性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : 四国地方
お問い合わせ内容 : こんにちわ。
胃ガンと肝硬変末期の父のためのインターネット検索で村田様のサイトに出会いました。たいへんに興味深いサイトであると感じたのですが、父の存命中は時間がとれず、父の症状に関係しない部分は飛ばしていましたので、最近折々に読み返させていただいております。
ところで他サイトである漢方薬の販売をみつけました。生薬成分が全て記載されています。
http://www.????.???/ 村田様が、ウィルス性肝炎に処方なさることがあるという漢方薬は、詳しい処方は記載されていなかったと思いますが、牛黄などの配合でした。もう父はおらず、危急の質問ではなく、村田様のブログでもこのような質問が多いことへの嘆息を多々お見受けしますので、村田様のお時間をとらせるべきではないのですが、父の存命中での検索が足りなかったのではないかという後悔から気になっています。
このような配合の漢方薬は、漢方薬なのかどうか、また肝硬変状態の肝臓に効果があると思われるかどうかご意見をおききしたく、メールさせていただきました。
ご迷惑というのは分かった上での失礼な質問を申し訳ありません。
もし、気がむかれましたらご教示ください。
お返事メール: ご質問の漢方薬は建林松鶴堂の「肝生」という漢方薬(医薬品)のことですね。
厚生労働省が正式に許可した医薬品です。
[効能・効果]急・慢性肝炎、肝臓肥大、胆のう炎、黄疸、肝臓機能障害
とあり、成分は、
サンソウニン 1.46g
ソウハクヒ 1.46g
ダイオウ 0.37g
ニンジン 1.46g
キジツ 1.46g
ウバイ 1.46g
サンシシ 1.46g
シュクシャ 1.46g
キッピ 1.46g
シャゼンシ 1.46g
ケ イ ヒ 0.37g
ガイヨウ 1.46g
ということですね。
これらの比較的ありきたりな生薬ばかりの配合で、記されている効能・効果通りの作用を発揮してくれれば、どんなに素晴らしいことでしょう。
建林松鶴堂は村田漢方堂薬局でも重要な取引先でもありますから、販売品目としてこの「肝生」も揃えておけばよさそうなものの、随分前から販売を行っておりません。
なぜなら、中医学の基本である弁証論治という個人個人の体質と病状にピントを合わせる原則を守る上からは、上記の製品の必要性をまったく感じなくなったからにほかなりません。
建林松鶴堂には個性のある優れた製剤が多種類製造されていますので、心龍や鶴寿、あるいは真仙、ナポリンなどヒゲジジイ好みの漢方製剤は随分愛用させてもらっています。
しかしながら「肝生」の必要性はいまだに感じることが無いので、常備していない訳です。確かに書かれている効能・効果は素晴らしいのですが、現実の様々な病態の肝炎・肝硬変・肝臓がんの患者さんたちのご相談では、いまだかつてその必要性を感じたことがないというだけのことです。
立場上、これ以上の本音の発言は差し控えさせて頂きますが、メールでご紹介頂いたサイトにおける「肝生」の販売サイトは、明らかにネット通販による「お誘い販売サイト」であり、このような医薬品のネットを利用したお誘い販売は厚生労働省が厳重に戒めており長年内部通達がなされているものですから、ブログの再録ではURLを伏せておきます。(
ネット上のお誘い販売は、業界内の噂では薬事法違反ではあるが罰則がまだ決まってないということですが・・・?)
以上、取り急ぎお返事まで。
折り返し頂いたメール:ぶしつけな質問に早速のお返事をどうもありがとうございました。
後悔ばかり多い中、少し心がやすまりました。
検索していて何度も村田様のページには出会いました。腹水に効く「何か」がないかとネットを探していた時、
補気建中湯のページに当たってブックマークをさせていただき、父の亡くなった後、読み返してみつけた茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)や高麗人参のページは、以前の検索で読み覚えがあり、あのころのことを思い出してしんみりしました。
メール相談のページがあるのにも全体をみる余裕ができた最近に気づき、存命中にご相談できていたらなあと強く思いもするのですが、サイトを読ませていただけただけでもよかったと自分に言い聞かせています。
腹水について調べたのは、長期の腹水が利尿剤変更によって軽快した後で、近い未来に予想される腹水の再貯留に備えてのことでしたが、今度腹水が貯まるようなことがあったら、近くの漢方薬局で処方してもらおうと心強かったです。
「ガンに効く」「肝硬変に効く」とうたわれたほとんどの販売ページについて医学的根拠が皆無であるように思われて全部無視し、今回の質問をさせていただいたページも売り方が怪しいので確か読みもせずに別ページに飛んだのですが、今余裕ができてゆっくりいろいろと見ておりますと「医薬品」と書かれていて、しかも生薬名も量もきちんと記載されていて、もしかしたら試す価値のあるものだったのだろうかという迷いをもち、村田様にお手数をおかけするようになった次第です。
本当にどうもありがとうございました。
そろそろ寒くなって参りますが、お体にお気をつけください。
ブログの記事を楽しみにしております。
ヒゲジジイのお返事: 腹水でも最悪の段階に達した時でさえも、うまくいけば起死回生の逆転ホームランをかっ飛ばせる可能性を秘めているのが
補気建中湯です。
しかしながら、まだ十分に体力や気力がある段階の腹水では、分消湯に茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を併用するとか、分消湯に五苓散、やや体力が落ちておれば補中益気湯に五苓散など、正確な弁証論治に基づいた配合で一定レベルの改善は得られることが多いものです。
最終段階に達した時点でも起死回生の効能を発揮する可能性を秘めた補気建中湯は、便利なエキス製剤が存在しませんが、某奇特なメーカーが出現して製造許可申請に向けて着々と準備中です。2年後くらいには実現したら、そのメーカーは大いに日本社会に貢献する名誉を勝ち取ることでしょう。
お父上様も残念なことでしたが、現実的な漢方薬の運用は、なかなか気苦労の多いもので、その時点における真に適切な正確な方剤を得ることは、世間様で想像されるほどには容易いものではないと思います。
あくまでその時点における正確な弁証論治が必要なのです。
この度頂いたご質問、意義あるご質問だったと思います。
【編集後記】 村田漢方堂薬局では肝硬変や肝臓ガンにおいては腹水が貯溜している場合は上記の分消湯製剤などの方剤類が主体になるが、そうでもない限りは、多くの場合、やや高価にはなるが牛黄製剤を主体にした数種類以上の漢方製剤を中心に運用して喜ばれることが断然多い。
肝・胆、膵臓系の重大な疾患の場合は牛黄製剤主体の運用でクオリティ・オブ・ライフの維持・向上に大いに貢献してきた実績が豊富である。
但し、腹水が貯溜する段階となると、多くは楽観出来る状態ではなく、むしろ重篤なケースが多いので、遠方からのご相談はお断りせざるを得ないのが現実である。
ご本人のみならずご家族との連絡と連携が可能な地元近辺の範囲内の方だけに限定したものにならざるを得ないわけで、それほど微妙な漢方処方の選定が必要なのである。 なぜなら、重篤な段階で遠方からワザワザ来局願うのは無謀であり、かといってご本人との直接面談によらなければ正確な漢方相談は不可能だからである。
補気建中湯を使用するよりも分消湯を主体に運用すべき病状もかなり多く、その判断を誤ると効果が激減する。
補気建中湯が必要と思われるときでも、綿密な弁証論治にもとづいて併用すべき方剤や単味生薬の工夫というものがあって当然である。
それほど漢方医薬学の世界は極めて綿密かつデリケートな世界であるが、同時に漢方薬局であるという立場上の保身も含まれているのは当然である。