2012年10月19日

中医学を知ったお陰で煎じ薬の必要がまったく無くなった理由

張瓏英先生とヒゲの無い頃のヒゲジジイ
張瓏英先生とヒゲの無い頃のヒゲジジイ posted by (C)ヒゲジジイ

 二十数年前、張瓏英先生とお会いした時に、中医学を学んだお陰で、煎じ薬を作る必要がほとんどなくなったことをお話しすると、とてもとても不思議そうな顔をされた。
 その理由を縷々説明させて頂くと、大きく頷いて頂けたときの状況を折々に思い出す。
 上掲の写真はその折に当時の受付嬢に撮らせたものである。

 煎じ薬を用いなくとも、弁証論治をしっかり行えば、既成の各種漢方エキス製剤や単味のエキス製剤などを組み合わせれば、煎じ薬に決して劣らない威力を発揮することは現実にしっかりと実証して来たつもりである。
 むしろ一部の煎じ薬よりも、それを上回る効果を発揮できるケースもある現実は、たとえば托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)。
 この方剤はエキス製剤の実現を某社に依頼したものの、あらゆる努力を尽くしても、日本の薬事法上、現時点では許可の取りようがないとのことだった。(日本が漢方の後進国である所以である。)

 それゆえ苦肉の策で考案した配合が、托裏消毒飲でも紹介している通り、

   ・衛益顆粒(玉屏風散エキス製剤)
   ・荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)のエキス製剤(金銀花や人参が必須!)
   ・白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)のエキス

 という三者の併用である。これによって現実に、托裏消毒飲の煎じ薬の効果を上回る能力を発揮してくれるので煎じ薬を用いる必要がない。
 さらには念願の補気建中湯こそ、ヒゲジジイのたっての依頼に応えて小太郎さんがエキス製剤を実現してくれているので、煎じ薬の必要がなくなって久しい。

 エキス製剤を各種組み合わせることで最も有利な点は、アトピー性皮膚炎など変化の激しい疾患の場合、日毎に方剤の内容や配合比率を変化させるのが極めて容易である。
 その点、煎じ薬ではいったん配合してしまうと、日々の状況に応じて臨機応変の配合変化を行うのが困難である。

 本質的に重要なことは、中医学理論を学んでおれば病機分析によって治法を考案し、これによって基本方剤を設定した後に、諸証に基づいた個別性に配慮した実際処方は既成のエキス製剤を複数用いた配合(組み合せ)で十分に可能となるほど融通性があるのが構造主義科学としての中医学の優れた特徴であると思うのである。

ハクセキレイ
ハクセキレイ posted by (C)ヒゲジジイ


 
posted by ヒゲジジイ at 21:56| 山口 ☀| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2012年08月18日

現在当方の漢方を利用されている人でも、残念ながら第三者のご相談には乗れません

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IMG_3286 posted by (C)ヒゲジジイ

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:40〜49歳の女性
【 地 域 】:中国地方
【 お問い合せ内容 】: いつもお世話様になっております。
 そろそろ漢方が底をついてきたので、伺いたいのですが、甲子園に勝ち進んでいますので、伺うタイミングがつかめないこの頃です。

 伺いたいことがありましてメールをしました。
 男性で肥満傾向の方なのですが、咳が続いています。
 肺に2年前から影ができているということですが、咳を止めるのに◎◎◎(胸痛があれば適応でしたよね?!)は効果がありますでしょうか?

 影が陳旧性肺炎などの跡であればいいのですが、結核なども可能性としてありますよね。
 肺をフォローできる漢方薬があれば試しに購入をさせていただきたいのですが。
 恐らく、痰も絡んだ咳だと思います。

 市販の咳止めを飲用されて随分良くはなっていると聞いています。
 全身状態はとても良好です。お肌もつやつやされていますが、日本の方ではないので、顔色がよくわかりませんが、顔色も良好です。舌は見ていません。きっと肺の状態以外は全て良好です。

 まずは、病院で診断をときっと思われたのではないかと思いますが・・・ご迷惑とは重重承知しておりますがお教えください。

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IMG_3189 posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:残念ながら第三者の人にはご相談には乗れません。ましてや外人さんとくればなおさらです。

 そもそも咳嗽関連では中医学の原点でもある『素問』咳論には「五臓六腑はみな人をして咳せしむ。独り肺のみにあらざるなり」と述べられているように、咳嗽の原因とメカニズムは単純なものとは限りません。
 
 西洋医学治療をしっかり受けられるべきです。
 取り急ぎ、お返事まで。

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IMG_2991 posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:咳嗽 咳止め
posted by ヒゲジジイ at 23:16| 山口 ☁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2011年11月03日

村田漢方堂薬局の漢方薬に好意的なお医者さんたち

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FSC_8674 posted by (C)ボクチンの母

 本来、我が愚娘や愚息のどちらかは、中医漢方薬学派を受け継ぐために医師になったはずだが、ガキというものは父親に逆らうことを生き甲斐としているらしく、大学入学以前の志(こころざし)とは打って変わって、入学後はそのことに触れなくなった。

 触れなくなったからこちらも頑固に勧誘することは一切せず、それから既に15年以上も経った。
 一人は進んだ専門科にのめり込んで、臨床と論文の作成に没頭している。

 中医学や漢方医学のように東洋医学特有の構造主義科学を理解するには、西洋科学に汚染された頭脳を脱却する必要があるが、これにはよほどの情熱が無ければなかなか困難。
 おざなりに漢方薬を扱っても、巷で多くみられるエビデンス漢方に堕するばかりである。

 だから親としてのプライドもあるから、口が裂けても我が中医漢方薬学を継いでくれと言うつもりもないし、いまさら継いで欲しいとも思わない(苦笑。

 それはともかく、本題の漢方薬に好意的なお医者さんたちはとても多く、ここ最近に限っても・・・

 勤務医の奥様が産後の自律神経失調症に、医療用漢方に頼るよりもヒゲジジイのところへ相談に来られたケース(一年も経たずに快癒)。

 遠方から医師みずからが身内の患者さんを連れて相談に来られたケース。

 ヒゲジジイが子供の頃、受診したことがある先生が廃院後、ご自身の進行癌の御相談に来られたケース。

 そのほか、兄弟や両親が西洋医学の医師という人達が、漢方相談に来られるケースは意外に多い。つい最近も関東から通って来られる人の中にもおられる。

 現在でも上記の半数の人達は継続されている。

 上記の人達は、同業の薬剤師も含め、専門外のことは専門家に任せるという意識が徹底されているので、余計な口出しをしてヒゲジジイのデリケートな頭脳を混乱に陥れるようなことがないので弁証論治に集中できる。

 ところが、一般の素人さんたちでインターネットで様々な医学知識および漢方知識をシコタマ研究して来た人達に限って、余計な知識を振り回して、ああ言えばこう言うで切り返しが多く、五月蝿くて仕事にならない。

 最近も、漢方薬局を転々として、不定愁訴を治すのに、僅か一処方だけに頼ろうと無理難題が当然と思っている風だから、ケンモホロロにお断りしたケースがあった。
 同様な例は毎年数人は遭遇する。

 それだけ知識があるなら、こちらに相談する意味がありませんよとお断り。
 あまりに講釈が過ぎると、こちらの弁証論治もクソもない。てんで考える意欲を失って当然だろう。

 このような人達は、数ヶ月ごとに各地を転々として、結局は治らず、数年後に舞い戻って来て同様な振る舞いをされるので、同様にお引取り願う。

 相変わらず電話で相談を依頼される人も多いが、ネットでは電話での無料相談大歓迎というサイトが五万とあるのだから、そちらに持ちかけるべきで、どんなに執拗に依頼されても無駄である。

 とんだ方向に話がそれたが、漢方に好意的なお医者さんたちが年々増加していることは実に喜ばしいことだが、そろそろ医療用漢方も中医漢方薬学を取り入れるくらいの飛躍が欲しいものですねっ(苦笑。・・・ここは悪い冗談。

 まだまだあの世に行く寸前まで、未発表の中医漢方薬学の残り半分を公開するつもりはない。飯の種だもの・・・呵呵。

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IMGP9089 posted by (C)ボクチンの母

 
posted by ヒゲジジイ at 00:35| 山口 ☁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年09月10日

漢方処方運用の奥義〜理想通りに行くとは限らないが…

 何度書いても書き過ぎることはなだろう。

 御本人みずからの情熱で、ヒゲジジイの指南する漢方に一定期間賭けてみる気概のある人だけの漢方相談であるが、それでも各処方をバラバラに渡され、すべて処方名や成分・分量が記載された既製品の漢方処方を出されることに、らしくないと思ってか、ひどく落胆する人もおられるのは、とても心外である。
 ひとまとめに最初から各処方を一包に放り込んで一か月分も渡す訳には行かない理由を再三再四このブログでも、他のHPなどでも述べている。

 必要な可能性のある各漢方製剤をバラバラに渡すという、この極めて合理的な配慮が理解困難な人達には、ヒゲジジイの漢方指南による地道な効果を上げることは出来ないだろう。
 お金さえ出せばすべて解決するとは限らないのはこじれた各種疾患の宿命である。

 多くの人は経済的な保険漢方も、やや高額な自費の地元の漢方薬局ですら効果がなかった人達である。効果が無かったどころか却って悪化して来られた人の方が多いのが現実である。
 なればこそ、あなた方の過去の漢方経験はすべて忘れるに限るのである。
郷に入れば郷に従え、である。

 前回にも述べた孫子の兵法に似た村田漢方堂薬局の方針は、中医学的には方法論としては最も正統派であることに間違いないのである。

 しかしながら世の中、理想通りにはなかなか行かないもので、特定疾患の患者さんに多いことだが、せっかく病院の検査データーともども完全寛解に近い状態に一旦なりながら、それに安堵したか急速に服薬を怠りだして後、自覚症状は消失したままでも検査数値が再度異常値。
 何度進言しても初期のような真面目な服用を怠ったまま、検査だけは真面目に受けてその報告をもっては再々相談にみえる。
 漢方薬の服用を初期のように真面目に続けたらどうだというアドバイスも馬耳東風。意外にこのようなケースも多い。

 中途半端な効果ながらも歴然とした効果がありながら、初期の真面目さがいつのまにか日に1〜2回の服用になり、今頃は前のように効果が感じられないと申告されても何を考えているのやら、きちんと3度服用してみたら〜と進言しても、イエイエきちんと3回服用を欠かしたことはありませんとノタモウのであった。(相談カードの記録では、いかに服薬を怠っているか歴然としているのにっ!!!
posted by ヒゲジジイ at 22:28| 山口 | 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

漢方処方運用の極意は孫子の兵法の如し

 其の疾(はや)きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。
                  (孫子:軍争篇より)

 用兵(漢方処方の運用)は機略縦横の智将でなければならない。
 それゆえ様々な処方がまとめて調合された煎薬や分包器にかけられたエキス散は、いかにもそれらしい見かけと雰囲気とは裏腹に、縦横無尽の機略をまったく発揮させることはできない。

 配合処方の記載もなければ、含有成分の表示すらない漢方薬を長年服用し続けて効果がなかった場合はまったく無駄骨である。
 せめて過去に服用された処方類の名前くらい記録されているべきだが、販売者が秘匿し続けているために、参考にすることも出来ない。
 このような無表示医薬品は日々巷(ちまた)で横行している日本社会であるが、漢方処方運用の面ではあまりに硬直した不便極まりない話である。

 ところが逆に、ヒゲジジイの薬局に来て、各処方をバラバラに渡され、すべて処方名や成分・分量が記載された既製品の漢方処方を出されることに、らしくないと思ってか、ひどく落胆する遠来者もいる。
 そこが素人の浅はかさで、臨機応変の配合変化を行うには最も合理的な方法であることが、やがて分る時がやって来る。

 村田漢方堂薬局にやって来るまでは固定された配合を一まとめに分包されてまとめて渡されていたために、途中で処方の出し入れ不能な硬直した漢方薬の継続のために、一向に病状が好転しないまま、むしろ悪化の道を辿っていた理由が早晩理解されるのである。

 とりわけ一部のアトピー性皮膚炎のように病状の変化が激しい極めてデリケートな疾患では、ヒゲジジの指南する漢方処方の運用によって初期の数ヶ月はまるで風林火山であったことが実感されるはずである。
  • 疾(はや)きこと風の如く
  • 徐(しず)かなること林の如く
  • 侵掠すること火の如く
  • 動かざること山の如し
 アトピー性皮膚炎に限らず、他の疾患にも共通したことで、臨機応変の配合変化とはこのことである。
 真の風林火山の意味は、ヒゲジジイの漢方薬をしばらく体験した者のみが知るところである。
 
 と大口を叩いても、ヒゲジジイがごときは機略縦横の智将ならぬ遅将痴呆将レベルに過ぎないかもしれないが(苦笑)。

【参考文献】アトピー性皮膚炎は男性よりも女性の方が2倍難しい理由〜但し、美容に直結するだけに結果的には女性の方が寛解率が高いということ!〜
posted by ヒゲジジイ at 16:42| 山口 ☀| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年06月15日

時間に余裕の無い人の漢方相談について

 もちろん上記のタイトルが初めて来られた人の話しなら、最初ッから御相談はお断りである。

 自分の身体のことなのに時間がないから早く漢方薬を売ってくれ!

という態度で来られれば、ケンモホロロに、あるいは慇懃無礼にお断りするのがオチである(笑)

 問題は、数年近く漢方薬を続けている人の場合で、これまで順調だったので最初の数回以降はすべて代理の御家族が定期的に漢方薬の補充にみえられていたが、今年ばかりは例年になくひどい黄砂のせいで、これまでの漢方薬の組み合わせでは、効果が脆くなったように思うと久しぶりに直接御本人のご相談である。

 ところが時間が僅かしかない。会社の昼休みの利用であるから無理もないとはいえ、数年も続けていると初期の真剣勝負の時代を忘れられるのも時に困ることがある。
 薬局という性質上、数年ともなればお気軽になるのも分からぬでもないが、やや高額な費用をせっかく消費しているのだから、こんな大事な節目にこそ、久しぶりの大事な微調整なのだからもっと時間に余裕をもって来て欲しいものである

 久しぶりの急な相談でしかも時間に余裕がないとなると、コチトラ一瞬の判断を即座に行わなければならない酷いストレスの為に、治っていたはずの高血圧が一瞬にして再発してしまったのであった。

 ましてや、これまでこちらに相談することなく、勝手な配合の微調整を行って破綻を来たしてしまった部分も無きにしも非ずの素人判断を続けていたことを聞けば、ますます厳重な諸注意を与えたいところだが、それにもやっぱり時間がない。

 あまりにも短い微調整のアドバイスが終わったあとも、当然のことながら今後の大事な方針など言い残したことがたくさんあるので、いつまでもイライラした気分が続くばかりの一日であった。

 実を言えば上述の人の場合は以前、ヒゲジジイの多くの点で保守的な心情がよほど癇に障ったらしく、それゆえに少しでもヒゲジジイのツラを見るのが厭わしいらしいのである(イラっ。

ラベル:配合の微調整
posted by ヒゲジジイ at 20:43| 山口 ☁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年05月19日

5月16日の続き(信頼のおける漢方薬局を見付けるには)

5月16日 の続き!

関東より3度目に受け取ったメール: ブログへの公開ありがとうございました。長文乱文すぎて、公開されないだろうと思い込んでおりましたが、メールご返信とは別に、参考になるご指摘が多々ありました。
 その長文のわりに、説明不足な部分があったようで、要らぬ推測をさせてしまったようです。

というのも、昨年7月より
荊芥連翹湯 半夏瀉心湯 葛根湯加川芎辛夷 辛夷清肺湯 荊芥連翹湯 現在に至るまでのこの流れ、同じ漢方調剤薬局のエキス剤を使用しております。
 この1年弱の8〜9割の間、同一薬局のものを服用しておりました。ここが処方するのは、何がしか作用を感じた(反作用もあり・・)ので、品質の良いメーカーエキス剤を出すな、と感じていたからです。

 また、この間、決められた服用数、2〜3包を一日一度も欠かしたことはありません。
 ある意味、「漢方薬」自体には浮気をしていなかったし、改めて自分で思い返してみて、昨年6月にカビアレルギーを発症し、「絶対治す」という決意があったから続いたと思います。

 確かに他の何軒かの薬局を訪ねましたが、医療でいうセカンドオピニオン的に、方向性が間違っていないかの確認や、あわよくば、さらに信頼できる薬局が見つかればと思ったのですが、結局、、、

(1)「単方」のみ 最低1ヶ月単位でしか出さない店

が、(残念ながら・・・)地元で少しでも信頼できる唯一の店であったわけです。

が、そこにきて、

単方では難しく、『最低でも2〜3処方が必要である。』

と言われてしまうと、やはり、この近辺での限界を感じますし、地元で「専門家」を見つけなさい といわれてるのに、見つけるのに、「渡り鳥」をしなければならないこの現実・・・

 村田さんの、いくつかのご指摘・お言葉を、現状の私の周辺の漢方薬局事情にあてはめてみると、矛盾が生じてしまうのです。
 思考停止してしまいます。

 私なりではありますが、石の上にも1年弱ですが、真摯に漢方薬と向き合ったきたと思います。
 もう一アドバイスいただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 この往復メールもそのままブログに掲載させて頂きたいと思います。

 今回のメールで、かなりご事情を理解することが出来ました。少なくとも石の上に3年ならぬ同じ薬局で1年近くは頑張られておられたのですね。
 慢性疾患というものは時として思うような効果が得られず、患者さんのみならず薬局側でも右顧左眄するばかりで、なかなか配合がうまく噛み合ってくれないときがあるものです。
 小生も過去に何度も経験していますし、現在でもそのような方を数名抱えています。
 
 過去、そのような場合でも、お互いに諦めずに切磋琢磨するうちに、意外なところから糸口が見つかり、弁証論治により打ち立てた仮説がそのまま現実に効果として発揮する時がやって来るものです。難航する配合も、お互いに長くお付き合いするうちに、気心も知れて来るうちに、その人の性格や体質がまるごとつかめるようになってはじめて、打開の途が開けたということもシバシバでした。

 それだからこそ、少しでも信頼できそうな専門家に出会えたら、同じ所に通い詰め、親しくなればなるほと気心も知れ、そうこうするうちに薬局側も治せない悔しさと申し訳なさで内心は苦渋に悶々としながらも、何とかして差し上げなければという思いが長期間続くうちに(そのために不眠症になることもありますが・・・笑)、試行錯誤しながらも様々な考えが浮かぶようになるものです。

 たとえ、少々経験が少ない専門家でも、勉強熱心でさえあれば、深夜こっそりと様々な専門書を取り出して勉学に勤しまざるを得なくなるはずで、事実、小生自身が若い頃から、そのような治りにくい人で、いつまでも頑張り通して下さった人達のお陰で、結局は8割以上の安定した状態に導けたことは再々のことでした。(そのように滅茶苦茶に苦労した人ほど大の漢方ファンとなられて、それこそ常連さんとなれているのは不思議なほどです。)

 そちらの地元で、多少とも頼りないな〜〜〜と思われる専門家であっても、勉強熱心で仕事にいい意味でのプライドを持っている方であれば、貴方がその専門家を内心では育てるくらいのおつもりで漢方薬局の上にも3年のつもりで、通い詰めるのが最善で最短コースのようにも思われます。急がば回れということになるかもしれませんが・・・。

 事実、ご相談者とはお互い様のことでしょうが、若い頃は相談者のマナーがなってない図々しい人もいて、内心地団駄を踏みつつも、プロ意識と血気盛んな負けず嫌いで、様々な妙案の配合を提示しても、なかなか聞き入れてくれない相手に手を焼いて、何度も険悪なムードになりながらも、それが何年も続くうちにお互いに気心が知れてくると、突然なにもかもうまく行き始めたという例も多く経験しています。

 長々と書きましたが、要するにやはり、少々相手がヘタクソ、知識不足などと思われる専門家であっても、貴方が相手を育てるくらいのおつもりで通い詰めて頑張ることも必要だと思うわけです。
 ただし、

> (1)「単方」のみ 最低1ヶ月単位でしか出さない店

という薬局や、処方を公開しない秘密主義の薬事法違反を平然と犯すような薬局だけは、絶対に避けるべきです。
 できれば定期的にじっくり時間をかけて相談に乗ってくれるところがよいのは言うまでもありません。

 貴方のこれまでのご経験は、同様な経験をして困惑されている人達の貴重な参考資料となるはずです。このメールを送信させて頂いた後、早速、ブログに転載させて頂きます。
 以上、取り急ぎお返事まで。
                 頓首

         村田漢方堂薬局 村田恭介拝


【編集後記】 最初から一ヵ月分まとめて出すのは無謀な投与としか思えないが、2〜3回目の配合調節の段階で、組み合わせる方剤の一処方の選定に間違いがないと確信される場合は、その方剤だけは徳用となる一ヶ月分を渡すことは村田漢方堂薬局ではシバシバあることだ。
 たとえば、最近の典型的な例では、濃い浸出液を伴うアトピー性皮膚炎の人で、二軒の病院の保険漢方により前後、合計六ヶ月間、様々な処方を微調整して頂いたのはいいが、常にツムラ消風散を土台として更に1〜2方剤を併用され、次第に却って憎悪し、消風散合越婢加朮湯に到って最高潮に悪化し、堪らず村田漢方堂薬局に来局。
 初回は例の体質改善三点セットと茵蔯蒿湯に猪苓湯製剤。
 ところが珍しいことに体質改善三点セットが合わないという不測の事故があったものの、茵蔯蒿湯と猪苓湯のみでも10日間に、波打ちながらも明らかに好転。
 次に六味丸を加えると波うちの振幅が小さくなった。今後は玉屏風散製剤や黄連解毒湯製剤を加えるか加えないか(この2方剤も既に購入され、いつでも使用できる態勢をとってもらっている)を思案している段階であるが、少なくとも猪苓湯と六味丸は確実に合っているので、徳用製品のある猪苓湯製剤だけは希望もあってこれだけは一ヵ月分を購入。
 しかしながら今後も安定した効き目が得られるまで7〜10日のペースでやや遠方から通ってもらっている状況である。

 また、効果がなかなか出ずに難航している一部の人でも、本命の主訴には効果が薄くとも、他の面で明らかに合っていることが間違いない場合、徳用サイズのある製剤では一か月分を購入してもらうことはシバシバである。
 当分は基礎方剤として使用してもらわねばならない方剤では一ヵ月分の徳用製品がある場合は、今後の長期戦に向けて経費的には断然有利だからである。

 もちろん1〜2回目でドンピシャで配合が合った場合は、調整がまったく必要なくなるので、直ぐに徳用サイズに切り替える人は大変多いことは言うまでもない。

posted by ヒゲジジイ at 00:35| 山口 ☁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年04月11日

空気嚥下症

性別 : 女性
年齢 : 50歳〜59歳
簡単なご住所 : 東北地方
お問い合わせ内容 : 以前「おなら,げっぷ,不眠」についてお聞きした者です。
2006年03月17日げっぷ・おなら・不眠の悩み
2006年03月18日げっぷ・おなら・不眠(2)

 あの時は本当にご丁寧な返信をありがとうございました。すぐにでも村田薬局に飛んでいきたいと思いましたが,あまりに遠方で,またお出かけ恐怖症になっていて大事な予定をキャンセルするような状態でしたので,なんとか近辺で探してみようと思ったのでした。
 そして某薬局を見つけてお世話になって1年になります。さまざまな症状は消失いたしましたが肝心の「げっぷ,おなら,」(不眠症はややまし)の方がほとんど改善されない状態です。
 半夏厚朴湯を主体に,2,3の方剤を組み合わせた物ですが(例えば「半夏瀉心湯」+酸棗仁湯」)最近,胃のもたれをなんとかしたいとお願いしたところ「半夏瀉心湯+小建中湯+酸棗仁湯」になりました。

 ところがこれを飲み始めてから舌の黄色が濃くなり,口内炎ができました。それで薬局の先生に相談しましたが大丈夫このまま続けてくださいということでしたので,ちょうど急に寒くなったりしたのでそのせいかとも思い,続けて飲んでいました。
 しかしその後,胃の調子が悪く,おなかがもやもやしたり張ったりしてとても落ち着きません。
 ガスもたくさんたまります。

 それできのうから服用を中止してみたらお腹は楽になり,舌も黄色が薄くなりました。
 また以前安中散を1.5グラムでしたが配合された時にも(半夏厚朴+半夏瀉心にプラスして)お腹がもやもやして苦しくなりました。その時も先生に話し安中散をやめてもらったことがあります。

 先生は薬とは関係ないとおっしゃるのですが,私の思い過ごしなのかわからないままこれ以上このお薬は怖くて飲めません。
 先生は,違和感を伝えるとご自分の調合を否定されたと思われ気分を害されるようです。
 私としてはかなり気をつけてお話しているつもりなのですが。

 なのでこれ以上お話することはむずかしいと感じています。
 それでかねてからずっと心にあった村田薬局さんに思い切ってお世話になりにいこうかと思いメールを差し上げた次第です。

 ここまで書いて迷っておりましたら,一昨日から一睡もできなくなってしまいました。
 お薬を飲んでいない不安感もあるのかもしれません。大変につらいです。
 村田様がお引き受けくださるようであれば,●●●●●にお伺いするつもりでおります。
 よろしくお返事お願い致します。


お返事メール:拝復
 今、一年前のブログを読み直してみました。そのとき提案した開気丸が一部有効なようでしたが、開気丸を中心にした方剤の組み合わせは色々と試みられたのでしょうか?
 今回頂いたメールには、開気丸の「か」の字も出てきませんが、どうして開気丸を中止されたのでしょうか?

 ところで、すでに病歴は16年になられているようですが、漢方薬の服用歴も長いようですので、これまでの経験からも漢方薬それぞれの処方を服用しての体感も、貴女なりに感じるところがあったことと思われます。

 貴女のように漢方歴もほどほど長い人の場合は、通っている漢方薬局さんに(当方でしばしば行うように)必要な可能性がありそうな処方を常備されておいて、許容される範囲内の配合変化を、漢方薬局さんのアドバイスをもとに、臨機応変に配合を変える工夫をさせてもらうべきだったように思います。

 漢方服用歴の長い人は、各処方の癖を自然に覚えられて来られるのが通常ですので、当方の常連さんなどでは、様々な処方を当方からのヒントに基づいて、症状の変化に応じた臨機応変の配合変化を許容範囲内でご自分で工夫してもらうことも多々あります。

 逆に言えば、あるていどの漢方に対する勉強熱心で勘のよい人ほど、難航する疾患もお互いの努力のもと、次第に解決して次第に元気を回復していかれておられます。
 一見治りにくい体質病であっても、小生の経験から言えば、自分の腕の悪さを棚に上げるようなものかもしれませんが(笑)、病気の方の勉強熱心さと勘のよさが、漢方治療の能率を上げた事例を沢山経験しています。

 最近でも、慢性感染症?などで発熱や微熱を繰り返す方が、当方の漢方を数ヶ月続けるうちに、様々にお出しした処方の組み合わせの効率的な使用方法を御自分の体感から次第に習得しはじめ、
「この処方とこの処方の比率をこのように変えたら効き目が上がりましたが、四逆散は生理痛の時には役にたっても、それ以外のときに服用すれば却って微熱が続くので中止したら発熱することもなくなりました。」
 などと報告されるようになり、こちらのほうでは、
 「勘の良い方だから、その調子でご自分で許容範囲内で様々今後も工夫して下さいね」
 などと一見無責任なことを言うようですが、それまでには各処方の性質を繰り返しアドバイスし続けた成果が稔っりつつあるわけです。
 ご自身が病気を治したい一心で、様々に漢方処方の反応を敏感に感じ取って逐一報告してくれたお陰でもありました。

 このようなことは当方の常連さんではアタリマエの行為であり、当然分からない時は当方に執拗に質問もし、綿密な御相談に来られるからこそ、ご自身の身体をかなりな部分でコントロールできるようになっているわけです。

 漢方薬を利用される人の中には、いつまでもすべてこちらまかせで、こちらのアドバイスに従って臨機応変の工夫をされようとしない人ほど、病気治療と体質改善の長丁場に耐えられないようで、たとえ遠方から泊りがけで来られても、稀には一月も継続できなかった人もおられるくらいです。
 逆に自己主張ばかり強すぎて、こちらのアドバイスをなかなかヒントにしてもらえない人も、うまく行かないわけですから、互いの相性という問題もあるかもしれません。
 また、せっかく当方に来られても、来られている間はやけに元気で観光の方にも力を注ぎすぎて、帰宅後は長旅疲れで一時ほんとうに寝込んでしまった人もおられました。

 現実問題として、このトウヘンボク爺さんのところへ毎日遠近様々なところから新しい方が来られていますが、一般的な傾向として、あらかじめお問合せがあったり予告して来られる人よりも、例外はあるものの、何の連絡もないまま突然遠方から来局される人の方が、ナゼだか治りのスピードが良い傾向にあるのです。
 予約制を嫌う理由の一つにこの問題もあります。

 ともあれ、過去のメールを再読してみて感じたことは、貴女のような聡明な方ならご自身に合った漢方薬の配合をみずから体感して見つけ出すことは、当方のちょっとしたアドアイスをヒントにされれば、十分に可能だと思います。

 但し、あまりに遠方ですので、貴女の長旅の疲労が心配です。

 以上、書き殴りの乱筆、失礼ながらお返事まで。
                    頓首

        村田漢方堂薬局 村田恭介拝


【編集後記】その後、実際に下関まで二泊三日の旅程で来られたが、とても華奢で繊細そうなご様子ながら、舌証などから意外にも黄連解毒湯証が並存していることが判明し、当日から他薬と一緒に服用してもらったところ、翌日から胃の調子がとてもよくなったとの報告を得た。
 その後もずっと当方の漢方薬を愛用され、臨機応変の配合変化のコツを覚えられて、平成24年8月現在にもずっと当方の漢方薬を愛用されている。
 また、ご主人様(直接来られて後)や子供さんも当方の漢方薬をずっと愛用され、この奥様ご自身は当初の自覚症状のほとんどが消失して、とても元気になられている!
posted by ヒゲジジイ at 00:11| 山口 | 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年04月03日

薬剤師が漢方薬・中医学を学んでその知識を活かせる道

漢方と漢方薬の真実 からの御質問

性別 : 女性
年齢 : 20歳〜29歳
御職業 : 医療・福祉関係 薬剤師
簡単な御住所 : 近畿地方
ご意見やご質問をどうぞ : 初めまして、●●と申します薬剤師です。
 不妊治療に携わるなど医療関係に属しては来たのですが薬剤師としての経験・知識は無に等しい微々たる物。
 現状の閉塞感と無力感に苛まれている中で少しでも人の役に立てる者になりたいと、漢方薬・中医学に明るくなりたいと志している次第です。

 先生如何にして学べばいいのか、どこに居ればいいのか医師でもない薬剤師という立場で、どうやって力になればいいのか、どうお考えでしょうか。
 穿った質問をする事も出来ないひよっこで申し訳ありません。応えて戴けたら嬉しく思います。
 乱文大変失礼いたしました。お読みいただき有難う御座いました。

ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
 ちょうど一ヶ月前にも同様な御相談がありました。

2007年03月02日 漢方専門薬剤師への道

このブログですが、この中に記載しているURL

2007年02月19日 薬学部卒業後に漢方を専門に学ぶには?

の内容が、少しは参考になるかもしれません。

 要するに薬剤師の立場から、漢方薬、中医学を学んで実際に世の中の病人さんのお役にたつべく実践するには、漢方専門の薬局に就職するか、あるいは自営の漢方専門薬局を開設するかしかないように思われます。
 但し、どの業界でも価格競争が厳しいように、昨今ではあれだけ厚生労働省が医薬品のネット通販(医薬品画像と価格などを陳列掲載により買い物カゴ等によるお誘い販売を止めるように再三再四、内部通達を行ってもエスカレートするばかりですので、せっかく苦労を重ねて勉強し、知恵を絞って適切な漢方薬が販売できるようになっても、ようやくピントが合った時点でネット上の安売り店で購入される場合もあり、いくら腕が良くとも経営困難に陥る危険性無しとしない恐ろしい時代を迎えています。

(医薬品のネット通販も法律的に禁止され、来年度からはネット通販は行えないとの噂が業界では絶えないのですが、事実は定かではありません。現実には大手ポータルサイトなどでも公然と行われているのですから。)
 
 しかしながら、本当の現実を言えば、価格面で良心的な配慮さえしておれば、最終的には知識と腕で勝負できる世界でもありますので、むしろ

お客様は神様ではない! 「イヤな客には売るな!」石原明著(PHP研究所)要するに(嫌な客には売るな

 という心構えさえ出来てさえいれば、背水の陣で自営の薬局を持たれるのが一番だと思います。
 本当にやる気さえあれば、若いうちなら何でも可能です。
 ヒゲ薬剤師だって若い頃はボクサーになりたい夢もありましたが、そちらに向かえば絶対にKOパンチャーになる自信はありましたから。

 多少とも自信過剰気味で人生に立ち向かって行けば、かなりなことが可能です。大きく挫折することがあっても、勝気さと自分自身に対する信頼とがあれば、どのような目的でも8割以上は実現可能だと思いますが・・・・・いかがでしょうか?
 以上、取り急ぎお返事まで。
      村田漢方堂薬局 村田恭介拝


折り返し頂いたメール:お忙しい中、丁寧にお応え頂きありがとうございます。

>勝気さと自分自身に対する信頼とがあれば

 今私に足りない物は当にここかもしれません。
自信を持って進めるように努力を重ねる所存でございます。

 現在、逆境の最中と申しますか心弱くなっている部分もありましたものでお答えいただけた事自体にも心温まる気持ちでした。

 夢を見定め、現在足りない物を考え直して一歩ずつ進んで行きたいと思います。

 本当にありがとうございました。

posted by ヒゲジジイ at 22:14| 山口 ☁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年03月15日

御家族の代理による御相談で漢方薬を購入できますか?

性別 : 女性
年齢 : 20歳〜29歳
簡単なご住所 : 九州地方
具体的な御職業 : 事務
お問い合わせ内容 : HPを見てメールしました。
 母親が乳癌で今入院しています。月曜から抗がん剤治療が始まります。
 母親はそちらには行けないのですが、私だけでも処方してもらえるのでしょうか?
 少しでも薬のダメージをなくしたいのですが何をしていいのかわかりません。
 よろしくお願いします。

お返事メール:拝復
 まことに残念ながら、当方ではご本人様が積極的な意思と姿勢で来局されない限りは、御相談に乗って漢方薬をお渡しすることは出来ません。
 御本人様のご家族や代理の方からのお問い合わせで最も困る問題点は以下の通りです。

 たとえ、どのようにお困りの状況であっても、ご本人様の意思(本当に漢方薬を求めておられているのかどうか?)が不明であるという問題です。
 過去にも、しばしばご本人様の意思とご家族や代理の方との意識が大幅に異なっていたということから、後々に当方が板ばさみに合って困ったことがあるからです。

 また、直接来られる場合でも、御本人様の意思と意欲よりも、引率者の方たちの意欲ばかりが先走って、ご本人様はそれほど積極的ではなかったということが断然多く、昨今でも折々に遭遇しています。そのためにせっかく来られてもお断りせざるを得ないこともあるほどです。

 以上が村田漢方堂薬局の方針ですので、まことに恐縮ながら御了承下さいませ。
                     頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
posted by ヒゲジジイ at 00:48| 山口 | 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2006年07月03日

漢方専門薬局なのに煎じ薬を殆ど販売しない二つの理由⇒中医漢方薬学

 専門家の間では中医学をマスターすればするほど、煎じ薬でないと実際の中医学的な適切な漢方薬は作れないというのが通り相場である。
 ヒゲ薬剤師の発想では、まったく逆であった。

 漢方入門当初は吉益東洞流の日本漢方を信奉して10年以上、その時は煎じ薬でなければ漢方ではないと思い込んでいたほどだ。
 ところが逆に、キメ細かな中医学理論を修得すればするほど、逆にインスタント漢方でも、十分に通用することを知ることとなった。
 
 そんなことはどの本にも書いてないが、中医学における中薬学を学べば学ぶほど、面白いことが分かってきたのである。
 中国は広いから、各省ごとで漢方製剤原料である生薬を現地調達しなければならないので、効能の目的が一致すれば、代用生薬が使用されることが多い。要は、弁証論治にもとづく効能本位で、あらゆる生薬を有機的に応用するのが中医学の基本でもあり融通性に富んだところでもある。

 それならば、漢方処方においても同様なことが言えるではないかとの発想から、基本方剤をとても大切にする漢方医学、日本漢方の精神を受け継ぐとともに、これに中医学理論を導入し「中医漢方薬学」と名付けて、煎薬を使用せずに、エキス製剤を中心に組み合わせて応用すれば良いことを随分前に発見したのだった。

 煎じ薬を滅多に出さない理由のもう一つの大きな理由が、当時、盛んに手作り煎じ薬を製造販売していた頃は、連日、猛烈な漢方薬の粉塵に見舞われ、常に鼻声の毎日。「風邪でも引かれましたか?」とシバシバ来訪者に怪訝がられたものである。

 当時、地元の建築会社の社長さんから歯科用の集塵機にいいのがあるから導入するように何度も強く説得されたものであるが、とうとう導入する前に、煎じ薬の製造を殆ど止めてしまったひらめき

 こんなことを一生続けていたら、そのうち塵肺になるのは必定だと、タバコのことは棚に上げて、中医漢方薬学を実践すること二十数年、現在に到るということである。

 ところで、さきほどGoogleで「漢方薬学」を調べて見たら、ひげ爺の発明した「中医漢方薬学」のオンパレードなのに、ビックリ仰天exclamation&question

夏目漱石の「三四郎」←広田先生の哲学の煙が有名です。それにあこがれた若き日のヒゲ薬剤師であった! 

 漱石の「三四郎」。書中の偉大なる暗闇、哲学の煙を吐く広田先生にあこがれた若き日のヒゲ薬剤師なのであった。
posted by ヒゲジジイ at 18:49| 山口 🌁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする