2008年04月03日

消化器を主体にした不定愁訴に対する漢方薬

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 関西地方
具体的な御職業 : 一般事務 兼 主婦
お問い合わせ内容 : 胃腸の働きが悪く、すぐにガスがたまります。おならが異常に臭かったり、足が常にだるかったり、下痢や便秘、肩こりなど、それ以外にも体調が悪いことが多く、今後の自分や家族のためにも真剣に体質改善をしたいと考えています。

 今までに何度も病院にかかりましたが、『胃下垂だからしょうがない』と胃薬を出されたり、その場しのぎでガスを抜いてもらったりしたのみでした。
 漢方薬を出してもらったこともありますが、その際の問診は15分ほどの簡単なもので、この短時間で自分の体質や症状を判断して処方できるのかなと疑問に感じました。

 飲み始めましたがあまり変化が感じられず、2週間後に再訪し、もっと詳細な症状を聞いてもらおうとしましたが、もう少し様子を見ましょうと、やはり10分ほどで終わりでした。
 結局2ヶ月ほど飲みつづけましたが、効果を感じることはできませんでした。

 自分なりに漢方のことを勉強してみようと、書籍やインターネットで調べているうちに、村田漢方堂薬局さんのHPに出会いました。
 漠然と、でも今までのもやもやが晴れたような感覚がありました。
 ここなら、自分の症状をしっかりと理解してくれる、自分も本気で信じて任せられると感じました。

 初めての人には、かかりつけの病院で見てもらうよう進めると書いてありましたが、今までかかってきて自分なりに考えた結果、やはり今の自分が体質を根本から変えていくには、その場しのぎの薬や療法ではなく、本当に信頼できる方の指導を受けて、生薬などのなるべく自然なもので治していきたいという思いが強く、できれば貴薬局に一度みていただきたいと考えております。

 仕事も家事もある関係上、1泊もしくは2泊ぐらいしか伺うことができませんが、本気で健康になりたいと思っているので、一度お伺いできたらと希望しています。長文失礼致しましたが、ご返信をお待ちしております。


お返事メール;拝復
 お悩みの症状は胃腸を中心とした不定愁訴症候群のようですね。虚弱体質の人によくみられる症状ですが、ちょうど昨年6月にも似た症状の方が来られています。

空気嚥下症?

 このような方が東北地方から遠路はるばる二泊三日で来られました。
 その前年からメールでもアドバイスし、地元の漢方で治すことを推奨していたのですが、行き辛くなってとうとう当方に来られました。この頃までの事情はブログにも掲載しています。また病歴が長いだけに、既に貴女様以上に漢方服用経験も豊富な方でもありました。

 結局、実際に直接来られてみれば、どこの漢方専門家のところでも発見されていなかった黄連解毒湯証の存在が重要でした。
 この方にとって最も重要な方剤が欠けていたために、長年苦労されていたようです。
 現在も何種類もの方剤を上手に併用され、来られた当初よりも一定の改善を得ておられます。とても勘のよい方でしたので、その後も折々にメールを頂きつつ、必要に応じた微調整を行っておられます。

 もしもこの方のように様々な症状が輻輳している場合は、何種類かの常備薬を側において頂くことになるかもしれません。
 但し、経費的な問題もありますが、自費の漢方の中では、漢方処方毎の単価の安さでは右に出るものがないと自負しています(笑)。

 先ほどもご紹介したブログ 空気嚥下症?

 に記載しているヒゲジジイのお返事メールをしっかり読んで頂ければご理解頂けると思いますが、一度来られて以後はメールの交信能力次第で漢方薬の微調整が左右されます。
 もちろん電話でも構わないのですが、詳細な微調整を考え、アドバイスするにはメールの方が有利な場合も多いようです。
posted by ヒゲジジイ at 08:41| 山口 ☀| 更年期障害・自律神経失調症や不定愁訴症候群 | 更新情報をチェックする

2007年06月06日

頭痛を中心に様々な病態が合併する女性の漢方薬

性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 近畿地方
具体的な御職業 : 鍼灸師
お問い合わせ内容 : こんばんは!お世話になっています。いつも助かっています。
 一度だけ機会があってある遠方の患者さんをみました。治療ができないので良い漢方藥があれば・・・と思いメールさせて頂きました。

 主訴)頭痛(左のこめかみ〜後頭部)、手足末端の皮膚の乾燥(粉が吹くほど)、尿もれ、不整脈、背骨湾曲(生まれつき)朝は職場で元気だが、昼からはしんどい
 病態)舌は 色の薄く、裂紋がありました(あとは覚えていない)顏色は悪く、唇が乾燥している。冷たいものは嫌い。皮膚が乾燥して、尿漏れもあることより肺の気虚があり、腎も弱っていると見立てました。

 漢方薬では十全大補湯あたりが良いかと思ったのですがなにぶんまだ若輩者なのでアドバイスのほどお願いします。


ヒゲジジイのお返事メール: ご報告内容には患者さんの性別および年齢などの情報が不足しています。

 おそらく女性であろうと想像しますと、真っ先に頭に浮かぶのが温経湯です。それ以外の処方はお送り頂いた情報量では浮かびませんが、あるいは提示されている十全大補湯ということもあるかもしれません。
 以上、取り急ぎお返事まで。


折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございます!
すみません!
重要な情報が抜けていました。
女性で24歳です。
小学校の教師です。
一番の主訴は頭痛です。

 腹診は臍の周り、臍の左側の動悸が強かったです。ここでかなりの脾虚ととってしまいました。
 特に心下、胃土あたりには強い邪気が見られなかったです。
 また何かあればご指導お願いいたします。
posted by ヒゲジジイ at 00:11| 山口 ☁| 更年期障害・自律神経失調症や不定愁訴症候群 | 更新情報をチェックする

2007年05月27日

不眠症に対する漢方薬と嗜眠に対する漢方薬

おたより:内科医師

 すこしご無沙汰していました。
 最近の近況について若干のご報告をしたうえで、ご教示ください。

 過日、気うつの患者さんのなかに補中益気湯+甘麦大棗湯が有効なかたがみえることをメールしましたが、有効な患者さんによく聞いてみますと、不眠がかなり改善する、とのことでした。
 もちろん、意欲とかやる気、億劫さなども改善し前向きになってゆくようです。
 さまざまな睡眠剤を処方されても不眠に悩まれているかたが多いですから、助かることだと思います。

 不眠に対する効果が私にとって明確になったのは、過眠傾向のある患者さんに、気うつが背景にあることを考慮して前記の合包を処方しましたところ、過眠傾向が悪化した、とのお話でした。
 「他の症状は改善したのに、いつまででも眠れる。しかし、仕事にならない」とのことでした。

 お伺いしたいことは、補中益気湯、甘麦大棗湯の睡眠に及ぼす影響について、すでに指摘されていること、あるいは、多数例の経験例のなかからお気づきのことがあればご教示くださいますと幸いです。


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 甘麦大棗湯は、欠伸が頻繁な人や、「泣き虫」で涙が直ぐにポロポロ出てしまうような女性に有効なことが多く、大学入学により親元を離れてホームシックにかかり毎日泣いてばかりの涙ポロポロ大学生に速効を得たり、また女性の精神異常やヒステリー(器官言語など)にはうってつけの場合が多く、催眠作用や鎮静作用があることは昔から知られているようです。
 しかしながら、嗜眠傾向が強い場合はむしろ催眠薬としてもシバシバ使用される酸棗仁湯にこそ、嗜眠傾向を治す力があると日本漢方では口訣が残っているようです。
 小生自身の経験では酸棗仁湯こそ不眠症の人に対症療法としてもシバシバ使用しますが、嗜眠傾向、眠り病の人に使用した経験はありません。

 補中益気湯には特別に強い催眠作用はないはずですので、ご提示された症例の方は、結果的に甘麦大棗湯を併用する必要はなく、もしかしたら酸棗仁湯で過眠傾向が治るのかもしれません。(日本漢方の口訣はとてもヒントになるケースが多いようですので。)

 不眠症の問題に関しましては、向精神薬的な作用がある方剤、たとえば抑肝散加減方・桂枝加竜骨牡蠣湯・柴胡加竜骨牡蠣湯・四逆散・帰脾湯・甘麦大棗湯・加味逍遙散・釣藤散など、証候に適合した場合はいずれも一定の不眠に対する効果を発揮できることが多いと思います。
 それでも、もう一つ催眠効果が弱い場合には、それほど証に拘らずに使用できるのが、イスクラ産業から発売されている酸棗仁湯です。癖のある川芎(センキュウ)の配合が僅少であり、その反対に主薬の酸棗仁がタップリ含有されているからです。
 もちろん保険漢方で使用される酸棗仁湯も同様に催眠導入剤的な使用が可能で、酸棗仁湯いずれの製剤でも、朝・昼の服用は省略して、就寝前に一回だけの使用でも有効な場合が多いようです。但し、一般の酸棗仁湯の場合は川芎がまれに胃に障るなどの不快症状が伴うことが皆無とは言い切れません。

 なお、甘麦大棗湯は適応者以外に使用した場合、甘草の配合が多い方剤ですので、他方剤との併用とも相俟って、浮腫みや血圧を上昇させる副作用が生じることもあり得ますので、その点には注意が肝要だと存じます。
 以上、取り急ぎお返事まで。
             頓首
     村田恭介拝


【編集後記的補注】 不眠関連の方剤としては、市販されているものに温胆湯や温胆湯の加味方剤および天王補心丹や柏子養心丸など、弁証論治によって使用すべき便利な方剤もある。
 しかしながら、上記にも指摘した養心安神の酸棗仁湯においては、とりわけ主薬の酸棗仁の配合分量が特別に多く川芎を減じたイスクラの製剤の場合はとても重宝している。特別な弁証論治を必要とせず体質を選ばずに安心して使用出来るが、効果に多少の個人差があるのは当然であり、止むを得ないことであろう。

 ともあれ、今回の書き方は日本漢方時代の名残であるが、中医学と日本漢方のダブルスタンダードが中医漢方薬学の出発点であり、またその本質の一角をなしているのだから当然でもある。
 一般的には「ダブルスタンダード」というのは批判されるべき「二枚舌」を指すことが多いようだが、いかにも頑固に見えて意外に柔軟な精神を有する(笑)ヒゲジジイであってみれば、中医漢方薬学におけるダブルスタンダードは、融通性に富む漢方薬学であることの表現に過ぎない。
 日本漢方の口訣(くけつ)には、中医学派が参考にすべきヒントがとても豊富だからでもある。


折り返し頂いたメール:いつものように、早速お返事くださいましてありがとうございました。
 嗜眠傾向の患者さんへの酸棗仁湯の使用、是非試みてみます。
 また、甘麦大棗湯の催眠作用や鎮静作用についてご教示いただきまして今後の参考にしたいと思います。
posted by ヒゲジジイ at 00:45| 山口 | 更年期障害・自律神経失調症や不定愁訴症候群 | 更新情報をチェックする

2007年02月16日

胃弱など消化器系統の不定愁訴

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
ご職業 : 医療・福祉関係
簡単なご住所 : 関東地方
具体的な御職業 : 薬剤師(漢方相談)
お問い合わせ内容 : いつも村田先生のHPにはお世話になっております。
 漢方相談を受けていますが、なかなかうまくいかない方があり、あつかましいお願いですが、アドバイスをいただきたくメール致しました。宜しくお願いいたします。

??才主婦 ???cm ??kg(注記:痩せ型
主訴:気持ち悪く、食欲が出ない。胃もたれは20才の頃からある。3年前に過敏性大腸症候群。2年前に胃炎をしてから特に調子悪い。
 はじめの頃は、胃痛、ゲップ、もたれが強かったが現在は、ゲップ、ガス、はりはたまに。
 でもぞおちが痞え、気持ち悪い症状がとれない。その他:不眠(心療内科でソラナックス服用)最近は急行に乗れない。胸のあたりにもやっとしたイヤな感じ(動悸のような)がある。
 胃下垂、疲れやすく、手足が冷える口渇なし。湯茶を5〜6杯/日トイレは近いほう(夜間0回、昼夜8〜10回)大便は1日2回(軟便〜下痢)数年前より、検査をすると血尿たちくらみあり生理の周期は25日、量が少ない。
 舌質暗、歯こんがいつもはっきりある、苔薄白。

 啓脾湯、帰脾湯など処方もかわり、香蘇散+半夏厚朴湯+四君子湯で一週間は吐気がおちついていましたが、効かなくなってしまいました。目の表情から、うつ的なつらさを感じます。
 お忙しいところ申し訳ありません。(もし、再録の場合は、ご本人が特定できないようご配慮お願いします。)


お返事メール:拝復
 ざっと読ませてもらって直ぐに思い浮かべる処方は、柴芍六君子湯ですが、もっと適切なのは漢方製剤を用いて、六君子湯を主体に四逆散を適量加えるほうがよいように感じます。
 四逆散は満量加えるのではなく、少量を加えるという意味です。
 現代社会において鬱的な要素をもたれている人には、四逆散の適量を加えることが効果的なケースが増えているように思います。

 あるいは潜血と立ちくらみにも配慮すれば(苓桂朮甘湯などではなく)、六君子湯を主体に補中益気湯あるいは帰脾湯を適量加える方法も、可能性を感じます。
 以上、取り急ぎお返事まで。
                       頓首

村田漢方堂薬局 村田恭介拝


【編集後記】 お問合せの最後に「もし、再録の場合は、ご本人が特定できないようご配慮お願いします。」とあるが、再録の条件あってのお返事であり、また守秘義務は当然のことです。


折り返し頂いたメール:早速のメールどうもありがとうございました。
1年ほど前から相談を受けているかたで、主訴が、下痢→不眠→はきけと変化してきましたが、根っこに、先生のご指摘のようにうつ的なものがあります。
一度、六君子湯を主体に四逆散を少量で様子みてみます。
突然の質問にもかかわらず、丁寧に教えていただき感謝しています。

PS:村田漢方堂薬局さんのサイトのなかで、猫のサイトのファンです。
  更新楽しみにしています。

posted by ヒゲジジイ at 23:33| 山口 ☁| 更年期障害・自律神経失調症や不定愁訴症候群 | 更新情報をチェックする