めに合わせてしまいます。
だから、本気で時間を惜しまず頑張れる人でなければ、漢方薬を販売することが出来ません。それほどブキッチョな漢方薬屋です。
なお、釣藤散合半夏白朮天麻湯合六味丸により、一週間に三日は寝込んで眩暈・耳鳴り、嘔吐を繰り返し、ひどい眼振のあった中年女性の重度の持病が数年間の服用で根治させれた人もあります。前後10年は続服し、廃薬後も十年間、未だに再発はみられていません。
風痰上擾による眩暈の重症例としては典型的でした。
ところで、もしもめまいなど軽症の方であれば、仰るとおり九味半夏湯加減方の扁鵲(ヘンセキ)程度でも十分治せる可能性があると思います。しかも肥満の解消を兼ねて!
但し、風痰上擾が明らかであれば、九味半夏湯加減方の扁鵲は、桂枝や升麻が配合されている為に風痰上擾には一切効果はなく、ましてや防風通聖散などは以ての外ということになりますので、いずれも使用すべではありません!
風痰上擾が明らかであれば、やはり
http://www.cyuikanpo.com/hu.html に沿った方法が無難と思います。
風痰上擾の判定としましては、眩暈がかなりひどく悪心や嘔吐を伴えば、白膩苔があることから、この場合は明らかに風痰上擾は間違いないことになります。
また、もしも白膩苔に黄色がかかっていれば、明らかな湿熱も同居していることになりますから、重症者の風痰上擾では、釣藤散に牛黄を加えたりする工夫も必要になるかと存じます。
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
posted by ヒゲジジイ at 00:12| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
|

2006年11月21日
蕁麻疹への中医的アプローチ
ご質問者:東海地区の内科医師
前略 最近、東洋医学学術社から発行された中国医学用語集と平易な中医の教科書を独学中ですが、孤軍奮闘しています。
日本漢方では病態生理があまり重視されていないように思い興味深いです。
また、西洋医学的病態生理とは全く基盤が異なり、ある病態を別の視点から理解できそうで、西洋医学的治療法では対応困難な病状を改善する重要な手段になりそうです。
ただ、なかなか相手としては手ごわそうな印象です。
例によって前置きが長くなってしまいましたが、蕁麻疹への中医的アプローチについてご教示いただけますでしょうか。
定番のインチンコウトウ、インチン五苓散は確かに有効で症状は取れます。しかし、投薬をやめますと再燃することが多いようです。
根治的に考えた場合にどうでしょうか。
中医的には蕁麻疹の背景病態についてどのように理解されているのか、村田さんの病態論でも勿論結構です。
お忙しいとは存じますが、難治性蕁麻疹の患者さんを抱えている者にお教えくださいますと幸いです。
お返事メール:拝復
ちょうど、重篤化しかかた蕁麻疹の続続報
この重篤化しかかった男性は、現在もなおインチンコウトウとウチダのイオン化カルシウムを継続して服用中です。アルコールを止める事が出来ないので、あるいは一生、インチンコウトウと離れられないかもしれないよ、と冗談めかして宣告しているほどです。
最近はアルコールを服用しても殆んど再発しないのですが、夜昼不規則な勤務体制の仕事のためか、疲労が蓄積すると、ほんの僅かな再発兆候が見えますが、それでも直ぐに消失するようです。
少し前、青魚を過食してムカついたのですが、インチンコウトウを増減することで回復しています。舌には黄膩苔の出没を繰り返していますので、頑固にインチンコウトウとイオン化カルシウムだけで押し通しています。
過去の経験からも、シンプルな方剤で効果が得られる場合は、へたな弁証論治の裏読みはせず、頑固に押し通すことで8割緩解は可能だと考えています。
慢性化した疾患は、真の意味で根治はないことが多く、表向き根治したように見えても、わずかな根が残っていることが多いものと愚考しています。
慢性疾患が、たとえ中医学が素晴らしくとも、ほとんどの慢性疾患が真の意味で根治するものなら、人間様は半永久的に死を免れることになる理屈も成り立つことになるような気がします。とすると、多くの慢性疾患は8〜9割の緩解でしかないのではないかと考えるようになってしまいました。
なにやら自分の腕の悪さを棚に上げて、ヒゲジジイ流の屁理屈が飛び出してしまいましたが、蕁麻疹にはシンプルにインチンコウトウだけで対処できるとは限らず、寒冷蕁麻疹やストレス性の蕁麻疹等様々に言われますが・・・
中医学においても型に嵌った弁証分型がありますが小生自身は、蕁麻疹については中医学的な弁証分型は、あまり参考にしておりません。
蕁麻疹に限らず 漢方と漢方薬の御案内 において陳潮祖先生の書籍をヒントに提示しましたように、
病気を解決するための漢方薬の組み合わせの法則(配合法則)として、
@病気の直接的な原因となっている「内外の病因」を除去する漢方薬。
A五臓六腑の機能を調整する漢方薬。
B体内に流通する気・血・水(津液)・精の疎通あるいは補充を行う漢方薬。
を基本に考えています。
しかしながら、これまでの経験上、寒冷蕁麻疹などはシンプルに葛根湯や当帰四逆湯加味方などでアッサリ根治していますし、インチンコウトウ証の場合はなどでは、頑固に連用してもらうことで、現実には過去も多くの根治例が出ています。
先生のおっしゃる中止すると再燃するのは、服用期間が短すぎるように思えるのですがどうでしょうか?
今回もあまり参考になるようなお返事になってないようで恐縮ですが、当方ではどのようなタイプの蕁麻疹の患者さんが来られようとも、上記の三原則を念頭に臨機応変の漢方処方を考えるだけですので、特別なことはやっておらず、むしろ蕁麻疹のようなデリケートな皮膚病には、「なるべくシンプルな方剤を心がけている」という点が、他の疾患の対処方法と異なる点です。
以上、やはり小生は、純粋中医学派ではなく、日本漢方に中医学理論を取り入れた「中医漢方薬学派」なのだな〜〜と、このお返事メールを認めながら、あらためて再認識した次第です。
以上、お役に立てず申し訳ありません。
頓首
編集後記:重要な補足⇒中医学は構造主義科学であるということ
ところでアトピー性皮膚炎やアトピー型の気管支喘息の人達に必ず基本に据えている例の三点セットはアトピー性皮膚炎の漢方薬+自然療法 で書いている自然療法のことだが、アトピーや喘息に限らず、広く体質改善剤として応用している関係で、しばしば蕁麻疹が出やすかった人が、これを使用後は二度と出なくなったと言う人が多い。
もともとI型とW型アレルギーに対する威力を感じているが、これらをベースに一般漢方処方を服用されている人が多いのが村田漢方堂薬局の特徴でもある。
また、病気が改善するにつれて突如、超美人に変身されて驚くことがあった病気がよくなると超美人に生まれ変わる女性達!に共通するのも、これら三点セットである。
こんな謎めいた記載を理解されるのは、現在、地元を初め全国各地から村田漢方堂薬局に直接来局された人の半数の方が、漢方薬服用のベースとしてこの三点セットを使用されているので、この方たちだけがこの駄文を理解されるはずである。(ちょっといやらしい思わせぶりな宣伝かも?)
折り返し頂いたメール:いつも丁寧に参考となるご教示をいただきまして感謝しております。
ご指摘のようにインチンコウトウの服用ですが、蕁麻疹が消失すると(かなり早く消える場合が多い)ご本人が内服を中断なさってしまうケースがあります。
それなりに長く内服していただくことによって寛解する症例があるそうですので、そのように指導してフォローしてみます。
「へたな弁証論治の裏読みはせず、頑固に押し通すことで」というご指摘は、ある意味真実のように思いましたので、病状の反応を見ながら投薬してみます。
前略 最近、東洋医学学術社から発行された中国医学用語集と平易な中医の教科書を独学中ですが、孤軍奮闘しています。
日本漢方では病態生理があまり重視されていないように思い興味深いです。
また、西洋医学的病態生理とは全く基盤が異なり、ある病態を別の視点から理解できそうで、西洋医学的治療法では対応困難な病状を改善する重要な手段になりそうです。
ただ、なかなか相手としては手ごわそうな印象です。
例によって前置きが長くなってしまいましたが、蕁麻疹への中医的アプローチについてご教示いただけますでしょうか。
定番のインチンコウトウ、インチン五苓散は確かに有効で症状は取れます。しかし、投薬をやめますと再燃することが多いようです。
根治的に考えた場合にどうでしょうか。
中医的には蕁麻疹の背景病態についてどのように理解されているのか、村田さんの病態論でも勿論結構です。
お忙しいとは存じますが、難治性蕁麻疹の患者さんを抱えている者にお教えくださいますと幸いです。
お返事メール:拝復
ちょうど、重篤化しかかた蕁麻疹の続続報
この重篤化しかかった男性は、現在もなおインチンコウトウとウチダのイオン化カルシウムを継続して服用中です。アルコールを止める事が出来ないので、あるいは一生、インチンコウトウと離れられないかもしれないよ、と冗談めかして宣告しているほどです。
最近はアルコールを服用しても殆んど再発しないのですが、夜昼不規則な勤務体制の仕事のためか、疲労が蓄積すると、ほんの僅かな再発兆候が見えますが、それでも直ぐに消失するようです。
少し前、青魚を過食してムカついたのですが、インチンコウトウを増減することで回復しています。舌には黄膩苔の出没を繰り返していますので、頑固にインチンコウトウとイオン化カルシウムだけで押し通しています。
過去の経験からも、シンプルな方剤で効果が得られる場合は、へたな弁証論治の裏読みはせず、頑固に押し通すことで8割緩解は可能だと考えています。
慢性化した疾患は、真の意味で根治はないことが多く、表向き根治したように見えても、わずかな根が残っていることが多いものと愚考しています。
慢性疾患が、たとえ中医学が素晴らしくとも、ほとんどの慢性疾患が真の意味で根治するものなら、人間様は半永久的に死を免れることになる理屈も成り立つことになるような気がします。とすると、多くの慢性疾患は8〜9割の緩解でしかないのではないかと考えるようになってしまいました。
なにやら自分の腕の悪さを棚に上げて、ヒゲジジイ流の屁理屈が飛び出してしまいましたが、蕁麻疹にはシンプルにインチンコウトウだけで対処できるとは限らず、寒冷蕁麻疹やストレス性の蕁麻疹等様々に言われますが・・・
中医学においても型に嵌った弁証分型がありますが小生自身は、蕁麻疹については中医学的な弁証分型は、あまり参考にしておりません。
蕁麻疹に限らず 漢方と漢方薬の御案内 において陳潮祖先生の書籍をヒントに提示しましたように、
病気を解決するための漢方薬の組み合わせの法則(配合法則)として、
@病気の直接的な原因となっている「内外の病因」を除去する漢方薬。
A五臓六腑の機能を調整する漢方薬。
B体内に流通する気・血・水(津液)・精の疎通あるいは補充を行う漢方薬。
を基本に考えています。
しかしながら、これまでの経験上、寒冷蕁麻疹などはシンプルに葛根湯や当帰四逆湯加味方などでアッサリ根治していますし、インチンコウトウ証の場合はなどでは、頑固に連用してもらうことで、現実には過去も多くの根治例が出ています。
先生のおっしゃる中止すると再燃するのは、服用期間が短すぎるように思えるのですがどうでしょうか?
今回もあまり参考になるようなお返事になってないようで恐縮ですが、当方ではどのようなタイプの蕁麻疹の患者さんが来られようとも、上記の三原則を念頭に臨機応変の漢方処方を考えるだけですので、特別なことはやっておらず、むしろ蕁麻疹のようなデリケートな皮膚病には、「なるべくシンプルな方剤を心がけている」という点が、他の疾患の対処方法と異なる点です。
以上、やはり小生は、純粋中医学派ではなく、日本漢方に中医学理論を取り入れた「中医漢方薬学派」なのだな〜〜と、このお返事メールを認めながら、あらためて再認識した次第です。
以上、お役に立てず申し訳ありません。
頓首
編集後記:重要な補足⇒中医学は構造主義科学であるということ
ところでアトピー性皮膚炎やアトピー型の気管支喘息の人達に必ず基本に据えている例の三点セットはアトピー性皮膚炎の漢方薬+自然療法 で書いている自然療法のことだが、アトピーや喘息に限らず、広く体質改善剤として応用している関係で、しばしば蕁麻疹が出やすかった人が、これを使用後は二度と出なくなったと言う人が多い。
もともとI型とW型アレルギーに対する威力を感じているが、これらをベースに一般漢方処方を服用されている人が多いのが村田漢方堂薬局の特徴でもある。
また、病気が改善するにつれて突如、超美人に変身されて驚くことがあった病気がよくなると超美人に生まれ変わる女性達!に共通するのも、これら三点セットである。
こんな謎めいた記載を理解されるのは、現在、地元を初め全国各地から村田漢方堂薬局に直接来局された人の半数の方が、漢方薬服用のベースとしてこの三点セットを使用されているので、この方たちだけがこの駄文を理解されるはずである。(ちょっといやらしい思わせぶりな宣伝かも?)
折り返し頂いたメール:いつも丁寧に参考となるご教示をいただきまして感謝しております。
ご指摘のようにインチンコウトウの服用ですが、蕁麻疹が消失すると(かなり早く消える場合が多い)ご本人が内服を中断なさってしまうケースがあります。
それなりに長く内服していただくことによって寛解する症例があるそうですので、そのように指導してフォローしてみます。
「へたな弁証論治の裏読みはせず、頑固に押し通すことで」というご指摘は、ある意味真実のように思いましたので、病状の反応を見ながら投薬してみます。
posted by ヒゲジジイ at 00:32| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年11月14日
猪苓湯の効能についてのご質問

IMGP4728 posted by (C)ヒゲジジイ
ご質問者:東海地区の内科医師
論文、脾肺病としてのアトピー性皮膚炎、のなかでの考察で、猪苓湯の作用について、肺、脾、 腎、肝四臓の補益とともに滋陰利水の効能をもつので,少陽三焦を通じて皮毛と肌肉間の膜ソウ区域の水分代謝の偏在を調節する効能、と記述されています。
私のような浅学にあっては勉強不足のせいか、この方剤の効能として理解が容易ではありません。
中医理論ではごく当然のことなのかもしれないのですが、本剤のアトピー性皮膚炎における作用を考える上で鍵となる点ですので、肺、脾、腎、肝四臓の補益、膜ソウ区域の水分代謝の偏在を調節、について今一度ご教示くださいますと幸いです。

IMGP4900 posted by (C)ヒゲジジイ
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
たしかにあの拙論だけでは説明不十分だと思います。
そもそも少陽三焦理論そのものが、中国四川省 西都中医学院教授・陳潮祖先生独特の深遠な考察にもとづくものです。ですからこの少陽三焦理論は、中医学世界において特に重視するのは陳先生著の中国語原書「中医病機治法学」においてかなり完成された少陽三焦理論を提唱されて以後のことだと思います。
といっても、この説を特に重視するのは一部の人に限られるように思えます。
この書籍の翻訳書は下記のページに詳しく書いていますが、小生自身が翻訳競争に負けた経緯も書いています。
中医臨床のための「病機と治法」 陳潮祖著 神戸中医研訳編
ところで、猪苓湯の拙論は、文字通りの村田のオリジナル拙論です。
陳潮祖先生の少陽三焦理論にヒントを得て打ち立てた理論で、この理論から言えば、猪苓湯ではなく「滑石茯苓湯」と名付けたいところです。
その拙論の詳細は、
猪苓湯と少陽三焦 (猪苓湯が滑石茯苓湯に変わるとき)
に掲載していますが、これは改訂版で、
元版は 猪苓湯が滑石茯苓湯に変わるとき(アトピー性皮膚炎) に掲載しています。
これらは既に御覧になっておられるかもしれませんが、その中に当時、はっきり書いたつもりの「チョレイ」に補益作用があることの記載が欠けているのに気がつきました!
昨今の中医学書には、チョレイの補益作用が欠落していますが、神農本草経にはっきりと記載があります。チョレイを服用し続けると老化しないという記載すらあるほどです。(追記注:正確には、「身が軽くなって老いに耐える」と記載されている。但し李時珍の本草綱目では茯苓のような補薬に入れられてない。)
ブクリョウには滲湿利水とともに健脾補中などの補益作用があるのはご存知の通りですが、これらチョレイとブクリョウの補益作用により、猪苓湯一方剤で、明らかな扶正と去邪を兼ね備えた方剤となっています。
もともと甘味を備える生薬は、補益作用があるのは当然の理屈であり、一般の中薬学書には、チョレイの補益作用の指摘が欠落していると愚考しています。
ちょっと話がそれてしまいましたが、これら補益作用の指摘がやや欠落していたこと以外は、上記の拙論にかなり詳細に説明したつもりです。
しかしながら、結局は陳潮祖先生の少陽三焦理論が基礎となっており、これについての詳細な記載は、一般中医学書には決して見当たるものではありません。
先の中国語原書「中医病機治法学」か、医歯薬出版から発行された翻訳書か、さもなければ先にあげた拙論、あるいは、
http://mkanpo.exblog.jp/3434231/
膜原(まくげん)と腠理(そうり)の詳細については、(追記注:膜腠=「膜原と腠理」について本ブログの性能上、正しい漢字が表現できないので「膜腠」=「膜原と腠理」は下記のURLを参照されたし。)
http://mkanpo.exblog.jp/3557456/
などが参考になるかと思います。
結局は陳潮祖先生の少陽三焦理論をヒントにした立論であるだけに、陳先生の主著「中医病機治法学」読んでいただくのが、急がば回れの道かもしれません。
以上、不十分な説明で恐縮です。
頓首
折り返し頂いたメール:お忙しいなかを早速詳細にしかも文献まで参照してお返事くださいましてありがとうございました。
さっそく、論文を拝読して理解を深めたいとおもいます。かさねて感謝します。
後日思い出した追記: ヒゲジジイ自身が以前「和漢薬」誌に陳潮祖先生の『中医病機治法学』の訳注的連載を行っていた折の編集後記に記した拙文を漢方薬は中医漢方薬学派の漢方相談専門薬局サイト中の1ページとして利水滲湿薬「猪苓」の補益性についてを掲載している。
その中に
神農本草経には「久服すれば身が軽くなって老いに耐えるようになる」と述べられており、清代の名医葉天士は「猪苓の甘味は益脾する。脾は統血するので猪苓の補脾によって血が旺盛となり、老いに耐えるようになる。また猪苓の辛甘は益肺する。肺は気を主るので猪苓の補肺によって肺気が充実して身は軽くなる」と解説している。ということを書いている。

IMG_4179 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 12:59| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
|

2006年11月11日
慢性乾燥性の咳嗽に対する漢方薬の御質問
ご質問者:東海地区の内科医師
前略 本日の診療で、アトピー性皮膚炎の患者さんが数名受診されました。そのうちに、最近になって推奨の3点セットの趣旨に従って投薬を始めたかたは一様に改善が目立ちます。
当診療所に受診なさるかたは、ステロイドを使用したくない、あるいは、控えたいという意向のかたがほとんどです。
したがってその是非はともかくステロイド外用剤は重症のかた以外には使用していません。
このような状況での効果の発現は正直いって驚きです。ひょっとすると他の疾患、とくにアレルギー性のもの、喘息とか蕁麻疹などにもあてはまるのかもしれないと思います。
ちょっと面白くなってきました。
ありがとうございます。
前置きが長くなりましたが、本日ご教示いただきたい患者さんは、50台後半で、・・・・・・・・をなさっているかたです。数年来の慢性の乾性の咳を訴えとしたかたです。
さまざまな病院、漢方を扱う医院(当地域ではかなり有名)を受診しても軽快しないとのことで来院なさいました。
職業の関係から喋る機会が多いそうですが、そのようなときにきまって咳き込み、なかなか止まらないそうです。顔面は紅潮し、舌は紅、脈尋常、腹部は常時みぞうちに冷感、臍下虚を観察しています。
わたしのような・・・の中医弁証(自分の場合、和漢的評価とチャンポンになっていると思います)として、肺陰虚・腎虚・裏寒を考え、これまでにエキス剤、ツムラ29麦門冬湯、64炙甘草湯、7八味地黄丸、93滋陰降下湯、119苓甘姜味辛夏仁湯などを処方しましたが、残念ながら患者さんに満足のゆく改善は得られていません。
とりあえず頭に浮かんだ患者さんの病像です。まだ通っていらっしゃるところから、期待を寄せていると思い申し訳ないです。
なにか、ヒントを教示いただけますと幸いです。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
慢性乾燥性の咳嗽の方には、いかにもそれらしい方剤を使用されているのに、効果がないというのが不思議です。麦門冬湯や滋陰降下湯で効いていても良さそうに思うのですが、無苔であれば、ますます滋陰降下湯などで、少なくとも五割くらいは緩解してもよさそうに思いますが不思議ですね。
「常時みぞおちの冷感」とありましたが、これ自覚的なことでしょか?もしも他覚的なことなら、あまりあてにならないと愚考します。脂肪などが多ければなおさらです(笑)。
とは言え、腎陰虚があって慢性咳嗽とくれば、中医学的には明らかに麦味腎気丸(六味丸+麦門冬、五味子)を投与すべきだと思います。それも気長くつづけるつもりで。
医療用にはこれが見当たりませんので、まだ使用されていない(92)滋陰至宝湯と六味丸の併用というのも可能性があるかもしれません。92番にはさいわい麦門冬も入っていますので。
これでも駄目なら西洋医学的発想も行って気管支の痙攣を止めるつもりで、芍薬甘草湯に六味丸の併用です。
(但し、専門誌時代から書いていることですが、ブログ類にも書いていますように、日本の芍薬甘草湯の配合比率には常に疑義があります。甘草と芍薬が同量というのはいかにも芸が無さ過ぎると愚考します。甘草と芍薬の比率は1:3くらいであるべきではないでしょうか。)
ところでアトピーの「三点セット」と言われるのは、黄連解毒湯と六味丸、猪苓湯のことでしょうか?
村田漢方堂薬局には、「三点セット」と名の付くものは他にも複数あり(笑)、昨今のアトピー性皮膚炎に対する「三点セット」は、上記のものとは異なり、すでに医療用漢方をやりつくした人が多いため、黄連解毒湯を含まない三点セット(残念ながら医療用にはない漢方系医薬品が主体で、直接の来局者だけに伝授しています。アトピー性皮膚炎の漢方薬+自然療法)が主流となっています。
この方法を主体にしても3割くらいの人には、はっきりとした効果が出るのに数ヶ月かかる場合がありますが、重症者が多いので仕方がないかな、と思っています。(でも7割の人は10日以内に明らかな効果が出ます。)
以上、簡単ながらお返事まで。
村田恭介拝
折り返し頂いたメール: いつも早速のお返事ありがとうございます。 明日からの診療の助けになります。
麦味腎気丸(六味丸+麦門冬、五味子)、(92)滋陰至宝湯と六味丸の併用は試みたことがありませんので、考慮してみたいと思います。
気管支の痙攣を止めるための、芍薬甘草湯に六味丸の併用というのは興味深いです。
アトピーの「三点セット」ですが、当診療所では、清熱剤として以前黄連解毒湯を使用していましたが、現在は白虎加人参湯を使う症例が多いです。猪苓湯はほぼ全例に処方しています。
加えて脾虚のかたがいまのところ多く、そのようなかたには六君子湯、人参湯を処方しています。当診療所に来院のかたは比較的近隣であるということ、漢方を手ほどきくださった先生の教え、「漢方薬はちゃんと選択して差し上げれば数日で効果発現を確認できますよ」に従って初診の患者さんは1週間以内には評価しています。
さいわい、数日で効果は確認できています。 もちろん、全身にわたって系統的に改善するのにはそれなりに時間を要すると思っていますが。
「脾臓肺病」というコンセプトは新鮮でした。
編集後記: 下線は編集者によるものだが、その「脾臓肺病」はおそらく、
脾肺病としてのアトピー性皮膚炎 と思われる。
前略 本日の診療で、アトピー性皮膚炎の患者さんが数名受診されました。そのうちに、最近になって推奨の3点セットの趣旨に従って投薬を始めたかたは一様に改善が目立ちます。
当診療所に受診なさるかたは、ステロイドを使用したくない、あるいは、控えたいという意向のかたがほとんどです。
したがってその是非はともかくステロイド外用剤は重症のかた以外には使用していません。
このような状況での効果の発現は正直いって驚きです。ひょっとすると他の疾患、とくにアレルギー性のもの、喘息とか蕁麻疹などにもあてはまるのかもしれないと思います。
ちょっと面白くなってきました。
ありがとうございます。
前置きが長くなりましたが、本日ご教示いただきたい患者さんは、50台後半で、・・・・・・・・をなさっているかたです。数年来の慢性の乾性の咳を訴えとしたかたです。
さまざまな病院、漢方を扱う医院(当地域ではかなり有名)を受診しても軽快しないとのことで来院なさいました。
職業の関係から喋る機会が多いそうですが、そのようなときにきまって咳き込み、なかなか止まらないそうです。顔面は紅潮し、舌は紅、脈尋常、腹部は常時みぞうちに冷感、臍下虚を観察しています。
わたしのような・・・の中医弁証(自分の場合、和漢的評価とチャンポンになっていると思います)として、肺陰虚・腎虚・裏寒を考え、これまでにエキス剤、ツムラ29麦門冬湯、64炙甘草湯、7八味地黄丸、93滋陰降下湯、119苓甘姜味辛夏仁湯などを処方しましたが、残念ながら患者さんに満足のゆく改善は得られていません。
とりあえず頭に浮かんだ患者さんの病像です。まだ通っていらっしゃるところから、期待を寄せていると思い申し訳ないです。
なにか、ヒントを教示いただけますと幸いです。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
慢性乾燥性の咳嗽の方には、いかにもそれらしい方剤を使用されているのに、効果がないというのが不思議です。麦門冬湯や滋陰降下湯で効いていても良さそうに思うのですが、無苔であれば、ますます滋陰降下湯などで、少なくとも五割くらいは緩解してもよさそうに思いますが不思議ですね。
「常時みぞおちの冷感」とありましたが、これ自覚的なことでしょか?もしも他覚的なことなら、あまりあてにならないと愚考します。脂肪などが多ければなおさらです(笑)。
とは言え、腎陰虚があって慢性咳嗽とくれば、中医学的には明らかに麦味腎気丸(六味丸+麦門冬、五味子)を投与すべきだと思います。それも気長くつづけるつもりで。
医療用にはこれが見当たりませんので、まだ使用されていない(92)滋陰至宝湯と六味丸の併用というのも可能性があるかもしれません。92番にはさいわい麦門冬も入っていますので。
これでも駄目なら西洋医学的発想も行って気管支の痙攣を止めるつもりで、芍薬甘草湯に六味丸の併用です。
(但し、専門誌時代から書いていることですが、ブログ類にも書いていますように、日本の芍薬甘草湯の配合比率には常に疑義があります。甘草と芍薬が同量というのはいかにも芸が無さ過ぎると愚考します。甘草と芍薬の比率は1:3くらいであるべきではないでしょうか。)
ところでアトピーの「三点セット」と言われるのは、黄連解毒湯と六味丸、猪苓湯のことでしょうか?
村田漢方堂薬局には、「三点セット」と名の付くものは他にも複数あり(笑)、昨今のアトピー性皮膚炎に対する「三点セット」は、上記のものとは異なり、すでに医療用漢方をやりつくした人が多いため、黄連解毒湯を含まない三点セット(残念ながら医療用にはない漢方系医薬品が主体で、直接の来局者だけに伝授しています。アトピー性皮膚炎の漢方薬+自然療法)が主流となっています。
この方法を主体にしても3割くらいの人には、はっきりとした効果が出るのに数ヶ月かかる場合がありますが、重症者が多いので仕方がないかな、と思っています。(でも7割の人は10日以内に明らかな効果が出ます。)
以上、簡単ながらお返事まで。
村田恭介拝
折り返し頂いたメール: いつも早速のお返事ありがとうございます。 明日からの診療の助けになります。
麦味腎気丸(六味丸+麦門冬、五味子)、(92)滋陰至宝湯と六味丸の併用は試みたことがありませんので、考慮してみたいと思います。
気管支の痙攣を止めるための、芍薬甘草湯に六味丸の併用というのは興味深いです。
アトピーの「三点セット」ですが、当診療所では、清熱剤として以前黄連解毒湯を使用していましたが、現在は白虎加人参湯を使う症例が多いです。猪苓湯はほぼ全例に処方しています。
加えて脾虚のかたがいまのところ多く、そのようなかたには六君子湯、人参湯を処方しています。当診療所に来院のかたは比較的近隣であるということ、漢方を手ほどきくださった先生の教え、「漢方薬はちゃんと選択して差し上げれば数日で効果発現を確認できますよ」に従って初診の患者さんは1週間以内には評価しています。
さいわい、数日で効果は確認できています。 もちろん、全身にわたって系統的に改善するのにはそれなりに時間を要すると思っていますが。
「脾臓肺病」というコンセプトは新鮮でした。
編集後記: 下線は編集者によるものだが、その「脾臓肺病」はおそらく、
脾肺病としてのアトピー性皮膚炎 と思われる。
posted by ヒゲジジイ at 23:16| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年11月10日
漢方薬の服用時間についての御質問
性別:男性
年齢:30歳〜39歳
簡単なご住所:関東地区
具体的な御職業:漢方販売
お問い合わせ内容:
村田先生いつもHP拝見させてもらっています。いつも先生の分かりやすい文面にて勉強させてもらっています。これからも是非頑張って続けてくれたらと思っています。
さて今回は少し最近疑問に思うところがありまして あつかましいと思いますが先生に教えてもらおうと思い書き込み致しました。
当店へのインターネットを通じての 患者さまからの相談をしていますとごくたまにですが 漢方薬を食後に飲むように!と指導をされてる諸先生方がいるようなのです。
別に漢方薬がお腹にこたえているという訴えもなく 一律に食後としている先生がおられるようです。患者さんの相談にて立て続けにあったものですから 考えるものがありました。
しかしながら今の自分の知識では いくら考えても答えが出ませんし ジオウ剤などの補陰薬系なら多少胃もたれ等の原因になるおそれがあるので食後に また食前に漢方薬を飲むと食欲不振になるなどの場合は食後に というのは分かるのですが・・・しかも六君子湯や十全大補湯などの補気薬類も食後に服用するよう指導していたといいます。自分は知識が無いために理解できません。ご指導の方よろしくお願いします。
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
「一律に食後としている先生がおられるようです。」というのを読んだ時は、これ村田漢方堂薬局のアドバイスじゃないのっ!?と思ったほどですが、次に書かれていた「しかも六君子湯や十全大補湯などの補気薬類も食後に服用するよう指導していたといいます。」ということですから、これは村田漢方堂薬局のアドバイスではありませんでした(笑)。
と言いますのも、当方では六君子湯のようなあまりにも穏やかな方剤は、滅多に使用しないし、十全大補湯のごときは、もう何年も販売したことがありませんので(笑)
と、このようにヒゲジジイの服薬指導ではないかと勘違いするほど、村田漢方堂薬局では徹底して、あらゆる漢方薬を食後服用するように口うるさく指導しています。これにはかなり根拠のある複数の理由から、二十五年以上も、つまり日本古方派の時代から、この指導を徹底しています。
まず、第一の理由、これが最大の理由だったのですが、
古方派の時代は、煎じ薬の販売が中心で、今では殆んど使用しない八味地黄丸料を毎日毎日、当時は八味地黄丸証の人が、とても多かった事実は隔世の感がありますが、それはともかく、一部の人には、効くはずのこの八味地黄丸料が効かないという苦情があり、またその他の方剤についても方証相対間違いなし(古方派の時代ですから弁証論治ではありません)と自信がある場合でも、効かない効かないと苦情が多いのです。
ところが苦情を言われる人達の相談カードを点検すれば、何のことはない、皆さん10日分の漢方薬を15日〜30日もかかって服用されている。まともに10日分を10日で服用してなかったという人ばかりです。
その内実は、一部には二番煎じ三番煎じして10日分が一ヶ月分に摩り替わる好い加減な人もありましたが、多くは食間や食前の服用を忘れるために、1日に1〜2回しか服用するタイミングが掴めない人ばかりでした。
こんなことなら服用を忘れにくい食後に切り替えないことには、いつまで経っても薬用量不足で効果がでないのは当然ですから、断固、食後の服用に切り替えたのでした。
それでも服用を抜かす人は、それなりの効果しか出ないのは当然であり、それで満足されている方には、こちらもウルサクは言いません。
効かない効かなと苦情の多い人ほど10日分が15日〜30日も延びている人ばかりだったので、効果が出ない原因をハッキリ指摘し、食後でいいから真面目に服用してもらえた人は、やはりしっかりと効果が出て来たのでした。
このような経験から当時より、飲み忘れ防止のために漢方薬は断然食後に服用すべきと決めていましたが、そんな時、M薬業(株)さんの機関誌に関西の女医さんが漢方薬の吸収実験を科学的に行ったところ、明らかに食後のほうが吸収率がよかった というデータなどが書かれた記事を拝見したのでした。 (残念ながらこの記事が記載された雑誌が家のどこに保存しているか、完全に迷子になっています!)
これで、ますます意を強くし、その後も自信をもって現在に到っていると言うわけです。
ところで、もともと中医学でも補剤は食間に服用するような記載が多かったように思うのですが、一般方剤の場合は、特別に規定があったようにも思われません。臨機応変なのではないでしょうか?
日本ほど何とかの一つ覚えのように、漢方薬は食間や食前と決め込んで、信じて疑わないほうがどうかしている。食間や食前の方が吸収がよいという迷信も先の女医さんの実験では否定されているのですから、要するに漢方薬は胃袋に入れば、証にあった方剤を服用する限りは効果が出て当然。
食後だって拡大解釈すれば食間でもあるわけですから、常に臨機応変で、例外的には、むしろ胃薬関係では、食前・食後・食間のいずれが御自分にとって一番効き目がよく感じるかを試してもらうこともあります。
ともあれ、食間や食前を杓子定規に守ろうとし、そのために服用が櫛の歯のように抜けぬけになる本末転倒を戒めるべきではないでしょうか。
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返し頂いたメール:貴重な時間を割きお返事下さいまして 本当に恐縮しています。ありがとうございました。
自分も製薬会社や参考書に書かれた通りと申しましょうか 何の疑問もなく今日までほぼ一律に食前に漢方の服用を勧めていました。
今回先生に思い切って質問して本当に良かったと思っております。
ご丁寧ないつもながら 分かりやすい文章にて返信本当にありがとうございました。
これからもおつき合いいただければ幸いです。
年齢:30歳〜39歳
簡単なご住所:関東地区
具体的な御職業:漢方販売
お問い合わせ内容:
村田先生いつもHP拝見させてもらっています。いつも先生の分かりやすい文面にて勉強させてもらっています。これからも是非頑張って続けてくれたらと思っています。
さて今回は少し最近疑問に思うところがありまして あつかましいと思いますが先生に教えてもらおうと思い書き込み致しました。
当店へのインターネットを通じての 患者さまからの相談をしていますとごくたまにですが 漢方薬を食後に飲むように!と指導をされてる諸先生方がいるようなのです。
別に漢方薬がお腹にこたえているという訴えもなく 一律に食後としている先生がおられるようです。患者さんの相談にて立て続けにあったものですから 考えるものがありました。
しかしながら今の自分の知識では いくら考えても答えが出ませんし ジオウ剤などの補陰薬系なら多少胃もたれ等の原因になるおそれがあるので食後に また食前に漢方薬を飲むと食欲不振になるなどの場合は食後に というのは分かるのですが・・・しかも六君子湯や十全大補湯などの補気薬類も食後に服用するよう指導していたといいます。自分は知識が無いために理解できません。ご指導の方よろしくお願いします。
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
「一律に食後としている先生がおられるようです。」というのを読んだ時は、これ村田漢方堂薬局のアドバイスじゃないのっ!?と思ったほどですが、次に書かれていた「しかも六君子湯や十全大補湯などの補気薬類も食後に服用するよう指導していたといいます。」ということですから、これは村田漢方堂薬局のアドバイスではありませんでした(笑)。
と言いますのも、当方では六君子湯のようなあまりにも穏やかな方剤は、滅多に使用しないし、十全大補湯のごときは、もう何年も販売したことがありませんので(笑)
と、このようにヒゲジジイの服薬指導ではないかと勘違いするほど、村田漢方堂薬局では徹底して、あらゆる漢方薬を食後服用するように口うるさく指導しています。これにはかなり根拠のある複数の理由から、二十五年以上も、つまり日本古方派の時代から、この指導を徹底しています。
まず、第一の理由、これが最大の理由だったのですが、
古方派の時代は、煎じ薬の販売が中心で、今では殆んど使用しない八味地黄丸料を毎日毎日、当時は八味地黄丸証の人が、とても多かった事実は隔世の感がありますが、それはともかく、一部の人には、効くはずのこの八味地黄丸料が効かないという苦情があり、またその他の方剤についても方証相対間違いなし(古方派の時代ですから弁証論治ではありません)と自信がある場合でも、効かない効かないと苦情が多いのです。
ところが苦情を言われる人達の相談カードを点検すれば、何のことはない、皆さん10日分の漢方薬を15日〜30日もかかって服用されている。まともに10日分を10日で服用してなかったという人ばかりです。
その内実は、一部には二番煎じ三番煎じして10日分が一ヶ月分に摩り替わる好い加減な人もありましたが、多くは食間や食前の服用を忘れるために、1日に1〜2回しか服用するタイミングが掴めない人ばかりでした。
こんなことなら服用を忘れにくい食後に切り替えないことには、いつまで経っても薬用量不足で効果がでないのは当然ですから、断固、食後の服用に切り替えたのでした。
それでも服用を抜かす人は、それなりの効果しか出ないのは当然であり、それで満足されている方には、こちらもウルサクは言いません。
効かない効かなと苦情の多い人ほど10日分が15日〜30日も延びている人ばかりだったので、効果が出ない原因をハッキリ指摘し、食後でいいから真面目に服用してもらえた人は、やはりしっかりと効果が出て来たのでした。
このような経験から当時より、飲み忘れ防止のために漢方薬は断然食後に服用すべきと決めていましたが、そんな時、M薬業(株)さんの機関誌に関西の女医さんが漢方薬の吸収実験を科学的に行ったところ、明らかに食後のほうが吸収率がよかった というデータなどが書かれた記事を拝見したのでした。 (残念ながらこの記事が記載された雑誌が家のどこに保存しているか、完全に迷子になっています!)
これで、ますます意を強くし、その後も自信をもって現在に到っていると言うわけです。
ところで、もともと中医学でも補剤は食間に服用するような記載が多かったように思うのですが、一般方剤の場合は、特別に規定があったようにも思われません。臨機応変なのではないでしょうか?
日本ほど何とかの一つ覚えのように、漢方薬は食間や食前と決め込んで、信じて疑わないほうがどうかしている。食間や食前の方が吸収がよいという迷信も先の女医さんの実験では否定されているのですから、要するに漢方薬は胃袋に入れば、証にあった方剤を服用する限りは効果が出て当然。
食後だって拡大解釈すれば食間でもあるわけですから、常に臨機応変で、例外的には、むしろ胃薬関係では、食前・食後・食間のいずれが御自分にとって一番効き目がよく感じるかを試してもらうこともあります。
ともあれ、食間や食前を杓子定規に守ろうとし、そのために服用が櫛の歯のように抜けぬけになる本末転倒を戒めるべきではないでしょうか。
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返し頂いたメール:貴重な時間を割きお返事下さいまして 本当に恐縮しています。ありがとうございました。
自分も製薬会社や参考書に書かれた通りと申しましょうか 何の疑問もなく今日までほぼ一律に食前に漢方の服用を勧めていました。
今回先生に思い切って質問して本当に良かったと思っております。
ご丁寧ないつもながら 分かりやすい文章にて返信本当にありがとうございました。
これからもおつき合いいただければ幸いです。
posted by ヒゲジジイ at 17:23| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2006年11月08日
メタボリックシンドロームに有効な扁鵲(へんせき)を一般エキス剤で代用するには?
性別 : 男性
年齢 : 50歳〜59歳
簡単なご住所 : 東海地方
具体的な御職業 : 内科医師
お問い合わせ内容 : はじめてメールします。
内科開業をしていますが、アトピー性皮膚炎を検索中に村田薬局のページに到達しました。
論文を拝見し、記述を熟慮し、受診されている患者さんや患児に投薬しています。幸い、手ごたえを感じつつある状態です。村田さんには感謝していることをまずお伝えします。
当診療所ではエキス製剤を使用しています。
メタボリック症候群にありました”ヘンセキ”に関心がありますが、既存のエキス製剤で構成することはできないものでしょうか。
ご教示くださいますと幸いです。
なお、ごく最近、中医を独学し始めたところですので、今後幼稚な質問をするかもしれませんが、粘り強くお付き合いいただきますようにお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
おたよりありがとうございます。アトピー関連の拙論は、
漢方と漢方薬によるアトピー性皮膚炎研究変遷史サイトを御覧頂いたのでしょうか?
これらの拙論はその年代毎に真剣・真面目に書いたものの、今から思えばその時代時代に即応したものだけに、常に偏りのある拙論となっていると思います。
ただ、いずれもかなりな偏りがあるものの、一面の真理を突いているものと確信していますが、なかでも拙論の
アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法 のような清熱瀉火方剤中心の運用は、当時の時代的な環境に起因していたものと思っています。
実際の所、昨今は当時のように黄連解毒湯を使用することは激減しています。そうなった理由は、近年、ステロイドの正しい使用方法
アトピーの漢方治療 などが広く行き渡りだしたお陰のように感じています。
当時は、日本国中でステロイドに対する異常な恐怖心から、ステロイド軟膏の使用を拒否する人が多かった為、もっぱら清熱瀉火の黄連解毒湯が大活躍した時代だったと思います。
ところで御質問の「扁鵲」の件、成分的には以下の通りですが、
タクシャ末 ・・・・ 0.86g
ショウキョウ末・・ 0.43g
ケイヒ末 ・・・・・ 0.43g
ボタンピ末 ・・・・ 0.43g
サイコ末 ・・・・・ 0.86g
ショウマ末 ・・・・ 0.43g
ダイオウ末 ・・・・ 0.43g
カンゾウ末 ・・・・ 0.43g
シャクヤク末 ・・・ 0.43g
チョレイ末 ・・・・ 0.86g
ハンゲ末 ・・・・・ 0.43g
既成の方剤で代用するとしたら、強いてこじつければ大柴胡湯合五苓散合腸癰湯といったところでしょうか?
但し、こうなると経費的にも、服用上もやや難儀なものになるかもしれません(笑)
このメタボリックシンドロームに関連して、出版関係の某作家氏が今月中にも当方へインタビューに来られ、氏の執筆の材料に採用されるらしいので、どのような記事になるか、ちょっと楽しみにしているところです。
ところで中医学をはじめられたとか!そうあって欲しいもの存じます。
我が国の漢方医学の現状のままでは民間療法に等しく、早急に中医学理論を取り入れなければ、日本の漢方の明日は無いとものと確信しています。
小生にも愚息や愚娘を含め、身内に西洋医学の医師はたくさんいるのですが、いずれもエビデンス漢方ばかりにハシリ、中医学の本質を僅かでも知るのは回りの医師の中では意外にも一人くらいしか存在しないのが現状です。
皆それぞれ多忙な診療の中で中医学に手を出すヒマが取れないのか、どうしても安易な漢方使いに走り、その身内が愚問を発するばかりで、昨今は質問に返事するのもイヤになってしまいます。http://kanpo.wablog.com/78.html より
以上、簡単ながらお返事まで。
ブログの材料を提供して下さり、感謝申し上げる次第です。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返し頂いたメール:さっそくのお返事、ありがとうございました。 お忙しいなかを貴重な時間を刈り取ってくださいましたことに感謝いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
年齢 : 50歳〜59歳
簡単なご住所 : 東海地方
具体的な御職業 : 内科医師
お問い合わせ内容 : はじめてメールします。
内科開業をしていますが、アトピー性皮膚炎を検索中に村田薬局のページに到達しました。
論文を拝見し、記述を熟慮し、受診されている患者さんや患児に投薬しています。幸い、手ごたえを感じつつある状態です。村田さんには感謝していることをまずお伝えします。
当診療所ではエキス製剤を使用しています。
メタボリック症候群にありました”ヘンセキ”に関心がありますが、既存のエキス製剤で構成することはできないものでしょうか。
ご教示くださいますと幸いです。
なお、ごく最近、中医を独学し始めたところですので、今後幼稚な質問をするかもしれませんが、粘り強くお付き合いいただきますようにお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
おたよりありがとうございます。アトピー関連の拙論は、
漢方と漢方薬によるアトピー性皮膚炎研究変遷史サイトを御覧頂いたのでしょうか?
これらの拙論はその年代毎に真剣・真面目に書いたものの、今から思えばその時代時代に即応したものだけに、常に偏りのある拙論となっていると思います。
ただ、いずれもかなりな偏りがあるものの、一面の真理を突いているものと確信していますが、なかでも拙論の
アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法 のような清熱瀉火方剤中心の運用は、当時の時代的な環境に起因していたものと思っています。
実際の所、昨今は当時のように黄連解毒湯を使用することは激減しています。そうなった理由は、近年、ステロイドの正しい使用方法
アトピーの漢方治療 などが広く行き渡りだしたお陰のように感じています。
当時は、日本国中でステロイドに対する異常な恐怖心から、ステロイド軟膏の使用を拒否する人が多かった為、もっぱら清熱瀉火の黄連解毒湯が大活躍した時代だったと思います。
ところで御質問の「扁鵲」の件、成分的には以下の通りですが、
タクシャ末 ・・・・ 0.86g
ショウキョウ末・・ 0.43g
ケイヒ末 ・・・・・ 0.43g
ボタンピ末 ・・・・ 0.43g
サイコ末 ・・・・・ 0.86g
ショウマ末 ・・・・ 0.43g
ダイオウ末 ・・・・ 0.43g
カンゾウ末 ・・・・ 0.43g
シャクヤク末 ・・・ 0.43g
チョレイ末 ・・・・ 0.86g
ハンゲ末 ・・・・・ 0.43g
既成の方剤で代用するとしたら、強いてこじつければ大柴胡湯合五苓散合腸癰湯といったところでしょうか?
但し、こうなると経費的にも、服用上もやや難儀なものになるかもしれません(笑)
このメタボリックシンドロームに関連して、出版関係の某作家氏が今月中にも当方へインタビューに来られ、氏の執筆の材料に採用されるらしいので、どのような記事になるか、ちょっと楽しみにしているところです。
ところで中医学をはじめられたとか!そうあって欲しいもの存じます。
我が国の漢方医学の現状のままでは民間療法に等しく、早急に中医学理論を取り入れなければ、日本の漢方の明日は無いとものと確信しています。
小生にも愚息や愚娘を含め、身内に西洋医学の医師はたくさんいるのですが、いずれもエビデンス漢方ばかりにハシリ、中医学の本質を僅かでも知るのは回りの医師の中では意外にも一人くらいしか存在しないのが現状です。
皆それぞれ多忙な診療の中で中医学に手を出すヒマが取れないのか、どうしても安易な漢方使いに走り、その身内が愚問を発するばかりで、昨今は質問に返事するのもイヤになってしまいます。http://kanpo.wablog.com/78.html より
身内の医師自身のアレルギー性鼻炎と軽度の喘息傾向の治療に、もっぱら医療用漢方にこだわり、小青竜湯や葛根湯ばかりの対症療法の繰り返しで、いつまでも中医学的な弁証論治に目を向けられない人がいる。身内の医師でさえこのような現状ですから、いくら医療用漢方が盛んになってもヒゲジジイの漢方薬局が潰れずに済むのだな〜〜と変な処で感心している昨今です。
そもそも電話で話の序に相談される程度だからアドバイスのしようがない。
漢方薬はお気軽に使ってお気楽に効果が出るほど安易なものではないのだが、身内で年下の医師であっても薬剤師に対するプライドが許さないのか、いつまでも傷寒・金匱の方剤、というよりもエビデンス漢方にこだわるのだから縁がないものと諦めている。
玉屏風散に麦味腎気丸の併用など、中医学理論による配合には全く見向きもしないのだから、縁なき衆生というべきか?
それ以前に基礎理論を理解してもらうのにも難航するのだから、当方では何度電話で質問されても、些か呆れ加減である。
以上、簡単ながらお返事まで。
ブログの材料を提供して下さり、感謝申し上げる次第です。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返し頂いたメール:さっそくのお返事、ありがとうございました。 お忙しいなかを貴重な時間を刈り取ってくださいましたことに感謝いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
posted by ヒゲジジイ at 00:13| 山口 ☀| 中医漢方薬学問答
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