2016年10月18日

漢方内科医師も呆れ果てる 「東洋医学は中医学よりもはるかに優れている」 という大それた妄言

2009年10月18日のボクチン(5歳)
2009年10月18日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

おたより:東海地方の漢方内科医師

 それにしても、日本を代表するガンの基幹病院や大学病院の先生方が持っている、漢方についての認識にはビックリしてしまいます。

 『漢方によるがん治療の奇蹟』に記されている漢方医学は、診断の精緻さ、治療の有効性、生薬の使用量や副作用の少なさなど、いずれにおいても、生薬治療学として、現代中国の中医学よりもはるかに優れていますには開いた口が閉まりません。

 確かに、私も漢方薬をいろいろな患者さんに投薬してみて、今までの自分の医学的経験に照らして驚くような経過を辿って改善する患者さんを目の当たりにして驚嘆する事はありました。

 しかし、だからと言って、その症例を「奇蹟」で片ずけてしまうことは無かったと思います。
  あくまで、科学者の端くれである医師として、「なぜそのように漢方薬が効いたのか」を追求したいと考えました。

 奇蹟で終わらしてしまっては、「奇蹟的症例の後が続きません」。

 大先生方も、若い頃には、興味深い症例を小さな学会で報告して、その症例について詳しく分析し、医学的教訓を得た筈です。
 大先生になってしまうと、脳が思考停止になり、奇蹟で終わらせてしまうのでしょうか?

 加えて、漢方医学的ロジックの上で病態を捉えて必要な生薬を投薬することによって病状は改善してゆきます。
 この辺り、私はまだまだ村田さんの分析力に遠く達してはいないと思いますが、 1mm でも近づければと思っています。

 脱線しましたが、正しい病態把握をして投薬すれば改善する訳で、奇蹟ではなく、「普通というか、当然のこと」という感じです。

 日本漢方には、口訣を始めとした実臨床の上で大変利用価値のある、投薬を決定する方法があります。
 中医学には、患者の病状を、置かれた環境の上で一個体に生じた病態を包括的に分析する特徴があるように感じています。

 1 人の患者を前にして、どちらが優れているかを議論するよりも、「いいとこどり」して治って頂ければ OK ではないかと愚考してしまいます。

 医師は治してナンボですので。

 やはり、大病院で勤務していたり、超有名大学に帰属していると、「良くなって頂く」ことより、「自分の手柄」を追求してしまうのでしょうか?

 大先生方を揶揄するつもりはありませんが、「今でしょ」で有名なある先生云く「今の ○○ 大学生はスッカスカ」とのことです。
 超有名大学に入学した頃は脳はパンパンでしたでしょうが、年齢を重ねるにつれスッカスカになってしまい思考停止状態になっているのでしょうか?

 村田さんも、新規の患者さんに向かい合う時は脳を最大限に回しておられるでしょうから、一日終わると脳疲労になり、ネコちゃんに癒してもらっているのでしょうか?
 最近、私も脳の思考スピード方遅くなっている感じは拭えません。でも、患者さんのために考えることが仕事ですから、考え続けます。

話しは大きく変わりますが、サッカー代表のハリル監督はスッカスカでないことを祈っています。ロシアに若者を連れて行ってもらわなければいけませんので。

2009年10月18日のボクチン(5歳)
2009年10月18日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

ヒゲジジイによるお返事メール:貴重なおたより、ありがとうございます。

 漢方医学のみならず、中医学を習得された先生方であれば、決して「漢方医学が中医学よりもはるかに優れている」などと、臆面もなく書けるはずもありませんので、権威?にものいわせて、却って無知蒙昧をさらけ出しているとしか思えません。

 日本全国の漢方医学と中医学に堪能な先生方も、きっと同意見であると存じます。

ところで、

>、「今でしょ」で有名なある先生云く「今の ○○ 大学生はスッカスカ」とのことです。超有名大学に入学した頃は脳はパンパンでしたでしょうが、年齢を重ねるにつれスッカスカになってしまい思考停止状態になっているのでしょうか?

 につきましては、すぐにピンときました。ネットで検索しましたら、やっぱり林修先生が言われたことで、〇〇は東京、すなわち東大生のことですねっ!


 ともあれ、お返事が遅れてしまいましたが、本日こそ久しぶりに、ようやくやや暇な時間が取れそうだと、昼下がりまではのんびりとした仕事が続いていました。

 ところが、昼下がって、遠方から通われている悪性リンパ腫の人達に続いて、大腸がんの肺・肝転移のあった人(抗がん剤と漢方薬の併用で、原発巣1cm残すのみ)の人に続いて、新規の肺癌の漢方サポートの相談者が続いて疲労困憊となり、ここ最近、連日の癌サポートの漢方相談の疲れとも重なって、閉店後は疲労困憊となって、さきほどまで寝込んでいました。

 ちなみに、これら3名の人達の前者以外は、すべて当方の漢方サポートを利用され、スキルス胃癌がようやく5年でほぼ根治と言われるまでになった人の紹介であったり、大腸がんでリンパ節転移があった人が7年間の漢方サポートでほぼ根治に近づいている人達に紹介を依頼して来られた人達でした。

 ハリル監督はスッカスカでないことを信じたいと思います(苦笑。

 いつもながら、ブログへの貴重なご意見を賜り、こころから感謝申し上げます。

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2009年10月18日のボクチン(5歳)
2009年10月18日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 22:23| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2016年10月16日

日本漢方(漢方医学)による癌サポートの著書を多数書かれているが、中医学よりもはるかに優れているといえるわけがない!

2016年10月12日のシロちゃん(メス3歳)
2016年10月12日のシロちゃん(メス3歳) posted by (C)ボクチンの母

 日本漢方主体の方剤ばかりで、しかも日本全国どこででも容易に入手可能な十全大補湯、補中益気湯、人参養栄湯などを駆使して、癌サポートの成果を多種類(少なくとも5冊以上?)の著書で喧伝されている癌研有明病院の星野先生。

 中医学や中草薬知識の介入なしに、ここまで優れた業績を報告され、世間に漢方薬の有用性を知ってもらうのは悪いことではないが、ちょっと勇み足の文言には、失礼ながら、呆れ果ててしまった。即ち
漢方医学は、診断の精緻さ、治療の有効性、生薬の使用量や副作用の少なさなど、いずれにおいても、生薬治療学として、現代中国の中医学よりもはるかに優れています
 ━『漢方によるがん治療の奇蹟』星野惠津夫著より
 このように、中医学よりも漢方医学がはるかに優れていると、臆面もなく極めて信憑性の低い、偏った主観を断定的に書かれる無神経さには唖然とさせられましたね。

 たくさんの著書のある星野氏は、東大医学部出身とのこと。

 村田漢方堂薬局にも東大医学部出身の医師自身が某疾患の漢方相談に、たまにやって来ては、無神経な発言を繰り返されて辟易しているが、同等レベルの無神経さといっても過言ではないだろう。

 ともあれ、日本漢方でもここまでやれることを喧伝されるのは素晴らしいことではあるが、牛黄や麝香のような高貴薬が無記載なのはやむを得ないにしても、東洋医学の素晴らしさを喧伝されようというのに、腹水や胸水のサポートに五苓散が記載されるのみで、日本漢方でこそ長く使われてきて定評のある補気建中湯や分消湯、あるいは小陥胸湯+五苓散などの記載がみられないことには驚かされた

 いずれにせよ、東洋医学が中医学よりもはるかに優れているという記載は、あまりにも勇み足に過ぎるだろう。

 蛇足ながら、数十年前にも、東大出身の当時の近畿大学医学部の遠田裕政教授が、中医学理論は荒唐無稽だと激しく非難する論文を月刊『和漢薬』誌に掲載された折に、ヒゲジジイが激しく逆非難の論文を投稿したところ、同じ東大出身の某大学医学部の某教授から、よくぞ書いてくれたと拍手喝采のファンレターをもらったことを懐かしく思い出した(呵々。

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2016年10月12日のシロちゃん(メス3歳)
2016年10月12日のシロちゃん(メス3歳) posted by (C)ボクチンの母

2011年10月16日の茶トラのボクチン(7歳)
2011年10月16日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 10:42| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2016年04月15日

咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)は半夏厚朴湯証とは限らない

2012年04月15日の茶トラのボクチン(7歳半)
2012年04月15日の茶トラのボクチン(7歳半) posted by (C)ボクチンの母

 日本薬学会による薬学用語解説には
漢方では、咽喉部に引っかかるような違和感のある状態を咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)という。吐こうとしても飲み込もうとしてもとれず、梅の種があるような感じに似ているところから梅核気(ばいかくき)ともいう。半夏厚朴湯の使用目標となる。
 とあるが、実際には必ずしも半夏厚朴湯証とは限らない。

 精神的なストレスとは無関係に、しゃべり過ぎなどが原因で声帯を痛めて、痰がへばりついた状態が生じて、麦門冬湯証ということも珍しくない。

 また、いずれの方法でも解消できずに、やはりしゃべり過ぎなどが原因で、軽度の炎症が慢性化していて、病院の検査では、異常がみられないと診断され、半夏厚朴湯や麦門冬湯を投与されても無効だったと言う人には、まずは天津感冒片の1錠をトローチ的に口中で溶かして咽喉に染ませてみると、即効を得ることも珍しくない。

 このことは既に先日もこのブログで取り上げたことなので、繰り返す必要もないようだが、上記のような薬学用語解説は、まったく正しい記載であるとはいえ、あらゆる現象には例外も多いということを強調したかったのである。

 実は、このように例外が多いということは、もはや言語矛盾であるから、例外だらけと言うべきで、半夏厚朴湯証のみに限定して記載されるべきではないのかもしれない(苦笑。

 村田漢方堂薬局に限って言えば、半夏厚朴湯証の咽中炙臠の変種と言うべきか、逆流性食道炎で大柴胡湯合半夏厚朴湯+オルスビー錠の3種類でしっかりフィットするケースが流行?している。

 当然、病院治療で無効だった人達ばかり。

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2012年04月15日の茶トラのボクチン(7歳半)
2012年04月15日の茶トラのボクチン(7歳半) posted by (C)ボクチンの母

2012年04月16日の茶トラのボクチン(7歳半)
2012年04月16日の茶トラのボクチン(7歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

ラベル:半夏厚朴湯
posted by ヒゲジジイ at 23:25| 山口 | 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2014年10月03日

本当のことを言えば、日本漢方にも少しは優れた部分もある

2008年10月3日のボクチン(4歳)
2008年10月3日のボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 中医理論の綿密詳細さにおいては、日本漢方なんて、足元にも及ばない。

 しかしながら、日本漢方がすべてに劣るかと言えば、そうともいえない部分が、ないでもない。

 それは何かと言えば、基本方剤を徹底的に利用しようという精神。
 その精神によって、体験的に基本方剤のユニークな使用方法が、一部の方剤においては、中医方剤学で理論的に究められているものよりも、広範囲に応用できるノウハウを持っていることである。

 たとえば、詳細は述べないにしても、柴胡桂枝湯や葛根湯、あるいは柴胡桂枝乾姜湯、桂枝茯苓丸や桃核承気湯など、古方の方剤に多いが、補気建中湯や分消湯など、後世方においても優良方剤の発掘にも目覚しい部分がある。

 但し、防風通聖散を肥満薬として宣伝するなど、どうしようもない錯誤を犯すという、救いようがない過ちを犯すのも、中医理論のような、基礎理論があまりにも脆弱過ぎるがゆえの、大きな問題である。

 総合的に見れば、明らかに日本漢方よりも、中医学のほうが、数段優れているのは間違いない。

 だからといって、日本漢方の古方の方剤を中心として、基本方剤を徹底的に極めようとしてきた、歴史と伝統を学ばないでいるのは、とても勿体無いことである。

 だから、中医学と日本漢方の両者を学ぶべきなのである。

 といっても、日本漢方における実証・虚証・虚実中間証という、とりわけ実証と虚実中間証という概念の、蒙昧錯誤については、医学生や薬学生では、試験に出題されることが稀にあるので、止むを得ず知る必要はあっても、学ぶ価値は、まったくない。

 実証と虚証について、徹底的に極めようと思えば、全文を読み通す気力のある人は少ないかもしれないが、⇒ 虚証と実証について および 邪の湊るところ、その気は の2つを参照されたし。

 ともあれ、中医学を基礎に、日本漢方の基本方剤を徹底的に極めようとする精神を融合した流派を、ヒゲジジイによって『中医漢方薬学』と名付けられている(呵呵。

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2009年10月3日のボクチン(5歳)
2009年10月3日のボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2009年10月3日のボクチン(5歳)
2009年10月3日のボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2010年10月3日のボクチン(6歳)
2010年10月3日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 00:04| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2014年07月28日

専門書籍の世界でも、悪貨は良貨を駆逐する

2010年7月28日のボクチン(6歳)
2010年7月28日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

 悪貨は良貨を駆逐するの代表的な用例として「人気ブランドのコピー商品が安く手に入るから、本物のブランド品は全く売れなくなったそうだ」というのがあったが、漢方界の書籍では、コピー商品ならまだしも、相変わらず民間療法に毛が生えたレベルの、日本漢方ともマニュアル漢方ともつかない、安易な書籍が横行している。

 それに引き換え、中医学の中級レベルの書籍として永遠の価値がある翻訳書『中医臨床のための「病機と治法」』(原書は陳潮祖先生の『中医病機治法学』)など、はるか昔に絶版となって、古書値が無限に高騰しているという。

 これこそ、まさに「悪貨は良貨を駆逐する」というもので、これだから市井の漢方薬局がいつまでも潰れないで、永遠に存続するはずである。

 すなわち、保険漢方がいくら盛んになっても、いまだにテレビで漢方専門医が、ツムラ漢方を片手に「風邪に葛根湯、冷え性には当帰四逆加呉茱萸生姜湯、アトピーには温清飲」と宣伝して恬として恥じないレベル。

 氾濫する書籍も、これに毛が生えたレベルのものが大多数、といっても過言ではない。

 心理学関係の書籍も同様で、笠原敏雄氏のような際立って優れた諸著作でさえも、なかなか出版に漕ぎ着けずに、ようやく奇特な出版社が見つかって、めでたく出版に漕ぎ着けても、様々な「抵抗」に出会って、販売部数が伸びずに、少ない出版部数のまま、いつまでも売れ残るか、あるいは少ない部数が何とか売り切れてしまうと、ほとんど永遠に絶版になってしまう。

 要するに、日本人全般の専門領域の向上心や、知性および教養レベルが低い、ということなのだろう。

2010年7月28日のボクチン(6歳)
2010年7月28日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

2010年7月28日のボクチン(6歳)
2010年7月28日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

2010年7月28日のボクチン(6歳)
2010年7月28日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 00:05| 山口 ☀| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2014年06月26日

素晴らしい製剤なのに使っても使ってもロットが変わらず使用期限が次第に迫って来るとは勿体ない!

2009年6月26日のボクチン(5歳)
2009年6月26日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

 世の中の同業者はこんな優れた製剤なのにどうして気がつかないのだろう?

 これまでもメーカーさんの方で回転率が悪く、村田漢方堂薬局だけが頻繁に愛用している製剤が何種類かあって、そのために泣く泣くこのブログ上で派手に宣伝してきたが、もはやその手だけは使いたくない。
 ハゲタカのような通販薬局サイトがあって、それらを狙い撃ちされ兼ねないからである。

(蛇足ながら、医薬品の通販サイトに対する覆面調査の結果が発表されていた。すなわち厚生労働省による覆面調査によれば、使用方法などメールで問い合わせたところ、その半数近くがまったく返信がなかったという。)

 昨今も当方で折々に使用して著効を奏する愛用の製剤があって、在庫が減るつどメーカーさんから直接取り寄せても、毎度マイド、いつまでたってもロットが変わらず、次第に使用期限が短くなって来る。

 メーカーさんに問い合わせると、この素晴らしい製剤が信じられないことに多くの薬局では人気がなく、在庫の割には使ってもらえる薬局が少ないということだった。
 だからいつまでもロットが変わらないはずである(涙。

 よっぽどこのブログで、数年前までのように派手に宣伝してみようかと思ったが、上記の通り、通販サイトに狙い撃ちされると、その製剤の品性が一気に貶められ兼ねないので止めておくが、粉末を原料とした丸剤で、一般の製剤であれば生姜や大棗、人参が配合されているために、アトピー性皮膚炎や慢性腎炎には使用しにくいが、この製剤であれば、本来の方剤の「原典の配合内容に忠実」であるから、よけいな生姜や大棗など含まれない

 しかも人参の代わりに党参配合であるから、アトピー性皮膚炎にも慢性腎炎や腎不全でもとても使用しやすい。

 こんな優れた製剤を、同業者は気がつかないなんて、ほんとうに信じられないっ!

2011年6月26日のボクチン(7歳)
2011年6月26日のボクチン(7歳) posted by (C)ボクチンの母

2012年6月26日のボクチン(8歳)
2012年6月26日のボクチン(8歳) posted by (C)ボクチンの母



posted by ヒゲジジイ at 00:07| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2014年06月18日

芍薬甘草湯中の芍薬と甘草の配合比率の重大な問題点について

2010年6月18日のボクチン(6歳)
2010年6月18日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
ブログへの転載の可否 : ブログへ転載を許可します
年齢 : 20歳〜29歳の男性
簡単なご住所 : 九州地方
具体的な御職業 : 薬学生
お問い合わせ内容 :

 大学で芍薬甘草湯についての論文を作成中なのですが、先生のブログ上で芍薬4〜6gに対して甘草2gという記載をみて論文に取り入れたと思いました。

 しかし、ネット上の記事だけでは根拠が弱いと指導教授に言われ、論文を探したのですが、どうしても見つけられず困っています。

 何か根拠となるような論文が有りましたら教えていただきたいのですがよろしでしょうか。
2010年6月18日のボクチン(6歳)
2010年6月18日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

お返事メール:

 当方のブログ 漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告 のgoogleの検索窓に「芍薬甘草湯」を打ち込んで検索すれば、複数の記事が出てくるはずです。
 それらを参照されるとよいかもしれません。

 ご覧になったのは、芍薬甘草湯 漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記  に掲載の3つの記事なのでしょうか?
 そのページの一番下の記事にもかなりな根拠を示しているはずですが、
たとえば、
前文略・・・日本漢方では、芍薬(しゃくやく)と甘草(かんぞう)の比率を同量で使用するから、甘草が多すぎて浮腫を生じさせてしまうことが多い。
同じ比率で使用するのは、傷寒論の記載に忠実であろうとするための、弊害である。
当時とは、時代も環境も、マッタク異なっている、ということに対する配慮が足らないのでは、ないだろうか。
煎薬で服用するときでも、甘草は3〜4グラムくらいまでとし、芍薬をしっかり多めに使うべきではないか。
つまり、上記の甘草の分量に対して、芍薬は9〜12g、場合によっては15g使用するのである。

現代中国の文献類によれば、日本のように等比率で使用されることは、まずない。
・・・後文略
など、様々なブログの記事で繰り返し書いていますが、

>ネット上の記事だけでは根拠が弱いと指導教授に言われ

という石頭の考えでは漢方医学に発展は将来も到底望めそうもありませんね(苦笑。

 取り急ぎ、お返事まで。

2010年6月18日のボクチン(6歳)
2010年6月18日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

折り返し頂いたメール:

 参考にしてみます。また分からないことがあったらご連絡さしあげるかも知れません。

 また相談に乗っていただけましたら幸いです。

2010年6月18日のボクチン(6歳)
2010年6月18日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母


ラベル:芍薬甘草湯
posted by ヒゲジジイ at 00:02| 山口 ☔| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2014年02月19日

中医学を学ぶ獣医師の女性からのおたより

2008年8月3日のボクチン4歳
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:40〜49歳の女性
【 地 域 】:とっても寒い地方
【 具体的なご職業 】:主婦(獣医師免許あり)
【 おたより 】:いつもブログを拝見しています。
 貴重な御意見・経験を書いていただき、大変勉強になります。ありがとうございます。

 証が複雑な私は自分の通える範囲では適切な治療をしてもらえる専門家に出会えなかったため、独学で中医学を学び、自己治療をしています。失敗しながらですが、大分臨機応変に証の変化に対応できるようになり、普通の生活が出来るようになってきています。

 それとともに、中医学の奥の深さ、難しさ、安易な治療の恐ろしさも、嫌というほど実感しています。

 ですので、私の行っている自己治療はブログで拝見する先生の主義とは異なると思い、御連絡するのはおこがましいと思っておりましたが、このたび「猫ちゃんたちに漢方薬を利用される貴重なお便り」を読ませていただき、メールさせていただきました。

 私は体力がないので現在獣医業はしておらず、よって、中医学を知った後にルーティンに動物を診る機会がないので、あまり大きなことは言えませんが、それでも、イヌやネコなどに弁証を試みることがあります。

 そして、これは明らかに陰虚の舌だ、とか、これは腎虚による脱毛だ、とか、肝腎陰虚が根底にある肝気欝結だ、などということが分かることがあります。私が現在飼っているハムスターの1頭は、明らかな脾虚湿盛タイプです。言ってくれないので難しいですが。

 しかし、弁証できても、薬物の体内動態が異なることが多い動物に、人間に使うエキス剤などをそのまま使えるかどうかは分かりません。試しに使ってみたりはしますが、本当に手探り状態です。

 臨床でエキス剤を使う先生もいらっしゃいますが、中医学的診断がはっきりしないので、その動物のどんな証にエキス剤がどのように使われどのような効果があったのかなど、私にはよく理解できません。

 ただでさえ、日本では東洋医学的治療は人間の場合ですらあまりまともに行われているとは思えない現状ですが、人間の医学より遅れがちな獣医師領域では、動物の漢方治療はさらに遅れています。

 近年、獣医師が中医学を学ぶ場が出来、私もそれにチャレンジしようかと思ったことがあります。
 しかし、内容を見てみると、いかんせんレベルが低い。

 これにお金を出して通うくらいならば、人間のほうの鍼灸や中医師の免許を取ったほうが臨床に役立つはずだと思い、パスしました。(それら資格をとる気は今のところありませんが)

 この様な状況で、獣医師が、「漢方」や「中医学」を標榜するのは、早すぎると思っています。

  獣医学領域の東洋医学の発達には、まず、人間のほうの中医学・・・というか中医漢方薬学の論理的思考が普及することが必要不可欠です。
 自分のためにも動物のためにも、それを切に願っています。

 乱筆乱文失礼いたしました。
 その役割をになっていらっしゃる先生のブログを、陰ながら応援しています。

トラちゃんとシロちゃん
トラちゃんとシロちゃん posted by (C)ボクチンの母

お返事メール:おたより、ありがとうございます。

 掲載した「猫ちゃんたちに漢方薬を利用される貴重なお便り」には続編があります!
 後日掲載する予定ですので、こちらの方も是非ご覧下さい。
 大変なご苦労を重ねながらも、物言わぬ猫ちゃん達にみごとに漢方薬を運用されておられます。

 人間様相手に40年間、日々四苦八苦しながら弁証論治の毎日を送っていますが、物言わぬ猫ちゃん達に上手に運用されている人もおられるのですから、目が点になってしまう心地で、まことに脱帽ものです!

 そんじょそこらの人間様よりもはるかに霊性の高い猫ちゃん達を嫌ったり虐待する日本人が実に多い昨今、このような奇特な方がおられるのはとても素晴らしいことだと思います。

 ところで、独学で中医学を学ばれたそうですが、他ならぬ私自身こそ独学でまずは日本漢方を学びつつ、併行して中医学を学んできました。
 ●●さんも独学であることに何の引け目を感じる必要はまったくありませんので、自信を持って頑張って下さい。

 「中医漢方薬学」については、日々の仕事は漢方相談が専門であるがゆえに、日本漢方の優れた点とともに、救いようのない欠点を発見し、一方では※中医学特有の構造主義科学理論としての優れた点に目覚め、両者を融合する道を構想し、情熱に燃えていた平成元年より数年前までは体系的な拙論を完璧に構築するつもりで頑張っていた時期もありました。
(※その他の参考文献;中医学は構造主義科学であるということ

 ところが、生来の怠け者ゆえ、日々の仕事に追われているうちに、いつもまにか「大それた構想を思い描いたまま」に終わってしまいました。

 昨今は、一年半前に亡くなった「信じられないくらい霊性の高かった茶トラのボクチン」の写真をブログに貼り付けるのが唯一の生き甲斐となり、本末転倒したブログを続ける毎日となっています(苦笑。

 ●●さんも元気になられましたら、是非、本業に復帰され、猫ちゃんやワンちゃんの尊い命の救済に勤しんで頂きたいものです。
 専門知識を活かされつつ、獣医学における漢方薬治療の道を開拓して欲しいものです。

 おたより本当にありがとうございました。
 なお、数日以内にブログに掲載させて頂きたいと思います。
 ご自愛下さいませ。

2008年8月3日のボクチン4歳
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

折り返し頂いたメール:お返事ありがとうございます。
 温かいお言葉、大変嬉しく思います。(怒られるかと思っていました。スミマセン)

 「前回の続き」、読ませていただきました。
 猫後天性免疫不全症候群、俗に言う猫エイズは、機会があれば漢方でチャレンジしてみたいと以前から思っていた疾患です。
 貴重な報告ですね。

 後天性免疫不全症候群を発症してしまった猫は、気虚が根底にある、複雑な虚実挟雑の状態だと私も思います。

 私自身は治療経験がないので、推測でしかありませんが、私であれば、補気剤を中心に補益剤を適宜使いつつ、板藍根などの抗菌・抗ウイルス作用のある生薬を含む製剤を併用することからはじめようかな、とは思います。

 ただし、体温が低下している場合が多いので、寒性の板藍根などを使いすぎると余計に体温を下げてしまう恐れがあるため、適切な配合は必要でしょう。
 もちろん、証次第ですし、適宜調整が必要でしょうから、固定した方剤は使えないと思います。

 また、百会の経穴刺激は、猫後天性免疫不全症候群に対して使われています。
(*百会は人間と位置が違います。)
 が、直接手で揉んだりすると、痛みがあって嫌がる場合があるので、鍼灸や電気刺激など他の手段を証によって選択して使うほうがよいかもしれません。

 これらはあくまでも、「私だったら手探りでこうするかも」であって、果たして本当に有効なのかは分かりません。
 一意見として、参考までに。


 私自身のことですが、後遺症と先天的体質、及び、それにどこまで自己治療で対応できるかの見通しを総合して考えると、体力勝負の臨床に戻るのは難しいといわざるを得ません。
 この状態で何が出来るのか、目下模索中です。
 現在は、時々基礎の漢方講座などを開いたりしています。

 いずれにしても、微力ながら、弁証施治の普及に協力できればいいなぁ、と思っています。

 こちらは現在、猛吹雪で昨日から陸の孤島状態です。
 うちはまだ大丈夫ですが、周囲は停電しています。
 私は山口県出身ですが、温暖な山口の気候が懐かしいです。

 とはいえ、山口も底冷えのする時期ですね。
 大変お忙しいことと思いますが、どうぞ御自愛ください。

2008年8月3日のボクチン4歳
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 00:09| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2014年02月16日

『漢方の臨床』2014年1月号「新年のことば」に掲載文

2008年8月3日のボクチン4歳
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

虚証と実証の概念

          村田漢方堂薬局 薬剤師 村田恭介

恭賀新年
 新年早々些か気が引けるものの、あまりにも基礎的な部分の問題なので、せっかくの機会だから記させて頂きます。

ネット上でよく見られる虚証と実証の解説について

 先日、久しぶりにネットで「虚証と実証」を検索してみて驚きました。
 実証は「体質強壮な人」で、虚証は「体質虚弱な人」、「中間証」は実証と虚証の中間で、中庸のとれたちょうどよいバランスがとれた状態を指すように書かれている。

 とするなら、日本漢方では「実証」も「虚実中間証」もまったく健康体であり、断じて病態ではないことを指すことになり、唯一「虚証」だけが病態といえることになる。

 とはいえ「虚証」の概念は「体質虚弱」というのではあまりに漠然としすぎているように思われる。
 翻って、現実的な問題としては、多くの疾患は虚証が基礎になって発病しているので「邪の湊るところ、その気は必ず虚す」と言われる。
 それゆえ、ほとんどの慢性疾患は虚実挟雑の証候を呈するはず。

一般用漢方製剤承認基準の手引書でも

 一般用漢方製剤承認基準に増補収載された294処方の解説書『新 一般用漢方処方の手引き』が出版されたという。
 いまだに托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)が収載されないことには個人的には残念ですが、ともあれ、相変わらず由々しき問題は虚実の概念。

 各処方について、虚実の概念を体力のみで分類し、それを5段階表示で適応度をポイント化して示唆している。
 T.体力虚弱 U.やや虚弱 V.体力中等度 W.比較的体力がある X.体力が充実

 いったい全体、体力とは何ぞや?

 漢方専門薬局経営40年のキャリアがあっても、生来筆者の頭が悪過ぎるのか、さっぱり理解できない。
 一見して華奢でひ弱そうな女性たちで、いわゆる体力虚弱な人達に、大柴胡湯適応者が五万と存在するので、過去40年間に極めて多数のひ弱な女性達に著効を得ている。

 そもそも、虚実の概念を意味不明な「体力」のみで表現しようというのが土台無理な話ではないだろうか。
 虚弱で食欲もなく胃が痞えてばかりいた女性達が、大柴胡湯で胃がスッキリとして元気になり、体力を回復した人が多い現実がある。

 そろそろ実証と虚証について、これまでのような曖昧で模糊、どうしようもなく漠然とした概念でよしとせず、総力を挙げて綿密な検討を行ってもよいのではないでしょうか。

トラちゃんとシロちゃんとクロちゃん
トラちゃんとシロちゃんとクロちゃん posted by (C)ボクチンの母

2008年8月3日のボクチン4歳
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

ラベル:漢方の臨床
posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2013年12月26日

日本漢方特有の虚実の概念では「実証」と「中間証」は健康体であり病態ではない。「虚証」だけがまともな病態である。

2008年1月19日のボクチン3歳
2008年1月19日のボクチン3歳 posted by (C)ボクチンの母

 久しぶりにネットで「虚証と実証」を検索してみて驚いた!

 実証は「体質強壮な人」で、虚証は「体質虚弱な人」、「中間証」は実証と虚証の中間で、中庸のとれたちょうどよいバランスがとれた状態を指すように書かれている。

 とするなら、日本漢方では「実証」も「虚実中間証」もまったく健康体であり、断じて病態ではないことを指すことになり、唯一「虚証」だけが病態といえる。

 実際のところ、現実的な問題としても、日本漢方の概念では間違いなく「虚証」だけが病態であることに間違いない。これだけは繰り返し述べる価値のあるただ唯一正しい部分である。

 正しい部分には違いないが、その内実となると日本漢方の「虚証」の概念はあまりにお粗末だから、これ以上揶揄するのはやめておく。

 実際に中医学的に考えると、多くの疾患は虚証が基礎になって発病している。
 「邪の湊るところ、その気は必ず虚す」と言われるゆえんである。


 それゆえ、ほとんどの慢性疾患は虚実挟雑の証候を呈する。
「実とは邪気が盛んなこと指し、虚とは正気の不足を指す」のであるが、従って「実証」とは邪気が盛んなために現れる証候であり、「虚証」とは正気不足より現れる証候である。
 現実問題としてとりわけ慢性的な疾患の場合、「虚実挟雑」状態であるのが一般であるが、疾病の過程はある意味では、正気と邪気との相互闘争する過程とも言える。それ故、中医学には「扶正袪邪」の法則がある。この理由から一般的な慢性疾患では「扶正法」、「袪邪法」を同時に用いる「攻補兼施」が治療原則となることが多い。
          ━専門用語が未熟な日本漢方

※参考文献:虚証と実証について

2008年1月19日のボクチン3歳
2008年1月19日のボクチン3歳 posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 22:47| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2013年12月25日

いまだに虚実の概念を「体力」のみで分類する日本漢方の危うさ

2008年1月19日のボクチン3歳
2008年1月19日のボクチン3歳 posted by (C)ボクチンの母

 一般用漢方製剤承認基準に増補収載された294処方の解説書なるもの『新 一般用漢方処方の手引き』が出版されたという。

 いまだに托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)が収載されないお粗末さについては今さら言わないとしても、相変わらず由々しき問題は虚実の概念である。

 各処方について、虚実の概念を体力のみで分類し、それを5段階表示で適応度をポイント化して示唆している。

 T.体力虚弱 U.やや虚弱 V.体力中等度 W.比較的体力がある X.体力が充実

 いったい全体、体力とは何ぞやっ???

 漢方専門薬局経営40年のヒゲジジイは頭が悪過ぎるのか、さっぱり理解できない。

 一見して華奢でひ弱そうな女性たちで、いわゆる体力虚弱な人達に、大柴胡湯適応者が五万と存在するので、過去40年間に極めて多数のひ弱な女性達に著効を得ている。

 この書籍はまだ入手していないので、いまから何とも言えないが、まさかTの体力虚弱な人には不適となっているとしたら、ますますおかしいことになる。

 そもそも、虚実の概念を意味不明な「体力」のみで表現しようというのが土台無理な話である。

 この書籍の著者にこそ、ここで表現される「体力」の意味を、具体的詳細に納得いくように説明願いたいものである。

 虚弱で食欲もなく胃がつっかえてばかりいた女性達が、大柴胡湯で胃がスッキリとして元気になり、体力を回復した人が多い現実がある。

 はたしてこの書籍では大柴胡湯の適応は上記の5分類のうちのT.体力虚弱にも分類がなされているのかどうか?

 とはいえ、いずれにせよ何度も繰り返すが、虚実の概念を意味不明な「体力」のみで表現しようというのが土台無理な話なのである。

 日本の漢方は、いよいよ救いようがないほど堕落してしまったのかと危ぶまれる。

参考文献:
 @ 専門用語が未熟な日本漢方
 A 虚証と実証につて

 


2008年1月19日のボクチン3歳
2008年1月19日のボクチン3歳 posted by (C)ボクチンの母 

 
posted by ヒゲジジイ at 20:51| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2013年07月27日

日本の漢方はますます衰退して行く(緒方玄芳先生の思い出)

IMGP9568
IMGP9568 posted by (C)ボクチンの母

 一般用漢方製剤承認基準に多数の方剤が追加収載されたことはまことに慶賀すべきことであるが、ある種の慢性化膿性疾患で体虚邪実の状況下に必須の托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)が採用されないままである。

 中医学でも基本方剤として掲載される書籍もあるほどの超重要で必須の方剤が、いまだに一般用漢方製剤承認基準に採用されないというこの現実。

 逆に言えば日本の漢方レベルがその程度の認識しか持てない人達が、漢方界を牛耳っているということで、だから日本の漢方医薬学界のレベルの低さを露呈しているということに他ならないのだろう。

 既に故人となられた京都の医師、緒方芳郎(緒方玄芳)先生は、日本漢方界の中でも非伝染性感染症を得意とされて、多くの治療経験例を『漢方の臨床』誌にながく連載され、複数の書籍も出版されている。
 その中でも先生が特に採用されておられた方剤にこの托裏消毒飲や千金内托散などがある。

 ありきたりなところでは歯槽膿漏から痔瘻まで、特殊な疾患ではクローン病などでも使用機会があり得るもので、フィットすれば素晴らしい効果が得られることを再三再四紹介されておられた。

 昭和の時代にヒゲジジイが若かりし頃、直接お会いすることはなかったものの、お電話を頂いて親しく黄耆の品質問題を話し合ったり、こちらの肺膿瘍の治癒例をご紹介したり、『求道と創造の漢方』という拙著が出版されたときには出版祝いまでして頂いたり、先生のご著書も贈呈下さったり・・・という楽しくも懐かしい昭和の時代が続いていた。

 ところが昭和が終わって平成になるかならないかのころに、ヒゲジジイが(その頃はヒゲはなかった)『漢方の臨床』誌・東亜医学協会創立50周年記念特集号に『日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱(平成元年の提言!)』など一連の日本漢方批判(『中医学と漢方医学』『中医漢方薬学』)を発表して以来、ぷっつりと交流が途絶えてしまった。

 交流が途絶えた理由は、ほかならない日本の漢方理論の幼稚さを激しく指摘して、中医学理論を採用すべきであるという主旨の檄文であったからであろうと思われる。

 しかしながら、ヒゲジジイとしてはいまだに日本漢方の先生方の中では学問的にも臨床的にも最大限に最も尊敬し続けている。
 西洋医学治療で抗生物質も効果がなくなり外科的処置でも再発を繰り返すなど困惑されておられる人たちの非伝染性感染症の強力なサポート方法のヒントを得るため、緒方玄芳先生の諸著作をいまだに参考にさせて頂く機会がなくなることはない。

 話しは長くなったが、その緒方芳郎先生も頻繁に愛用されて、多くの化膿性疾患を治療されてこられた托裏消毒飲を無視し続けるこの日本の漢方界の現状を、あの世からきっと先生は歯痒い思いをされておられるに違いない。

 翻って、日本では昨今、漢方薬の原料価格が異常に高騰しているというのに、製造メーカーも末端の薬局でも販売価格を上げることができずに、一昔前ほどのようには利益が得られない構造となっている。
 本来は時間をかけてピントを合わせなければなかなかフィットしない漢方薬の配合の苦労を端折って、安易な病名漢方に走って薄利多売に専念せざるを得ない状況が顕著となっている。

 ますます日本の漢方界は悪循環に陥って、従来のように西洋医学で対処できなくなった人たちをサポートする知識と経験を有する専門家が減り続けているのが現状のようである。

 日本の漢方に明日はないのかもしれない。

2006年3月2日のボクチン(1歳半)
2006年3月2日のボクチン(1歳半) posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 23:15| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年10月22日

小青竜湯を普通に飲んでる薬剤師でも吉益東洞すら知らない人が多い情け無い現実

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メジロ posted by (C)ヒゲジジイ

 小青竜湯という癖のある方剤は、村田漢方堂薬局では呼吸器系の疾患で稀に使用することがあっても、アレルギー性鼻炎などありふれたアレルギー性疾患には滅多なことで使用しない。多くは藿香正気散で解決することが多いので、注意を要する麻黄や細辛が多量に含まれた小青竜湯は常々敬遠しているからである。

 それはともかく、鼻炎などで自身が小青竜湯を利用しているような立派な薬剤師でも、専門分野が違えば日本古方派の巨匠、吉益東洞のトウの字すら知らない連中が多いのに絶句するばかり。

 ヒゲジジイに言わせれば日本漢方をここまで堕落させた張本人は吉益東洞であり、次の世代の吉益南涯こそ東洞の行き過ぎを反省して気血水論を起こした点ではまだ見るべきところがあるはずだが、陰陽五行説を空論億説として切捨てたのみならず、あらゆる中医学理論を否定した吉益東洞を現在に至るまで神の如く奉るのは些か時代錯誤である。

 これらの事情を説明してあげようにも、彼等彼女等は薬剤師ともあろうに吉益南涯はおろか、吉益東洞すら聞いたこともないらしいので、あきれてものが言えなくなった。
 その癖、虚証と実証に虚実中間証という得体の知れない荒唐無稽な虚実論の似非知識だけは糞真面目に論じるのだから⇒馬鹿も休み休み言い給へっ。

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メジロ posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 08:53| 山口 ☀| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年10月03日

地元の漢方薬局ではまともな漢方相談にならなかったという人達


シジュウカラ posted by (C)ヒゲジジイ

 当方のブログでは、なるべく近隣の直接通える範囲の漢方専門薬局で漢方相談されるべきことを折に触れて書いて来た。
 ところが、まともな漢方相談にならなかったので、結局は遠路はるばる本州の最西端の下関まで二泊三日の旅程でやって来られる人が、昨今とても目立つようになった!!!

 中には地元では話しにならないので、ネットで調べていかにもそれらしい漢方薬局に通うつもりで電話で問い合わせたところ、
「遠路はるばる通うには及ばない、一ヶ月分送ってあげるから、その病気は当方の漢方で何人も治しているので・・・」
 という口上にはウソ臭く、あまりに安易な儲け主義の姿勢が鼻についてプンプン匂うので、その漢方薬局に通うことも断念。強く奨められる通信販売もお断りして、結局は少し怖そうな下関に通うことになった人もいた。

 一度も来られず、しかも第二類医薬品に属する漢方薬をしょっぱなから通信販売を奨める漢方薬局がネット上にはびこっている例は他にも枚挙に暇がない。

 要するに多くの人が、地元近辺の漢方薬局では病名を告げると、症状をあまり聞いてもくれずに直ぐに漢方薬が出され、常々ヒゲジジイがのたもう弁証論治の弁の字すらなかったケースばかり。
 超一流の中医学を専門とする医師のところでも、しばらく通いつめても、漢方薬による不快反応を申告しても、配合の微調整すらしてもらえなかった体験者もおられる。

 日本の漢方がますます廃れるはずである。


イソヒヨドリ(メス) posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 23:26| 山口 ☀| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年08月15日

平成の御世も深まって、とうとう吉益東洞先生は・・・

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IMG_0641 posted by (C)ヒゲジジイ

 平成の御世も深まって、とうとう吉益東洞先生は「暗黙知」や「形色知」というまるで頓悟禅の老師のように祭り上げられたようで、まことにもっておめでたいことです。

 道い得るも三十棒、 道い得ざるも三十棒

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IMG_0654 posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:吉益東洞
posted by ヒゲジジイ at 01:10| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年07月05日

日本の漢方界で、立つ鳥、跡を濁すヒゲジジイ

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DSC_2026 posted by (C)ヒゲジジイ

 これまで散々ブログやHPで是正すべき情けない日本の漢方界の現状や漢方製剤中の錯誤した配合生薬の問題点を数々書きまくって来たが、取引先のT社の外交さんが、極めて適切にヒゲジジイを批評してくれた。

 立つ鳥、跡を濁すヒゲジジイ

 実に言い得て妙である。

 長州藩士の大先輩、高杉晋作の言葉にあるように「面白きこともなき世を面白」く生きるには、専門分野で明らかに錯誤した問題点を歯に衣着せずに繰り返し指摘し続け、あの世に呼ばれる前に精一杯、跡を濁して去る。

 原発関連や地震関連の学者さん達の無能ぶりが顕になった昨今ではあるが、この日本の漢方界の「学者さん」たちは、昔からヒゲジジイに反論するどころか、いつもいつも・・・っ(呵呵。

KSC_6531
KSC_6531 posted by (C)ヒゲジジイ


 
posted by ヒゲジジイ at 12:21| 山口 ☔| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年05月12日

病院医師による小青竜湯乱用が取り持つ縁

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ZZZZ5853 posted by (C)ヒゲジジイ

 昨年末から今年にかけて、親子で気管支喘息の二人と、同じく親子で花粉症の二人が、病院の医師による小青竜湯誤投与により、いずれも幸いに副作用が出ないまでも、一向に効果がないので、ネットで調べたら村田漢方堂薬局の主催するHPやブログに小青竜湯乱用の問題点を指摘していたのでやって来られた。

 本来なら親御さんが既に当方の漢方薬を利用された経験がない限りは、子供さんのご相談はお断りするところであるが、いずれも子供さんに負けず劣らずそれぞれの母親の症状も一定レベル以上であるので、まずは母親に効果が出るのを確かめて後、ボチボチ子供さんも取り掛かろうということになった。

 この二組の親子の片方はご主人が医師である。

 案の定、この親子合計4名に、小青竜湯の適応者は皆無。そのうちの3名は明らかに肺熱に肺陰虚が並存する現状であるから、辛夷清肺湯を主方としてそれぞれにバランスの取れた他方剤もしっかり併用してもらったところ、気管支喘息の母親は、昨年暮れから当方の漢方をはじめて以後、二度と発作は生じなくなった。

 花粉症の親子も今シーズンは症状がほとんど出ずに過ごせた。

 気管支喘息の子供さんには参蘇飲を主軸として体質改善を行うことで発作の誘発原因でもある風邪を引くことが少なくなった。

 病院医師による小青竜湯乱用が取り持つ縁、とでも言えようか(呵呵。

BBBB8048
BBBB8048 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 19:30| 山口 ☀| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年04月25日

だから言わんこっちゃない!24年前に提唱した中医学と日本漢方を合体させる「中医漢方薬学」論を忌避し続けたツケが今になって回って来ただろうがっ!

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IMGP0306 posted by (C)ボクチンの母

 昨夜のNHK総合テレビのクローズアップ現代の特集番組「伝統医学、漢方、水面下の覇権争い」というテーマの放送があった。

 漢方薬の原料生薬が高騰している問題もさることながら、もっとも注目すべきは中国が自国の伝統医療、すなわち中医学を国際標準としてISO(国際標準化機構)に働きかけている問題である。
 
 このままいけば日本の伝統医学(漢方医学)が損なわれるだけでなく様々な方面で云々と論じられた。

 だから声を大にして言いたいっ!

 24年前、基礎理論が脆弱な日本漢方は早急に中医学理論を取り入れることが急務であることを声を大にして各専門誌に村田恭介(昔のヒゲジジイ)が「中医漢方薬学」論を提唱し続けていたではないか。

 その論旨に賛同された人の中には、当時(平成元年)の厚生省薬務局 安全課長のE氏も製薬メーカー137社を招集して講演された折に拙論「日本漢方の問題点」をしっかり取り上げて下さり、このままで日本の漢方は良いのだろうか?という趣旨の発言をされている。
(E氏のご講演文のすべてが当時の『日漢協・企画委員会』平成元年5月23日付けで活字にも起こされている。)

 ところが、その後の日本漢方が辿った道は、ヒゲジジイの提唱とは真逆の方向へと進み、西洋医学の軍門に下って手術後に大建中湯、認知症に抑肝散、アレルギー性鼻炎に小青竜湯などという病名治療に堕する最悪の方向に突き進んだ。

 こんなもんが、どうして日本の伝統医療と言えるのかっ!?

 少なくとも24年前、村田恭介(昔のヒゲジジイ)が各専門誌に発表し続けていた「中医漢方薬学」論の方向へ半分でも進んでいたら、こんなに慌てふためくことも無かったはずである。

 あとの祭りとはこのことである。

 昨年の地震といい、原発問題といい、日本の学者さんたちのレベルの低さが、この日本の伝統医学においても世界に暴露されてしまった現実に、いまさらヒゲジジイを逆恨みしもどうしようもないだろう。

 性懲りもなく日本の伝統医学があると自惚れても、それを誇るに足る代表的な書籍もいまだに何一つ出版することも出来ず、ヒゲジジイの問題提議を忌み嫌って忌避し続けたツケが、今になってやって来たとしか言いようがないだろうっ!!!

IMGP0312
IMGP0312 posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 12:23| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2012年04月01日

日本漢方における幼稚な概念、実証と虚証に虚実中間

シジュウガラ(四十雀)
シジュウガラ(四十雀) posted by (C)ヒゲジジイ

 まことに救いようがないとはこのことである。

 昨夜もHNKのEテレで医師の漢方薬の宣伝をやっていたが、NHKも性懲りなく処方数の少ない医療用漢方の布教に余念が無い。

 ところが内容ときたら、学力優秀な日本の医師たちが、本気で体力のないのが虚証だの体力があるのが実証だの、挙句の果てはその中間が虚実中間証が出て来る始末。

 このような幼稚な概念をベースとして漢方のコンピュータ診断システムを構築しようという無謀な企てもあるというから恐れ入る。

 日本漢方における、このような稚拙な概念に何らの疑問も呈すことなく、体力のあるのが実証で、体力がないのが虚証、その中間が虚実中間などと、本気で信じている人達の論理的思考能力を疑わざるを得ないのである。

 しばしば漢方薬による臨床報告でなされる「虚実中間証からやや虚証より」とか「虚実中間証からやや実証より」とか表現されるが、これが日本漢方の専門用語として堂々と通用していること事態が、まさに国辱ものである。

 そもそも体力とは何ぞやっ!?

 平成元年前後、つまり二十数年前にヒゲジジイが日本漢方批判として日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱を書いた当時となんの進歩も見られない日本の漢方に明日があるはずもなく、むしろ当時よりも退化しているように見える。

 優秀な人材が集まるはずの日本の医学・薬学界が相変わらずこのレベルだから、日本の政治家や原発や地震関連の学者さんたちのレベルのほどが知れようというものである。

 既に日本漢方における実証や虚証、あるいは虚実中間という実にいい加減な概念の批判は、このブログでも再三再四繰り返し書いている。

 それゆえ、もしも興味があれば、グーグールでもヤフーでも、どこの検索窓でもよいから「虚実中間」で検索すれば、当方のブログがゴロゴロ出て来ますよ。

シジュウガラ(四十雀)
シジュウガラ(四十雀) posted by (C)ヒゲジジイ



 
posted by ヒゲジジイ at 17:33| 山口 ☀| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2010年08月31日

現代社会にあっては使うのに不便な配合内容の漢方製剤

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IMG_5009 posted by (C)ヒゲジジイ

 夏場に熱中症予防にしばしば使用されるべき生脈散(麦門冬・人参・五味子)は、温性の朝鮮人参の配合が邪魔して使う気になれない。
 
 中医学的には現代社会においては朝鮮人参のかわりに西洋人参が配合されてしかるべきだが、そのようなより合理的な配合方剤の医薬品製造許可が取得できる可能性は皆無に近い。

 朝鮮人参の配合された日本の生脈散製剤を夏場に使用するとしたら適宜、地竜などと併用するのが無難であろう。

 同様に、日本漢方や病院漢方でしばしばアトピー性皮膚炎で投与される白虎加人参湯も、配合生薬中の朝鮮人参が曲者で、西洋人参の配合こそフィットすることが多いはずであるが、このような理に適った方剤の医薬品製造許可が取得できる可能性も皆無に近い。

 それほどわが国の漢方事情は甚だしい後進性が歴然としているのだから情けない。

 その後進性をさらに裏付ける証拠に、「中医病機治法学」の日本語訳の書籍「中医臨床のための「病機と治法」 陳潮祖著 神戸中医研訳編」が絶版になってしまうほど、情けない日本の漢方レベルなのである。

 昨今の政治家達の性根の据わらない教養レベルといい、この国のバカさ加減にはほとほとウンザリさせられる。

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IMG_4844 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 22:52| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする