御質問者:東海地方の内科医師
前略 いつもお世話になります。
小生の血圧が一時落ちついていましたが、この1週間ほどですが上昇傾向にあります。
患者さんの数からいってさほど忙しくはなく仕事の要因は考えにくいかと思っています。
舌はごく薄く黄色苔でしょうか(微妙です)。排便はちょっと硬い時期があり潤腸湯を夕食のときに1包飲んでいて、多少やわらかい排便です。
ほかに釣藤散2包(朝夕)啓脾湯2包(朝 夕 おなかの具合を壊して下痢になったときに服薬してつづけています)を服薬してます。
それから八味丸を10丸飲んでいます。
この前天気が悪かったときにひさしぶりに頭が重かったです。
何かお気づきの点があればご助言ください。素人知識的にニンジンは血圧に影響を及ぼすと理解していますが、あまり影響はないと思いますがいかが、この点もお教えいただけますと幸いです。
お返事メール:人参は血圧を上昇させる作用が優れているっ!ので高血圧の人には慎重に用いる必要があります。
釣藤散の場合でも本来は党参(トウジン)を配合すべきだと愚考していますが、融通性の無い日本の漢方業界では軒並み人参が配合されています。
ですからどうしてもこの人参が釣藤散の降圧効果を弱めているのは明らかです。
そのお陰で、昨今、血圧が正常な二十代の男女にも杞菊地黄丸と併用してもらう機会が多く、好評を得ていますが、中年以降の高血圧患者さんに使用する場合には、配合中の人参は邪魔で、血圧上昇作用のない党参のほうが無難であり、この方が血圧降下作用をより発揮しやすいようです。(追記:煎じ薬中心の仕事をしていたころに、しばしば確認済み。)
また、併用されている啓脾湯(ケイヒトウ)中にも人参が含まれていますので、人参がダブった分、血圧に対する効果を相殺してしまっていると感じます。
小生などは、以前から愛飲していた朝鮮人参入りの医薬品ドリンクを、某メーカーが訪問する度に、HP制作のアドバイスの謝礼として置いて行ってくれるのですが、昨今、それを服用すると一気に血圧が上昇してふらつき、服用することが出来なくなりました。
なお、ブログにも書いたことですが、夜食を止めるだけでも小生は血圧がかなり安定し、10日間で2Kg減量できたほどです。食事量の減量の絶大な効果を感じています。
下関でも月曜日は雨で、そのときはさすがに頭が久しぶりに重かったのですが、釣藤散をやや多めに服用することで翌日には治りました。
先生の場合も、釣藤散は1回に1包として1日3回服用とし、啓脾湯は中止されるべきかと思います。
八味丸も腎の陰陽両虚が明らかであれば必須でしょうが、地黄は意外に腸を緩める場合があるので、猪苓湯(これも下痢を治すことがあるのは傷寒論にも記載があるほどですっ!)や五苓散など、他の処方を探してみられてはいかがかと思います。
釣藤散合猪苓湯というのも味のある配合です。腎陰陽両虚があきらかであれば、八味丸の少量を釣藤散などと同時に併用するほうがバランスが取れやすいものと思います。
人参はやはり、人によっては少量でも血圧を上昇させますが、例外は釣藤散や半夏白朮天麻湯、牛黄と人参の配合など、これらのケースでは人参の血圧上昇作用を打ち消していますので無難なようです。
折り返し頂いたメール:さっそくのご助言ありがとうございます。ニンジンを控えるかたちで考えてみます。
2008年05月22日
高血圧における人参配合上の注意点について
posted by ヒゲジジイ at 18:36| 山口 ☁| 高血圧
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