2014年07月22日

不眠症の弁証論治は必須とはいえ・・・

2010年7月22日のボクチン(6歳)
2010年7月22日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

 村田漢方堂薬局では進行癌や転移癌で漢方相談を受けている人がとても多いが、それらの人達は、すべて県内か近隣の県に限定して、あまりの遠方の人はほとんどお断りしている。その理由は、遠路の往復で疲労困憊による免疫低下を恐れるからである。

 さいわいに近隣の県までであれば、それほど疲れず、ご本人達が積極的な人達ばかりを受け入れている関係上、他の病気で悩まれる人とは比べ物にならないくらいに積極的。
 効果が安定すれば、通信販売に切り替える人もいる。

 やや深刻な病気だけに、いずれの人も却って精神的に強くなり、明らかに(たとえは悪いが)火事場の馬鹿力的な免疫力を発揮して、ほとんどの人がかなり順調に経過する。

 それに引き換え、不眠症だけで相談を持ちかける人達の深刻さはこの世の果てのように苦衷を述べられるが・・・進行癌や転移癌の人達に比べれば・・・本当に深刻なのはどちらだろうと錯覚するくらいに苦しみの表現が深刻なのである。
 病院で処方してもらえば、睡眠薬や鎮静剤という方法もあるのだから。

 いずれにせよ、様々な理由から「不眠症だけ」の相談者は、これまでも昨今もなるべくご遠慮している。

 その理由は、過去に何度も実に困った問題が生じており、漢方薬を販売したその日のうちから眠れないと、翌日から毎日電話がかかり、連日こちらの方がノイローゼとなって不眠に見舞われるほど、苦しめられたことが多いからである。

 その癖、それらの人達は、副作用のある病院の睡眠薬と漢方薬を同列に考えて、副作用など滅多に生じない漢方薬であっても1種類しか飲もうとしてくれない。2〜3種類はとんでもない、という怪訝顔である。
 副作用が心配だとのたまうのだから、偏見も甚だしい。

 ところで、愚妻の不眠などは、夜だけ3種類の不眠用の漢方薬を服用すればぐっすり眠れる。
 同じ伝で、過去、鬱病で長いこと通っておられた人が、久しぶりに再来して、昨今は病院の不眠用の薬だけでは到底眠れないというので、同様に3種類を服用してもらうと直に眠れた。
 のみならず、2種類に減らしても眠れるようになったが、病院の睡眠薬と併用だから当然かもしれない。

 常連さんたちで不眠症をかかえる人達にも、同じ伝で、寝る前だけ3種類の方剤を併用するだけでグッスリ眠れるようになっている。いずれの人も同じ方法が通用しているので、弁証論治も何もあったもんじゃない(苦笑。

 ご他聞に漏れず酸棗仁湯が主体であるが、これには日本中で最も優れた配合比率のものを選択し、柏子養心丸か天王補心丹のいずれかを加え、それにやや特殊な中草薬類で構成された製品の併用である。

 但し、あきらかな帰脾湯証や加味帰脾湯証が主体の場合は、配合はかなり異なって来る。また温胆湯証の場合も珍しくない。

 いずれにせよ、不眠症だけのご相談は、毎日電話をかけられてはかなわないので、病院で睡眠薬を処方してもらうようにお奨めして、逃げまくっている。

 なにせ、少人数の薬局であるから、すべての依頼を引き受けていたら、こちらの身がもたない。

2010年7月22日のボクチン(6歳)
2010年7月22日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
2010年7月22日のボクチン(6歳)
2010年7月22日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母


 
ラベル:不眠症
posted by ヒゲジジイ at 00:04| 山口 ☀| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2013年07月02日

コタローの補陽還五湯(ホヨウカンゴトウ)補遺

2006年1月19日のボクチン(1歳半)
2006年1月19日のボクチン(1歳半) posted by (C)ボクチンの母

 前回紹介した補陽還五湯の中国書籍は直ぐに売り切れたらしい。中国書籍専門書店(亜東書店や東方書店あるいは燎原書店など)で予約しておけばいずれはきっと入手できるはずである。

 ところで、補陽還五湯に配合されている主薬は黄耆(オウギ)であり、最も多量に含まれているものの、これでもまだ黄耆の配合が不足だと感じる場合があるかもしれない。

 その場合は、コタローの玉屏風散やイスクラの衛益顆粒(玉屏風散エキス製剤)の適量を併用すれば中医処方の配合比率に少しは近づけるはずである。

 現実的には今のところ村田漢方堂薬局に関する限りは黄耆の配合量に不足を感じたことはないが、おそらく重症例では黄耆を増量しないと効果が得られない場合も十分に想定される。

 コタローの補陽還五湯エキス細粒Gを使用した有効例はまだ5例中の5例くらいの経験だから、症例数があまりに少ないので中国国内の標準的な配合内容から類推するに、黄耆の増量が必要になるケースが想定されてもおかしくないはずである。

2006年3月2日のボクチン(1歳半)
2006年3月2日のボクチン(1歳半) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 22:29| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2013年06月27日

コタローの補陽還五湯の応用方法を学ぶのに必備の参考書

2006年3月2日のボクチン(1歳半)
2006年3月2日のボクチン(1歳半) posted by (C)ボクチンの母

 補陽還五湯は信じられないだろうが、あらゆる領域に応用可能であることが中医学書籍に堂々と実例を挙げて多数紹介されている。

 すべての循環器や神経内科はもちろん、あらゆる内科領域や外科領域、婦人科系統から皮膚科、眼科、小児科、耳鼻咽喉科から泌尿器科のみならず悪性腫瘍の領域まで、まったく信じられないほどあらゆる領域において応用範囲は多岐にわたる。

 当然のことながら、補陽還五湯を基本方剤として弁証論治にもとづいた他の方剤や中草薬類の併用を必須とするケースが多いのは勿論である。

 その書籍は中国薬科技術出版社発行の「難病奇方系列叢書第2輯 補陽還五湯」(2010年5月第二次印刷)という書籍で三百六十数ページの大きな書籍が、日本では亜東書店で2,340円で購入できる。

 こんなに安価な書籍だから、中医学薬学の専門家は必携の書籍であるはずだ。きっとこのブログを読まれた人たちが亜東書店に殺到して直ぐに売り切れ必定であろう(苦笑。
追記:先ほど調べたら既に売り切れた模様か?リストから消えているように見えるが・・・? 東方書店や燎原書店にはまだ残っているかも???)

 病院治療でも腹水が取れずに困っている人たちのためにコタローの補気建中湯や分消湯などとともに、脳卒中の後遺症などとともに応用範囲が極めて広い補陽還五湯。
 世のため人のため、広く日本全国で使われるべきだとの老婆親切心から、前回に続いて敢えてブログで取り上げた。

 七ヶ月前に亡くなった最愛の茶トラのボクチンの思い出写真を掲載する口実もあるけど・・・(涙。

2006年3月2日のボクチン(1歳半)
2006年3月2日のボクチン(1歳半) posted by (C)ボクチンの母

2006年3月2日のボクチン(1歳半)
2006年3月2日のボクチン(1歳半) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 22:38| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2012年12月07日

手足の強烈な冷え症には当帰四逆加呉茱萸生姜湯


2004年5月に野良猫が庭に産み落として育児放棄されたボクチンたち posted by (C)ボクチンの母

 もともと冷え症レベルのありきたりな症状で、当方のような一定レベル以上の疾患ばかりの漢方相談が主体のところに、わざわざ足を運ぶには及ばない。
 どこの漢方薬局でも十分に対応できそうな話しである。

 ところが、今年は様々な一定レベル以上の疾患に当帰四逆加呉茱萸生姜湯証が合併している新人さんたちが数多く訪れる。

 極端な例では上半身は難治性の眼科疾患などで清熱舒筋法を必要してそれが的確にフィットしているにも関わらず、足先と腹部や腰部の強烈な冷えを伴って激しい腰痛が合併していたケースもある。
 つまり上半身は強力な清熱剤を必要とし、下半身には温経散寒の当帰四逆加呉茱萸生姜湯が必須で、このような配合でスムーズに寛解に向かっている。

 常連さんたちの中にも、今年は例年になく足先が冷えるというので、やはりこれが当帰四逆加呉茱萸生姜湯で的確にフィットするのである。
 これによって手足の冷えのみならず頭痛やフラツキが同時に改善したお馴染みさんもある。

 新人さんの付き添いで来られた人が、下半身の強烈な冷え症に何かよい漢方薬がありますか?という相談にも当帰四逆加呉茱萸生姜湯。

 ことほど左様に今年は例年になく当帰四逆加呉茱萸生姜湯証の人達が爆発的に増えている。
 節電の影響が出ているのかどうか? 原因は分からない。


2004年5月に野良猫が庭に産み落として育児放棄されたボクチンたち posted by (C)ボクチンの母
 
posted by ヒゲジジイ at 19:44| 山口 ☀| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2011年12月19日

季節に関係なく適応証がある藿香正気散(カッコウショウキサン)

ASC_7771
ASC_7771 posted by (C)ボクチンの母

 今日は朝から身体が冷え切っており、誰かにまた陰口を叩かれているらしくクシャミが頻発した。
 希薄透明な鼻水もチリチリと落ちてくる。

 早速、藿香正気散エキスを服用してだいぶ身体の冷えが取れクシャミ鼻水も止まったのでそのまま放置しておいたら、またぞろ夕方になって陰口が始まったらしくクシャミと鼻水が再開した。

 閉店後、藿香正気散を再度服用して温かい肉うどんを食べたらそれっきり完治。

 藿香正気散の効能・効果を読むと誰が決めたのか知らないが「夏の感冒、暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠」とある。
 かなり的確ではあるが、これがすべてではなく一年中応用されるべき適応範囲の広い優れた方剤である。

 冬の寒さによる風邪の前駆症状に使うのはまったくの誤治だと信じている幼稚な専門家が多い昨今、お陰で村田漢方堂薬局はまだ潰れずに済んでいる。

 このような便利な漢方薬が保険漢方には一切採用されないのだからお気の毒としか言いようが無い。

 藿香正気散こそ薬局漢方の独擅場(どくせんじょう)である。

 独壇場(どくだんじょう)はまちがいで、必ず独擅場(どくせんじょう)。

 ユーモア精神が旺盛なある若夫婦は、冷たいものを摂り過ぎた時に藿香正気散の速効を体験して以後、悪知恵?が働いて、ぶどう狩りやみかん狩りなど「〜狩り」と名の付くものに参加するおり、その前後には必ず藿香正気散を服用するという。
 そのお陰で二人とも大量に食べて帰れるので藿香正気散の薬代の元が取れると喜んでいる。

 これぞまさしく藿香正気散の悪用というべし。

 このような過食を促す利用方法は問題だから、なるべく行なわないように厳重に注意したとかしないとか(苦笑。

 かく言うヒゲジジイも、うっかりアイスクリームを食べ過ぎて気持ちが悪くなったときは必ず藿香正気散で速治である。

 夏はクーラー病治療に大活躍するが、冬でも応用する機会は多く、ビールやアイスクリームなど冷たいものが止められない人達の必需品といっても過言ではないが、冬にアイスクリームや冷飲が止められないのは不健康な生活習慣。
 即刻止めるべきであることは言うまでもない。

 ともあれ、年がら年中、とても重宝な藿香正気散。

 いまさら書くまでも無いが、「藿香正気散」あるいは「かっこうしょうきさん」、または「カッコウショウキサン」のずれかで検索すれば、必ずヒゲジジイが運営するブログやサイトが複数出て来るので参考にされたし(呵呵。

ASC_7761
ASC_7761 posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 23:21| 山口 ☀| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2011年07月10日

腹部膨満感によく効く漢方薬

GSC_7520a
GSC_7520a posted by (C)ヒゲジジイ

 補気建中湯や分消湯の各エキス製剤は、小太郎漢方製薬さんにヒゲジジイが強く推奨して実現したものだけに(笑、実に素晴らしい製剤に仕上がっている。

 もともと個人的には仕事上、多くは悪性腫瘍によって誘発された腹満や腹水に使用して効果を上げて来た。

 それゆえ、一般的によくみられる腹部膨満感だけの悩みに対し、一部の例外的な人以外に使用することは少なかった。(但し、愚妻が早くから腹部の膨満感によく効くと常用していた。)

 先週、ヒゲジジイ自身、11年ぶりの尿路結石による疝痛発作に見舞われた時、便秘と腹部膨満感が合併していたので、猪苓湯や茵蔯蒿湯などとともに分消湯エキスを加えると、激しい疼痛が軽減しやすかったので、しばらく常用するつもりでいる。

 同様に補気建中湯は「いわゆる虚証」の人たちの一般的な腹部膨満感や浮腫にも効果がある。
 一方、分消湯は実証の腹部膨満感や浮腫に効果がある。

 補気建中湯も比較的気軽に使用できるので、腹部の進行癌や転移癌の人たちの腹水予防を兼ねて体力増強の方剤としても活用できるとても便利な方剤と思っている。

 蛇足ながら、補気建中湯には麦門冬・沢瀉・人参という糖尿病にも有効な成分が豊富なことから、結果的に糖尿病から派生した様々な症状に適応を見ることがある。

 ともあれ、自分でも愛用するようになった分消湯は、証候によっては茵蔯蒿湯や茵蔯五苓散を併用する機会もあり、腹部症状の様々な領域に活用できる。

 ヒゲジジイ自身は、分消湯と猪苓湯に茵蔯蒿湯を加え、通常服用していた杞菊地黄丸も復活して排石する日を待っている。もちろん疝痛発作は既に皆無となって快適な日常を送っていますっ!

(秘密を明かせば、牛黄製剤はもともと常用しており、面倒だからやらないといっていた連銭草とウラジロガシの煎液をここ一週間はお茶代わりに常用するようになっている。)

 ともあれ、一般的な腹部膨満感には上記の方剤以外でも厚朴を配合した各種中医方剤があり、また開気丸やガジュツ製剤など、様々な証候に応じて適切な方剤を選択するとよい。

KSC_7774
KSC_7774 posted by (C)ヒゲジジイ

KSC_7879
KSC_7879 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 23:00| 山口 ☀| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2011年04月14日

愛用の風邪薬は参蘇飲

CSC_6019
CSC_6019 posted by (C)ヒゲジジイ

 人に奨める機会は比較的少ないものの、ヒゲジジイ自身が愛用する風邪薬は参蘇飲(ジンソイン)。

 風邪の初期症状に、これを一服でほとんど治ってしまう。気虚感冒に有効な方剤とは実に言い得て妙。

 忙しい日に、大声張り上げて喋り続けていると、夕方頃から咽喉がいがらっぽくなって軽い咳が続くことがある。そんな時には板藍茶とともに参蘇飲の一服で雲散霧消するのが通例である。ダメ押しに5〜6時間後にもう一服しておけば、これで完治。

 同様な症状に見舞われると、多くの人が板藍茶とともに天津感冒片の少量を齧るように服用して治すことが通例であるが、ヒゲジジイはもともと身体の方もトウヘンボクだから、天津感冒片が適応することは滅多にない(苦笑。

 幸いなことに最近、小太郎漢方さんがあらたに品質優秀な参蘇飲エキス顆粒を発売されたが、この製剤ならヒゲジジイの場合、ほとんど一服だけで未然に本格的な風邪を防ぐことが出来る。

 小太郎さんと言えば、参蘇飲エキス顆粒剤の新発売と同じ時期に、柴芍六君子湯(サイシャクリックンシトウ)も新規に発売されている。
 これまでなら脾胃気虚で肝気鬱結を伴うケースでは、六君子湯に四逆散を併用して効果を上げていたが、今後は柴芍六君子湯にまとめることが可能となる。

 以上、小太郎さんの宣伝ばかりを行なってしまったが、新規の漢方製剤の許可を得るに当って、ヒゲジジイのアドバイスのほとんどを聞き入れる奇特なメーカーさんだけに、大いに宣伝したくなるのも人情というものだろう(笑。

 以前はウチダ和漢薬さんこそヒゲジジイのアドバイスを積極的に取り入れ、生薬製剤二号方をはじめ雲南貴精や雲南片玉金、霊丹参など、多くの製品を送り出したものだが・・・昨今はさて?

CSC_5518
CSC_5518 posted by (C)ヒゲジジイ

CSC_5721
CSC_5721 posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 23:45| 山口 | 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2009年06月16日

繁用方剤は時代と共に変遷する

DSC_5750sss
DSC_5750sss posted by (C)ヒゲジジイ

 二十年前まで毎日まいにち、販売しない日はなかった八味丸は、ここ十年以上、販売することは稀となっている。温暖化と暖房設備の充実と共に、八味丸に含まれる附子が不要になったからである。
 不必要に附子が配合された八味丸を乱用すると、肺陰を損傷して碌なことはない。

 漢方入門当初に繁用していた加味逍遥散も、ここ二十年くらい使用頻度は激減していたが、ここ数年来、爆発的に使用頻度が復活している。ストレスの多い時代の反映とも思えるが、夙に有名な方剤だから、村田漢方堂薬局に辿り着く前に、どこかで使用されていたので使用頻度が激減していたのかもしれない。

 それにしても昨今の加味逍遥散が必要な各種疾患の情況は異様である。すでに他所で服用して来られて無効だった人でも、併用方剤の良し悪しとともに、加味逍遥散製剤自体の品質問題も影響しているのかもしれない。

 使用頻度の爆発的増加は異常である。
 
 思い返せば二十五年前、専門分野の原稿を書くようになって初めて原稿料をもらった拙論が「加味逍遥散加桂枝桃仁について」だったと思う。和漢薬誌の299号だったはずであるが、要するに加味逍遥散合桂枝茯苓丸である。
 当時はこのような配合がしばしばよく奏功したが、昨今ではこのような配合を必要とするケースに遭遇することが無くなっている。

 肝胆の湿熱に奏功する茵陳蒿湯は、少陽三焦のルートを通じて広い範囲に影響力を持つので猪苓湯とともに毎日まいにち販売しない日はあり得ない時代となっている。

 疲労困憊の時代でもあるから牛黄製剤や麝香製剤の販売頻度はここ十数年、年々漸増することはあっても減ることが無い。
 これらのお陰でこの世に生息することができるのだっ!と真顔で感謝を述べられることが多いが、ヒゲジジイ自身もその一人である(苦笑。

 また、中医漢方薬学流の偏見から防風通聖散と十全大補湯は村田漢方堂薬局には存在しない。
 小青竜湯も一人の常連さんに特別に使用する以外には販売することが皆無。

 肥満薬として宣伝される防風通聖散はほとんど錯誤である。

P6158157aaa
P6158157aaa posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 07:26| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2008年05月01日

パソコン社会の必需品、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)

 最近、常連さんやお馴染みさんに大変評判がよいのは杞菊地黄丸(コギクジオウガン)。
 いまさら当然のようだが、仕事上も家庭生活でもパソコンを見る機会が激増しているのが原因と思われるが、眼精疲労を訴える人が急速に増えている。

 だから杞菊地黄丸の売れ行きは、既に社会現象に近いのではないかと思われるが、肥満に効くかどうかも怪しい防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などよりも遥かに現実的で、有効性がかなり高いのがこの杞菊地黄丸である。

 村田漢方堂薬局でも昨年から顕著に杞菊地黄丸を販売する機会が増えており、しかも数日以内の著効を発揮することが多いのでとても重宝している。
 多くは初日から効果を発揮するので、超即効が出やすいと言っても過言ではないように思う。

 イスクラ製の杞菊地黄丸が最も評判が良いので、肝腎陰虚の舌証を確認して販売すれば、ほとんど百発百中である。

(仕事は明日一日頑張ったら4連休が続く・・・ニコニコ笑顔)
posted by ヒゲジジイ at 19:01| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2007年12月22日

寒い真冬に裸足で過ごす人々が増加中!

兵隊蜘蛛(へいたいぐも)=(正式名称)コガネグモ

 自宅に帰って靴下を脱ぎ捨てる人々が増え続けている。この寒い真冬に信じられない行為だが、ご本人たちは至極当然のことと思われているらしい。

 足が火照るからなのか、床暖房でもないのに裸足で過ごせるのだから羨ましいといえばウラヤマシイが、中医学的には陰虚火旺を疑わねばならない。
 腎陰虧損による陰虚陽亢の六味丸のみならず、これに知母と黄柏を加えた瀉火補腎丸(知柏地黄丸)の可能性が高いのである。

 これらの多くの人に、春夏秋の季節に問うた「足は火照りませんか?」という質問には「いいえ、ほてりません。冷えることがあります」と答えた人も多いのに。
 「はい、火照ります」と跳ね返るようにお返事された人は、ほとんど即決で瀉火補腎丸が必要であることが類推できるので話は簡単だった。

 春夏秋の季節にはちゃんと「冬場で布団の中で足が火照って無意識に冷たいところに足を置くことはありませんか?」という質問にも、否と答えた人が多い。
 だから陰虚の存在が確認出来ている場合は、足が火照ると答えた人以外は、疑問の余地なく六味丸を他の併用薬とともに服用してもらって一定の効果は得られていたのである。

 ところが、冬に差し掛かるや、たまたま自宅における生活状況の質問から、意外やイガイ、この寒い冬に向かって帰宅するやいなや、靴下を脱ぎ捨てて裸足生活が始まるというのだった。
 朝はあさで、出勤寸前までハダシで過ごし、靴を履く寸前にようやく靴下を履くというのである。

 六味丸を増強するか、多くは瀉火補腎丸に切り替えることで、アトピー性皮膚炎や高血圧が、一段と寛解する例をここ数ヶ月に何例経験したことか!

 地球の温暖化によるものか? 飽食の時代なるがゆえか? 職場環境や生活環境における暖房設備の充実によるものか? 
 おそらくはそのすべての要因が輻輳しているに違いない。
 時代は刻々と変化している。

 従来から村田漢方堂薬局における六味丸の販売量は半端ではなかったが、次第に瀉火補腎丸と二分される勢いは止まりそうもない。

 但し、六味丸系列の方剤には瀉火補腎丸(知柏地黄丸)のみならず、肺腎陰虚の八仙丸(味麦地黄丸)、肝腎陰虚の杞菊地黄丸などもあるので鑑別が必用である。
posted by ヒゲジジイ at 02:11| 山口 ☔| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2007年03月08日

葛根湯と鋏(はさみ)

 ハサミと葛根湯の関係は・・・ほかでもない「馬鹿と鋏は使いよう」と同様に「馬鹿と葛根湯は使いよう」で、つまるところ「葛根湯と鋏(はさみ)は使いよう」ということだ。

 ヒゲジジイの主催するサイトやブログの中では最も人気の高い(クリック数が多い) において、
葛根湯(カッコントウ) : 漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記  このページに葛根湯の応用方法を簡単に記しているが、本来なら葛根湯専用のサイトをオープンしても良いくらい、極めて応用範囲の広い方剤なのである。

 風邪やインフルエンザにはほとんど非力ではあっても、頚椎症をはじめ、様々な領域に広く応用が効くことは驚くばかりである。
 しかしながら、上記のブログ内 葛根湯(カッコントウ) : 漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記  に記している内容を再読してみて、重要なことを書き漏らしていることを発見した。だから、そこに追記すれば良いことだが、このブログに書く理由は、最近、立て続けに併用方剤として葛根湯系列の方剤を追加することで効果を上げている人が続いているからである。

 きっとその方たちも、このブログだけは目を通されていることと思われるが、いずれも服用してい頂いている葛根湯系列の方剤は、それぞれに明らかな特徴がある。

 しばしば病院から投与される医療用の葛根湯との違いは、配合成分中の葛根と麻黄の配合比率が明らかに異なっており、葛根と麻黄の比率が常に二倍以上、葛根が多い製剤を使用している。医療用のように葛根と麻黄がほとんど同比率のものは使用しない、ということである。

 また、実際には医療用には存在しないらしい独活葛根湯(どっかつかっこんとう)製剤を使用することが断然多く、この方剤では葛根が麻黄の2.5倍も多い。さらに地黄と独活が加わっている製剤である。

 このように葛根湯系列の方剤は、名前の如く「葛根」が主薬であるから、配合成分上は「葛根」こそもっとも多くなければならず、それゆえにこそ慢性疾患にも応用が利き、長期間の使用に耐えるのである。

 本年は、常に頭がボンヤリしているという悩みを抱えている何人ものかたに、また耳鳴り・頭痛・肩凝りが重度に合併している人、ふらつきと耳鳴りが合併している人など、独活葛根湯製剤が大活躍している。

 上記のような葛根と麻黄が同比率に近い製剤では、峻烈な性質のある麻黄が勝ち過ぎて、一時的に風邪の引きかけに使用したり頓服的に使用する外には、長期連用にはどうしても負担がかかり過ぎる恐れがある。

 とどのつまりは、葛根が麻黄よりも二倍以上に配合されたものでなければ、逆に言えば麻黄の配合量をセイブしたものでなければ、長期連用に耐えない可能性が高いのである。

posted by ヒゲジジイ at 01:20| 山口 ☔| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2006年08月28日

インチンコウトウを一時中止することになった関東勢2名

 昨今は保存食品や保存料がふりかけられた食品を口にすることが多いせいか、多くの人が中医学で言う「肝胆湿熱」を保有しているように思われる。だから、村田漢方堂薬局に訪れる人の多くにいんちんこうとうが刺身のツマのようにもてなされる。

 また、この肝胆湿熱は重濁粘膩でなかなか完全には除去しにくいのが通例だから、体調が良くなっても舌の黄膩苔は完全には除去出来ないのが通例である。
 と、長年思っていたら最近、立て続けに2名の人から、黄膩苔が完全に消失したとの自己申告があったのでいんちんこうとうを即座に中止してもらったばかりである。しかもお二人とも以前HPを見て一泊二日や二泊三日で直接来訪された関東勢ばかりである。

 お一人は脾胃に虚寒があっての肝胆湿熱が並存するという比較的珍しい例であったからうなずけなくもないが、もう一人の場合、ヘラで苔を削ぎ落としていたくらいの人であるから、ちょっと信じられない申告であった。

 苔が厚いからといってヘラで削ぎ落とす行為は、東洋医学的には間違った行為であり、体内の異変を素直に反映する鏡のようなものだから、自然にまかせておくべきである。このような人為的な侵襲行為を加えるのは、あまりにも不自然だから、案の定、後者の例では舌上がひどく損傷して夜も眠れないようなヒリヒリと疼痛を伴う事態となった。
 このために、何とかしてもらえないかとお電話が入り、急ぎササヘルスをお送りしつつ、二度とヘラで削ぎ落とすことのないよう、厳重に注意する始末であった。

 その後の御本人の経過報告によれば、出没を繰り返していた黄膩苔はマダラ模様となり、地図状舌が持続していたが、そのうち黄膩苔も完全に消えてしまったということであるので、やや首を傾げながらも、この人の場合も一時、いんちんこうとうを中止することになったというわけである。

 ともあれ、脇役のいんちんこうとうではあったが、長州の黄膩苔と違って、関東の黄膩苔はとてもヤワな存在のようであるから、以後はそのつもりで対処しなければならないようだ!?

posted by ヒゲジジイ at 02:27| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2006年08月23日

生脈散(しょうみゃくさん)のお勉強

飛んでるで〜
飛んでるで〜 posted by (C)ヒゲジジイ

 昨日の熱中症の漢方薬の附録として、漢方処方「生脈散」についてのお勉強です。
 以下は「中医方剤与治法」(四川科学技術出版社)より引用(翻訳はヒゲジジイ)。
 引用の前の注釈として述べておきたいことは、本書では心気衰竭に対する効能を置き忘れ、心肺気陰両虚の病機とすべきところを肺に限定した解釈となっているので全面的ではないが、一つの解釈方法としてはとても理解しやすい参考書であるということです。(但し、【応用】の項では西洋医学的分析において心臓に対する優れた効能の報告がなされている。)          
  

生脉散(『内外傷弁惑論』)

 【薬物構成】 人参 麦門冬 五味子

 【用法】 水煎服用。現在では注射剤もある。

 【主治】
 @暑熱での発汗過多により気津を消耗・損傷し,手足がだるい・息切れ・物を言うのがおっくう・眩暈・意識が薄らぐ・口乾・口渇・脉象は虚数。
 A咳嗽が遷延して肺虚となり乾咳・痰が少ない・息切れ・自汗・舌が乾燥・脉は虚。

 【分析】 暑は陽邪で昇散の性質があり,人体を侵犯すると腠理を開いて多汗を生じさせる。

 『素問』挙痛論に「ネッすればすなわち腠理開き,栄衛通じ,汗大いに泄す。ゆえに気は泄するなり」とあるが,暑熱が人体を傷害すると腠理が開泄して多汗を生じることを述べたものである。
 
 発汗過多を生じると津気両傷という結果を引き起こすことになる。
 肺は気を主りまた水津の散布を主るので,津気両傷とは肺の気陰両傷のことなのである。
 気が消耗すると手足がだるい・息切れ・物を言うのがおっくう・眩暈・意識がぼんやりするなどを生じ,津傷すると口乾・口渇を生じる。
 咳嗽が遷延して肺虚となり津気が消耗・損傷する場合も,症状にやや違いがあっても病機は同一である。

 【病機】 肺気傷耗・津液虧損

 【治法】 補気生津法

 【方意】 人参は甘温で,大補肺気・生津止渇する。麦門冬は甘寒で柔らかく潤いがあり,潤肺滋陰する。五味子は酸温で,斂肺生津して耗散した気を収斂する。麦門冬と五味子は人参を助けて気陰を救い,これら三味によって益気生津の効を発揮し,気液が補われると諸症が解消する。

 【応用】 本方は気津が消耗・損傷した場合に優れた効果がある。
 暑熱によって生じた気虚津傷の証では,方中の人参は西洋参を用いるとよい。

 臨床上,本方はまた気陰両虚の心臓疾患で,動悸・呼吸困難・活動時に症状が強まる・倦怠感・眩暈・焦燥感・不眠・舌質は紅・舌苔は少・脉は細数などの症候が現われる場合を治す。

 報告によれば,本方の注射液を静脈点滴や筋肉注射として用いると,脱水・虚脱や各種心臓性ショックの治療に良好な効果がある。薬理的研究によると,本方には強心作用があり,心筋のグリコーゲンとリボ核酸の含有料を増加させ,虚血心筋の同化作用を改善するため,虚血性心筋が収縮するためのエネルギー源と筋繊維タンパク(アクチン)となり,ミオジンを合成する物質基礎となる。
 また,心筋の酸素と化学的エネルギーの消費量を低下させ,心筋の酸素欠乏に対する耐性を高め,心臓の生存時間を延長し,心臓性ショックにおける生存率を顕著に高める。このような心筋の収縮力を増強する特徴により,収縮が敏捷となって搏出量が増加し,冠状動脈の拡張に有利となり,冠状動脈における血流量が増加し,益気して心陽を通じさせ,気が行(めぐ)ると血も行(めぐ)る効果を発揮する。

 【加減方】
 (1)五味麦門冬湯
 人参・麦門冬・五味子・石膏・甘草。
 本方に石膏・甘草を加えたもの。生脉湯証にして内熱が残り激しい口渇があって水分を要求する場合,熱病で下した後に余熱が残って津液が既に虧損し脉は虚数・口乾・汗が出る・あるいは咳逆などの症候に適応する。

 (2)加減生脉散
 沙参・麦門冬・五味子・牡丹皮・細生地黄。
 水煎して2回に分けて温服。
 太陰の伏暑で,舌質は赤・口渇・多汗を治す。酸甘化陰〔酸味・甘味の薬物により陰を生む〕・養陰清熱作用にすぐれ,沙参のかわりに人参を用いると,熱病後の心不全で舌質が絳・舌苔は少・脉は虚数・夜間に症状が増悪する場合にも有効となる。



お庭の仲間達
お庭の仲間達 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 00:56| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2006年08月16日

休み中でも考察分析中の「不随意運動」を主症状とする病人さん達に対する漢方薬

 旅行中も帰宅してからも頭から離れないのは、パーキンソン病を含めた「不随意運動」を主症状とする人たちに対する漢方薬の配合のことである。
 それでも、この連休中のお陰で、それぞれにかなり方針が立ってきたので、あとは服用中の人達が10日毎の細かい弁証論治に忍耐力を持って継続できるかどうかにかかわっている。
 昨年暮れからの人を含めると新しい人が現在複数(3名)おられる。
 お一人は数ヶ月間殆ど症状が消失しているものの、症状に対する不安感が残っているので現在中医学で言う本治法の方剤を検討中で、これによって再発の不安を解消しなければならない。

 パーキンソン病を含めた「不随意運動」、具体的には震顫などとなるが、大雑把に言って「内風(ないふう)」が生じている現象だから、少なくとも標治の薬物は、日本国内で繁用されるものに限って言えば、「平肝ソク風薬」として天麻・釣藤鈎・地竜などとともに高級なものでは牛黄・レイヨウカクなどのいずれかが必要不可欠であり、またそれを補助する潜陽薬の竜骨・牡蠣などが、本治にまたがって考察されなければならない。

 本治については、内風(不随意運動など)がどうして生じたかを綿密に考察する必要があり、単純な肝腎陰虚であれば六味丸系列の方剤を基礎として上述の標治薬の配合を考えればよいが、これに痰濁が絡んで風痰上擾を呈していたり、「血オ」が絡んでいたり、舌苔が黄膩の湿熱がべったり絡まったりと一見複雑な様相を呈していることもある。

 要するに内風を生じる原因も様々で肝腎陰虚によるものばかりでなく血虚生風など実に様々な要因から生風するので、比較的難治な不随意運動を伴う各種疾患は、往々にして漢方薬局に相談に見える人が多い。
 最終的には、服用者がどれほど根気があるかにかかっており、一時の即効だけを考えるなら、熄風の標治薬物の地竜や牛黄類などを集中的に・・・・・・などと考えるのも、やや邪道のように思えるので、しばらくは効果が見えないようでも、綿密・詳細な手間隙かけた相談によって地道にやって行くのが、急がば回れということである。

 とこのようにゴタゴタ休み中にも考えてしまう仕事中毒患者になっている自分に気がついて、いよいよ気が滅入って仕舞うのだった。
posted by ヒゲジジイ at 11:14| 山口 | 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする

2005年10月10日

麦門冬湯証が激減して、滋陰降下湯が急増中!

IMG_23003.JPG

今年になって急激に増加中なのが、滋陰降下湯である。

従来なら、風邪の後期の症状というか、治り際になって乾燥咳が止まらず、病院治療も効果なし、という時にシバシバ遭遇した麦門冬湯証が激減している。

昨年暮れ頃から、今年にかけて急増中のことだから、まだ充分に観察する必要があるが、麦門冬湯を服用してもらっても、従来のような期待するほどの効果が得られないことが、しばしば見られた。

よく観察すると、多少の肺陰虚のみならず肺熱を伴っており、麦門冬湯に配合される朝鮮人参がマイナスに働いているのは明らか。

これが涼性の西洋人参なら、まだ何とか効果を示していたと思われるが、やはり温性の朝鮮人参はまずい。

そこで、滋陰降下湯に転方すると、直ぐによくなった。

その後、春先に、自分自身もこの状態に陥り、従来の麦門冬湯が、ほとんど効果を示さない。

そこで滋陰降下湯に変えると、即治。

続いて、愚妻も同様な状態で、また同様に滋陰降下湯で即治。

もちろん、風邪が長引いてこじらせて来た人では、しばらく続ける必要があるが、どうしてこう、皆が皆、類似した証候を呈するのか?

これが時代の流れ、あらゆる環境的な条件そのほか、多くの共通性が見られる現代社会においても、その時代時代、その年毎の傾向と対策というものがあっても不思議はない。

当然といえば、当然のことだが、今後も「麦門冬湯証」の患者さんが減り続けるのか、たまたまの偶然なのか、充分な観察が必要であるが、村田漢方堂薬局では、従来この「滋陰降下湯」は、滅多に使用することが無い方剤であったことは確かである。