2012年01月23日

3年前に飛蚊症で一度来られた人がメニエールでメール相談

KSC_1752
KSC_1752 posted by (C)ヒゲジジイ

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾
【 年 代 】:20〜29歳の男性
【 地 域 】:近畿
【 具体的なご職業 】:飲食店 調理
【 お問い合せ内容 】:
 お久しぶりです。覚えておられないかもしれませんが、一年半程前(編集者注:実際は3年近く前)に飛蚊症の件で店頭に直接お訪ねしご相談させていただいた●●という者です。

 その節はお世話になりました。
 その時は肝腎陰虚に湿熱ということで杞菊地黄丸と茵蔯蒿湯を軸に釣藤散と田七人参も状況に応じて服用するというアドバイスをしていただき、飛蚊症は消えないまでも気にならない程度になり、体調もよかったので、問題なく生活しておりました。

 そして話が変わるのですが、先月急に片耳がこもったような感じで聞こえにくくなり、二日後くらいに沈むような眩暈が始まりその後回るような眩暈と吐き気で立っていられなくなりました。

 嘔吐もありました。次の日には落ち着いたのですがまた二日後同じような眩暈が起きたので病院に行き、メニエールと言われました。

 それから三週間程たちましたが、回るようなめまいはありませんが頭を振ったり歩くとふわっとしずむようなふらつきが続いています。

 あまり動かしすぎると吐き気がし耳のこもったような違和感もたまにあります。病院では基本的に薬を飲んで様子をみましょうという事で利尿剤等を飲んでいますが症状は変わらずです。

 命にかかわるような疾患ではないですが、不快感を相当感じており、またあの発作のようなめまいが定期的に起こるかもしれないと思うと不安です。

 そこで村田様のサイトでめまいの症例を拝見させていただき、自分の体質的にも共通している部分があるのではと思い、質問させていただきました。

 文面だけでは不十分なことは承知してますが、過去にみてもらっている事もあり、可能性として考えられる事だけでもお教え頂けないでしょうか。

 また、飛蚊症の件が落ち着いてからは眼精疲労対策として杞菊地黄丸のみを自己判断で服用していたのですが、これがメニエール病の原因になる事はあるでしょうか?
 もしそうであれば反省しております。

 お時間のある時にでも返信頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

KSC_1566
KSC_1566 posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:
 当時の相談カードを調べてみたら平成21年4月に初めて来られ、その後7月21日に杞菊地黄丸だけをお送りしてそのまま音信が途絶えていました。

 その後もそちらで杞菊地黄丸を入手して服用されていたとしても、メニエールに対して杞菊地黄丸が災いしたということは絶対に有り得ません。

 それどころか、メニエールに対しても最終的な体質改善時には杞菊地黄丸も必須となることが多いものです。

 但し、メニエールの病因は風痰上擾など湿邪の存在が絡むことが多いので、痰湿の問題が主体となることが多いので、当時もこちらでお出しした釣藤散のみならず、半夏白朮天麻湯、(あるいは茵陳蒿湯も出していることから類推すると)温胆湯証があるかもしれないし、回転性目眩が強ければ沢瀉湯など。

 しかしながら寒熱の問題が現時点でも当時と同じかどうかは不明なので、寒証に変化していれば真武湯証ということもあり得ることです。

 いずれにしても総じてメニエールは中医学では比較的治しやすい疾患ですので、地元の漢方薬局でしっかり相談されることです。

 通えるところで折々に顔を見せておかないと、こちらでは2年半のブランクがある貴方の体質を当時の相談カードを眺めても殆ど思い出すことすら不可能です(苦笑。

 当時でも三ヶ月しかこちらで続かなかった人ですから、当然こちらに来られる必要はないので、必ず地元で互いに信頼関係が結べる漢方薬局を見つけるべきです。

 幸いにメニエールは中医学やたとえ日本漢方でも服用者に根気さえあれば文字通り本当に「根治」が可能な疾患ですので、今度こそしっかり通えて長続きのするところで腰を据えてみて下さい。

 なお、処方のヒントは上掲しましたが、例によって数種類の組み合わせが必要なことが多いので、素人療法は禁物です。

BSC_5815
BSC_5815 posted by (C)ヒゲジジイ

折り返し頂いたメール

 お忙しいところ、丁寧なご返信ありがとうごさいます。

 近くの漢方薬局を見つけて、必ず完治させたいと思います。ありがとうごさいました。


【編集後記】

 実際のところは肝腎陰虚に湿熱を伴っている場合に、こちらの指示通りに杞菊地黄丸だけでなく茵蔯蒿湯や風痰に配慮した釣藤散も併用していたら、そして折々に体質変化の点検を行っていれば、今頃になってメニエールを引き起こすことはなかっただろう。

 遠来者の中には、フィットする配合が得られた時点で直ぐに無音となり、こちらに何の相談もないまま素人判断で配合を一部間引いてバランスの偏った節約した配合を続ける人があるようだが、それはちょっと考えものである。

 遠来者の中にはこのように、フィットする配合が見つかった時点で、三ヶ月で音信不通となるケースが目立つが、その後はよそで漢方薬を調達されるため、こちらは心身ともに消耗する弁証論治に苦労した三ヶ月がまったく報われないのだが、それだけの問題ではない。

 このように中焦や下焦の湿熱に配慮した茵蔯蒿湯や痰熱に配慮した釣藤散が欠けて、杞菊地黄丸だけを続行してややバランスを欠いた配合のために、メニエールを未然に防ぐことは出来なかった可能性は否定できない。

 素人療法の問題点が集約されているように思われる。

 蛇足ながら昨年だけでも、アトピー性皮膚炎の女性薬剤師や、血液疾患の男性など、その後の状況に応じた配合の微調整が必要になった時点で困るのは目に見えているのに、大丈夫なの?と危惧している。
 いずれも効果が明らかとなった三ヶ月目で無音となっている。

 類似した例でも関東から通われながら、折々に地元で漢方薬を調達したがるやや身勝手な人達がいて、これでは慈善事業に等しい仕事となるので、関東の内科医をご紹介したところ、やはりそこでも身勝手な行動が目立ち、却って大変なご迷惑をおかけすることになった(苦笑。

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BSC_5582 posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 07:43| 山口 ☔| 飛蚊症 | 更新情報をチェックする

2008年10月10日

飛蚊症の漢方薬として特定の方剤が決まっているわけではありません

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 主婦
簡単なご住所 : 九州地方
お問い合わせ内容 : お世話になります。
 「飛蚊症の漢方薬」をみました。当方も黒いものがじゃまをし目がとても疲れます。釣藤散と六味丸を試してみようかと思っております。

 しかし以前、虚症と言われたことがありますが症が合わなくても、飛蚊症には効果が出るでしょうか?1度来店しご相談した方が良いかと思いますが他に適当なものがありましたら、お教え頂けると有り難いです。宜しくお願い致します。


御返事メール: 飛蚊症には釣藤散と六味丸が効くと決まったものではありません。
 ましてや、御覧になった「飛蚊症の漢方薬」は、あくまで専門家でもある特定の医師個人へのアドバイスに過ぎず、不特定多数の人にアドバイスした訳ではありません
ましてや、貴女が釣藤散証(釣藤散が適応する一連の症候群)タイプであると、どうして分かるのでしょうか?

 また、虚証と言われたという、いかにも日本漢方特有の幼稚な判断では、何も処方は決められません。
 ほとんどの慢性疾患患者さんたちの実態は、虚実挟雑状態にあり、虚と実が入り乱れているのが通常です。一人の身体で五臓六腑それぞれの寒熱虚実が異なります

 飛蚊症はなかなか頑固なこともあり、それでもある女性は、加味逍遙散と杞菊地黄丸だけで急速に寛解した方がおられましたが、そのような超速効が出るのは珍しいケースです。
 杞菊地黄丸を主体に生薬製剤二号方を加え、さらに釣藤散や体質改善三点セット等、考えられる多くの併用薬により、ようやく軽減した例もあるなど、なかなか困難を極める場合もあります。

 また、随分昔の話ですが、様々な漢方薬の工夫にも関わらず、まったくぜんぜん効果が出なかった某製薬会社の社長さんもおられ、面目丸潰れという情けない経験すら持っています。

 ともあれ、安易に素人療法はされないで下さい、というのがお返事の結論です。

 なお、一度来られたくらいで治るとは限りませんので、遠路はるばる来られるには及びません。地元近辺で(信頼出来そうな漢方の専門家を)お探し下さいませ。


折返し頂いたメール:お忙しい中、ご丁寧なお返事ありがとうございました。
 大変参考になりました。
 どうもありがとうございました。
posted by ヒゲジジイ at 06:21| 山口 | 飛蚊症 | 更新情報をチェックする

2007年07月12日

飛蚊症の漢方薬

御質問者:東海地方の内科医師

いつもお世話になっています。
 本日は自分の件でご教示ください。つい先日飛蚊症が悪化(視野のなかを飛ぶ蚊のサイズが巨大化)しまして眼科を受診しました。
 硝子体剥離との診断を頂きました。眼科医のご説明では年齢的な生理的変化だそうです。いいかえれば、”年の成せる業”ということでしょうか(苦笑)。

 そこでご相談ですが、何かお勧めのものはございませんでしょうか。診療中に眼が疲労します。
 ちなみに、自分の所見としては、舌は淡紅で微黄色苔がわずかにあり、胸脇苦満、脈:弦でしょうか。
 腰痛、風邪のあとに痰の絡んだ咳がでたことがありまして、炙甘草湯と八味丸を頂戴しています。
 そして、通常は便秘気味かと思います。それから天候の悪化するまえには頭痛があります。しかし、五苓散は全く効きません(ある文献では有効であるとするものがあり試しましたが)。

 年齢は一応自覚していますが、漢方薬のお助けで診療に耐えられるようにしたいと思っております。


ヒゲジジイのお返事メール:早朝の床の中での後頭部の重さを感じることはないでしょうか?
例の釣藤散証に関連する一連の症候の有無についてです。
胸脇苦満および弦脈を考慮すればなおさら考えられるのは釣藤散の出典である本事方・眩暈門にある「肝厥頭暈」の系列の病症ではないかと推測できるように思います。
胸脇苦満や弦脈は、柴胡剤ばかりが専売特許というわけではありません。
舌は淡紅で微黄色苔からするとますますそれらしく思われるのですが、如何でしょうか?
 ところで小生も愚妻も以前から気になる飛蚊症があったのですが、二人ともに最近はほとんど意識にまったくのぼらないほどに薄らいでいます。先生のメールを頂いて、そういえばと白紙に向かって捜して、ようやく僅かに発見できるほどです。

 愚妻の場合は耳鳴りや眼圧が上昇気味だったことから、釣藤散を主体に細かな弁証論治にもとづいて知柏腎気丸製剤・生薬製剤二号方・茵蔯蒿湯など等、ここに書ききれないくらいの方剤を連用していますが、釣藤散を加えるようになって、明らかに飛蚊症がほとんど消えていると言います。

 小生は二ヶ月前に一時血圧が上昇したことがきっかけで釣藤散・大柴胡湯・茵蔯蒿湯・八仙丸・地竜・板藍茶・白花蛇舌草を比較的真面目に連用して血圧が正常化するのに併行して、長時間のパソコンや読書という過酷な眼精疲労を強いられているにもかかわらず、飛蚊症が全然気にならなくなっています。

 また肝腎陰虚がベースにあることや、血瘀が伴っていることも多いので杞菊地黄丸などの六味丸系列の方剤や生薬製剤二号方などの活血化瘀方剤を併用すべきケースが多いようにも感じています。
 過去の仕事上では、杞菊地黄丸と生薬製剤二号方の二種類の併用のみで寛解した女性や加味逍遙散と杞菊地黄丸の併用で寛解した女性などもおられました。
 しかしながら20年前くらいのことですが、一例だけ慙愧の念に耐えない例として、某合成医薬品系の製薬メーカーの社長さんの重度の飛蚊症を何とかして欲しいと依頼され、真面目に通い詰められたにも拘らず、僅かの改善しか得られず、今から思えば高血圧も伴っておられただけに明らかに釣藤散や地竜が不足していたのではないかと、悔やまれる苦い思い出があります。

 ともあれ、先生は八味丸を使用されておられますが、あくまで個人的な経験から言えは、附子剤というものは明らかに経絡に冷えが巣食っていたり明らかな全身的な陽虚がない限りはあまり使用しない方が良いように感じます。

注意が必要な漢方薬(肺陰を損傷しやすい漢方処方)

このページの後半部分にも書いていますように、辛燥大熱の附子はうっかり不必要に使用すると肺陰を損傷し兼ねないからです。
 ですから確実な附子の証がない限りは、杞菊地黄丸あるいは六味丸の方がふさわしいのではないかと愚考します。これに適当な活血化瘀方剤があれば、生薬製剤二号方でなくとも医療用漢方では当帰芍薬散の少量を適宜利用するなどの方法もあるかもしれません。

 もしも釣藤散証がおありのようでしたら、あるいはこの方剤だけでもかなり効果が出るかもしれません。また当帰芍薬散に釣藤散の合方が適応するようでしたら天候に影響される頭痛にも効果を発揮する可能性も高まると思います。
 
 以上、もしもピンと外れの類推でしたらお許し下さい。


折り返し頂いたメール: 早速、大変詳細で親切なご助言ありがとうございます。
 ”早朝の床の中での後頭部の重さを”をときどき感じていましたし、本日もありました。
 血圧もやや高めですので、釣藤散を試みてみます。
 杞菊地黄丸はエキス製剤がありませんが、どこかご推奨のものがありましたらお教えください。


折り返しヒゲジジイのメール: あえて杞菊地黄丸を使用されなくとも医療用の六味丸でも間に合うのではないかと愚考しています。
 たとえば、愚妻が使用している六味丸製剤は、飛蚊症以外の目的もあって六味丸に知母と黄柏が加わった製剤を使用しています。
 小生の場合は、哲学の煙の関係から、六味丸に五味子と麦門冬が加わった味麦腎気丸製剤を使用しています。
 頂いたメールのご様子では、明らかな釣藤散証がおありのようですので、これまでの八味丸のかわりに六味丸製剤に切り替えるので良いのではないかと思います。

 最近、折々に感じるのは釣藤散証の人こそ、この釣藤散によって飛蚊症が寛解できるように思っていますので、是非、先生を実験台(笑)と考えられて釣藤散+六味丸から始められては如何でしょうか?


お返事メール: 実験の結果で良い成績が得られることを期待して釣藤散と六味丸で試してみます。
 そういえば、つい最近の患者さんでひどい頭痛に釣藤散を中軸とした投薬で著効したかたがみえたことを思い出しました。

 カルテを見ますとやはり、起床時の頭重感から頭痛に至る症状でした。そのときは意識して処方していなかったようです。いわゆるビギナーズラックというものでしょうか(笑)。今回の結果を参考として頭痛の患者さんの選択枝を増やしてゆきたいものです。


再びヒゲジジイのメール:杞菊地黄丸は六味丸に菊花と枸杞子を加えたものですので、釣藤散の配合生薬中には菊花が含まれておりますから、なおさら釣藤散を主体に配合する場合には敢えて杞菊地黄丸を使用しなくても六味丸の合方でもかなり有効性が高いように思われます。


返信メール:いつも時宜にかなったご助言に深く感謝いたします。
 釣藤散と六味丸に期待します。
posted by ヒゲジジイ at 01:02| 山口 ☁| 飛蚊症 | 更新情報をチェックする