2014年10月21日
ほとんどの病気がストレスがらみ
2008年10月21日のボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ
ほとんどの疾患に、ストレスが関わっているのは当然。
この地球上で人類が生活する上では様々な障害に遭遇するように宿命付けられている。
折々に自然の猛威に晒され、あるいはそうでなくとも、25人に1人はいるといわれるサイコパスの人達との折衝など、あるいは嫉妬やイジメに合うのは日常茶飯事。
地球上の人間社会で暮らすには、様々なストレスは避けがたい。
それゆえであろうか、あらゆる分野の疾患において、加味逍遥散および逍遥散、柴胡加竜骨牡蠣湯、四逆散、柴胡疏肝湯、開気丸、加味帰脾湯および帰脾湯など、ストレス関連の方剤の併用を必要とすることシバシバ。
なかでも顕著なのは、加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蠣湯、四逆散は、ストレス疾患用の代表的な3方剤といっても過言ではないだろう。
また、しばしば加味逍遥散合柴胡加竜骨牡蠣湯、加味逍遥散合四逆散、柴胡加竜骨牡蠣湯合四逆散という、三種類の合方もしばしば多用される。
強いストレスを蒙ることなく、一生涯を平穏無事で暮らせるなんて、ハナから不可能なこの世の生活である。
また、幸せから遠ざかりたいという人類に共通した「幸福否定」の心の闇を晴らす上でも、上記の方剤類は、欠かせない。
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2009年10月21日のボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2010年10月21日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2011年10月21日のボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2012年10月21日のボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 00:02| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2014年10月06日
私見によれば、中医学の理論体系は唯物弁証法的観念論により構築されたものであろう
2014年10月3日のシロちゃんとトラちゃん(各メス1歳) posted by (C)ボクチンの母
【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:40〜49歳の男性
【 地 域 】:関東地方
【 具体的なご職業 】:電子機器開発
【 お問い合せ内容 】:
金銀花の効果
お世話になります。●●と申します。
ブログを読ませて頂きメールした次第です。
只今、風邪はほぼ完治したのですが、風邪からくる歯茎の痛みで困っていたところ、 中国出張時に買った復方金銀花顆粒を飲んだところ、ほぼ痛みが引きました。
風邪 薬は全く効果がなく、イブプロフェンの痛みどめもわずかな効果でしたが、不思議なくらい復方金銀花顆粒は効果がありました。
一回の飲用で痛みは消え、腫れも引いた感じです。
ブログの中で、薬理作用が見えなかったという信じられないような解説があり、驚いております。
人間の免疫能力を何らかの形で、活性化するなら、確かに薬理という観点で、作用は見えないのかという風に納得いたしました。
先生のご意見ご感想頂ければ幸いです。
2008年10月6日のボクチン(4歳) posted by (C)ボクチンの母
お返事メール:
中医学や漢方世界は、現代科学では、このような金銀花( http://murata-kanpo.seesaa.net/article/373492997.html )という漢方生薬の薬理作用を解明できないレベルであるのか、あるいは唯物論科学には限界がある分野なのか?
いずれかは分かりませんが、もしも後者だとすれば、人間存在そのものが、唯物論的存在以上のものであるのではないか、と思われます。
もしもそうだとすれば、中医学は陰陽五行学説など古代の唯物弁証法の影響を受け、整体観念( http://mkanpo.exblog.jp/7812940/ )を基本概念としていますが、古代の唯物論というのは、現代の唯物論科学とは大きくことなる部分があり、観念論が内在した唯物論であるのが古代の唯物弁証法であるように思われます。
その証拠としても、中医学は、整体観念が基本思想であることからも、決して唯物論だけの世界ではないのですから、おそらく中医学や漢方薬の有効性を真の意味で現代科学で解明したり、証明することは多くの部分で不可能かもしれず、状況証拠で納得せざるを得ないのではないかと思います。
ちょっと変なお返事になりましたが、イメージだけでも掴んで頂ければ幸いです。
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2008年10月6日のボクチン(4歳) posted by (C)ボクチンの母
2014年10月3日のシロちゃんとトラちゃん(各メス1歳) posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 07:16| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2014年10月05日
延年半夏湯証の研究は、中医学よりも日本漢方の専売特許
2008年10月5日のボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ
昨日は珍しく昼寝をすることなく、ブログの掲載応諾があった問い合わせメールでの返信を何度か繰り返していたけれど、内容が内容だけに、またまたどこの漢方薬局さんに通われている患者さんのことか、当事者には直に分かってしまう内容だったので、ブログに掲載することは、断念した。
昼寝をしなかった分、宵の口から深夜12時近くまで寝込んでしまった。
ともあれ本題である。
あんまり日本漢方を褒めたくもないが、こればかりは日本漢方の専売特許である。
この方剤でなければ治せない症候があるが、もしかして41年間に遭遇した例は10人にも満たないかもしれない。
最近、きっと延年半夏湯証が並存していると思われる人に遭遇。
延年半夏湯証の、ほんの概略を記せば、症状が左半身ばかりに偏って出現する特徴をもち、内臓の不調が必ず多かれ少なかれ絡んでいる。
病院の諸検査で、何も異常が見つからない場合でも、膵臓系統の弱さが予測される諸症状が伴っていることが多いのである。
愚妻が若い頃、永くお世話になった方剤だが、根治して以後は、まったく必要がなくなっているが、常連さんの中に1〜2人適応している人がおられる。
先日、新たに、延年半夏湯証らしき人に遭遇したが、四逆散の併用を必要とするように思われる。
四逆散で背中の真裏の疼痛に効果が出ても、左側の諸症状は四逆散では無効。
しかも、出典の『外台秘要』に記載される「腹内左肋、痃癖硬急」が歴然と認められる。
すなわち、みずから左肋の痃癖硬急を繰り返し、申告されるのである。
だからなおさら、延年半夏湯証が合併していると思われるので、もしもこれがフィットしなかったら、漢方薬局を廃業するかも(呵呵。
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2010年10月5日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2011年10月5日のボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2012年10月5日のボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:延年半夏湯
posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2014年09月27日
一定レベル以上の疾患では、通常の弁証論治だけでは、しっかりフィットした漢方薬の配合が見つかるとは限らない
2008年9月27日のボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ
漢方相談専門薬局の仕事では、中医基礎理論をマスターすることは必須条件である。
しかしながら、基礎理論をしっかり理解したからといって、実際の漢方相談時に適切な漢方薬の配合をアドバイスできるようになるわけではない。
現実的な実践学習が必須となる。
つまり、中医理論の有機的な活用能力を、漢方相談という実践上で養わなければならないのである。
そこで、もっとも重要な課題は、一定レベル以上の疾患ともなると、典型的な教科書的病態は、意外に少ないということである。変則的な、あるいは複雑な病態に遭遇することが多いので、中医理論に則った分析能力を、いかにして身に着ければよいか、という問題である。
実際の漢方相談において、一般の中医理論専門書籍による、机上の学習だけでは解決できない疑問点に遭遇することは当然の現実があり、理論上納得できない部分に悩まされたり、「教科書通りには行かないぞ!」と感じた経験は、漢方相談を職とする人達であれば、多かれ少なかれ皆が味わってきたに違いない。
実際のところ、通常の中医理論専門書籍においては、一般の通説を述べるのみで、別解や異説に関しては省略されていることが多いのである。
そのような現実的に遭遇する大きな壁を乗り越えるには、たとえば 中 医 理 論 弁 (瞿岳雲著) 湖南科学技術出版社 などで、しっかり学ぶ必要があるものの、やはりなんといっても、実際の漢方相談の実際の経験が多ければ、多いほど専門書籍では学べない、実践的な知恵が生まれるのである。
といっても、根気よく漢方相談に付き合ってもらえる奇特な相談者があればこそ、のことである。
その点では、村田漢方堂薬局では幸運にも、41年前の開局当初から、西洋医学に見放された地元近辺の人達が、治るまで頑張りますという意気込みの人が集まり、当時は髭のないヒゲジジイをしっかり育ててくれ、本命の病気が治った後も、漢方薬に嵌ってしまい、現在に至るまで常連さんとして、あらゆる病気の治療に漢方薬を利用されている。
但し、どんなに年季を積んでも、こじれた頑固な疾患では、しっかりフィットした配合を得るには、しばらく微調整の繰り返しの期間が数ヶ月以上続くことも珍しくはないが、どこへ行っても治らなかった人達が多い関係上、止むを得ないことだろう。
要するに、複雑な疾患では、裏の裏の、また裏まで読み通すという、通りいっぺんの弁所論治ではすまないことが多いからである。
そのために、どうしても一定期間が必要なこともあるのが現実ではあるが、右顧左眄ばかりするのではなく、ただ実践あるのみである。
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2009年9月27日のボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2010年9月27日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2012年9月27日のボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 00:04| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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2014年02月14日
前回の続き:関西のサムライから折り返し頂いたメール
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
折り返し頂いたメール:ご返信、およびブログへの記載、誠にありがとうございます。
私の店でお世話をしているお客様も、私と同様に村田先生のブログを毎日欠かさずチェックされている方が多数いらっしゃいます。
本日の先生のブログで私の名前などはすべて伏せていただいているにもかかわらず、「あれ、●●先生のことじゃないんですか!?」というメールや電話を何件かいただき、ビックリいたしました。(やっぱり分かる人にはわかるんですね。)
私自身、ない智恵を絞って弁証論治を行い、なぜその生薬が必要なのか、そしてなぜその方剤配合になるのかについては、村田先生を見習って、浅学ながら説明させていただいています。
嘆かわしいことに、他の漢方薬局や漢方クリニックでは、そのような説明を聞いたことがないとか、どんな薬を使っていたのか教えてさえくれていないという古い体質のやり方を目の当たりにするととても悲しくなります。
歴代の医家は、病を少しでも良くするために、とてつもない努力をしていたはずです。
このことは漢方を生業とする人間であれば、誰しもが知っているはずなのに、どうしてこんなノウハウ漢方が主流の業界になってしまったのか、自問自答するばかりです。
生まれた時代が遅すぎたのかもしれません。
村田先生が、ホームページやブログでいろいろなことをご教授していただいているすべてを理解する臨床能力は、まだまだありませんが、たとえばインチンコウトウは肝臓へ作用し、肝の血を蔵し、血に深く関与する臓の特性を利用しつつ、アトピー性皮膚炎などの原因となる血分の邪毒を解毒して、それを気分へと浮かび上がらせるルートを活性化し、胆汁として便中に排出することで、血熱を気分熱に変換し、体外への排出を手助けしていると考えています。
このように正解かどうかは分かりませんが、自分なりの理論を構築し、いつか先生の方剤運用の理論を応用できるように、あきらめずに漢方を勉強していきたいと思います。
今回は、わざわざ、ブログに掲載していただき、誠にありがとうございました。
先生とメールとはいえ、コミュニケーションを取れたことに、心から深く感謝しております。
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
お返事メール:いえいえ、こちらこそブログへご協力頂き、ありがたいことです。
昨今のブログの目的は、一年半前に亡くなったボクチンの懐かしい写真を順次貼り付けることとなり、まったく本末転倒している次第です。
人間は長く付き合えば付き合うほど、互いの欠点が鼻について、離婚という結末を迎える現象が多発していますが(苦笑、
動物、といっても猫ちゃんやワンちゃんのようなペット類の多くは、長く付き合えば付き合うほど、互いの愛情が深まるばかりゆえ、ペットロスという社会現象が目立つようになったのだと思われます。
それほど人間という生き物は、ペットにも劣る動物なのかもしれません(苦笑。
ともあれ、真面目な話として、中医漢方薬学の世界では、ご指摘の通り
>自分なりの理論を構築
することこそ、最も重要なことだと信じています。
> 本日の先生のブログで私の名前などはすべて伏せていただいているにもかかわらず、「あれ、●●先生のことじゃないんですか!?」というメールや電話を何件かいただき、ビックリいたしました。(やっぱり分かる人にはわかるんですね。)
というのも面白いですねっ!
やっぱり世の中は想像以上に狭いようで、大笑いしてしまいました。
せっかくの面白いお話ですので、今回の往復メールも、茶トラのボクチンの写真とともに、ブログに掲載させて頂きたいと存じます。
悪しからずご了承下さい。
この茶トラのボクチン、、難病で通われている人達を励ましに霊界からちょくちょくやって来て、漢方相談のサポートの重要なスタッフとなっているようです。
ときどき信じられないような劇的な効果が出ているのは、「霊界の漢方系の医療団とボクチンの応援があるからに違いない」などと、村田漢方堂薬局に通っている人達の間で噂になっているほどです(苦笑。
但し「引き寄せの法則」などという流行の本に惹かれる人達や、あるいは地縛霊が見えるというような、いわゆる低級霊と繋がりやすい人達は、熱しやすく冷めやすい人が多いようで根気が続かず、どうも当方の流儀には向かないようです(呵呵。
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
折り返し頂いたメール:今回もブログに載せていただき、ありがとうございます。
先生のような超一流の漢方の先生に励ましの言葉をいただけると、この道で間違いないという自信とともに、次世代を担う漢方薬剤師として、ノウハウ漢方に埋没することなく精進していきたいと思います。
先生とメールでのやりとりをさせていただくことは、自分自身にとって、とても幸せなことですが、先生のお仕事の邪魔になってしまいますので、今回をもって控えさせていただきます。
漢方を勉強し始めたころ、村田先生のブログに本当に衝撃を受けました。
そして先生のようになりたくて、カイホーカルシウムやササヘルス、キチンキトサンなどをどういう理論で使っているのかを知りたくて、先生が昔に寄稿した漢方の臨床や中医臨床、ウチダ和漢薬など、すべてを購入し読ませていただきました。
先生が寄稿されたときの年齢は、今の僕の年齢と同じころだと考えると、自分の未熟さを痛感します。
しかし、先生のブログを見たときの衝撃と、この医学を志したときの初心を忘れることなく、これからも頑張ってまいります。
また、先生にご報告できるようなことがありましたら、ご連絡させていただきたいと思いますので、そのときにはよろしくお願い申し上げます。
僕のような初心者の漢方家に丁寧に対応していただき、本当にありがとうございました。
僕のような初心者ですら、日々の臨床に疲れきってしまう業界ですので、先生はもっと大変な毎日を送られていると思いますので、どうぞご自愛くださいませ。
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
ラベル:中医漢方薬学
posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2014年02月05日
強力な補陽剤や去寒剤は長期連用は適さないことが多いように思われる
2008年8月2日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
明らかな附子の証があって、初期に速効があっても長期連用は適さないことが多いように思われる。
昨今遭遇しただけでも、真武湯が主体の配合でしっかりと効果があった繊維筋痛症の人2名にクローン病の人1名。
そのうち2名は初期には速効を得て、1名は劇的な効果を得たが、いずれも数ヶ月もしないうちに温熱過剰となって、真武湯は二度と出番がなくなっている。
そのうち1名は、折々に隠し味程度に必要なことがあるが、ひところのように大量には必要ではなくなっている。
大建中湯においては、子宮内膜症などで腹部の冷えが強烈なケースでは、牛膝散製剤などを主体に大建中湯去膠飴の製剤を併用することで劇的な効果を得ることが過去、相当な人数に上るが、遅かれ早かれ寒邪はほとんど除去されるので、いずれのケースでも、服用量を激減すべき時期がやって来る。
多くは、たとえ使っても生理中に頓服程度にとどめておくのでちょうどよいレベルに改善する。
真武湯にしても大建中湯にしても、長期連用は適さないというか、あるいは使っても断続的に使用するなり、微量の併用程度に落ち着いてくることが多い。
但し、附子剤である真武湯に関しては、たとえ初期に速効があっても、一定期間を過ぎると完全にお役御免となることもある。
以上、大した内容でもないが、例によって猫ちゃんの写真を貼るためのお茶濁し記事に過ぎない。
肩に乗るのが大好きなトラちゃん posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 00:40| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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2013年12月15日
一病息災というよりも多病息災
2008年1月15日のボクチン3歳 posted by (C)ボクチンの母
40年間に亘る漢方相談の仕事において、常連さんたちやお馴染みさんたちとの長年のお付き合いから確実に断定できることは、一病息災というケースのみならず多病息災のケースも多々見られることである。
中には不治を宣告されている血液系の悪性腫瘍においてさえ、多種類の当方の漢方薬類によって二十年近く同年齢の人たちよりも矍鑠とした健康を維持されておられる人もいるくらいである。
その多くの人たちは、不運にも痼疾に見舞われた運命を却ってバネとして、真摯に人生を考え、前向きに捉える冷静さを保てる人たちばかりである。
精神的に不安定な人には日々苦労させられるが、上記のようにどんな難病に見舞われようとも、冷静沈着に対処できる性格の人は本当に幸いなことである。
そういう人たちに限って、当方の漢方薬がよく奏功するのだから、不思議なようで実は決して不思議ではない。
冷静沈着な人たちでは、こちらの手間暇かけた繰り返しの弁証論治に付き合える忍耐力を保持されているからに他ならない。
一生涯漢方薬を手放せない人達も多いが、明るく前向きな人たちばかりなので、むしろ同年代の人たちよりも、明るく元気に人生を謳歌されているので、結果的に人よりも元気で長生きされて、すでに九十歳を超えられた人も増えるばかりである。
みなさんの一番の心配は、ご自分たちよりもヒゲジジイが先にあの世に行ってしまわないか?
そればかりが唯一の心配のタネだそうだから、こちらは唖然として絶句するのみっ。
IMGP2607 posted by (C)ボクチンの母
ラベル:一病息災
posted by ヒゲジジイ at 21:05| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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2013年06月12日
明らかに効果があった漢方薬の剤形やメーカーを変えると効果が激減することがある
2004年ボクチンが生まれた0歳 posted by (C)ボクチンの母
【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:40〜49歳の女性
【 地 域 】:関東地方
【 お問い合せ内容 】:はじめまして。漢方について調べる中で先生のブログに出会いました。見識高い漢方と病理のお話には参考にさせて頂けることが多く、感謝しております。
今回、私のケースに先生のご意見を伺えればとメールを送らせて頂きました。お忙しいとは存じますが、お手すきの時にでもご返信頂けたなら、大変幸いに思っております。
現在17歳の娘(高3)へ3ヶ月ぐらい前より東京の某漢方薬局で処方頂いております。娘は身長163 cm体重50kg程度。ヒョロっとして薄い体型という感じがしますが、生まれつき色黒でスポーツも好み、病弱そうという外見ではありません。
一番悩んでいる症状は、頭痛です。小学校の高学年の頃より時々頭痛を訴えるようになり、年齢が上がるにつれ回数が多くなってきました。少し疲れた時や、天気にも影響されるようで曇りや雨の日は特に頻繁に発症し、ひどい時は毎日のように訴えるようになりました。以前は鎮静剤のイブを飲んで治まっていましたが、効かなくなってきたと最近はロキソニンを使用するようになりました。一年ほど前、総合病院でも診察してもらいました。CTを撮られ異常なし、デパケンRというてんかん治療薬を処方されましたが効き目はあまりなく、薬の説明が少なかったことにも不審が残り、飲むのを止めました。
他にも、幼い頃より疲れやすく、よく目の下にクマが見受けられました。学校やイベントは普通に過ごしますが、日中に家で時間があるとすぐ横になり長い昼寝をする傾向があります。部活の朝練にも参加しますし、毎日の起床で起き上がれずに困るということはありませんが、帰宅後や休みの日は疲労が抜けず、いつまでもだらだら過ごすという感じで、元気みなぎるという様子を見た記憶が久しくありません。12歳過ぎたころに初潮をむかえました。時折生理痛を訴えていましたが、最近やや重くなってきている感があります。中学校の頃は平熱が36度を下回っており(今はもう少し上がっている?)血圧は今でもかなり低めのようですが、貧血を指摘されたことはありません。2年前の春から花粉症を発症し、春先には薬を常用します。お通じは良すぎるぐらい、少し汗をかきにくいように思われ、食欲は普段は人並みより上で肉類を好み、性格はやや神経質で内向的な方かと思います…
上記のような相談を現在お世話になっている漢方薬局でもお伝えし、脈診、舌診、おなかの触診を受けて処方頂いたのは、生薬での「葛根湯加川芎辛夷」「茯苓」「蒼朮」という調合でした。早速煎じて朝夕と飲ませ、当初には即効で明らかな変化がありました。特に顕著だったのが、朝方トイレに起きるようになったことと、目覚まし時計に渋々起されるのではなく、自ら目が覚めるようになったことです。頭痛も徐々に軽減されているようで本当に嬉しく思いました。ただ、生薬は1日分が千円以上かかり、このまま継続して飲ませることはどうしても経済面で困難でした。高3の娘はこの春より受験のための塾に通っており、そちらを捻出するだけでもやっとな状況です。6週間ほど煎じ薬を投与し、その後は金銭的負担の軽い顆粒薬への変更をお願いしました。そして処方頂いたのがクラシエの「葛根湯加川芎辛夷」と「ヨクイニン」です。一日に朝晩2包ずつ飲むよう指導頂き、今も継続して飲ませております。
実は漢方を飲み始めた頃より、娘はこれまでで最も忙しい時期を迎えていました。塾へ通い始めると同時に、GW明けに行われる体育祭の準備が始まりました。学校と部活だけでも疲れていた娘ですが、本人の気合と親のサポートでなんとか頑張っていました。しかし体育祭直前、1日丸々休息できる日があると、それを機に溜まった疲れが溢れ出るかのごとく、どっと調子が崩れました。嫌な微熱が長々続き、血液検査ではやや腎機能の低下が現れました(その後再検査で正常値を確認)。
煎じ薬から顆粒薬に変えたのが、丁度この体調を崩す少し前だったのです。その時は日常とは逸した生活だったので、漢方の効力を量ることは出来ないと考えていました。ただお薬がいつも以上の回復をもたらしてくれるのではと、どこかで期待もしていたのですが、それから1ヶ月以上経過した今、どうもあまりパッとしない状況のままなのです。頭痛も再び間をさほど空けずに発症しているようで、漢方を飲む前の状態に後退したかにも見えます。平常時に薬を変えていれば、もっと分かりやすい違いを感じることが出来たかもしれませんが、今回はそのような事情もあり、今になって、もしかしたら顆粒薬ではあまり効力を感じられないのでは?と考えるようになってきました。煎じ薬より負担が軽くなったとは言え、充分に高価なお薬です(特にこちらの薬局は地の利のよい場所にあるためか、ややお薬の値段が他店に比べ高いと、ネットなどで調べるうちに感じるようになりました。)もし顆粒薬の投与ではゆっくりにしか効力が出ないなら、時間もなかなかとれない今、経済的な無理までして家庭全体が疲れてしまうより、ひと段落着いたところで仕切りなおし、腰を据えて治療していった方が良いのでは?という考えもよぎるようになり、また一方では、せっかく3ヶ月も飲み続けたのに、という気持ちもあり、揺れ動いております。
先生にお伺いしたいのは、一つは、煎じ薬と顆粒薬の違いです。娘の場合、顆粒薬に変えたことは大きかったのでしょうか?また、顆粒薬に変更することにより「茯苓」「蒼朮」の役割が「ヨクイニン」に代用されました。このことが違いを生んでいるとは考えられないでしょうか?それから、これは素人の浅知識で恐れ多いのですが、漢方の効能を調べていると、他にも娘の症状に当てはまりそうな漢方薬があるようにも感じています。顆粒薬でも、もう少し効果の感じやすいお薬を他に考えられないでしょうか?
ついつい、このように長い文面となってしまい、本当に申し訳ありません。どうか先生のご見解を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。
2004年ボクチンが生まれた0歳 posted by (C)ボクチンの母
お返事メール:
> 先生にお伺いしたいのは、一つは、煎じ薬と顆粒薬の違いです。娘の場合、顆粒薬に変えたことは大きかったのでしょうか?また、顆粒薬に変更することにより「茯苓」「蒼朮」の役割が「ヨクイニン」に代用されました。このことが違いを生んでいるとは考えられないでしょうか?
という問題はとても大きいと思います。
たしかに配合内容から考えても価格はあまりにも高価すぎ、その半分の価格でもそれでも高すぎるくらいです。
といっても、知識と技術の伝授量や相談料も含むと言えば、明らかな効果が得られていることを考えれば、決して暴利とはいえないかもしれません。
肝腎の「茯苓」「蒼朮」の役割が「ヨクイニン」に代用できることはなく、天気に左右されるという体質に関連する湿邪の除去にはやはり茯苓や蒼朮・白朮などが適しています。
また煎じ薬だからとか、エキス剤だからとかいう以前に、最初にしっかり効果があった漢方薬を他の剤形(エキス剤など)に変えたり、エキス剤同士でも、同じ処方名だからといって他社製に切り替えると途端に効果がなくなる場合だって珍しくないのが天然生薬を原料にしている漢方薬の微妙さがあります。
たとえば最近当方であった事例では、関東から来られているアトピーの人に、それほど重症ではないので幸いに猪苓湯・六味丸・茵陳蒿湯各エキス製剤で一定の効果が出たのでそのまま様子をみてもらっていたところ、ついつい調子がよいのに食事などの不摂生が祟ってしまったのを申告しないまま「効き目が弱くなってきた」と申告されるので、同じ猪苓湯エキス製剤でもエキス濃度が2倍の他社製に切り替えてもらったところ思いがけずに一気に悪化して来たので、これは怪しいと最初のメーカーの猪苓湯に戻したら、しだいに状態がよくなりつつあり、明らかに最初の配合のままの方がよかったという現実があります。
このようによく効いている漢方薬を同じ名前のものだからと他の製剤に切り替えると効力が次第に減って、元の木阿弥になることも珍しくはないのです。
それゆえ、こちらからアドバイスできるとしたら、大事な時期でもあるようですので、少々高額に感じられても薬局さんの指示通りの配合を素直に受け入れて、すべてを指示通りに従ってみるべきかと思います。
少し節約したために病状が元に戻ってしまっては却って高いものにつくことが往々にしてあるものです。
それでも敢えてエキス剤で考えられるとしたら、たとえばの話ですが、葛根湯加川芎辛夷に半夏白朮天麻湯を併用するとか、あるいは葛根湯加川芎辛夷に苓桂朮甘湯を併用するとかの方法でフィットすれば、少なくとも1日分500円以下、300〜400円前後で済む可能性はありますが、いずれにせよせっかく効いていた配合を切り替えるのは結果的にはまずかったと思います。
言うまでもないことですが、漢方の世界は値段よりもピントの問題こそが重要で、価格がいくら安くてもピントが合わなければまったく効果が出ませんので、一ヶ月分3万円のことでしたら、他の部分で節約を心がけて捻出されてもよいのではないかと思います。
2004年ボクチンが生まれた0歳 posted by (C)ボクチンの母
折り返し頂いたメール:早々の詳しいアドバイス、本当にありがとうございました。
第三者的な立場での、専門の方のご意見は、とても素直に受け止めることができます。
「漢方というのは、値段で効き目が決まるのではなく、その人その人にピントが合うか合わないか。」
といった表現は、すごく分かりやすいものでした。
しかし、そのピントの合った薬に出会えることが、そう簡単なものではないのですね。
自分の体や病理に合う薬を見つけるまでに苦労されている方のことを思えば、娘は幸運なのだということも分かりました。
おかげ様で、今までもんもんとしていた思いをスッキリさせることが出来ました。
親としてできる努力をしたいと思います。
先生の漢方治療に対する姿勢は 一貫しており、ブログを読ませて頂いていて清清しいです。
これからも時折覗かせて頂いて、新しい話題を楽しみにしております。
失礼致します。
DSC_0883 posted by (C)ボクチンの母
ラベル:葛根湯加川芎辛夷
posted by ヒゲジジイ at 20:02| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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2013年04月29日
漢方治療とスピリチュアル・ヒーリング(心霊治療)の有効率比較
_IGP0291 posted by (C)ボクチンの母
新刊の東大医学部教授の矢作直樹著『魂と肉体の行方』の中に心霊治療家のことが紹介されている。
すなわち世界的に著明な英国のスピリチュアル・ヒーラーのハリー・エドワーズ氏。
また、このスピリチュアル・ヒーリング(心霊治療)は、1991年に英国厚生省に資格のある施術者であれば医師の管理する診療所で治療を行えることが正式に認められるようになっている。
最も知りたいことが有効率や治癒率の問題であるが、この世界的に有名なハリー・エドワーズ氏の治病統計というものが近藤千雄著『霊は実在する、しかし』という書籍に掲載されていた。
いずれも患者さんたちはあらゆる西洋医学治療で無効だった疾患ばかりであるが、有効率80%でそのうち全治したのが30%。しかしながら何の改善も見られない人が20%ということである。
翻って漢方治療においてはどうだろう?
手前味噌ながら、当方で受ける漢方相談のほとんどが西洋医学治療で効果が少ないか無効例であり、同時に各所の漢方専門外来や漢方薬局で無効だった人たちがほとんどを占めるが、控えめに言っても有効率だけで言えば80%は軽く超えていると自負するものである(苦笑。
そもそも漢方処方を構成する生薬の来歴の多くは、霊界と交流が自由だった中国古代の神農さんが選りすぐったものだけに適切な漢方処方を用いれば、あの世(霊界)の神能さんや張仲景さんなどが主催する医療団の応援まで得られるかもしれないので、当然といえばとうぜんの有効率であろうと思われる(呵呵。
関連ブログ:多くの進行癌や転移癌、あるいはステージ4と診断されている癌患者さんたちにいつも喜ばれているアドバイス
_IGP0197 posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 22:32| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2012年08月09日
シャルコー・マリー・トゥース病に対する漢方薬
IMGP0058 posted by (C)ボクチンの母
当時、シャルコー・マリー・トゥース病という病名すら知らなかった。
gooヘルスケアによると
遺伝性ニューロパチーのひとつで、下腿・足に始まる四肢遠位筋(ししえんいきん)の萎縮(いしゅく)・筋力の低下を主徴とする疾患です。欧米では多い病気ですが、日本での頻度はあまり高くないとされています。十年以上も前に歩行障害が少しでも楽になればと漢方薬を求めて来られた方の主訴は、下肢の筋力低下に伴って歩行による負担が両膝痛として出現していたので、弁証論治に忠実に方剤を選択することで、疼痛は軽減し、歩行がかなり楽になり、とても喜ばれていた。
筋力低下に対する補中益気湯類の併用も加えて徹底的に継続服用されれば、進行を食い止め、杖を外す可能性も見えてきそうで、こちらの方がとても楽しみにしていたのだが、途切れ途切れの利用が続き、いつの間にか無音となられた。
明らかな漢方薬の効果が見えていただけに、難病系統の人達こそ、往々にして漢方治療半ばでいつしか無音となられる現実に、いつも首を傾げざるを得ないのだった。
漢方薬をいくら工夫しても効果が皆無となれば、愛想をつかれて無音となるなら尤もなことではあるが、そうではなくて、どこの漢方薬でも同じことだと思い込んでいる人達が予想外に多く、他所の漢方に移ってしまい、そこでは効果が出なくなったので、漢方薬はやっぱり一時的に効いても、結局は効かなくなると誤解されている人(難病系統の人達)が意外に多い。
たとえば線維筋痛症の例でも、初期には真武湯に疏風活血止痛の方剤類で著効があっても、そのまま続けていたら一転、熱証に転化して真武湯とは真逆の清熱舒筋の方剤に切り替える必要が生じた実例がある。
もしも熱証に転化した状況を見逃して、いつまでも初期に速効を得た真武湯に固定し続けた投与が続くならば、寒証による疼痛から、今度は一転、真武湯を持続する弊害が生じて熱証による激しい疼痛が悪化の一途を辿ることになる。
このような状況変化の機微をすかさず察知して漢方薬の配合変化を行うのが常識であるが、難病系統の人達の中には、状況変化に応じた臨機応変の配合変化の必要性を説いても、最初によく効いた漢方薬を入れ替えることに却って不信感を抱いて、そのまま中断されてしまったことが若い頃には多発した。
昨今ではそんな馬鹿な連中はほとんどいないが、当時はどうして理解してもらえなかったのか不思議でならない。配合変化の必要性を説けばとくほど不審がられていた人達の顔が思い浮かんで、当時のじれったくも腹立たしい気分が思いだされるのだった。
IMGP0047 posted by (C)ボクチンの母
ラベル:シャルコー・マリー・トゥース病 線維筋痛症
posted by ヒゲジジイ at 07:58| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2012年03月27日
年末を区切りにいつの間にか消えていた人が・・・
GSC_2136 posted by (C)ヒゲジジイ
年が変わるというのは便利なもので、これを区切りにいつの間にか音沙汰が無くなる人が最も増えるのがこの時期。
ところが中にはやっぱり中止するのは時期尚早だったと今月になって3〜4ヶ月ぶりにやって来られる人が目立つようになった。
また再開という訳であるが、ほどほど治っている人が多いので、おそらくそのまま再度次第に音信が途絶える可能性が高い。
但し、中には漢方薬を信じないというご主人から継続服用を邪魔されていたという女性もいた(苦笑。
また、ご主人に隠して服用しているケースでは突然発覚して継続できなくなたケースもある。漢方薬が夫婦喧嘩の種になるようでは、なんだかヒゲジジイが侮辱されているようで些か不愉快。
ちょっと脱線し過ぎたが、いずれにせよ少数ながらも新旧交代時期として、年が変わる年末年始がよい区切りになっているに違いない。
今年の新人さんたちで目立つのは、やっぱり今年も進行癌や転移癌の人達。
その多くは当方の漢方薬を癌サポートに利用されて良好な結果が出ている人達を現実に「目撃」して来られる人が多いので、本気の人達が目立つ。
その他で目立つのは、昨年来、疼痛関連で、頭痛や三叉神経痛やめまい、関節リウマチや坐骨神経痛などの疼痛関係も目立つが、いずれも病歴が長い人が多い。
アトピー性皮膚炎を含めた頑固な皮膚病もコンスタントに新旧が入れ替わっている。
但し、重症だった人達の多くは8割以上の改善を得ても、さらに治療を徹底すべく、年末年始の区切りなど無関係に、継続的に安定的な完全寛解を目指して頑張る人の方が目立つ。
でも、帯状疱疹の後遺症や頑固な慢性蕁麻疹などでは、前者は疼痛が半減したくらいでも次第に遠ざかる人が多く、蕁麻疹は消えるときは劇的に漢方薬が反応するから、早期に止めてしまう人が目立つ。
肥後の白長楽 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 00:35| 山口 | 中医漢方薬学
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2012年03月11日
漢方製剤は同一処方でも各社それぞれに特徴がある
KSC_3609 posted by (C)ボクチンの母
各社それぞれの漢方製剤のその多くを占めるエキス製剤には個別的な特徴がある。
「特徴」とは言っても「特長」と発音が同じでも当然意味するところは異なっている。
つまり特徴というからには、長所ばかりの特徴ではなく、短所という特徴もあるということです。
たとえば際立った「短所の特徴」として、ヒゲジジイが最も忌み嫌うエキス製剤の中に、本来は白朮を使用すべき方剤を、蒼朮で代用される製剤こそ、際立った短所としての特徴であり、つまりは大きな欠点である。
見かけによらず繊細でデリケートなヒゲジジイが経営する村田漢方堂薬局では、長年の経験から各処方毎に愛用する製造メーカーが大きく異なっている。
たとえば葛根湯では、葛根・麻黄・甘草の配合比率が4:2:1の製剤を最も重宝しており、猪苓湯は製造時に最後に溶解させる阿膠がしっかり配合されたものは敬遠する。(阿膠がしっかり配合されると利水作用が大きく阻害されるからである。)
乾姜は、正しく乾燥生姜を使用している製剤を第一選択肢とし、わざわざ飴色になるまで蒸した煨姜(ワイキョウ)もどきの製剤は敬遠する。(飴色になるまで蒸して製したものでは、本来、乾燥生姜に備わる健胃作用が大きく損なわれるからである)。
補中益気湯や六君子湯などのように白朮が配合されるべきものが、蒼朮で代用されている錯誤した製剤は敬遠することは既に延べた通り。
それ以外にも、それぞれ各社の処方毎に特徴があるので、しっかり選別して優れた製剤だけを提供できる態勢で長年この仕事を続けてきた。
世間で思われる以上に、各種エキス製剤には配合される生薬の問題や配合比率の問題、および製造方法によって、同じ名前の漢方製剤であっても、優劣が大きく異なることは既にこのブログや他のブログでも繰り返し述べて来た通りである。
各社の漢方製剤を吟味した結果、村田漢方堂薬局で常備する漢方製剤は、各方剤毎に製造元が異なる。
そこまで徹底した理由は他でもない、弁証論治にもとづいて得た結論からも、必ずや方証相対するはずの漢方(エキス)製剤を飲んでもらって、もしも期待したほどの効果が出ないということがあっては絶対に困るからである。
DSC_0515 posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 15:00| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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2012年02月20日
あの頃は一体なんだったんだろう?
目の前に降り立ったハイタカ posted by (C)ヒゲジジイ
あの頃というのは若い頃のこと。
漢方相談で初回から少し効果が出て、それでも微調整の必要を感じて数種類の配合方剤中の一つを実験的に他の方剤に切り替えて、効果を比較して欲しいと、現在と同じことをやっていた。
にもかかわらず、当時はこの微調整実験を行ってもらうと、多くの人がそのまま無音となって二度と来られることはなかった。
若者の頃だから、まだワカモノならバカモノと同類と見られていたに違いない。
だから当時は効果が出た配合方剤を滅多なことで微調整できなジレンマを感じることが多かった。
うっかり微調整の話を持ちかけると、こちらが自信がない若造、ヒヨッコと侮られて、いっぺんに信用を落としていたものらしい。
ところが一方では素直にこちらの右顧左眄、試行錯誤に付き合ってくれ、研究熱心な若者としてますます信頼してくれる人が常に少数おられた。
その少数の人達が毎年僅かずつ増え続けて、今日の多くの常連さんが生まれることとなったのだった。
目の前に降り立ったハイタカ posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 23:17| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2012年02月13日
猪苓湯合茵蔯蒿湯で生き延びるボクチン
ASC_5656 posted by (C)ヒゲジジイ
数年前から歯肉炎が悪化し、それでも抗生物質のクラリスでなんとか小康を保っていたが、昨年にはとうとうクラリスも効かなくなって万事休すの状態だった。
あらゆる漢方薬は服用を拒否するし、クラビットを飲ませると嘔吐する。飼い主に似て繊細でデリケートだからイヤとなったら断固拒否される。
それでも何とか宥めすかして、最後の手段とばかり、猪苓湯を飲ませると意外にスンナリ飲んでくれた。そこで茵蔯蒿湯も混ぜて服用させると毎回服用を嫌がるが、さいわいに吐き出すことはない。
これが想像以上に著効を奏して今年になって化膿性炎症が軽減して元気モリモリとなって食欲も回復した。
以来、濃厚な化膿性の粘液が漏出することはなくなり、出ても比較的透明な唾液に近い粘液が漏出する程度になって安定している。
昨年秋からボクボクいう迷い猫が住み着いているが、ボクチンが食べ残した食事をしばしば食べているが、感染することもなくスクスクと育っている。
ボクチンに遊んでもらおうとしばしば喧嘩をしかけられてボクチンは迷惑顔。
だから先日、ボクボクは去勢してもらったが、生来温厚なボクチンは去勢をしないままだが、ヤンチャ盛りのボクボクを止むを得ず受け入れている。
AAAA1301 posted by (C)ボクチンの母
ASC_5390 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 07:46| 山口 | 中医漢方薬学
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2012年02月10日
漢方薬が的確に奏効して社会復帰できた女性たち
AAAA1123 posted by (C)ヒゲジジイ
かっこよく「漢方薬が的確に奏効して社会復帰できた女性たち」とタイトルにしたものの、一部の人では折々の配合の微調整に苦労を重ねたケースもあるにはあるが・・・
最終的にはめでたく昨年だけでも社会復帰を果たせた女性たちは数多い。
腎不全から脱出できた人。
アトピーがしっかり緩解して安定した人達。
社内のいじめに合ってパニックとうつ症状で家に引きこもっていた人。
學問に邁進し過ぎて慢性疲労症候群様の病状に陥り、西洋医学ではお手上げ状態になっていた人。
長い年月、様々な種類の頭痛が交互に続いて、一般病院では手に負えず、大学病院まで何年も通って治らず、医療用の桂枝茯苓丸など様々に漢方薬を投与されても無効だった人など・・・
いずれも家に引き篭もって外に出て仕事をするなどトンでもない状態だった20〜40代の女性たち。
中にはグラビアアイドルのような美形の女性たちが本当に複数!!!(笑。
気立てのよい人達ばかりだから、社会復帰するにあたって就職先やパート先も直ぐに見つかって、いずれも現在、元気で活躍している。
いつも笑顔で漢方薬の補充に来られるのを見ていると、漢方薬局冥利に尽きる。
中には三十数歳になった誕生日にやって来て、元気で歳を取れたことが嬉しいと、おめでとうと言ってくれと要求される。
「えっ!? 女性が歳を取ってバアサンに近づくのを、こちらからオメデトウなんて言えっこないよ〜っ」と頑固ジジイ。
「それでも私は嬉しいのっ! だからオメデトウくらい言ってよっ」とのたもう女性心理が分からない。
すると受付嬢が、元気で社会復帰出来てこうして誕生日を迎えられたことが嬉しいのだから、トウエンボクを言わないで、オメデトウくらい言ってあげたらどうなのよっ、と叱られるのだった。
それにしても、どうして女性が三十代で次第にババア〜に・・・ムムっ
AAAA1120 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 00:02| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2012年02月05日
歯痕がみられても虚とは限らない
ジョウビタキ(メス) posted by (C)ヒゲジジイ
長年のもやもやが氷解したっ!
これまで多くの中医学の教科書では、舌が胖大で歯痕がみられれば脾虚や湿盛とされていたり、絆大を伴わない場合でも舌が淡嫩であれば気血両虚の場合が多いなどとされていたが・・・
実際には総合的に弁証分析してみると、虚証や湿盛の兆候はみられずに瘀血の証候がみられ、活血化瘀法が適応する例が少なくないという。
これらの驚くべき最近の研究成果、陝西中医学院国医大師研究所の李軍氏と周海哲氏の共同論文が季刊誌「中医臨床」誌の2011年09月の通巻126号の82〜83頁に翻訳して掲載されている。
というわけで本論の結論では
実際の臨床では、歯痕舌は気虚・湿盛・瘀血にその他の証を兼ねる場合が多く、患者の病状をふまえて臨機応変に弁証を行い、病機を的確に判断して、証に合わせた治療を行わなければならない。となっている。
要するに歯痕舌だからといって短絡的に気虚や湿盛だと判断してはならず、瘀血の兆候を示すことも意外に多いので、総合的に弁証分析を行う必要があることを強調されている。
個人的にも、やっぱりね〜っと長年の漢方相談経験から、まったく同意し頷ける貴重な論説である。
詳細は同誌を購入して実際の記事を参照すべし!
FSC_4772 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 08:21| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2012年02月03日
夏は足が冷えて藿香正気散、冬は逆に火照って知柏地黄丸製剤
ASC_4690 posted by (C)ヒゲジジイ
「自殺したい」と嘆いていた重症のアトピーが二年以上かかってほとんど根治の状態を維持していたのに、昨年5月に再発した男性(豚骨の食いすぎなどっ!)。
遠方であっても過去、足繁く通った実績があるから、こちらのアドバイスを素直に受け入れ、急速に寛解していたが、不思議と両腕だけがやや熱感を伴ってアトピーが僅かに残っていた。
既にアトピーの基本的な中医漢方薬学をしっかりマスターした人であるから、こちらのヒントを元に、かなり自由自在な配合変化を行えるまでになっていた。
残った腕の炎症が消えた方剤は・・・彼の喜びのメールは以下の如し。
黄連解毒でもコギク(杞菊地黄丸)でもミミズ(地竜)でも三物(三物黄芩湯)でも腕の炎症はとれませんでした。
でも昨日布団に入ったらやけに足が火照るのでピンときました。
シャカ(知柏地黄丸製剤)を飲めば足の火照りと同時に手の炎症もとれるのではないかと。
そうしたらドンピシャでした。
2年近くシャカを飲んでいなかったのでかなりの盲点でした。
腕の炎症がとれてめちゃくちゃ感動しました。
夏や秋には足が冷えて眠れないので藿香正気散を飲むと足が暖まって眠れると言っていた同一人物が、冬になって足が火照りだしたという証候変化は注目に値する。
また重度の肩凝りには生薬製剤二号方がよくフィットして、同時に全身のアトピーに有益に作用している。
疲労が激しいときには牛黄製剤を愛用し、気鬱には麝香製剤や四逆散などさまざまな漢方薬を上手に利用している大学院生だが・・・
このようなレベルに達した人は、村田漢方堂薬局の漢方愛用者では決っして珍しくない。
ASC_4925 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 20:28| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2012年01月19日
温経湯は温めるが温胆湯は温めない
IMG_0311 posted by (C)ボクチンの母
「温」がつく漢方処方は多いが、その代表的なものに温経湯(ウンケイトウ)と温胆湯(ウンタントウ)がある。
温経湯は衝任虚寒・瘀血阻滞の病機に対して温経補虚・活血行瘀の作用を発揮する。
一方、温胆湯は痰熱阻滞三焦の病機に対して清熱祛痰・疏暢三焦の作用を発揮する。
温経湯は手掌角皮症など掌の湿疹に多用して昔から著効を得ており、また女性のアトピー性皮膚炎の苔癬化したものに著効を得たこともある。
体外受精を繰り返して成功しない女性にこの温経湯であきらかに体調が向上して自然妊娠の可能性が見えて来ているのに、本人は体外受精に経費がかかるからと、このわずか1ヶ月分6〜7千円の経費を惜しんで、体外受精の合間の繋ぎにしか使わなかった馬鹿げた人もいた。
当方における不妊治療の実績では、過去、確率は相当高いのに、以来、この女性のことを教訓に、このような体外受精などを繰り返している途中の繋ぎに利用される人は、一切お断りすることにしている。
温胆湯は痰熱が上擾すると心神不安を引き起こしてパニック障害や不眠や動悸、清竅を上擾するとメマイやふらつきなどの症状が出やすくなる。
適応する不眠症に対しては朝昼は、最もシンプルな基本方剤の温胆湯製剤を服用し、三回目の夜だけ星火温胆湯(温胆湯+黄連・酸棗仁)を服用してもらうことで、重度の不眠症が1〜2年以上もかかってほとんど根治するに至った例もある。
慢性疾患の場合、いつも速効が出るとは限らず、やはり根気勝負になることがほとんどであるが、昨今、当方に来られる人は、頑固な病気でも、直ぐに速効が出るものと思い込んで来られる人が多いので、ちょっと困惑している。
たとえ速効が出ても、それで短期間で根治するはずもなく、速効が出たら出たで、直ぐに油断して、のちのち落胆を見るのが通常である。
しばしば見られるのが、自覚症状に明らかな速効が出ていても、病院の検査数値に反映する値が、わずかであるとその落胆は大きく、何年がかりになるのが当然の疾患でも、半年もしないうちに息切れする人もある。
ともあれ、温胆湯は脊髄小脳変性症などの難治性疾患にも、強力な補腎剤とともに併用してめまいやふらつきの改善補助に役立っているケースもあるが、いずれもかなり厳密な弁証論治を必要とする。
IMG_0320 posted by (C)ボクチンの母
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2012年01月16日
肝胆膵系統が弱い人たちの複雑な病態
IMGP8076 posted by (C)ボクチンの母
折々に大柴胡湯証を呈する人で、折々に延年半夏湯証を呈する人が現在3名もおられる。
一人は病院で慢性膵炎との診断が下っている。
以前、加味逍遙散証に延年半夏湯証が合併している女性のことを書いたことがあるが、この人たちの共通点はいずれも女性であり、いずれも中医学的に見ても肝胆脾胃に問題があるが、自覚症状の共通点は全員、左肩こりが顕著で何らかの胃症状を伴っている。
さらには左側の背部の凝りを伴っている人が多く、また全員たまたま茵蔯蒿湯証を伴っている。
大柴胡湯と延年半夏湯を合わせて常用した方がよい人もあれば、時期によっていずれか一方でよい時期と、両者の併用が必要なときなど一定しない人もいる。
最も興味深い例では、これらに半夏瀉心湯証も折々に出現して、折々にそれぞれの方剤を使い分けているが、延年半夏湯は常時服用しておくほうが調子が良いと言われる。
現実的には、三方剤を常に併用していたほうが頗る体調がよいという結論が出ているようだ。
加味逍遙散合茵蔯蒿湯証の人では左肩凝りと胃症状が出ない限りは、延年半夏湯はもはや必要としない段階に来ている。
このような比較的複雑な病態に応じた方剤を見つけることができるのも、必要に応じて折々に直接通って来られ、じっくりと時間をかけて弁証論治を行うから〜、といってもこのブログでは方証相対を信奉するがごとき表現となっている(笑。
ところが中医学理論、中医方剤学、中草薬学を一定レベル学んだ上で方証相対論を実践することは、とても有意義で能率がよい。
現実的には弁証論治と方証相対論を平行して実践するのが、実は中医漢方薬学派の真骨頂でもある(呵呵。
IMGP8077 posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 16:10| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2011年12月28日
経方(傷寒・金匱の方剤)の魅力
ZZZ_3769 posted by (C)ヒゲジジイ
中医臨床誌の通巻106号と107号(2006年9月と12月)に掲載された南京中医大学の名老中医、黄煌先生の講演文が「経方の魅力/経方とは何か」と題して掲載されている。
中国では経方、つまり日本で言う古方を使用する人は少ない。
後世方とは異なり、薬味が少ない構成で優れた効果を発揮する古方は、学術的な知識のみならず「経験性と実践性が非常に強い」ために、専門的に伝授されることが望ましいと述べられている。
現実の中国国内では比較的薬味の多い方剤を組み立てて配合する中医が多く、古方はおろか、後世方などにしても基本方剤を忠実にそのまま投与する人は少ない。
翻って日本においては、このような古方(経方)の「経験性と実践性」の蓄積量において、大いに誇れるところである。
ところが方証相対ばかりに頼って、理詰めの弁証論治を並行させる中医基礎理論知識が伴わないため、実に画竜点睛を欠くことは実に惜しい。
ともあれ、この講演文には具体的な方剤の興味深い実践的記載が散見される。
黄煌先生は膵炎に大柴胡湯の原方をよく使用されること。
「甘草瀉心湯はベーチェット病の専門方」と話されているが、ヒゲジジイのところで、二十年前まではしばしば本方を使用してベーチェット病患者さんに喜ばれていたが、昨今、ベーチェット病の相談を受ける機会がなくなっている。
さらには・・・
苓桂五味甘草湯は肺気腫の専門薬であり、半夏瀉心湯は熱痞(多くは潜在性胃炎にヘリコパクター・ピロリを伴うものにみられる)を治療する専門薬であり、これらは特効薬であり専門治療薬である、と言い切られているのにはやや驚かされる。
この「熱痞」なるもの、長年のヒゲジジイの経験からは、実に大柴胡湯証と紛らわしいことこの上ないからである。
いずれにせよ、古方は侮るべからずであるが、個人的には大好きな小陥胸湯が、日本国内では加味方でしかエキス製剤が存在しないのが歯がゆいばかりである。
それゆえ、原方通りの小陥胸湯のエキス製剤の第2類医薬品として製造許可を得られないかどうか、某社に検討してもらったが、どのように工夫しても許可を得られそうにないということだった。
簡単に製造許可が得られるものなら、直ぐにでも取り掛かってもらえただろうが、その方法が日本の医療制度では不可能というから止むを得ない。
こういうところで、やはり日本は漢方の後進国と言わざるを得ない。
漢方薬が第二のレアアースとなりつつある現在、あまり贅沢も言っておらないかっ
ZZZ_3712 posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 00:07| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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