2008年06月06日

ちくわとミミズとホース談義

おたより:関東地方の内科医師

自分は「ちくわ」って美味しくて大好きなんですけど〜先生はお好きですか?(笑
 でも、この「ちくわ」って体の構造そのものを表しているような気がするんですよね…。
 先生も同じ様な感覚を持たれているのでは…?

 あの鮎川静先生の本の始めに「ちくわの図」が書かれてあって、「この先生、ただ者ではない」と感じました。確か、この先生の医院はバスで行かなくてはいけない所にあって、この先生の医院の近くの停留所でバスが止まると全員降りてしまう…とか、大塚敬節先生が話していたのを思い出します。凄い手腕の先生だったことが伺えますよね。

 この「ちくわ」ですけど…人間の体を皮膚と腸に視点を当てて考えてみれば、皮膚は口と肛門で反転して消化管となっている訳で、ここに注目すれば人間の体は「ちくわ」と同じ様な構造をしていると考えられるんですよね。

 この皮膚と腸ですけど…解剖学的に見れば、もっとも遠い位置にあるといえます。しかしながら、この「ちくわ」構造に注目すれば…皮膚と腸とは生理学的に隣にあることになります。ですから…解剖学的にみた物理学的距離感と生理学的距離感は違うと言うことになると思います。

 ここいら辺が東洋医学の素晴らしさを語っている所でもあると感じます。表裏感からすれば、表は皮膚で裏は腸ですよね。ですから…解剖学的に遠い場所でも表裏の関係を保っている皮膚と腸とは生理学的に近い距離にあると指摘することが出来ると思います。

 この「ちくわ」構造を理論数学では「トーラス」といいます。この「トーラス」は「ドーナツ型」です。すなわち一つの物体に一つの穴が開いている構造が「トーラス」なんです。これからすれば…「トーラス」=「ちくわ」です。
 ということは、東洋医学を西洋的な考え方で説明できる土台ができあがっていることを示しているとも感じます。

 最後に…皮膚と腸の距離の近さの実例を挙げたいと思います。
 アトピーで苦しみ克服した方が自分のお子さんを育てるのに如何にアトピーを起こさないで育てることができるか?と考えた…という記事を目にしたことがあります。
 その方曰く…
「夏には、しっかりと汗をかかせること」と「便通をととのえること」でした。

 やはり…病気を経験した方は医者以上のことを感じ取っていると痛感します。ですから…私たち医療従事者は、その声を無駄にすることなく患者さんに帰していくことが求められるのだと思ったりします。

でも…「ちくわ」って美味しいですよね〜(笑。


お返事メール:おたより、ありがとうございます。
 皮膚と腸管の表面は、ミミズを逆剥けすると逆転するように、地続きで一体のものであるとする考えは、以前より様々な立場から指摘されているようですね。
 ミミズと「ちくわ」では美味しさの点では比較になりませんが、ミミズの方は小生愛用の医薬品ですっ!

 鮎川静先生のご高著は、古方派時代には一時のめり込んだ時代が懐かしいです。門前市をなす盛況、大人気の名医にあやかって、当時、盛んに大柴胡湯合桂枝茯苓丸料合当帰芍薬散料など、柴胡剤と駆瘀血剤の合方を行ったものでした。
 でも、残念ながら鮎川先生の模倣をしても、閑古鳥が鳴く日の多い薬局でした(苦笑。

 ともあれ、ご指摘の「ちくわ理論」を地で行く方剤の一つが、小生の乱用する「茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)」です。

たとえば、漢方薬による子宮内膜症の強烈な疼痛・生理痛の治り方 で取り上げた女性の場合、10日毎に通われて、本日ちょうど五度目の来局で、ちょうど40日の服用ですが、ここ一週間は完璧に疼痛が消失し、病院の鎮痛剤もまったく不要になったとの報告を受けました。

 配合処方は牛膝散製剤・猪苓湯・茵蔯蒿湯・田七末の四種類です。このようなシンプル?な配合で、難治性と言われた激しい疼痛が僅か三十日でほぼ完全消失です。同時に顔面に生じていた凸凹状の吹き出物も完全消失して絶世の美人に戻ったのには皆で祝福したほどです(笑。

 このように婦人科系疾患においてさえも茵蔯蒿湯の有効性を証明したものだと自画自賛しているところです。

 この茵蔯蒿湯こそ、先生の「ちくわ理論」を証明する代表的な方剤の一つであろうかと存じる次第、是非、お試しあれっ。


折り返し頂いたメール:ちくわの肉に注目しなはれ!ということかな?
了解です!
GOOD NIGHT!(笑

肉中央部の穴ですよね。分かってきました…v(^^)v


ヒゲジジイの折り返しのメール:もちろんその穴もですが、同時に肉もですっ! 先生の洞察力は天下一品ですっ!

 一般的には、ホースのような管でたとえて、それを逆剥けにしたイメージで、皮膚と腸管表面はひと連なりで地続きと言われますが、肉質の多いミミズに喩えたほうが真実に近いように思います。

 少陽三焦理論によるイメージの世界です。
 少陽三焦は気と津液の流通ルートではありますが、血は気に乗って運ばれます。


折り返し頂いたメール:確かに「ちくわ」だと穴が大きく、ちょいとイメージから離れている感じがありますものね。では‥これからは「みみず」で行きたいと思います(笑。
 さて‥

>少陽三焦は気と津液の流通ルートではありますが、血は気に乗って運ばれます。

 ん〜これ‥というか、この感覚を大切にして自分の中で培養したいと思います!
 自分の場合はインプットして‥ばっちり感覚として捉えられるまで、時間がかかってしまいます。他の先生はリンパ系を指しているのでは? という意見もあり‥色々な側面から結びつく点を探したいと思います。これも‥時間が必要ですね(笑。

 やっと猪苓と茵蔯蒿がつかめた様な気がしたのに‥底なしですねぇ〜(笑。でも、この二つが分かったということは自分にとっては大きな進歩です。この二つが、なんとなく分かった事で‥傷寒論の全体像がはっきりしてくる感覚があります。

 自分の場合、体の中の気の流れは、しっかりと分からないんですが‥体表面の気の流れは非常にダイナミックに感じることができます。これは感覚的に分かります。体の悪い部分に気の流れの停滞(気の集中や気の低下)が起こり‥流れ方が悪くなっていることが分かります。気の停滞部分に鍼をすると10分もすれば‥気の流通の再開が始まります。(漢方的には気の停滞部分に相当する部分の臓器の充血や虚血を伴っていることが殆どです)

 自分は鍼よりも漢方主体なんですが‥気の流れも利用しています。でも‥体内は分からないんですよね。どうなっているのでしょうねぇ〜???(笑

もう一度‥解剖を調べてみようかなぁ〜とか思います。
死ぬまでに終わらないでしょうけど‥「足がかりだけでも、この世に置き土産として残したい」と言う思いで進んで行きたいと思います。ありがとうございます。


ヒゲジジイのお返事:最初からホースを持ち出すべきだったかもしれませんが、小生にはミミズの逆さ剥けの方がしっくりします。その点では、「ちくわ」はその中間で、ほどよいイメージかもしれませんが、やっぱりミミズが好きです。

 東洋医学世界の思考訓練では、先生と同様、小生も自分なりのイメージをゆっくりと構築する流儀です。まったくイマジネーションの世界で、時に適当なところで妥協しないと、矛盾地獄に陥りそうになることもあります。

 昔は、思考追及に妥協できなかったのですが、昨今は考え抜いた後、疲れが出て適当に妥協してしまいます。明らかな老化現象だな〜〜〜とがっくりくるのですが、でも、この年でHTMLやCSSを手打ちで打てるのだから、まだまだ頭の中は、まんざらではないのかも〜〜?とみずからを慰めています(苦笑。