2018年08月03日

明らかな大柴胡湯証があっても、大柴胡湯だけでは、抑鬱症状や疲労倦怠感には効果が不十分なことが多いが・・・

2010年8月3日の茶トラのボクチン(6歳)
2010年8月3日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 大柴胡湯証というのは、大柴胡湯が適応する一連の症候が認められる、という意味である。

 体型的に痩身であれ、やや肥満体であれ、大柴胡湯証を呈する男女はとても多いが、そのような体質がベースにあって、抑鬱症状とともに、全身倦怠感を伴い、人生に対する、やや絶望的な悲哀感を伴っている人達の問題。

 大柴胡湯証をベースに持つ人達は、とても素直な性格で善良な人達が多いだけに、適切な方剤を組み合わせれば、比較的速やかに改善できることが多い。

 少し治りが悪い人であっても、半年〜1年もすれば、かなり好転する。早い人では1ヶ月以内に急転回して改善に向かう人も多い。

 ところが、大柴胡湯だけでは、消化器関連の諸症状は急速に好転しても、肝腎な抑鬱症状と倦怠感など、大柴胡湯だけでは、効果が不十分であることことがとても多い。

 エキス剤では、多くの場合、四逆散や麝香製剤の併用で、比較的速やかに好転することが多く、重症でない限りは、麝香製剤は不要なことも多い。

 大柴胡湯と四逆散は、ほとんど共通成分が含まれており、大柴胡湯には甘草が含まれないだけで、それ以外の柴胡・芍薬・枳実が含まれているのだから、四逆散を併用しなくとも、大柴胡湯だけでも、抑鬱症状に一定の効果があってもよさそうなものであるが、そうは行かない現実がある。

 このことから、明らかに断言できることは、大柴胡湯として煎じたエキスと、四逆散として煎じたものでは、いくら共通成分が多いからといっても、甘草の有無一つで、方剤そのものの効能に大きな差が出ている証拠である。

 ところで、このようなケースでも、敢えて四逆散を使わずに、大柴胡湯+香蘇散を主体にした配合でも、比較的順調に回復したケースもあるだけに、四逆散よりも安価な香蘇散を加えることで、薬味としては四逆散も含まれることになるので、配合上は寒熱の比率が微妙に異なるとはいえ、いずれがより効果的なものであるか、今後、比較実験をしてみる価値があるかもしれない。

 さらには、大柴胡湯+四逆散+香蘇散と3点セットにすれば、やや高価な麝香製剤まで使用せずに済むケースが増える可能性も十分に考えられる。
 但し、甘草が二重になるだけに、高血圧傾向がある人や、浮腫みやすい人には注意が必要となる。

 いずれにせよ、大柴胡湯証が体質的なベースとなっている人達は、想像以上に性格的に温厚で、比較的素直な人達が多いので、漢方相談者としては、とても付き合いやすく、適切な漢方薬類の併用によって、様々な病状も順次改善しやすい傾向が強いように思われる。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2010年8月3日の茶トラのボクチン(6歳)
2010年8月3日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
 
ラベル:大柴胡湯
posted by ヒゲジジイ at 23:12| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2018年08月01日

デリケートな消化器症状は、メールだけでフィットする漢方薬の指南は不可能

2011年8月1日の茶トラのボクチン(7歳)
2011年8月1日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:40〜49歳の男性
【 職 業 】:会社員(技術系)
【 地 域 】:甲信越地方
【 お問い合せ内容 】:
 お忙しいところ失礼いたします。
 今回は、直接お伺いしたいことがあり、連絡させていただきました。

 先生の過去の記事によく登場される、大柴胡湯についてです。

 過去の記事を拝見すると、大柴胡湯は体格に無関係であり、胸脇苦満などを参考に使用するとあります。
 ここでいう胸脇苦満とは、例えば医者が腹部を診る時のように、仰向けになった状態での様子を指すのでしょうか。

 といいますのも、ここ最近、どうもみぞおち付近に不快な感覚があり、吐き気やゲップもあります。

 普段より消化が遅い感じ(不快感もあってかお腹が空きづらい)もあり、食べ過ぎも考えてみましたが、何分今までと大きく違ったことはしておらず、原因は不明です。
(ちなみに、先日の健康診断で、胃の状態は問題ないと出ております)

 中でも、みぞおち付近の不快感ですが、寝ていたり背中を丸くして座っていたりする時は軽いのですが、背筋を伸ばしていたり立っていたりすると、強くなり、その部分を押されているような張っているような症状が出ます。

 みぞおち部分を押した時も同じで、体勢によって不快感に差が出ます。
 また、当然かもしれませんが、動いていると症状は強くなります。

 病院では胃酸を抑える薬(パリエット)が出ましたが、あまり改善せず、自分の症状について調べていたらこちらのブログにたどり着きました。

 漢方薬の使用歴はあまりありませんが、何となく自分の症状と似ている内容が書かれていたため、漢方も試してみようと思った次第です。

 田舎なもので、自己責任で通販での購入も考えています(病院の漢方はあまり期待できないとありますし)。
 ただ、闇雲に使う前に、村田様に一度お伺いしたく存じます。

 的外れな質問でしたら申し訳ありません。
 お手数おかけいたしまして大変恐縮ですが、ご回答お願いいたします。

2011年8月1日の茶トラのボクチン(7歳)
2011年8月1日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:

 消化器関連の症状というのは、とても微妙なところがあるので、このメールだけではまったく判断できません。

 直接ご本人に会って、舌の状態や、体格や顔色など、実際に直接みない限りは、とうていデリケートな胃症状に対して、正確な漢方薬を提示することは不可能です。

 面倒がらずに、いくらそちらが田舎でも、少し時間をかければ漢方薬局がある少し大きな町を比較的近隣のところが、どの地方にでもあると思います。

 しっかり探されて、何度も通える範囲のところを見つけて、直接しっかり相談されるべきです。

 当方のブログは素人療法を推奨するものではありませんので、このようなご質問には、常々、近隣の漢方薬局に直接出向くようにアドバイスしているのが毎度のことですので、せっかくですが、悪しからずご了承下さいませ。

2011年8月1日の茶トラのボクチン(7歳)
2011年8月1日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ


折り返し頂いたメール:


 早速ご回答いただき、ありがとうございました。

 確かに、メールだけでは判断が難しい案件ですよね。

 「胸脇苦満」がどのような状態を指すのか知りたくて思わずメールさせていただきましたが、お手数をおかけいたしました。

 近隣の漢方薬局を探してみようと思います。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2009年8月1日の茶トラのボクチン(5歳)
2009年8月1日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:大柴胡湯
posted by ヒゲジジイ at 21:20| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

結局は痒疹という診断だったが、副作用のためシクロスポリンが継続困難なケースに、茵蔯蒿湯だけで即効

2014年7月20日のクロちゃん(2歳半)
2014年7月20日のクロちゃん(2歳半) posted by (C)ボクチンの母

 60代の男性で、全身に生じた痒みを伴う湿疹ながら、最初は乾癬の診断だったが、結局は痒疹ということになって、様々な西洋医学治療も効果なく、最終的に皮膚科でシクロスポリンの内服でようやく効果が出たものの、もともとやや高め(1.17や1.24など)だったクレアチニンがさらに上昇(1.42)し、おまけに正常だった尿素窒素まで異常値(22.8)が生じた。

 そこで西洋医学治療を断念して、村田漢方堂薬局に漢方相談に訪れた。

 舌には典型的な黄膩苔が分厚くかかっており、諸症状から総合して茵蔯蒿湯証に間違いないので、品質優良な煎じ薬の2分の1濃度の製剤を10日間飲んでもらうことにした。

 相当な経費を覚悟して来たのに、僅か1種類の漢方薬で、しかもこんなに安価でよいのかと、やや不安気だったが、古方がヒットすれば、想像以上に効果を発揮するから、まずはテスト期間として、これで様子を見るように説得。

 本日再来されて、効果抜群で痒疹の方は、かなり軽減しているとのこと。

 こんなに安上がりで効果があったのは、今生の行いはいざ知らず、よっぱど!前世の行いがよかったに違いないと、例によっていつにも増して、あらずもがなの余計な臆断。

 今後の課題はクレアチニンなど腎機能。

 そのまま同方を継続してもらって、来月中頃に、血液検査を受けてもらう約束をした。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2014年7月20日のクロちゃん(2歳半)
2014年7月20日のクロちゃん(2歳半) posted by (C)ボクチンの母

2010年7月20日茶トラのボクチン(6歳)
2010年7月20日茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 12:17| 山口 | 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2018年07月15日

茵蔯蒿湯や大柴胡湯の有用性に対する貴重なおたより

2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳)
2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:70〜79歳の男性
【 職 業 】:医師
【 地 域 】:関東地方
【 具体的なご職業 】:内科医師。漢方専門医。肝臓専門医。消化器病専門医。
【 おたよりの内容 】:
 いつも御HPを楽しく、また、味わい深く読ませていただき、大変勉強になっております。ありがとうございます。

 先生の湿熱にたいする茵蔯蒿湯類のご解説には深いものがあり、いつも感心している次第でございます。

 また、柴胡剤の使い方には啓発されることが多いと存じます。小生、30年以上前から、多くの肝疾患例に柴胡剤等を随証投与し、一定の効果を認めてまいりました(小著『証の鑑別を踏まえた 慢性肝炎・肝硬変漢方治療マニュアル』.現代出版プランニング 、2001)。

 また、日本漢方の体質の虚実にあまりとらわれることなく、胸脇苦満や心下痞鞕などを目標に、大柴胡湯などを投与して良好な効果を認めることはまったく事実でございます。

 C型、B型の慢性肝炎は最近の抗ウイルス療法の画期的な進歩によってほとんどが治癒ないしコントロール可能となり、C型ではHCVの消失(SVR)、B型では血中HBVの陰性化などがもたらされるようになり、長年、肝臓病に携わってきた医師にも患者さんにとっても今や夢のような良き時代となったわけです。しかし、治療前において肝臓の線維化のステージが進んだ例、肝硬変などの例では、ウイルスの消失後においても肝癌の発癌の可能性は多少、存在しますから、その後の経過観察が重要となっております。小生の場合は、抗ウイルス療法前から投与していた漢方(補中益気湯などの補剤や駆瘀血剤の併用などが多いのですが)を当分の間、継続させてもらっております。

 今後、重要になる肝臓病としては、非アルコール性の脂肪肝、脂肪性肝疾患(NAFLD)やアルコール性肝障害とされています。食生活の不均衡、過度の飲酒が原因ですから薬だけでは治りませんね。おそらく飲食の不摂生によって湿熱が多く関係していることでしょうね。そして、肝鬱も絡んでいることでしょう。

 NAFLDでは、脂肪肝のステージから次第に肝臓の線維化が進み、肝硬変、さらに肝癌にまで進展する場合がございます。この経過においては、おそらく、先生の強調されますような湿熱の病態が促進因子として働くことが考えられます。日常、過食、過飲にて舌質紅、白膩苔や黄膩苔といった湿熱の所見を多く観察するわけです。食生活改善は困難な例が多いわけですが、茵蔯蒿湯などの清熱利湿剤の重要性が高まってきた時代のように感じておりますが、いかがでしょうか。

 駄文にてたいへん失礼申し上げました。先生の益々のご活躍、ご健筆を祈っております。

2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳)
2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

お返事メール:
 貴重なおたより、ありがとうございます。

 肝胆系の湿熱の問題はご指摘の通りだと存じます。それゆえ、当方の薬局では、一般漢方製剤の中では、ダントツの量で日々、フル回転しているのが茵蔯蒿湯です(苦笑。

 昨今増えている脂肪肝の人達こそ、多くは茵蔯蒿湯主体に雲南田七の併用のみで対処しています。

>C型、B型の慢性肝炎は最近の抗ウイルス療法の画期的な進歩によってほとんどが治癒ないしコントロール可能

 とのご指摘の通り、以前多かった慢性肝炎で漢方相談に来られる人は、いつの間にか激減してしまいましたが、そのかわりにやはり肝臓癌や肝硬変の相談は相変わらずですが、最近はたまたまB型肝炎の既往歴のある人達の30代と40代の男女で、すでに原発巣も大きく、肺に転移していたり、あるいは各所に転移を繰り返している人など、この段階になるとなかなか困難とはいえ、中国の片仔廣(へんしこう)を模倣して、牛黄や麝香、雲南田七、蛇胆などを含有した製剤や製品を組み合わせることで、弱り切った体調だったのが、劇的な改善効果を得て、極めて良好な体調に改善することは可能でしたが、いずれも主治医のまちがった抗癌剤投与によって、台無しにされてしまいました。

 それがなければ、もう少しは元気で長生きできたはずなのにと悔しい思いがありますが、一方では同じB型肝炎の既往歴のある高齢者が1cmほどの肝臓がんで、高齢ゆえに経過観察となったところへ、例によって牛黄を主体に中草薬類を補助として、丸一年の継続で完全に消滅した例がありますが、近藤誠氏に言わせれば、きっと「がんもどき」にされてしまうのかもしれません(苦笑。

 C型とB型肝炎の合併があり、進行して肝硬変と腎不全を生じた人は、さいわいに上記のような多種類の配合によって、基本的に完全寛解となり17年後に突然の脳梗塞で亡くなられてしましましたが、この男性こそ、茵蔯蒿湯が高濃度で必要としたものでした。

 いずれにせよ、いわゆる中草薬類も貴重なサポートとなることは間違いないと感じる昨今です。

 ブログに転載させて頂きたいと存じます。貴重なおたより、ありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳)の大あくび!
2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳)の大あくび! posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 16:24| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

体格の良い女性に六君子湯がフィットして、痩身の青白い女性に大柴胡湯がフィットする例も珍しくないが、その見分け方は

2009年10月02日の茶トラのボクチン(5歳)
2009年10月02日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 そもそも実証用の大柴胡湯、虚証体質者に六君子湯や補中益気湯などと振り分けて考えるレベルは、ほんの初心者のための便宜上の教えと思っておいた方がよい。

 現実には、体格の見かけで方剤を割り振ってばかりいたら、玉石混淆のネットで検索して処方を指名するような素人同然で、とんでもない方剤を選びかねない。

 慢性疾患では、当然のことながら虚実挟雑、寒熱錯雑していることが多いので、だから容易に病院治療では治らないのである。
 ましてや保険適用レベルの漢方薬では、よほど漢方医学のみならず中医学にも堪能な医師に巡り合わない限りは、なかなか困難だろう。

 吐き気恐怖のために食事恐怖となった比較的体格の良い、いかにも健康そうな女性が六君子湯+オルスビー錠に少量の四逆散の連用一年で、すっかり自信を取り戻しているし、逆に顔面蒼白で痩身、食事中にも吐き気がして中断してしまうような30代の女性が、大柴胡湯+オルスビー錠+香蘇散の半年以上の連用でしっかり回復している。

 体格の良し悪しで方剤を決めては「絶対に!」いけない。
 消化器症状を訴える場合には、まず調べるべきは、本人自身に、心窩部を軽く抑えてもらって、気持ちがよいか? あるいは触るのも不快でトンデモナイと口走るか? そのいずれかの程度問題を探るべきである。

 消化器症状に漢方処方を考えるとき、体格の良し悪しなどほとんどまったく無関係。
 六君子湯が適応する人には、当然、華奢で痩身な人も多いし、大柴胡湯が適応する人には体格がガッチリしている人も多いが、その真逆の人も珍しくないどころか、現実にはザラに見られる。

 だからやや複雑な体質では、現実に、痩身で胃弱と眼科疾患を伴う人に大柴胡湯+補中益気湯+杞菊地黄丸などがよくフィットしている人や、同じく痩身で胃腸が弱い体質者に大柴胡湯+参苓白朮散+開気丸などが適応する人もいるくらいだから、そのうち大柴胡湯+六君子湯がフィットする人が現れても、まったく不思議ではないだろう(笑。

 果ては、とても華奢な六十代の女性で、大柴胡湯+葛根黄連黄芩湯+茵蔯蒿湯+石流茶+当帰四逆加呉茱萸生姜湯という極端に寒熱錯雑している胆石持ちで下半身は冷えによる腰痛で、眼瞼下垂を生じていた人には、このような複雑な配合がしっかりフィットしている。

 みかけで虚実を判断すると、大きく判断を誤るので、だから素人判断で、玉石混淆のネット情報や書籍に頼って、漢方薬に手を出すのは怪我の元だろう。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2009年10月02日の茶トラのボクチン(5歳)
2009年10月02日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 01:11| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2017年04月03日

このような効果は、おそらくは個別的な特殊例と思えるケース

2009年04月03日の茶トラのボクチン(4歳半)
2009年04月03日の茶トラのボクチン(4歳半) posted by (C)ボクチンの母

 抗がん剤治療により、次第に毛髪が薄くなっていくのに、男性だからとあまり気にも留めてなかったが、舌の奥に黄膩苔(おうじたい)がみられるので、既に服用中の多種類の漢方薬類に、さらに茵蔯蒿湯を追加したところ、抗癌剤治療継続中にも拘わらず、次第に毛髪が増え始め、いつの間にかまったく元の頭髪に復帰できたと喜ばれている。

 といっても皆に通用するとは限らないだろう。

 アトピー性皮膚炎で、プラスαで加えていた薏苡仁(よくいにん)の用量を増加したところ、明らかな効果が見られ、お陰で他の配合方剤を減らすことができた。

 しばしば明らかに重症の消風散証であっても、用量が少ないと、まったく効果が出ないことがあるが、上記のように薏苡仁でも同様なケースがあり得るということだろう。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2011年04月03日の茶トラのボクチン(6歳半)
2011年04月03日の茶トラのボクチン(6歳半) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 21:09| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2017年02月13日

しもやけが茵蔯蒿湯で、かなり改善されたという特殊事例

2011年02月13日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年02月13日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 ほんとうはタイトルに「特殊」という言葉を入れたくなかったが、誤解しやすいシロウトさんが多いので、敢えて入れておいた。

 実際のところ一見、特殊例に見えるかもしれないが、これが漢方薬の優れたところでもあり、弁証論治の難しいところでもある。

 10年以上前に一度来られたことがある県外の男性で、おおよその体質のイメージはあるものの、同じご家族が5年くらい通われているついでに、その10年以上前に来られたことのある男性が、現在、湿疹に悩まされておられるというので、そのご家族が知る範囲の情報で、茵蔯蒿湯なら間違っても問題ないので、一度試してもらったところ、一定の効果があったので、そのまま適宜、断続的に続けられていた模様。

 冬場に入って、茵蔯蒿湯を飲んでいると、しもやけがかなり軽減できるので、そのまま続けたいと、まとめてお送りすることになった。

 こんなブログを書くと、理解力のないシロウトさんたちが、しもやけには茵蔯蒿湯だと誤解されたら困るのだが、この情報は、あくまで同業の専門家に向けているつもりだから、そのおつもりで。

 過去にも、上半身は明らかな熱証の女性たちが二人、いずれも黄連解毒湯+茵蔯蒿湯+六味丸によって、上焦のアトピーが改善したばかりでなく、手足のひどい冷え性が驚くほど改善した特殊例を、このブログでも取り上げた記憶があるが、恐らく茵蔯蒿湯に内在する活血化瘀作用が多少とも貢献しているものと思われる。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2012年02月13日の茶トラのボクチン(7歳)
2012年02月13日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 14:02| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2016年01月25日

病気の問屋さんたち

2009年01月26日の茶トラのボクチン(4歳)
2009年01月26日の茶トラのボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 「病気の問屋さんたち」などという表現は、このブログを読んだら「私のことではなっかしら?」と機嫌を悪くする人がたくさんおられることだろうが、貴方や彼方たちだけではないので、ご安心を・・・。

 ご安心をというのも、仕事歴の長い村田漢方堂薬局では、「病気の問屋さんたち」と表現するのが最も適切と思われる人達の漢方相談こそ、悪性腫瘍関連の相談以外では、最も多いのだから。

 いつの間にか、アトピー性皮膚炎の相談者よりも多くなっている。

 そのような多種類の疾患を抱えて相談に来られる人こそ、長年の病苦に悩まされているだけに、繰り返し諦めずに通われる根気がある人だけの特権として、次第にあらゆる症状を忘れるようになって健康感が得られるようになる。

 そのような人達こそ、西洋医学ではまったく不可能だった数々の慢性疾患が次第に治癒に向かって漢方薬の優れた効果を実感されることになる。

 そのような多種類の疾患が複合して長年苦しまれていた人の複雑な状態など、このブログなどで簡単に記すのは不可能なので、いつもほんの一端しか書くことができない。

 たとえば、多種類の疾患のついでに、激しい逆流食道炎が合併していた人が意外に多いが、その多くが不思議と大柴胡湯証なのだが、逆流性食道炎だけの問題に絞れば、オルスビー錠で改善する人も多いし、小陥胸湯加減方ということもあれば、ササヘルスということもあったり、そのいずれも必要であったり、イオン化カルシウムの併用が助けになったり、様々であるが、昨今目立つのは、多種類の疾患に付随して逆流性食道炎もありますというようなケースが多々見られる。

 いずれにせよ、一人の身体にまるで病気の問屋さんのように、多種類の疾患を抱えて相談に来られる人は昔からとても多いのだが、そのような人達こそ、いつの間にかお馴染みさんや常連さんとなってしまうのは、漢方薬の優れた効果を実感されるがゆえに、必然的なことかもしれない。

 その代表的な実例が、我が薬局の女性薬剤師を筆頭として、40代〜90代における数十年来の多くの常連さん達である。

 補充購入の電話やメールで発送依頼ばかりが目立ち、店頭ではほとんど開店休業に近い本日のような寒波が続く中、殊勝に通って来た人達こそ、類は友を呼ぶかのような人達ばかりだった。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2009年01月26日の茶トラのボクチン(4歳)
2009年01月26日の茶トラのボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2009年01月26日の茶トラのボクチン(4歳)
2009年01月26日の茶トラのボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 20:09| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2015年10月27日

大柴胡湯の適応証は、体力とは無関係

2008年10月27日の茶トラのボクちん(4歳)
2008年10月27日の茶トラのボクちん(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 最近も華奢な女性の逆流性食道炎に、高濃度の大柴胡湯で即効を得ているが、一時は病院で投与される医薬品で治まっていたのが、途中から効果がなくなったので、村田漢方堂薬局ではまずは例によって、オルスビー錠を飲んでもらったが無効。

 そこで、心窩部を軽く圧迫してもらうと、気持ちよいどころか、不快であるというお返事。右胸脇部も同様であった。

 このように大柴胡湯は体力とは無関係で、心窩部と右胸脇部の充実度で判断すべき方剤である。

 内緒の話だが、ヒゲジジイも今月になって、一週間に1〜2回、夜中に心窩部の不快感と胃酸の逆流症状で目が覚めることがある。
 高濃度の大柴胡湯+オルスビー錠で即効を得るが、昨夜もこれで目が覚めた。
 しばらく大柴胡湯+オルスビー錠を常用する必要がありそうだが、胃酸が逆流した日は、肉食類が旨いのなんのってっ!

 今月は、なんだか呪われているように様々な症状に見舞われ続けたが、これで終わりにして欲しいものである。
 重大な疾患のご相談が続くので、知らず知らずに相当に神経を消耗し尽しているのかもしれない。

1日1回、今日も応援のクリックをお願いします

2010年10月27日の茶トラのボクちん(6歳)
2010年10月27日の茶トラのボクちん(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2011年10月27日の茶トラのボクちん(7歳)
2011年10月27日の茶トラのボクちん(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2012年10月27日の茶トラのボクちん(8歳)
2012年10月27日の茶トラのボクちん(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 19:47| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2015年09月26日

世間では消化器疾患に六君子湯や半夏瀉心湯がよく使われるらしいけど

2009年9月26日の茶トラのボクちん(5歳)
2009年9月26日の茶トラのボクちん(5歳) posted by (C)ボクチンの母

 村田漢方堂薬局でも六君子湯や半夏瀉心湯も必要になることだってあるのだが、大柴胡湯を使用する機会に比べれば、遥かに少ない。

 逆流性食道炎には六君子湯がファーストチョイスのように仄聞するが、いまだに遭遇したことはない。

 むしろ六君子湯で効かなかった人達が、当方に来られるケースでは、オルスビー錠でダメでも、多くは大柴胡湯証を呈しており、華奢な男女が断然多い。

 六君子湯証と大柴胡湯証では、それぞれにフィットする一連の症候は大違いなのだが、どうして六君子湯が投与されていたのか不思議である。
 多くは病院で投与されていたケースが多い。

 胃が痞えるからと半夏瀉心湯を投与されていたケースでも、その多くは大柴胡湯証を呈している。

 病院で六君子湯証や半夏瀉心湯証を投与されても全然効かないからと、相談にやって来られるケースのほとんどが大柴胡湯証であった。

 こんな企業秘密をバラしても何の徳にもならないが、ボクチンの写真を貼りたいために止むを得ない(苦笑。

 胃弱の人では、大柴胡湯合補中丸がフィットするケースも意外に多いのだが、日本流ばかりに専念していた頃では、絶対に考えの及ばなかった配合である。

 たまには応援のクリックをお願いします!⇒

2010年9月26日の茶トラのボクちん(6歳)
2010年9月26日の茶トラのボクちん(6歳) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 00:05| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2015年05月22日

大柴胡湯と補中丸の併用はあり?

2015年5月21日のシロちゃん(2歳)・スコちゃん(2歳)、トラちゃん(1歳半)
2015年5月21日のシロちゃん(2歳)・スコちゃん(2歳)、トラちゃん(1歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

2011年05月22日の茶トラのボクチン(7歳)
2011年05月22日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 ちょうどこの配合の補充注文があったので、ブログに使えると思った(笑。

 弁証論治を徹底的に追及していくと、最終的には大柴胡湯+補中丸の併用を主体した配合で、各種皮膚疾患にしっかり適応するタイプがある。

 日本漢方の実証・虚証・虚実中間などという発想ではあり得ない配合だから、敢えて取り上げた。

 頑固な皮膚疾患で、都会地から通われて数年間、初期にはかなり多種類の配合を続けられて後、ここ最近はずっと上記2種類の配合で、一定レベルの改善が得られている。

 また、都会地の中医学で高名な各医院を3軒歴訪しても治らなかったアトピー性皮膚炎の人も、数年間の臨機応変の多種類の配合変化を経て、ここ一年以上は大柴胡湯+補中丸を主体に、六味丸や清心蓮子飲に茵蔯蒿湯や葛根黄連黄芩湯に莪朮・地竜など複雑な加味を必要としながらも、9割以上の寛解を得て、社会復帰を果たしている。

 そのほか、地元近辺では胃が痞えて疲れやすい人に多用して喜ばれている(呵呵。

 たまには応援のクリックをお願いします!⇒

2011年05月22日の茶トラのボクチン(7歳)
2011年05月22日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2012年05月22日の茶トラのボクチン(8歳)
2012年05月22日の茶トラのボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2012年05月22日の茶トラのボクチン(8歳)
2012年05月22日の茶トラのボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2012年05月22日の茶トラのボクチン(8歳)
2012年05月22日の茶トラのボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 00:02| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2015年03月04日

デリケートでイヤらしくもある人間社会の洗礼を受け続ける毎日だった若造の頃

2009年03月04日の茶トラのボクチン(4歳)
2009年03月04日の茶トラのボクチン(4歳) posted by (C)ボクチンの母

 35年以上前の思い出。

 村田漢方堂薬局の漢方ファンに連れられて、料理教室の先生が漢方相談に来られた。

 胆石が生じても不思議がないような大柴胡湯が明らかなので、コッテリした洋食系の食事を慎むように食事内容のアドバイスを行ったところ、見るみる顔が赤くなった。何を立腹されているのか?

 その時点では直ぐには気かつかなかった。

 あとで考えてみれば、結果的に彼女の営業妨害をしていたらしい。
 洋食系の料理教室の先生だったらしく、その生徒さんを目の前にして、洋食系の食事を慎むようにアドバイスしたのだから、やっぱり結果的には明らかな営業妨害だったのだろう。

 とうぜんのことながら、二度と来られることはなかったが、このような善意が仇になる現実を繰り返し経験し、デリケートでイヤらしくもある人間社会の洗礼を受け続ける毎日でもあった(呵呵。

たまには応援のクリックをお願いします!⇒ にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ

2009年03月04日の茶トラのボクチン(4歳)
2009年03月04日の茶トラのボクチン(4歳) posted by (C)ボクチンの母

2010年03月04日の茶トラのボクチン(5歳)
2010年03月04日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

2011年03月04日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月04日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

2012年03月04日の茶トラのボクチン(7歳)
2012年03月04日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ボクチンの母



posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☔| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2014年07月07日

大柴胡湯証の真実

2009年7月7日のボクチン(5歳)
2009年7月7日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

 今日はブログを更新したい気分になれないけど、ボケ防止とボクチンの写真を貼る口実として敢えて書くことにした。
 先々日のブログの後半でも書いたことだが、大柴胡湯証の実際について。

 大柴胡湯の効果・効能欄に記載される最初の文言「体力が充実して」というのは当てにならどころか、実際には邪魔である。
 これがあるがために現実には痩せ型で華奢な女性にも多発する大柴胡湯証を見逃してしまう専門家が多いのである。

 「体力が充実」などとは無関係な問題で、華奢の女性に適応証があるケースでは、日頃から体力に自信がない人も多い。

 大柴胡湯証に体力の問題は無関係であり、もっとも重要なのは「部分の実邪」の存在の有無なのである。
 ヒゲジジイの41年に亘る漢方相談でメシを食っている経験から、大声で断言できる問題である。

 どうしても「充実」という言葉が使いたいのなら、大柴胡湯の使用目標は「体力の充実」という文言はすべて削除して、そのかわりに「心下部や季肋部の過充実を認め」と書き換えるべきである。

 このように「充実」という言葉を敢えて使うと、ヘンテコリンな表現になってしまうので、日本語に堪能な人がもっと上手な表現を考えるとよい。

 誰かやってくれっ。

2010年7月7日のボクチン(6歳)
2010年7月7日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

2012年7月7日のボクチン(8歳)
2012年7月7日のボクチン(8歳) posted by (C)ボクチンの母


ラベル:大柴胡湯
posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☔| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2014年07月05日

救急外来でお手上げだった背中の疼痛に牛黄と大柴胡湯合茵蔯蒿湯を1回の服用で即効

2009年7月5日のボクチン(5歳)
2009年7月5日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

 昨日は、少し歩いても息苦しいという女性が、呼吸器内科クリニックで半月治療を受けているが、「軽度の喘息」であるという診断だけで、投与される薬を飲んでも一向に効果がなく、行く度に合成薬とツムラ漢方を様々に変更されるのだが、やっぱりまったく効果がないということだった。

 顔色から見て、直感的に誤診の可能性が考えられる。
 大きい病院で診てもらうべきで、呼吸器の薬を投与されてまったく効果がないのは、もしかして原因が循環器系統で、心疾患が原因ということもあるので、しっかり総合病院で診断と治療を受けるようにお奨めして、当方の漢方薬は一切出さなかった。

 市内の人で、西洋医学治療が半月で効果がないからと、しかも内科クリニックの検査と診断レベルでは実にこころもとない。せまい台所の端から端へ行くのにもひどい息切れがするという状態なのである。
 症状が重い疾患では、往々にしてクリニックレベルの診断では誤診だったケースは珍しくないので、まずは総合病院でしっかり診察を受けるべきである。

 ともあれ、本日の本題に入ると、一家大人3名が、折々に当方の漢方薬を利用されているお馴染みさんの急性疾患のケース。
 背中のかなり激しい疼痛が勃発して、食事も摂れずに難儀し、救急外来で診察を受けたところ、様々に検査しても一向に原因が判明しない。
 挙句は帯状疱疹の前兆かもしれないなどと明らかな誤診をされる始末で、辟易して当方に助けを求めて来られた。
 
 ヒゲジジイと同年代の痩せ型の女性であるが、以前から舌の奥の黄膩苔があることから、茵蔯蒿湯など常用されてはいたが、もともと少食の上に、昨今は胃の調子があまりよくなかったという。その原因が今回の突然生じた背中の疼痛で、判明したも同然である。

 早速、常用中の茵蔯蒿湯に大柴胡湯を併用してもらった。
 念のため、常備されている牛黄を1度は頓服で使用するようにアドバイスしておいた。

 半月たった昨日、従来から病院で原因も診断も不明なやや難治性の疾患を当方の漢方薬でかなり改善中の漢方薬類の補充がてら報告に来られた。
 背中の疼痛は、こちらのアドバイス通り大柴胡湯合茵蔯蒿湯と牛黄を一回服用しただけで諸症状が雲散霧消し、それ以後半月、まったく再発の兆候すらないということだった。(もちろん念のため、しばらくは2方剤を併用しておくようにアドバイス。)

 検査では写らなかった胆石ではあるが、こちらの推測通り、少なくとも急性の胆嚢炎類縁疾患であった可能性大である。

 前置きで書いた息苦しさを訴える女性の場合、当方には初めての来訪であったから、従来からの体質がまったく不明ゆえ、また内科クリニックの診断は誤診の可能性も無きにしも非ずゆえ、慎重を期して総合病院で受診することを奨め、当方からは一切漢方薬を販売しなかった。

 一方、本題の背中の激しい疼痛の女性の場合は数年来のお馴染みさんであり、しばしば通われていたことから、中医学的な体質を既にしっかりと把握していたので、救急外来で診断がつかなくとも、こちらでは応急処置が可能だったのは当然の成り行きである。

 今回も痩せ型で小食の女性ながら大柴胡湯が的確にフィットしている。
 大柴胡湯の効果・効能に記載される筆頭の文句「体力が充実して」が、いかに当てにならないか、中医学的な弁証論治の正確性こそが重要である。

 あえて「充実」という言葉をどうしても使いたいなら、大柴胡湯の使用目標は「体力の充実」なんぞは一切アテにはならず、「心下部や胸脇部の充実」の存在こそが必須条件なのである。

 以上を禅問答と思うなかれ。これほど老婆親切な表現はありません(笑。

2010年7月5日のボクチン(6歳)
2010年7月5日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

2012年7月5日のボクチン(8歳)
2012年7月5日のボクチン(8歳) posted by (C)ボクチンの母

ラベル:大柴胡湯 牛黄
posted by ヒゲジジイ at 00:04| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2014年02月26日

舌の奥の黄膩苔は肝胆湿熱による茵蔯蒿湯証が内在していることが多い

2008年8月5日のボクチン4歳
2008年8月5日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

おなじみの東海地方の内科医の先生からの症例報告

64歳 女性
2012.6.4 「一ヶ月まえから右足の甲が腫れていて、足首も痛い。ひどい便秘もあるので直して欲しい」とおっしゃって受診されました。臍部から両側下腹部にかけて瘀血を認め、舌の中央から奥にかけて薄い黄色の舌があり、茵蔯蒿湯(T社)と桂枝茯苓丸(K社)を処方しました。

2週後 「排便は二日に一度になりました。でも足のほうは全然良くなっていない」と満足していない様子でした。しきりに、右足触りながら、「この浮腫がねー」と不満そうにしておられたので、「膝から下のむくみは防己黄耆湯」といつかの漢方研究会で聞いたフレーズを思い出して、「足の甲浮腫が取れるかもしれないので」と言って防己黄耆湯と桂枝茯苓丸を合方で処方しました。

2週間後、「先生は足の浮腫が取れるといったけど、全然よくなっていないよ」と凄く不満そうで、「足の裏がジンジンしてきたよ。冷房効いているとこはダメだね」とのこと。そこで、冷えで増悪しているとのことから、桂枝茯苓丸を桂枝加朮附湯に変更して、茵蔯蒿湯(T社)を3包に増量しました。

2週間後、「便通は変わらないけど、足のジンジン感は良くなったよ」と満足そうでした。すこし、こちらも胸を撫で下ろす気持ちになり、すこし気をよくして「じゃあ、毎日排便がでるようにしたいですね、20番を防風通聖散に変更します」といって帰宅を促しました。防風通聖散に変更した理由ははっきりしません。便秘・浮腫・下腹部がややぽっちゃりタイプでしたので、何となく変更したのかもしれません。

2週間後、 「便秘はまあまあで、足のジンジンもあまり感じないけど腕と脚が痒くなってきた。どういうこと?」組織内の水分を引っ張り過ぎたのか、と思いながら、桂枝加朮附湯を人参養栄湯に変更しました。

3週間後、「脚のジンジン感はほぼ無くなった。腕のかゆみがすこし残っている」といってあまり不満そうではありません。処方継続としました。

3週間後、「腕のかゆみも随分よくなった」と言ってようやく笑顔を見せてくださいました。「1ヶ月分お薬出します」といって内心ホットしました。

4週間後、変化なし。

4週間後、「インフルエンザをもらってしまったようです、のどがいたい! 早く直してください」とのことで検査したところ、A型インフルエンザで、イナビルと柴胡桂枝湯合桔梗湯を処方しました。風邪の症状ですんなりお引き取りいただけました。

4週間後、「このまえのインフルエンザは熱が出なくて治ってしまいました。漢方を続けて飲みます」とびっくりしておられましたが、こちらもびっくりでした。

8週間後、「5月の連休の頃から顔が赤くなって、今腫れて困っている。早くなんとかして! 腰も痛くて生活ができない」
と患者さんの表情が険しくなっていました。ちょうど花粉で顔から首にかけて発疹が出ていて清上防風湯で改善した方が幾人かいたことを思いだして、清上防風湯合茵蔯こう湯(O社)と牛車腎気丸合疎経活血湯に変更しました。

2ヶ月後、「顔の赤みと晴腫れは引いてきたが、排便が隔日しかでない。毎日だしたい」とのことで、茵蔯蒿湯(O社)を一日3包増量しました。

1ヶ月後、「・・・」 患者さんは何も訴えがないので、こちらから「お困りになっていることはありませんか?」とお尋ねしたところ、「別に変わりない」とのお返事で、前回症状は改善しているものと判断し継続投薬としました。

1ヶ月後、「この前に言うのを忘れていたが、便通が硬くて困っている」とのこと。腰痛よくなっているようであったので、疎経活血湯を麻子仁丸に変更。

1ヶ月後、「透明な鼻水がでる。毎年春は鼻がぐちゃぐちゃで困っている。何とかなりませんか」いつもと比べて神妙におっしゃった。「花粉に良く効くお薬を出しておきます」といって、辛夷清肺湯合麻黄附子細辛湯を1週間分だけにして、いつものくすりは4週間分処方した。

1ヶ月後、「便通も快便で、例年だとこのじき花粉の鼻水と鼻閉で大変だけど、何ともない。漢方は良く効くね。また続けて飲むよ」とおしゃってくださって、初めて満面の笑顔を見せていただくことができました。辛夷清肺湯合麻黄附子細辛湯は前回1週間分しか処方していませんので、常用薬である清上防風湯合茵蔯蒿湯(O社)と牛車腎気丸合麻子仁丸でアレルギー体質が改善している愚考しました。

 患者さんの訴えに対していろいろ思案して投薬を変更してきましたが、やっと体質のゆがみを少し修正できてアレルギー体質も改善できてよかった症例です。

 それにしても、茵蔯蒿湯(O社)は舌に黄色い苔があって便秘のときは適量(この患者さん場合1日3回)が必要であるという村田さんのお話に真実さを実感できた一例でもありました。

 患者さんの険しい表情を見なくてすむようになって村田さんに感謝します。
 またよろしくお願いします。

2008年8月5日のボクチン4歳
2008年8月5日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

お返事メール:

 興味深い症例、とても楽しく拝見しました。

 茵蔯蒿湯を終始一貫投与されたこともさることながら、折々に臨機応変に行われた配合変化こそ興味深く、清熱剤とともに附子剤を併用するところなどは、附子瀉心湯という方剤の存在を考えると、実に奥深い配合をなされることだと感服申し上げました。

 今回もブログの継続にご協力頂けるものと感謝申し上げます。

 早速、明日のブログに掲載させて頂きたいと存じます。
 ありがとうございました。

2008年8月5日のボクチン4歳
2008年8月5日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母



posted by ヒゲジジイ at 00:06| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2012年09月25日

肝胆膵系統が弱い人が常用していた大柴胡湯製剤を他社に変更したら再発してしまったお話し

シジュウガラ(シジュウカラ)
シジュウガラ(シジュウカラ) posted by (C)ヒゲジジイ

 大柴胡湯が適応する人は、常々書いているように「がっしりとした体格で比較的体力があり」というのはまったく参考価値はない。

 当方の常連さんで中医学的な弁証論治によれば、肝胆膵系統が脆弱な女性が、しばしば心窩部がつっかえて食欲不振となり、背中が凝って疲労困憊状態に陥る。
 油ものに弱く、しばしば下痢をしたり便秘になったり排便は一定せず、いかにも虚弱そうな女性であったが、長年、大柴胡湯を主体に様々な方剤を併用することでかなり健康に自信を持てるようになっていた。

 ところが、某社の医療用の大柴胡湯に切り替えるチャンスがあり、少し節約になったと喜んでいたところ、次第に身体が重くなり、家事が大儀になるにつれ、胃部もつっかえて背中が凝る。
 日々の生活が次第につらくなって生きた心地がしなくなった。
 どうも調子が悪いので知識欲の旺盛な彼女は、大柴胡湯の中国における常用量に近づけても一向に症状が改善しない。

 一ヶ月経ってようやく気が付いた。もともと愛用していた大柴胡湯とは効能が違うのではないかと。

 あわてて残っていた従来の大柴胡湯に戻したところ、覿面、数日を経たずして諸症状は雲散霧消!
 同じ大柴胡湯であっても、製造元によってこれほど違うのかと恐ろしくなったと述懐される。
  
 不遜なヒゲジジイが腹立たしくて縁を切りたかった?らしいが、忘恩の無礼、天罰覿面、自業自得(呵呵。

 類似した話しでは、防風通聖散(ボウフウツウショウサン)製剤ナイシトールの過剰宣伝による弊害の事例なども決して珍しくない現象である。
 つまり同じ防風通聖散でも三社を使ってみたところ、一社のみ激しい副作用に見舞われてびっくりしたお話しである。同じ漢方処方名の製剤でも、製造元によってこれほど効能・効果・副作用の有無に違いがでるのが、天然生薬を原料とする漢方薬の宿命であろう。

 なかでも最も印象深い事例は、
成川一郎氏の「漢方製剤の偽装」を読んで感じたことでも取り上げている驚くべき現実。
 たとえば、これは既に十年くらい前に「和漢薬」誌などにも発表したことだが、顔面に生じた慢性の皮膚疾患に、医師の出された医療用の猪苓湯と茵蔯五苓散の配合で全く無効であったものが、市販されているエキス量二分の一の猪苓湯とエキスと粉末が混合された茵蔯五苓散の併用によって比較的速やかな効果を示した例など、患者さん御本人と、主治医に薬剤師2名によって、何度も確認したものである。
 さらに最近しばしば遭遇することだが、複数の女性が医療用の猪苓湯エキスを出され、小生から見ても適切な投与であると思われるのに、一向に効かないからもっといい漢方薬が欲しいという要求に、濃度は二分の一だが効力の点では長年信頼している某メーカーの猪苓湯エキス製剤を試してもらったところ、速やかな効果を得ている事実をどう解釈すべきだろうか?

IMGP2752
IMGP2752 posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 23:50| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2011年11月06日

大柴胡湯証は必ずしも「がっしりとした体格で比較的体力が」あるとは限らない

FSC_8884
FSC_8884 posted by (C)ボクチンの母

 大柴胡湯製剤の効果・効能には・・・
がっしりとした体格で比較的体力があり、便秘の傾向のあるものの次の諸症:胃炎、常習便秘、高血圧に伴う肩こり・頭痛・便秘、肩こり、肥満症
 とあるが、実際には大柴胡湯適応者といえども、必ずしもがっしりとした体格で比較的体力があるとは限らない。

 むしろみかけが華奢な女性が多いのは常々、このブログでも書いて来た通りだが、村田漢方堂薬局に訪れる人達はかなり虚弱体質が複雑化した人が多いから、大柴胡湯単方で使用することは少ない。

 桃核承気湯や茵蔯蒿湯などと併用することが多いので、方剤の配合では日本古方派と一見変るところがない。
 大いに異なる点は「がっしりとした体格で比較的体力が」ある人で適応者に遭遇することは比較的少なく、むしろ外見は華奢でひ弱そうな女性達に使用すべきときがとても多いことである。

 華奢な女性達に意外に胆石症が隠れていたり、あるいは共通して心下痞硬を訴える。

 また、中国では膵炎治療に大活躍の大柴胡湯であるが、大柴胡湯を敢えて西洋医学流の臓器で表現すれば、肝臓・胆嚢、膵臓関連の疾患に使用することの多い方剤といえよう。

 ところで、どうして大柴胡湯証が「がっしりとした体格で比較的体力が」ある人などと限定して効果効能に記載されるようになったのだろうか?

 どうせ、日本の頭でっかちの学者さんたちが、いかにも知ったかぶって僭越にもこのような効果効能に限定して決められたに違いない。

 そもそも、日本ではどの専門分野でも、帝大出の権威ある学者さんたちがどこにでも口出しできるシステムとなっているように思われる。

 先の地震でも学者さんたちの「想定外」という言葉を発するのを耳にタコが出来るほど聞かされてきたが、この漢方界でもきっと、大柴胡湯が華奢な女性達でも大いに適応があるなどとは、彼等にとっては例によってまたまた「想定外」であるに違いない。

 たまたま今回は大柴胡湯の効果効能の記載を取り上げたが、他の多くの漢方製剤で記載される「体力」があるなしの記載についてはすべてにおいて大いなる疑義ある。

 そもそも体力の良し悪しはどのようにして判断すればよいのかっ? 体力テストでもさせよ、というのだろうか???
 
 納得できる説明をその学者さんたちに求めたいものである。

 蛇足ながら、一見「がっしりとした体格で比較的体力」ありそうなヒゲジジイが大柴胡湯を服用すると、次第に倦怠感を感じ始める。明らかに大柴胡湯がフィットしていないからである。

 ところが見るからに華奢な愚妻や、さらにもっと華奢で今にも腕が折れそうな愚娘が、この大柴胡湯によって様々な消化器症状が雲散霧消するのである。
 
 つまりどんなに華奢に見える女性達でも、心下痞硬に胸脇苦満を伴っていれば大柴胡湯が適応する可能性が高い。
 心窩部の痞えがスッキリ取れて次第に元気を回復するのである(呵呵。

 心下痞硬があっても半夏瀉心湯証とは限らないのであるっ!

FSC_9128
FSC_9128 posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 00:16| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2011年05月25日

大柴胡湯合四逆散なんてっ!?

IMGP4971
IMGP4971 posted by (C)ヒゲジジイ

 昨日は、ランキング競争のバナーのクリック数激減を嘆いたら、久しぶりにクリックしてくれる人が増えた。
 このお陰でまだしばらくはブログを継続する気になったものの、いつまでクリックを続けてくれるか、これまでの僅少クリックを思い出せば、皆さんの気まぐれは些か頼りないのだが・・・
 
 タイトルの大柴胡湯と四逆散は配合上、柴胡・芍薬・枳実が共通生薬であり、これに甘草が加わったのが四逆散である。
 それゆえ、これだけ共通した生薬が含まれるので、大柴胡湯合四逆散はほとんどあり得ないと考えていたのが三十年前の古方派時代の浅はかな考えで、現実にはしばしば遭遇する。

 大柴胡湯の生薬構成で煎じられたエキスと、四逆散の生薬構成で煎じられたエキスとは、適応証が明らかに異なることは常識である。いくら共通生薬が三種類あるからといって、適応証はかなり異なるということである。

 肝胆系の影響から胃の痞えなどの症状が顕著なものに大柴胡湯、気鬱傾向が目立ち、溜息や深呼吸の目立つ体質に四逆散。おおざっぱに書けばそれぞれこんな症状を呈しやすい。

 このような体質と病状を呈する人に、大柴胡湯だけでは胃や肝胆症状しか改善できず、気鬱症状は取れにくい。煎じ薬なら大柴胡湯に甘草を加えれば、それだけで両者の効能を同時に発揮できそうだが、手っ取り早くは各エキス製剤を半量ずつ合方することで目的は十分に果たせる。

 血の道症が合併している人にはさらに加味逍遥散を合法すればジャストフィットするケースも珍しくない。

 このような寝言に似た合方は、現実に各地方から来訪される複雑に拗れた虚弱体質の人達に、しばしば行なう合方で、優れた効果を発揮することが多いので記してみた。

 なお、加味逍遥散は女性に限らず、しばしば男性の更年期障害?にも適応する。

 但し、合方時の配合比率には当然のことながら創意工夫を要する。

IMGP5580
IMGP5580 posted by (C)ヒゲジジイ

IMGP5581
IMGP5581 posted by (C)ヒゲジジイ

IMGP5588
IMGP5588 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 23:12| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2011年04月18日

体力のない人にも大柴胡湯の適応者は五万といる

シックなカラーで人懐っこいイソヒヨドリの雌
シックなカラーで人懐っこいイソヒヨドリの雌 posted by (C)ヒゲジジイ

 今年も非常に華奢に見える女性達で、大柴胡湯適応者が頻発する。
 ところが大柴胡湯エキス製剤の効能・効果には

「体力が充実して,脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく,便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎,常習便秘,高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘,神経症,肥満症 」

という記載がある。

 このような記載はまったく信用ならない。
 記載されていることは間違いではないが、正しくもない。
 「体力が充実」してなくとも、とても華奢で体力が非常に低下している女性達にも適応者が五万といる。

 「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく」という記載はまったく正しい。ここだけは文句のつけようがない。

 「便秘の傾向」というのはあってもなくても問題はない。

 「胃炎」がある人にも適応証があれば使える。

 同様に「高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘」も適応証があれば、このような症状に効果が出ることもあるあるが、他の合併証によって生じているケースも多いので、頭痛や肩こりまで改善できるとは限らない。

 「神経症」については適応証があれば効果的なこともあるが「肥満症」に関してはたとえ適応証があってもこの方剤だけでは弱いことも多く、合併する適応証に対する方剤の併用が必要なことが多いし、第一、過食を止めて運動不足を解消する必要がある。

 上記をみると、いかにも体格の良い人達や肥満症の人達以外には使用できないような誤解を招く効果・効能であるが、現実には大柴胡湯が適応する人には意外に痩身で華奢な女性達の方が多い。

 40年近い漢方相談経験から断定できる。上記の記載中で最も正しく重要なのは「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく」という箇所だけで、逆に最も邪魔になる記載は「体力が充実して」という部分である。

 何をもって体力が充実してと判断するかは議論のあるところであるが、現実にはいわゆる体力が低下して華奢で比較的小食な女性達にも適応者がとても多い。

 このような華奢な女性達でも適応証に間違いないケースでは、大柴胡湯によって「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦」しい症状が改善されるとともに、逆に体力が充実して来るのだから、漢方薬の実力は侮れない。

 しかしながら、一見体力のありそうなヒゲジジイが、大柴胡湯の適応証の人達の喜びにあやかりたいと、みずから服用実験をしてみたところ、次第に倦怠感を感じるようになり、仕事の途中でも横になりたくなったり、なんとはなしに体力と気力の低下を感じることが増えて来たので、適応証もないのに使用すると、真逆の反応することを確認することが出来た(苦笑。

 このように漢方薬は真の適応証を見つけるにはかなり熟練が要る。
 それゆえ、巷の病院や医院で安易に投与される医療用の漢方製剤(最近では大建中湯や桂枝茯苓丸の問題が多い)による誤投与で困った人達の問い合わせ電話が絶えないのである。

 合成医薬品の誤投与と異なり、漢方薬の誤投与は問題が少ないとはいえ、少なくとも連用してもまったく無駄になるので、巷のお医者さんたちも日本漢方だけでなく、中医学の弁証論治の基礎くらいは学んで欲しいものである。

ESC_2846
ESC_2846 posted by (C)ヒゲジジイ

ラベル:大柴胡湯
posted by ヒゲジジイ at 08:33| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2011年03月10日

大柴胡湯と生理痛の関連性

BSC_6700
BSC_6700 posted by (C)ヒゲジジイ

おたより:関東の内科医師

 東海地方の内科医の先生の大柴胡湯と生理痛の関連性に関してお話いたします。

 自分の感覚では「生理痛は肝臓と生殖器の生理学的な距離感が原因では?」と感じています。

 生理痛が柴胡剤で治ることは自分も経験しているのですが、これが「どの様なメカニズムによるものか?」ということを考える方も多いと思います。ちなみに自分も不思議な現象の一つと感じておりました。

 「柴胡剤は肝臓部分の鬱血を取る薬草」と自分なりに考えております。加えて…生殖器の鬱血は左下腹部から右季肋部の肝臓への伝搬して行く様に感じております。ですから、生殖器の鬱血が長期に続くと生殖器の鬱血だけではなく次に肝臓の鬱血も加わると推測しています。

 この様なメカニズムによって、生殖器が鬱血するときには「生殖器と肝臓との生理学的な距離」が短縮されると解釈されます。その時に肝臓の鬱血を取れば、肝臓と生殖器の生理学的な距離が正常近くに戻ることから生理痛が和らぐと推測されます。

 「痛みは気の停滞によって起きうる」と亡き鍼灸師の恩師が話していました。とすれば…肝臓と生殖器の距離が適当でないと気の停滞が生じ痛みを生じるのでは?と勝手に考えています。ですから、生殖器に直接関係しないような柴胡剤を使うことによっても生理痛を減少させることが出来ると結論づけられるのではないかと思います。

 最後に…自分の医院ですか?(笑
 スタッフに「電柱に広告を貼ってきてよぉ〜!」とか話しています!(汗
 笑い声の絶えないスタッフに恵まれて幸せです。何であんなに笑えるんだぁ〜?

 先生からご紹介頂いた患者さんの治療については、患者さんと共にエベレストに登るような感覚です(汗。「自分について来て下さるなら…エベレストであろうとも登るぞ!」とか思うのですが、本当に登れるのだろうか?(苦笑

 では、またメール致します。

 おやすみなさい。

 関東の内科医師(笑

ASC_4117
ASC_4117 posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:ブログへのご協力ありがとうございます。

 中医学的には肝鬱気滞による生理痛は普遍的なものですから、この場合、ご承知のように通常では逍遙散や加味逍遙散など、柴胡、芍薬とともに活血調経薬の当帰などが配合された方剤を使用することが多いのですが、調経活血薬の配合のない大柴胡湯で生理痛に効果を発揮したところが面白いところだと思います。

 活血調経薬の存在しない大柴胡湯中の柴胡、芍薬、枳実による純粋な調気疏肝法によっても、十分に生理痛に効果を発揮したことは、ヒゲジジイも経験している四逆散による子宮内膜症の治癒例からも推察するに、純粋でしかもかなり単純な肝鬱気滞による生理痛や子宮内膜症のタイプもあり得る証左ともなることでしょう。

 また、中医学的に言われる「不通則痛、通則不痛」という格言は、気、血、津液(水)に共通した概念ですので、あらゆる疼痛を伴う疾患には確かに基本事項だと思います。
さらに気は血や津液の流通にそのまま影響を与えていますので、さっこんのようにストレスの多い社会では気滞を伴う疾患が目立ちます。

 このような中医学的な分析部分を、先生オリジナルのユニークな中西医結合的な方向で解釈され、とても興味深く拝読致しました。

 本にまとめられる時には、中医学的な弁証論治も並行して記載されると、中医学派により理解されることと思います。

 ともあれ、先生もいよいよ開業され、千客万来のご様子。
 ご多忙中のところを、このお時間(01:13)にメールを頂けるとは、とても恐縮しております。
 ありがとうございました。

 蛇足ながら、私淑する陳潮祖先生の御高著「中医病機治法学」の序文中に、
※五臓の生理機能はいずれも気血津液の生化輸泄{生成・輸布・排泄}に関係があり、「通」{流通}という共通した働きを示している。
※五臓六腑は「流通しているべきもの」という命題こそは、病機と治法を分析する上での重要な指針となるものである。   ━http://cyos.exblog.jp/3394788/
とあります。

【編集後記】 大柴胡湯や四逆散に配合される芍薬について。

 日本で使用される芍薬は、中医学で使用されるものと異なっている。ところが、異なっていることで有利に働いているケースがしばしばである。

 今から書くことは、中医学の専門家にしか理解してもらえないだろうが、日本漢方で使用される芍薬や日本で製造される各種漢方エキス製剤で使用される芍薬は、中医学で使用される芍薬とはことなっているということである。
 詳細な説明を省いて、結論から言えば、日本の漢方製剤で使用される芍薬は、中医学の白芍でもなければ赤芍でもない。

 日本で使用される芍薬は、白芍でもなければ赤芍でもないかわりに、効能としては白芍と赤芍の両者の効能を併せ持っている可能性が高い。

 中医師が芍薬を配合するとき、白芍と赤芍が同時に配合されることが多いが、日本で使用される芍薬は両者の効能を併せ持つので、実に便利であると言いたいわけである。

 そのお陰で日本で使用される芍薬の効能には、補血活血、柔肝止痛の効能があるので、生理痛に対する効果がより発揮しやすいものと思われる。

 中医学においては「月経痛に対する方剤には必ず白芍を配合する」(『中薬臨床応用』広東衛生出版社⇒『漢薬の臨床応用』医歯薬出版)とされるが、実際には赤芍も併用するケースが多い。
 
ASC_3665
ASC_3665 posted by (C)ヒゲジジイ

IMGP7602
IMGP7602 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 20:18| 山口 ☀| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする