2011年02月22日

大柴胡湯で生理痛が楽になったお話し

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おたより:東海地方の内科医師

 30代後半の女性です。ちょっと太っていて(患者さんのお話ではお産をして10kg以上太ってしまったそうです)肩コリ・便秘と体重をなんとか減らしてください、とのことで約1カ月まえに受診なさいました。

 舌はうすく黄色の苔、みぞうちに痞えがあり、胸脇苦満もありました。大柴胡湯を処方しました。

 2週間あとの再診で、便秘が改善し肩コリが消失したそうでした。これは著功例かもしれないと考え、おなじく2週間処方しました。そして本日受診されました。

 患者さんは開口一番、「いままで生理がめちゃくちゃでひどくつらかったですが、今回の生理はすごく楽でした。あのくすりはそちらにも効くんですか」とのことでした。

 私も、生理困難症があると初めからお聞きしていなかったので、「そんなこともあるのかな」と心の内で思いながら、患者さんには、「よくあることのようですよ」と口から出ていってしまいました。

 つぎに患者さんは、「これだけいろいろ良くなるのであれば、きっと体重も減りますよね」とおっしゃいました。

「いちおう運動してくださいね」とお返事していました。

 村田さんの長年の経験症例のなかでは、このような事例はけっして珍しくはないと思いましたが、やはり「漢方薬恐るべし」と実感しました。

 それから、このブログ上で恐縮ですが、関東で開業準備なさっている先生(ひょっとして開業なさったかも)のご健闘を祈願しております。

 漢方の世界は大変面白いですし、やりがいたっぷりです。

スズメ
スズメ posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:ブログへのご協力ありがとうございます。更新を怠っていたのでさいわいですっ!

 関東の先生も今月初旬に開業され、千客万来で目下大忙しのことと思います。落ち着かれたらきっとブログにも御報告頂けることと楽しみにしています。

 ところで、御報告頂いた大柴胡湯による生理痛に対する効果、漢方薬は実に面白い・・・実に同感です。

 四逆散ではしばしば経験することですが、大柴胡湯にも四逆散と同様に柴胡、芍薬、枳実が配合されていますので、四逆散と同様の調気疏肝作用により、肝気鬱結が解消され、これによって筋膜の柔和を得て月経困難症が改善されたものと思われます。

 以前、子宮内膜症による生理痛が激しい人に、意外にも芎帰調血飲第一加減では生理痛にはまったく効果がなく、そのかわりに重度の顔面の吹き出物は短期間で消失しました。なんとも不思議なこともあるものです。
 そこで方剤を変えて四逆散に切り替えた途端、あの激しい生理痛が雲散霧消してしまいました。

 このような奇妙な経験もしています(苦笑。

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posted by ヒゲジジイ at 21:23| 山口 | 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2009年08月02日

肥満には大柴胡湯?

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DSC01043 posted by (C)ヒゲジジイ

 肥満薬として防風通聖散が乱売されるのはもってのほかだが、昨今、大柴胡湯製剤も派手に乱売されている模様。

 まだこちらの方がマシかもしれない。僅かながらも信憑性があるからである。
 但し、実証タイプ云々の「実証」や「虚実中間証」などという日本漢方特有の幼稚な概念には問題があるが、ここではこれらの迷妄について論じるつもりはない。

 最も問題なのは、確かに正確な弁証論治にもとづいて使用される場合、偶然、肥満者に適応することはあるものの、現実的には痩身の男女にもしばしば適応するケースが多く、村田漢方堂薬局で大柴胡湯を販売している対象者は8割近く、比較的痩せ型の人が多いのである。

 それゆえ、大柴胡湯は肥満者にだけ適応があって、痩身の人間には御法度などと考える不勉強な専門家が多いので、ここで大きく警告しておきたいのである。

 既に拙著「求道と創造の漢方」にもはっきりと記載している。
 同書は30歳までに各専門誌に執筆したものをまとめただけに、まだ日本古方派時代のものであるが、胆石症に大柴胡湯と題して、かなり的確なことを書いているので次に引用する。
胆石症に大柴胡湯

 胆石症の多くは大柴胡湯の応じる場合が殆どであるということは常識的なことになっている。日頃の健康時の体質傾向的な虚証、実証にはあまり関係しないことも事実であり、実際のところは、胆石症や胆嚢炎に限らず、一見卑弱に見える痩せ型で、胃下垂、内臓下垂型と思われる人にも、季肋部や心下部のみが特別に充実しているのを案外見かけるものである。
 そんな現実を考えると、一般に言われるところの、大柴胡湯は実証向きで、小柴胡湯は虚実中間、柴胡桂枝乾姜湯は虚証向きである、などという言い方は、私は嫌いなのである。こうい見方、言い方は全体的な、総合的で、しかも却って漠然としたもので、実地に役立つのは胸脇部や心下部の部分的な充実度が重要なのである。したがって身体各部の部分的な虚実を云々するならともかく、漠然と、実証だ、虚証だというのは、そのことにくらべればあまり意味のあることとも思えない。
 表現としてはまだまだ拙いながらも既に日本漢方で盛んに言われる実証や虚証、あるいは虚実中間証の意味するところはナンセンスであることに気付いしまった頃の表現である。

 昨今では痩せ薬として派手に宣伝される大柴胡湯だが、たとえ適応証があっても大柴胡湯単独ではかなり非力である。
 実際に肥満に対する効果を増強するには適切な方剤の併用が必要だが、それを実践して肥満体を完全に解消された人は村田漢方堂薬局では数多い。

 適応証があれば肥満にもやや効果があるだけでなく、肝胆系が原因で胃腸のトラブルを生じやすい痩身の男女にも大いに効果があるので、単なる肥満専用の漢方薬などに貶めて欲しくないものである。

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posted by ヒゲジジイ at 21:31| 山口 | 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2007年06月22日

茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)で冷え性が治る場合があるのはなぜか?

 夏でも手足が冷える人の蕁麻疹とアトピー性皮膚炎が同居して悩んでおられる女性に、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)によって短期間で蕁麻疹の消退とともに手足がぽかぽかと暖かくなった。
 昨日、御本人による報告である。(舌は淡紅で黄膩苔が顕著、しかも舌先は紅。)

 このような事例は決して珍しくはないが、弁証論治にもとづく適切な漢方処方であれば、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)のような湿熱を除去する、むしろ冷やす作用ばかりの方剤によっても、かなりひどい冷え性でも急速に治癒する場合がしばしば見られる。僅か20日の服用による速効である。
 脾胃虚寒や腎陽虚衰などによる冷え性ではなく、明らかに湿熱に伴う瘀血(血流の停滞)が原因であったから清熱利湿・活血行瘀の茵蔯蒿湯が適切な方剤だった訳である。

 大黄には優れた活血化瘀作用がある。

 また先日、例の体質改善三点セットで服用その日の内から手足が温まり始めたとの報告を得たが、これなどもまったく温める作用はないかわりに血行改善作用があるから、結果として上部にばかりに集中している温かい血流が、しっかり手足に流通するようになった結果に過ぎない。
 だからこそ警告:無謀な温め療法! というサイトの趣旨を片一方の耳にだけでも入れておいて損はないだろう。

posted by ヒゲジジイ at 01:33| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2007年05月28日

柴胡剤の秘密

 昨日の日本漢方における口訣の価値について触れたことから、どこかで記録を残して置きたいと思っていた柴胡剤の興味深い秘密?を書いておこうと思った。
 本来なら 漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記 に記録しておくべきことかもしれないが、あとでこのページを引用として転載してもよいだろう。

 不真面目な話に取られても困るから、あまり公然と書けなかった内容である。それは男性の精力減退の悩みに関連した事柄だからである。
 昨今ではこのような問題だけでお問合せや御相談があった場合はすべてお断りしているのだが、多少ともお馴染みになった方から打ち明けられた場合は例外なく御相談に応じて対処している。

 通常では精力減退となれば海馬補腎丸や至宝三鞭丸あるいは八味丸などが一般的にお奨めらしいが、現実にはこれらで奏効するとは限らない。
 この栄養過剰の時代状況を反映して、こられの温補過多の方剤が良いとは限らないのである。むしろストレス除去能力のある柴胡剤こそ適応する場合が多いのが現実である。

 すなわち大柴胡湯や四逆散、とりわけ大柴胡湯証の人には効果絶大であると言いたいくらいである。
 まあ、こういう内容はあまりダラダラとこれ以上続けない方が良いだろう。

 鼻の下の長いヒゲジジイなどと誤解されたら腹が立つ。
 こんな秘密を惜しげもなく公開するサイトやブログが、どこにあると言うんだねっ!?

posted by ヒゲジジイ at 01:44| 山口 🌁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2006年12月20日

「猪苓湯+茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)」と茵蔯五苓散の違い

御質問者:東海地方の内科医師

 氷伏については有益な助言ありがとうございました。

 当診療所では、アトピーの患者さんに対して、清熱剤+チョレイトウ+インチンコウトウの合方を処方することがありますが、チョレイトウ+インチンコウトウの部分をインチン五苓散にすると支障がありますでしょうか。
 
 チョレイトウのなかのカッセキ・アキョウ、インチンコウトウのなかのサンシシ・ダイオウがなくなりますが。ちょっと事情がありまして、ご助言をお願いします。

お返事メール:拝復
 あくまで一般論としてお返事させて頂くとして、猪苓湯を完全に外すのはまずいと思います。
 五苓散そのものにはかなり強い乾燥性があり、体質によっては粘膜組織まで乾燥させてしまいます。ですから、主軸は清熱剤と滋陰利水の猪苓湯として、氷伏を防げる桂枝の含まれた茵蔯五苓散を「適量」配合するのが無難だと思います。

 この「適量」というのがとても微妙で、製剤の満量を使用しては燥性が強すぎますので、半分量とか、あるいは三分の一量を加えるとかです。またこの場合、猪苓湯にしても満量使用して良いとは限らず、半分量に減量するというのもあり得るかと思います。
 つまり、五苓散には強い乾燥性がありますので、アトピー性皮膚炎には満了使用では利水力が強すぎて、ますます体表を乾燥させ兼ねない危険性があります。
 
 なお、長期に及んだアトピー性皮膚炎ではやはり影響が腎に波及していることがとても多く、体質によっては清熱剤が不要な場合もあり、また清熱剤の要不要に関わらず八仙丸などの六味丸系列方剤に猪苓湯の合方が主軸になるケースも多々あるかと存じます。
 ご存知の小生の拙論「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」について補足をしておきたいと存じます。本来ならあの拙論の続編として「脾肺腎病としてのアトピー性皮膚炎」を書く予定だったのですが、事情があって書かずに終わってしまいました。
 このタイトルの変遷にもありますように、病歴が長くなればなるほど「脾肺腎」の病としてのアトピー性皮膚炎が顕著になる傾向にあると愚考するところです。

 それゆえ、現在でも最も繁用する方剤は猪苓湯を中心に八仙丸を代表とする六味丸系列の補腎剤を加える方法が主流となっております。あくまで村田漢方堂薬局での話ですが(笑)。

 話は大分逸れましたが、アトピー性皮膚炎に五苓散を使用することは、たとえ茵蔯五苓散であれ、使用分量に対する配慮が必要であり、強い燥性に注意しながら、他薬とのバランスを考えて配合される場合は、氷伏を防ぐ桂枝が有効に利用できるかもしれません、というあくまで小生の個人的な見解です。

 以上、簡単ながらお返事まで。

村田漢方堂薬局 村田恭介拝

編集後記:理論的には長期間続いたアトピー性皮膚炎では、必ず影響が腎に波及しており、またその腎虚によって更にアトピーを悪循環に陥らすように思われる。
posted by ヒゲジジイ at 17:43| 山口 | 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする