2011年12月20日

長期間の慢性疾患でも漢方薬は半数以上の人に速効が出ている

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PQC_2881 posted by (C)ヒゲジジイ

 漢方薬の実際は、たとえ長期間の慢性疾患でも、半数以上の人に最初から速効が出ているのが実際の現場である。

 この事実をあまり強調して書かなかった理由は、皆がそれを期待されても困るからであり、たとえ初期の速効が出ても、長期間の慢性疾患がそれで直ぐに根治するわけではないからである。

 この事実をここで書く気になったのも、関東地方から通って来られている乾癬性関節炎の人が「まさか、漢方薬がこんなに数日単位で速効が出るとは思わなかったっ!」と述懐されていたからである。

 彼女の過去の経験では、地元では一般的に最初は15日分漢方薬を煎じ薬などを投与され、2回目からは30日分に切り替わるので、漢方薬の効果は遅いものと思い込んでいたといわれる。

 ところが村田漢方堂薬局では10日毎に通わせて、数日間であっというまに速効が出た。

 強い炎症がほぼ完璧に取れた15日過ぎた頃には、あれだけ著効を奏した清熱薬を頃合を見て一気に中止させて基本方剤だけにしてしまっても、7割以上の寛解を得たまま比較的安定した2ヶ月が経過している。(現在は1ヶ月毎の来訪に切り替え、途中の微調整は必要に応じてメール交信でアドバイス。)

 今後は次第に現症を生じた原因のまた原因に遡った弁証論治を深めて行く必要があるので完全寛解を得るには、実際にはまだまだ期間が必要である。

 とは言え、このような速効と安定持続した効果が得られているのも、エキス剤や単味の製剤を配合することで、臨機応変の配合変化が即座に行なえるので、あえて煎じ薬を出さない理由がよく分かったと納得される聡明な人である。

 事実、このような方法だからこそ、2回目の10日が経たない間に交信したメールによって、炎症がほぼ取れた時点で、間髪を置かずに清熱薬を即中止してもらう芸当が出来たのも、この便利さからである。

 ところが半数弱の人ではそれほどの速効が得られないものの、地道な努力でいつの間にか寛解して行くものだが、それでも頑固な慢性疾患を漢方薬で克服する道程は、最初から速効が得られた人であっても、初期の速効が得られなかった人も同様に、多かれ少なかれお互いに一定の苦労があることに変りはない。

 むしろ最初から速効が出た人ほど油断しやすいので、過去の長期間の経験から言えることは、最初は鈍い効果で苦労の果てにようやく一定の寛解に持ち込めた人ほど、止むを得ず長期間の服用になってしまったとしても、理想的な完全寛解状態に持ち込めた例が断然多いのである。

 早い時期に速効を得た人ほど油断しやすい傾向があるからに他ならない。

 ところで、本日は新しく来られた人がしばらく待っておられたが同伴者が落ち着かず、順番がやって来た頃になって急に腹を立てたように帰って行かれた。

 時間に余裕のない人は絶対に来ないで欲しい。

 たとえ同伴者でもイライラと落ち着きのない人が来られると、それを見るだけでヒゲジジイの頭がフリーズする。

 病院ほど待たせることはあり得ないのに、彼等や彼女等は病院では長時間待つことが出来ても、漢方薬局では「客を待たせるとは無礼だっ!」と言わんばかりの態度の人が後を絶たない。

 薬局だからといってそんな侮蔑的な態度を取るから、こちらも梃子でも動かなくなる。

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PQC_2441 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 21:01| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年11月01日

冷えが原因の病気でも温めれば治るとは限らない

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FSC_8598 posted by (C)ボクチンの母

 中医学や漢方医学の最も重要な古典、傷寒論の名が示すように、急性疾患の病因として最も代表的な発病因子が寒邪の侵襲である。

 身体を過度に冷やし過ぎたり、冷気を浴び過ぎると人体は機能低下を生じて容易に寒邪に侵襲される。

 また暑い時期には寒邪よりも熱邪に侵襲されることが多いが、本日のブログでは寒邪の侵襲だけを論じる。・

 冷え込んだために生じた風邪や、しばしば見られる膀胱炎、風寒湿邪に犯されて生じる関節リウマチなど、これらは冷えが原因だからといって温めれば治るとは限らない。

 それどころか、温めれば温めるほど却って逆効果になる場合が意外に多いことを警告しておきたい。

 たとえば、冷え込んだために生じた膀胱炎に、しばしば猪苓湯や五淋散、あるいは竜胆瀉肝湯や清心蓮子飲などが使用されるのはなぜか?

 冷えが原因というのに、こられの方剤全体はいずれも、どちらかといえば多かれ少なかれ冷やす作用の方剤。

 どうして膀胱炎に対して漢方治療では多くの場合、こられの冷薬が投与されるのか?

 正邪相争により化熱するからに他ならない。

 つまり人体の病邪に抵抗する機能が働いて邪気と激しく戦うことで化熱するからである。

 風寒湿邪に侵襲されて生じる痺証、すなわに代表的な関節リウマチなどはやや複雑で、体内には風寒湿の邪がしっかりと固着しながらも、正邪分争によって化熱し、関節部分が赤く腫れて疼痛が激化するケースが多い。

 このようなケースでも、痺証は風寒湿邪が原因だからといって、桂枝加朮附湯や独活寄生湯、大防風湯などで却って次第に悪化して、村田漢方堂薬局に訪れる人が多いのはなぜか?

 熱化して腫れ上がった関節部の熱証を無視した投与を続けるからである。

 血液検査ではますますCRP値が上昇する。この場合は温熱薬だけでは対処しきれず、バランスの取れた清熱薬の配合も必須であることを知らない専門家があまりにも多過ぎる。
 シロウトとなんら変るところがない(苦笑。

 これらの例でも分かるように、病気の原因が冷えであっても、しっかり温めれば治るほど、人間様の病気はそれほど単純ではない。

 そろそろ秋から冬に向かうにつれ、寒邪に侵襲されて傷寒の風邪に罹患したはずが、いつの間にか化熱して温病条弁で提示された天津感冒片などの銀翹散が適応する風邪に転化してしまう。

 傷寒から早い段階で温病に転化するというのも、邪正闘争の経過中に生じることで、現代日本ではかなり普遍的な現象となりつつある。

ぼくぼく
ぼくぼく posted by (C)ボクチンの母


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2011年10月21日

村田漢方堂薬局では附子剤適応者に遭遇することは極めてマレ

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IMG_5389 posted by (C)ヒゲジジイ

 十数年前までは真武湯の適応者にしばしば遭遇し、潰瘍性大腸炎や眩暈やふらつき、脊髄小脳変性症などで使用する機会があった。

 潰瘍性大腸炎では二十年経った数年前まで、ほぼ根治に至っていることを追跡調査で確認出来ている。(それもそのはずで、お嬢さんの漢方薬を折々に購入されていたので廃薬後の経過が確認できる情況にあった。)

 しかしながら、日本も豊かになるにつれ、同時に温暖化が進むに連れて附子剤が適応するような舌質淡の人が漢方相談に訪れるケースが激減した。

(しかしながら、衰弱されたご高齢者などには現代社会でも附子剤の適応者が多く存在するであろうと想像されるが、当方のような市井の漢方薬局とは無縁である。)

 ところで附子剤が適応するような陽虚体質者は決まって舌質が淡であったが、中国の火神派の治験例で確認したところ、やはり同様であった。
 とすると、中国の火神派の先生方は、もともと舌質が淡であるような明らかな陽虚体質者が多い地区で診療されている可能性が高い。

 日本国内では中医学の火神派が増えつつあるそうだが、火神派とは無縁な日本漢方でも、もともと附子剤を好んで使用される傾向が強い。

 それゆえ、各地の病院や薬局で投与された附子剤にあたった人達が相談に訪れるケースが後を絶たないが、いずれも舌質は淡ではなかった。

 附子剤が不適な人達であったから、八味丸でやけに目が冴えたり、蓄膿症が悪化したり、空咳が発生したり、寝汗をかくようになったり、様々な弊害の報告を受けている。

 ヒゲジジイに言わせれば、火神派のように腎陽虚ばかりを重視するやや偏った流派は、現代日本社会には馴染む筈がないと思っている。

 一人の身体で五臓六腑の各経絡毎に寒熱虚実がことなるケースは日常茶飯事なのだから、それらの臓腑経絡毎の相関関係を分析しつつ、寒熱虚実に応じた配合方剤を投与することこそ中医学の弁証論治の鉄則であろう。

 舌質が紅い人達に附子剤を乱用すれば様々な弊害が出ても不思議はない。

 とりわけ肺は嬌臓であるから容易に肺熱・肺陰虚を誘発してロクなことはないので、偏った一派に偏るべきではないと警告しておく。

 要するに一時のブームに乗って、
   火神派(かしんは)を過信する勿れ!
 ということです。
 
 蛇足ながら、中国国内で中医学が衰退しつつある理由は、時間的あるいは収益的に能率の悪い中医学よりも、能率と収益のよい中西医結合や西洋医学の方面にばかりに人材が増加しているといわれ、ここでも現代中国らしい現象が垣間見られる。

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IMG_5370 posted by (C)ヒゲジジイ


 
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2011年10月20日

火神派(扶陽派、温陽派)の台頭

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ASC_1146 posted by (C)ヒゲジジイ

 昨今、中国では伝統的な中医学が衰退しつつあるなか、伝統医学を再生させる希望の星として台頭してきた火神派が注目を浴びている。

 火神派は扶陽派または温陽派といわれ、腎陽を温補することが主体の流派で、現代中国の火神派の代表格の李可氏は、誤った食生活によって現代人の十中八九は陽虚となっており、真正の陰虚は百人に一人といない、と断言される。

 各種疾患の治療方剤中には、附子、桂皮、乾姜が多用され、とりわけ附子の使用量においては、日本国内では滅多なことでマネできない大量使用を特徴としる。

(もともと附子は猛毒であるが、それを弱毒化して使用される。)

 しかしながら、辺鄙な山村医療における救急医療の知恵から発達した流派であることを認識すれば、俄かに日本国内で安易に模倣することは些か疑問である。

 事実、中国国内でも賛否両論あって、賞賛ばかりでなく激しい批判も飛び交っている。

 日本にも火神派の崇拝者が増えつつあり、それゆえに次第に日本国内でも附子の崇拝者が増えつつあるので、本当に適切に使用されているのかどうか、十分に注意しておく必要がある。

 附子剤を投与されるときは、しっかりとその根拠の説明を受けて、十分に納得して服用されたい。

 蛇足ながら、瀕死の救急医療では、附子剤が大活躍することは古代中国から有名な事実であるが、現代社会でそれを行なえるのは、ほんの一握りの中医学あるいは漢方医学の専門医師だけであろう。

アサギマダラ
アサギマダラ posted by (C)ヒゲジジイ


 
posted by ヒゲジジイ at 08:54| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年10月16日

目は口以上にものを言う

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IMG_5268 posted by (C)ボクチンの母

 目は口ほどにものを言うのは本心(気持ち)は目にあらわれるという意味だが、健康上の問題でも目の勢いにあらわれる。

 漢方薬が短期間で速効を得た場合では、服用前とは打って変わって目が活きいきしてくるのが誰が見てもあきらかに見て取れることが多い。

 肌の色艶も良くなり、急に年齢が10歳くらい若返ったようにも見える。

 このように健康状態が目にあらわれることが多のと同様に、漢方相談が本気かどうかの本心も目にしっかりとあらわれていることが覆い。

 過去、効果が出た途端に無音となった人達は、共通してどこか目が泳いでいた。

 こられの人達は、常々公言している「情況に応じた漢方薬の微調整」の必要性をハナから信用してなかった人達である。

 類似品を他で調達したところで途中で効果が無くなって、漢方薬の効果は一時的なものだったと誤解しているに違いない。
 そのレベルの考えしかもてない人達が多過ぎる。

 のみならず、類似品に切り替えた途端、直ぐに効かなくなったと平身低頭で慌てて駆け込んで「バチが当った」と戻ってくる連中もあるが、それほど各社製剤間の優劣は大きい。

 配合中の白朮と蒼朮の違い、乾姜と乾燥生姜との違いなどに限らず、方剤中の生薬の配合比率の違いによる問題など、各社漢方製剤間の優劣は想像以上に大きいのである。

 まっ、いずれにせよ、目は口以上にものを言ってるのですよ。

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ASC_8022 posted by (C)ボクチンの母

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2011年10月12日

薬代よりも交通費が高い人達

ルリタテハ
ルリタテハ posted by (C)ヒゲジジイ

 かなり遠くの県外から通われる人は多いが、中にはその地方から下関に通ってアトピーが治った人がいると伝え聞いて、遠路遥々やって来られた新人さんもおられる。

 県外から来られるアトピーの人に限らず、様々な疾患で遠方から通われている人達も、薬代よりも交通費の方が高い人も多いが・・・でもでも

 そのうち効果が安定してくると1〜数ヶ月分まとめて購入されるようになるから、いずれは相対的に交通費の方がかなり安くなる。

 ところで、ブログではアトピーのことを書くケースが多いが、実際の仕事でもっとも多いのは悪性腫瘍や各種の難病系の疾患、糖尿病などの生活習慣病や腎不全や肝臓疾患などの内蔵系の疾患、女性特有の各種疾患などの方がはるかに多い。

 村田漢方堂薬局のブログやアトピー専門サイトを見て、村田漢方堂薬局はアトピー専門薬局と誤解している人が多いのはチョッと困りものだが、顔面がひどい状態で外に出られなかった人でも、根性さえあれば安定した寛解を得られ、美しい顔に変貌するのを見るのが楽しみで宣伝しているに過ぎない。

 顔面のアトピーが悪化している人は、深刻に悩んで真面目に頑張る人が多いので、遅かれ早かれ美しい本来の顔を取り戻せる。
 そうなると心から喜んでもらえ、大の漢方ファンになってくれるので、とても遣り甲斐のある仕事なのである。

 だからついついアトピーのことを書いてしまうが、本業のメインはアトピーではないことだけはここでしっかり断っておきたい(苦笑。

 ところで、同じアトピーでも顔面にはほとんど出ず、身体の内部にちょこっと出ているくらいでも、大げさに親子でやって来たのはよいが、結局は長続きせず、愚痴や言い訳ばかりでウンザリさせられるケースもないわけではない。

 以前も、関西から親子でやって来ても、顔面は綺麗なもので、本人は不貞腐れているので言下に断って帰ってもらったことがあった。

 最近も県内から同様に顔面は綺麗で身体のアトピーも大したことないのに、家に引き篭もっていかに深刻であるかを訴える親子がやって来られた。

 大したことないから通えないだろうと言えば、必ず真面目に通う、いかに強い決意で来たかを熱っぽく語るのでうっかり引き受けたのが間違いのもと。

 1ヶ月半目頃から明らかな効果が出始めたところで、服薬は怠り、親に隠れて暴飲暴食は止めず、言い訳や弁解ばかりで、挙句の果ては通えないから送ってくれと駄々をこねはじめる。

 送れないから通えと言えば、高い交通費と漢方薬代の経費が続かないので止める、と三日坊主ならぬ3ヶ月ボーズ。(県内だから薬代よりも遥かに安い交通費なのだが・・・)

 止めるならやめるで黙って止めておけばよいものを、長々とメールで弁解や言い訳のメールをするから、よけいに癇に障る。

 こんなことから、見かけ上では軽症の癖に、愚痴と言い訳の多い意志薄弱性が感じられる人では、どんなに懇願しても、今後は滅多なことでは受け入れないことにしよう(苦笑。

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ASC_5176 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 21:00| 山口 | 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年09月23日

職場や家庭の人間関係によって持病を悪化させる

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ASC_5558a posted by (C)ヒゲジジイ

 地元の病院から大学病院に送られ何年間も通って治らない頭痛や三叉神経痛、不安感を伴う呼吸困難や眩暈やフラツキ、鬱症状など。

 のみならず腎不全や膠原病や糖尿病などの慢性疾患のみならず各種悪性腫瘍などを抱える人達でも、多くの人が職場や家庭の人間関係に悩んでいる。

 しばらく通われて、気心が知れた頃に判明するのは、重大な持病の裏には、複雑な人間関係というよりも、あからさまなイジメを年余にわたって受け続け、それらの重圧に押し潰されそうにもがいている情況である。

 解決しようもない人間社会特有のプレッシャーによって持病の悪化を招いているとしか思えない人があまりに多い現実に、昨今些か驚いている。

 人間というのはロクデモない動物で、複雑な表と裏のみならず右横や左横、あるいは上や下の顔など、様々な側面がある。

 スズメのボクチンや猫のボクチンたちのように裏も表や上も下も、あるいは右横も左横もいずれとも無縁で、雀の本分や猫の本性を全うするだけという単純明快な生き方とは真逆である。

 この人間社会をひと言で表現するなら「イジメ社会」であり、このことは国際社会における日本の立場と変わるところがない。

 だからどうだと言われればそれまでだが、少なくとも人間はロクデモない存在かもしれないという自覚を持つだけでも見えてくるものがあろうだろう。

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ASC_5283 posted by (C)ヒゲジジイ

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DSC08719 posted by (C)ボクチンの母

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ASC_6064 posted by (C)ヒゲジジイ

 
posted by ヒゲジジイ at 00:08| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年09月06日

補気建中湯の人参はどのような配合意義があるのでしょうか?

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ZZZ_0230 posted by (C)ヒゲジジイ

 タイトルの質問は某メーカーさんからのご質問。
 以下はそれに対する答えになる内容を既に2005年6月30日に他のブログに書いたものがあったので、それを引用。
 朝鮮人参で浮腫(むく)むことがあると書いたが、体内に水分を保持させる作用があるからである。

 この水分保持作用は、大いなる利点でもある反面、体質によっては単独で長期使用すれば、浮腫んでしまうことがある。日本漢方で言う「水毒」があるような体質の人に多い。

 このような「水毒」体質であっても、朝鮮人参単独ではなく、白朮・茯苓などを配合すればよい。
 朝鮮人参の内臓機能低下を賦活する作用という利点だけを発揮させて、単独で使用するときのような弊害は出にくい。

 典型的な例が、補気建中湯という癌の末期患者さんの腹水を軽減するのに有利なことが多い方剤である。

 内臓の機能低下の極限に近いことからくる腹水であるから、朝鮮人参の内臓賦活作用が必要になるからである。

 この場合、他薬の配合が優れているから、朝鮮人参の水分保持作用は、大事な細胞内の水分保持のために働くようで、溜まっては困る腹水などは、速やかに軽快するのである。


 といっても、その人その人によって体質が違うのだから、正確な弁証論治によって方剤を決めなければならない。

 上記は、その人の病状と体質によって補気建中湯がフィットした場合の話である。

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CSC_8262 posted by (C)ヒゲジジイ

ラベル:補気建中湯
posted by ヒゲジジイ at 15:57| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年09月05日

燥邪と湿邪の同居が顕著となる季節到来

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ESC_5811 posted by (C)ヒゲジジイ

 燥邪と湿邪が同居するのは珍しくもないが、この季節は両者の問題が顕著となりやすい。

 まだ暑いとはいえ、秋は直ぐそこまでやってきているのですでに燥邪の影響がみえ、アトピーの症状が落ち着いていた人でも、ちらほら部分的な乾燥が目立ち始めたので、配合の微調整を行った人も次第に増えつつある。

 ヒゲジジイも、ここ数日、職場で怪気炎を発した後に決まって乾燥咳が出るようになったので、滋陰降下湯や西洋人参の使用頻度が増えながらも、まだまだ藿香正気散は手放せない(苦笑。

 藿香正気散加西洋人参、滋陰降下湯合藿香正気散など、日本古方派の時代だったら絶対にやらない配合だった(苦笑。

 アトピーの連中でも、藿香正気散に猪苓湯のみならず瀉火補腎の知柏地黄丸や清熱滋陰の三物黄芩湯を併用してバランスを取っている人も数名いる。

 熱中症と冷房病を同時に防いで体調を整えている人達では、藿香正気散に各種牛黄製剤や葛根黄連黄芩湯を併用している人も数名。

 要するに一人の身体では、臓腑経絡毎に寒熱虚実がそれぞれに異なるので、現時点における一連の症候を総合的に把握しつつ、臓腑経絡毎の寒熱虚実を的確に把握し、それによって適切な方剤を配合すれば、寒熱併用のみならず、燥湿併用の配合は日常茶飯事ということである。

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ESC_6381 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 07:06| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年08月05日

日本漢方には温病学説は不要だそうですよ

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KSC_8557 posted by (C)ボクチンの母

 たまたま日本漢方のベテラン医師の論説が眼に入ったので通読して驚いた。

 温病学説は不要であり、銀翹散レベルのものは柴胡剤の加味で十分対応できるそうである。

 日本漢方には弁証論治に取って代わるような基礎理論は存在せず、日本漢方の優位性を証明するような理論も書籍もいまだに出て来ない。

 銀翹散レベルのものが柴胡剤の加味方で代用可能であるとは初耳だが、これ一つだけで温病学説不要論に繋がることには大いに首を傾げる。
 また温病学不要論の論拠として歴代の日本の各医家たちが呉有生の「温疫論」(1642年)を否定的に捕らえていたことを挙げているが、傷寒論と並ぶべき呉鞠通の「温病条弁」(1798年)が取り上げられない。

 驚くべきことに温病学で最も重要な「温病条弁」は完全に無視されている。

 銀翹散の出典こそ、この「温病条弁」であるが、まるで銀翹散が柴胡剤の加味で代用できる?からといって、「温病条弁」ごときは「温疫論」同様に論じるに足りないと言外に表現される如くである。

 各大学医学部で学ばれる漢方医学も同様の考えで推し進められるらしいが、お陰でヒゲジジイの仕事も永久に減ることは無さそうだっ(苦笑。

 弁証論治こそ漢方薬を有機的に使用する基本中の基本であるが、それに代わり得る理論が日本漢方にはやっぱりいつまでも見当たらないことは最初に述べた通りである。

【関連文献】
 ●温病学を学ばない日本漢方の杜撰
 ●日本の伝統医学と言われる「漢方医学」に欠落するもの
 ●日本漢方には「傷寒論」があっても「温病学」がないのは致命的かもしれない


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ASC_8914 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 00:27| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年08月03日

分消湯の腹部膨満感に対する効果

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FSC_8911 posted by (C)ヒゲジジイ

 分消湯はしばしば様々な原因による腹水や腹部膨満感に使用されるが、実証に属する場合に適応する。

 しかしながら、世間一般に良く見られる腹部膨満感にも応用可能で、ヒゲジジイ自身も一ヶ月前に突然11年ぶりに再発した尿管結石の疝痛発作時に併発した腹部膨満感に猪苓湯などと併用して効果があった。

 面白いことに、継続使用していると以前から折々に発生していた腹部のガスが減少した分、それに平行してほとんど「おなら」が出ることがなくなった。

 最近は疝痛発作が皆無となって一ヶ月近くなるので、分消湯の併用が面倒になって中止したところ、以前のように折々に「おなら」が出るようになった。

 ところが、ある女性の場合は、腹部が張ってガスが思うように出てくれないために膨満感に苦しんでいた。
 ところが分消湯を服用するようになって、気持ちのよい「おなら」が出て、腹部の膨満感が解消して「とても嬉しい」と喜んでおられる。
 おならが出ないために苦しんでおられたわけだから、この女性にとっては「おなら」は僥倖なのである。

 分消湯によって、「おなら」が折々に出ていた者が腹部膨満感の解消と共におならが激減する者があり、「おなら」が出ずに腹部膨満感に苦しんでいた人が、折々に「おなら」がスムーズに出るようになって腹部膨満感が解消する人。

 いずれも分消湯による効果であるから面白い。

 結局「おなら」談義に終始してしまった(苦笑。

 蛇足ながら、虚証(といっても虚実挟雑)に適応する補気建中湯も同様の作用があるが、昨今、村田漢方堂薬局では補気建中湯の顕著な疲労回復作用に注目して応用範囲がますます拡がっている。

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FSC_8720 posted by (C)ヒゲジジイ


ラベル:分消湯 腹部膨満
posted by ヒゲジジイ at 23:30| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年07月15日

ネットで調べて処方を指名される客には売れない理由

ムクドリたち
ムクドリたち posted by (C)ヒゲジジイ

 いずれも電話での問い合わせ。

 先日、「ネットで調べていたら猪苓湯が自分に合っていると思うが、先生にかわってくれ」と関西から中年女性の高圧的な電話を受け取ったのは受付嬢。

 当然、電話で合ってるかどうかを判断することは困難だから、販売は出来ないこと、昨今ははじめての人に通販は出来ないことなどを説明してお断りしていた。

 そして本日は中年男性からの電話で、ネットで調べていたら冷え症に葛根湯がよいと書いていたが、お宅には置いているか?という問い合わせ。

 冷え症にも様々なタイプがあり、葛根湯がよいとは限らないし、素人判断では間違っていることがほとんどだから、販売できないことを告げてお断り。
 しかも葛根湯くらいなら、どこの薬局でも売っているから、地元の薬局でよく相談するようにと告げ、徹底的に逃げようとする受付嬢。

 これが我が薬局の徹底した方針である。

 ネットは便利になったとはいえ、シロウトが基礎知識ナシにネットで調べたくらいで適切な漢方薬が見つかるほど、漢方世界は甘くない。

 巷では開業医さんたちの漢方熱が盛んなのはよいが、高度の貧血症の人で中気下陥が明らかな体質の女性に、平気で桂枝茯苓丸を投与して自信満々の漢方知識レベルには唖然とする。

 実に日本漢方の行く末が思いやられる。

 かくいうヒゲジジイは、重症のアトピー性皮膚炎の相談者の半数はスムーズに経過しても、残りの半数は数ヶ月〜一年近くも微調整の繰り返しに四苦八苦しながら、四季折々に変化する一年間の傾向と対策をようやく把握して寛解に導けるというテイタラク。

 四十年近くも漢方だけで飯を食っている人間でもこのレベルであるのに、シロウトがネットで調べたくらいで、そうそうたやすく適切な方剤が見つかるはずもない。

 といっても、電話で漢方薬を指名する程度の人たちの疾患は、多くは軽症のお気軽相談レベルの人たちだから、実際には本人が本気で相談にくれば容易にピントの合った方剤が直ぐに見つかりそうなレベル。
実際の仕事上ではこのようなお気楽で軽症者レベルの新人さんの漢方相談は、お気楽過ぎて本気度が不足しているため無駄な時間ばかりを奪われるので最もお断りする典型例となる。)

 それゆえ、当然のことながら複雑な要素が合併していて、多くの病院を歴訪して治らず、地元の漢方専門医院や薬局で漢方治療を試みても寛解できないどころか、悪化の一途を辿っているアトピー性皮膚炎とは難易度のレベルがあまりに違い過ぎる。

 ともあれ、ネットサーフィンしていたら、しばしば遭遇するのにアトピーが根治、こんち、コンチ、根治という言葉があまりに氾濫していることに驚かされる。

 実際のところ、文字通りの根治はほとんどありえるはずも無く、9割以上の安定した寛解が得られれば最高と思うべきで、遺伝子レベルの改善が行なわれない限りは、根治ということはあり得ない

 実に安易に、根治、根治という言葉の氾濫には呆れ果てるばかりで、電話での問い合わせでも折々に遭遇する重症の「アトピーを一年で根治させてもらえますかっ?」という愚問には付き合ってられない。
 当然のことながら、打てば響くように?(苦笑、「到底無理難題ですのでお断」りさせて頂く。

 人生たかだか80〜90年、十年以上も続いた慢性疾患が、そうやすやすと文字通りの「根治」は滅多にあり得ない。
 現象的に根治したように見える安定した完全寛解に近い状態が持続することは大いにあり得るが、文字通りの根治はほとんどあり得ないと主張するのである。

 思い返せば長期間追跡調査が可能な人たちの中には、自殺まで考えた坐骨神経痛が当方の漢方薬でほとんど完全寛解して15年、再発する兆候も皆無なので、このような例をもののたとえとして根治と云えるにしても、厳密な意味ではやはり根治とは言ってはならないように思うのである。

蜂の巣
蜂の巣 posted by (C)ヒゲジジイ

 
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2011年07月14日

新規発売予定の独活寄生湯エキス製剤

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GSC_8905 posted by (C)ヒゲジジイ

 今週は忙しい上に、なでしこジャパンの快進撃に毎回付き合っていたら、睡眠不足も手伝って本当にぶっ倒れそう。生憎、牛黄製剤がよく奏功して何とか踏ん張っている。

 漢方相談が続く合間には、どうしたことか関西の生薬メーカーさん達が、昨日も今日も取引の勧誘に来られて、こちらの応対にも忙しい。

 午前中には小太郎さんの担当者から連絡が入り、一時間前に独活寄生湯エキス製剤の製造許可が降りたという電話報告も入った。

 独活寄生湯は、営衛が空虚で肝腎不足の体質者が風寒湿邪に侵襲されて生じた病変に適応する、すぐれた方剤である。

 ヒゲジジイの薬局では応用編としてもっぱら各種の膠原病に使用する機会ばかりが目立っているが、イスクラ製が長く品切れになっているので、時宜を得た製剤が新発売されることは実に慶賀すべきことである。

 独活寄生湯は、一般的には各種神経痛や関節リウマチに利用されるもので、中医学世界では極めてメジャーな方剤である。
 日本における中医学の大家であられた故張瓏英先生が愛用され、多方面に応用されて優れた効果を発揮されていた。

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GSC_9238 posted by (C)ヒゲジジイ

ラベル:独活寄生湯
posted by ヒゲジジイ at 20:50| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年07月09日

中医漢方薬学偶感━寄せては返す波の音

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ASC_5550 posted by (C)ヒゲジジイ

 中医学を学んで実際の漢方相談に役立てるには、中医基礎理論を充分に学習することが必須条件であることは言うまでもない。

 基礎理論を学習した後は、実際の臨床に通用する実践的な学習が必要となり、中医理論の有機的な活用能力を養わなければならない。

 つまり「常を知り変に達する」ことが要求され、臨床実践における優劣は、実にこの「知常達変」のレベルとほとんど比例関係にある。

 一般の中医学理論の専門書籍による学習と実践を続けるうち、様々な疑問点に遭遇して理論上納得できない部分に悩まされたり、臨床実践において「教科書通りには行かないぞ!」と感じた経験は、多かれ少なかれ皆が味わってきたに違いない。

 実際のところ、通常の中医理論専門書籍においては、一般の通説を述べるのみで、別解や異説に関しては省略されていることが多い

 そこでヒゲジジイが常々推奨する書籍が、陳潮祖著「中医病機治法学」と瞿岳雲著「中医理論弁」の2冊という訳ですよっ。

 ところで、現在、日本の各大学医学部において、漢方医学が必須教科として学ばれているらしいが、あのレベルの低さをイカニセムっ!?

 まずは基本中の基本、実証と虚証の概念から洗い直すべきである。

 いつまで経っても「体力の優劣」で漢方処方を理解していては、民間療法に毛が生えた程度のレベルから脱することは出来ない。

 体力の有無は何を持って判断できるのか??? 一日がかりで体力測定でもするとでもいうのだろうか?

 実に噴飯物と云わざるを得ないっ。

 日本漢方における虚実論は、一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝うのタグイと云っても過言ではないっ。

 また水毒の概念においても、現在はどう云っているかは不明だが、一昔前までは胃内停水があるのは水毒体質だから、水分の摂取は極力避けるようにと大真面目に語られたものである。

 これはとんでもないことで、それでなくても昨今の夏場の猛暑では、熱中症や脱水症状による命の危険をみずから招く行為に等しいのである。

 日本漢方で言われる水毒体質であっても、十分な水分補給を怠ると、とんでもないことになるので、迂闊に彼等の非科学的なアドバイスに従うのは危険である。

 昨今の新人さんで、某所のアトピー専門の某医院に遠路はるばる訪ねて治療を請うたところ、一日の水分摂取量を500ml以内に制限するように強く指導されたという。

 実に殺人行為にも等しい指導と云わざるを得ない。
 恐ろしい医師がいるものであるっ。

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ASC_5856 posted by (C)ヒゲジジイ

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2011年06月20日

藿香正気散証の季節到来

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FSC_3213 posted by (C)ヒゲジジイ

北陸地方のお馴染みさんからのおたより:

 昨日は急に気温が上がり、エアコンをガンガンかけたせいか、朝から頭痛で、吐くは下すはのオンパレードで、午前中は急遽仕事を休んで寝ておりま した。

 その際藿香正気散を服用したのですが、それも吐いてしまうという有様で、その際冷たいお茶で服用したのがまずかったのかと思い、ぬるめの お茶で服用したところ、吐くことがありませんでした

 やはり寒湿困脾のせいでしょうか? お陰さまで7割がた治まりました。


【編集後記】 藿香正気散証を的確に見抜かれ、村田漢方堂薬局から折々に購入されて常備薬として保存されている藿香正気散をすかさず服用されて速効を得た実例報告を頂いた。

 とても興味深い点は、冷たいお茶で服用した場合は受け付けず、ぬるめのお茶で服用したら吐かなかったというところ、これこそ典型的な寒湿困脾による現象である。

 蛇足ながら、例年のことだが、暑い季節に新幹線に乗車して、過度の冷房によって藿香正気散証を呈する人が実に多い。
 幸か不幸か、今年は節電の必要に迫られて、新幹線も冷房温度を上げるということだから、それだけでも藿香正気散証を呈する確率は格段に低下すること請け合いである。

 新幹線は、これまでがあまりにも冷房を効かせ過ぎだったように思われる。

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FSC_3104 posted by (C)ヒゲジジイ

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2011年06月09日

温め療法に熱中して熱中症になったらシャレにもならない

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IMG_9726 posted by (C)ヒゲジジイ

 冷えは万病の原因であると巷では喧伝され続けて久しい。
 たとえば、アトピー性皮膚炎の主因は「体内の冷え」であるそうなっ!???

 ニンニクを主体にした健康食品や生姜ブームが蔓延する昨今ではあるが、今夏は節電が奨励される過酷な時代である。

 猛暑の夏に、温め療法を続ける人たちが、同時にエアコンを節約して熱中症に罹り、あれよあれよと言う間に昇天されてはシャレにもならない。

 冷え過ぎるのも問題だが、温め過ぎるのも問題である。

 どうして中庸を保った考えができずに冷えばかりを問題視するのだろうか?

 この日本には幼稚な考えばかりが蔓延する。
 これが日本の国民性としたら、なるほどっとうなずけることがある。

 吉益東洞以来、日本の漢方はいつの間にか民間療法レベルに単純化され、体力のあるナシで処方を選定する幼稚な考えが定説となってしまった。

 複雑な陰陽五行学説を基礎に発展した中医学理論を荒唐無稽として蔑視する。

 だから、巷の医師達の投与する保険漢方の実体は見るに耐えない。

 五臓六腑の弁証すらチンプンカンプンの連中に投与される漢方薬。

 これが日本の最先端を走る最高の漢方薬だと信じ込まされている患者さんたちの多いことったらっ・・・実に噴飯物ではあるが・・・まあ、お好きにどうぞっ。

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IMG_9567 posted by (C)ヒゲジジイ

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IMG_9380 posted by (C)ヒゲジジイ



ラベル:温め療法
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2011年06月05日

救いようがない日本の漢方医学

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CSC_9284 posted by (C)ヒゲジジイ

 日本の漢方医学においては、いまだに「実は体力の充実している状態、虚は体力の衰えている状態」として、恬として恥じ入る風もない。

 たまたま「漢方医学」を検索して出て来た指導的立場にあるサイトで、このように書かれていた。

 こういう幼稚な概念でしか表現できない日本の漢方医学であっては、永久に進歩はあり得ない。

 「実は体力の充実している状態」という表現自体、錯誤も甚だしい。

 このような錯誤した概念で日本国中の医学部・薬学部の学生達が、漢方医学を学んでいるとしたら、クワバラ、くわばら・・・(冷汗

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CSC_9263 posted by (C)ヒゲジジイ


 
posted by ヒゲジジイ at 06:24| 山口 | 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年05月20日

加味逍遥散合茵蔯蒿湯で多彩な領域に適応する女性達

シジュウガラ
シジュウガラ posted by (C)ヒゲジジイ

 ふっと数えてみたら、加味逍遥散合茵蔯蒿湯の合方を主体に他剤と併用して様々な疾患に応用して成果を上げているケースが相当な人数に上ることに些か驚いている。

 本気で通える人だけをターゲットに漢方相談を受けている少数精鋭の村田漢方堂薬局において、加味逍遥散合茵蔯蒿湯を主体に使用されている人が二桁を軽く超えていることに今更ながら驚いている(苦笑。

 みなさんいずれも様々な西洋医学治療や漢方治療でほとんど無効だった人達ばかりだから、相当に頑固で根深い慢性疾患ばかりである。
 それゆえこの二種類の方剤が主体になりながらも、他にも必要不可欠な方剤や中草薬の併用を必須としている。
 広い分野に応用して効果を上げているが、これが中医学の本領というものだろう(笑。
 
 大学病院に長年通っても治らなかった強烈な慢性頭痛、胆嚢炎や胆石症、慢性疲労、肝斑及び顔面の各種色素沈着、更年期障害、不定愁訴症候群、自律神経失調症、鬱病、多くのアトピー性皮膚炎の女性達、三叉神経痛、交通事故後遺症や脳脊髄液減少症、重症の緑内障などなど、まだ思い出せばなおも数例出て来ることだろう。

 すべて現在進行形で、一定の効果が出ている人達ばかりである。

 特筆すべきは、一見、補中益気湯証を思わせるような重度の慢性疲労症であっても、既に補中益気湯を服用して効果がなかった人でも、舌証などからは中気下陥は否定され、肝鬱脾虚に肝鬱化火を伴っているケースでは、補中益気湯で無効な慢性疲労が一気に効果を発揮している。

 またすでに加味逍遥散製剤(白朮を蒼朮で代用した問題の方剤)を服用していた人でも、正しく白朮が配合された方剤の使用で、しっかり効果を発揮した例は珍しくない。
 他の併用方剤のバックアップ方剤の効果も否定できないが、現実に多々見られる現象である。

 まあ、ともかく加味逍遥散合茵蔯蒿湯を必要とする体質者がいかに多いことかっという本日のお話。

 ところが三十数年前には、加味逍遥散合桂枝茯苓丸こそ最も多かったのだが、実に隔世の感がある。当時、和漢薬誌の299号つまり1978年4月号に「加味逍遥散加桂枝桃仁について」と題した拙論が掲載されているが、今更ながらとてもなつかしい(笑。

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ASC_2806 posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 23:13| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年05月12日

高温多湿の日々に発した急性顔面湿疹と咽喉腫痛

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IMGP3220 posted by (C)ボクチンの母

 この急激な温度上昇と蒸し暑さに、雑事で疲労の極に達していた中年女性が、強烈な咽喉腫痛にともない寒気と熱感が交互に来て、やがて顔面の熱感の強い急性湿疹が出現した。

 同時に胸苦しく肺系統もやや深くやられた気配。

 涼解楽(銀翹散製剤)を主体に茵蔯蒿湯に黄連解毒湯、小陥胸湯加味製剤に板藍茶の併用によって数日で7割以上の改善を得たとの報告を持って本日、補充注文に来られた。

 常連さんに近いお馴染みさんともなると、ぐいぐいと腕を上げられているが、途中、電話で指導を仰がれた時に、もっとも重要な涼解楽が欠けていることを指摘していた。

 極端な疲労時に咽喉腫痛を伴った風邪を引いた上に、チャドクガにでもやられたのか?、涼解楽を加えた時よりも、その後に黄連解毒湯と茵蔯蒿湯を追加した時になって、湿疹が改善するのと同時に、急速に咽喉腫痛が軽減したといわれる

 ご本人自身の感想では、顔面の急性湿疹と咽喉腫痛が直結していたように思えてならないという体感があるそうである。

 まとめて復習すると、まず寒気と熱感をともなう咽喉腫痛と同時に呼吸器に異常を感じる。より具体的には気管支付近の熱感を伴う胸苦しさを覚える。
 そこでヒゲジジイに相談する前に、天津感冒片の少量を齧りながら、小陥胸湯加味製剤と板藍茶を服用。しかしながら強烈な咽喉腫痛の改善が得られないので、ヒゲジジイに電話をかける。

 ヒゲジジイの返事では天津感冒片の少量を齧る程度では間に合わないので涼解楽をまともに服用せよとアドバイス。
 涼解楽を追加すると咽喉腫痛が多少軽減したが、翌日くらいから強烈な熱感を伴う顔面の湿疹が突然勃発。

 もしかして外出が多かったのでチャドクガにでもやられたか?という可能性を感じる。

 そこで自主的に黄連解毒湯と茵陳蒿湯をさらに加えたら上記の通りの結果だったということ。

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IMGP3309 posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 13:32| 山口 ☔| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2011年04月24日

難治性の疾患ではうっかり漢方薬を中断すると再発するのは止むを得ない

ノゴマ(雄)
ノゴマ(雄) posted by (C)ヒゲジジイ

 重度の慢性疾患や難病指定を受けるよう疾患など、あるいはしばしば見られるアトピー性皮膚炎などでも、西洋医学治療では無効であったり不十分と感じられた人達の漢方相談はもっとも多い。

 せっかく漢方薬の効果がしっかり出ていても、中途半端な段階で中断されると再発することはほとんど必至。
 ところが順調に経過した人ほど、しばしば7割程度の寛解が得られた段階で、突然中断されて無音となることが多い。

 案の定、早い人では数ヶ月、遅い人では一年以上経って再発し、久しぶりにやって来られたケースが今年の春も何名か続いた。

 もともとの病気の性質によっては、効果を発揮していた従来の配合で直ぐに一定レベルまで回復する人ばかりとは限らない。

 数ヶ月〜1年以上のブランクが証候変化を生じて病状をこじらせ、以前よく効いていた配合では太刀打ちできなくなっていることも多く、弁証論治をやり直して、さらに増強しなければならないケースもしばしば。

 「どうして中断したのよっ」と言っても詮無い話。

 せっかくあそこまで回復していたのに、どうして中断したのか、なんとも理解に困しむものの、所詮はご本人自身の問題である。こちらがそれ以上気を揉んでも仕方がない。それこそ自己責任の問題でもある。

 それらの多くの人が、せっかく効果があった漢方薬だから、できれば一生涯服用し続けたほうが無難な疾患であることも多い。それほど難治性のものであるケースが多いのである。

 総じて言えることは、やや不思議な感もないではないが、一定の安定した効果が持続出来るまでにはお互いの苦労が絶えず、繰り返しの弁証論治に難航したケースほど、病の重大さを悟られる人が多いように思われる。
 それゆえ、少々のことではへこたれずに、8〜9割以上寛解の安定した状態を維持すべく、服用回数を減らすなどしてでも、根気よく継続される傾向が強い。

 アトピー性皮膚炎などは、うっかり中途半端に中断しても、多くの場合は心を入れ替えて再度頑張り抜いてもらえば、いくらでも取り返しがつく疾患ではあるが、アトピーのような訳には行かない難治性の疾患も多いのである。

 たとえば、僅か数ヶ月の中断で、元のレベルに戻せるかどうかは五分五分の段階まで悪化し、尿素窒素やクレアチニンの値が急上昇してしまったケース。
 ご本人のたっての希望であった透析が避けられるかどうかは五分五分、あるいはもはや時間の問題かもしれない。

 中には命に関わるケースでも、信じられない即効があったことに喜ばれ、しばらくは継続服用されておられたが、突然半年以上の無音が続いた。
 そうして突然来られた時には再発して病状も悪化している。経費的な問題で中断せざるを得なかったとのことで、今回からは以前の半分以下の経費で配合を減らして欲しいとの依頼。
 もちろんご希望に沿わざるを得なかったものの、久しぶりに来られたのはそれが一度切りで終わり、そのまま長く無音が続いている。

 このようなケースは気の毒でならない。

ノゴマ(雄)
ノゴマ(雄) posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 20:01| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする