東洋医学的に症状を考えると、一々肯けるものがあり、徐々に漢方薬に切り替えられるものならと、医師の診断、投薬を頂き、服用いたしましたが、直ちに下痢、水状の下痢で已む無く中断、又、元へ戻ってをります。
服用薬は●ム●の24と103、次に65を服用、今は完全に西洋医学薬のみです。東洋医学による、治療は無理でしょうか?
(ヒゲ薬剤師注:24は加味逍遙散、103は酸棗仁湯、65は帰脾湯)
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
漢方薬を服用してかえって不快症状が出てくる場合は、当然、出された方剤が貴女の身体に合ってない証拠であることは、もちろん言うまでもないことです。
どうして、このような事態になるのか、と言えば、いくらお医者様といえども、漢方薬に対する知識が不足していた可能性が高いのです。
理想としては、真の意味の漢方のお医者様に見て頂くのが一番ですが、日本の現実は、大変言いにくいことながら、医療用漢方を使用される医師にそれだけの実力をお持ちの方は、日本全国にかなりおられるにせよ、絶対数から言えば、僅少と言っても過言ではありません。
要するに、お医者様の選択を誤られていると断言しても間違いないでしょう。
貴女は大都会におられるのですから、探せば漢方に造詣の深いお医者様を見つけることは不可能ではないはずですが、その見分けはなかなか大変でしょう。
次善の策としては、通える範囲で、漢方を専門にされている、しかも中医学にも詳しい薬局に相談してみるのが良いかもしれません。
実際のところ、小生の身内は子供を含めて、内科系や小児科系の医師ばかりがたくさん、本当に沢山いますが、医療用の漢方の使用状況を常々報告を受ける話は、これも言いにくいことですが、聞くに堪えません。
多忙なお医者さんたちは、よほどでない限りは、思う存分、専門外の漢方を勉強する暇に乏しく、結局は医療用漢方を製造されるメーカーの外交員のアドバイスに従って使用しているだけ、という先生方がいかに多いことか!
エビデンス漢方というと、一般の方には理解しにくいかもしれませんが、病名治療的な漢方投与をされているのが現実ですから、大変間違いが生じやすいのです。
それくらいなら、現実としては漢方専門薬局を訪れ、保険が利かないことは我慢されて、じっくりと相談されて適切な漢方薬の配合をアドバイスしてもらったほうがはるかに無難です。
もともと、貴女のような不定愁訴は、漢方が得意とするところなのですから、漢方に造詣の深い専門家に相談されれば、これまでのような不愉快な症状を出さずに、適切な漢方薬がもらえていたはずなのです。
医者を選ぶのも寿命のうち、と言いますが、漢方薬ならなおさらのことで、現代の医療用漢方の現実は、一部の奇特な先生方は例外として、歯軋りしたくなるような問題ばかりが目に付いて仕方ないのです。
当方では、来局される人の中に、
「病院から漢方薬を出されたけど、全然効かなかった。でも、病院が漢方薬を出すくらいだから漢方専門の薬局のほうが良いに決まっている!」
と言って、勇んでこられる方が結構多いのですが、世間はどうも逆らしく、薬局なんかよりも病院でもらう方が安心だ、という方のほうが多いようです。
この考えは、半分は正しく、半分は間違っている訳です。
理想はそうだが、現実にはそれだけ漢方に造詣の深いお医者様は僅少であるということ、むしろ製薬会社主導の使用方法により、多くの問題を生じさせている、といのが現実なのですから。
次善の策としては、近隣の漢方専門薬局で、相談されるほうが、こと漢方薬に関しては、無難であり、よくあった漢方薬を提供してもらえる確立がかなり高い、ということです。
漢方専門薬局では、自費の漢方だけに、効果が無けりゃ、薬局は途端に潰れるのですから。
大変、長いお返事になってしまいましたが、貴女の御質問を読んで、本心、あることに腹立たしく感じたからです。
またか! という思いなのです。医師の処方される漢方には問題が起こることが比較的多いだけにますます漢方の本来の価値を損ねる、悪いイメージをもたらされる、などに対する怒りです。
実際のところ、漢方医学・薬学、中医学・中草薬学など、世間で思われるほど、安易なものではなく、相当に勉強して熟練していなければ、ピンと外れの方剤ばかりが出てくるのがオチなのです。
さいわい、間違っても合成医薬品ほどの激しい副作用は、稀にしかないことですので、下痢程度で済んだのです。
かならず、ご近所で、いい先生を見つけて下さい。まともに漢方を勉強されている先生と御相談されれば、貴女の身体によく合った漢方薬を必ず見つけてくれる筈です。
以上、お返事まで。
頓首
折り返しお礼のメール:ご丁寧なご指導ありがとうございます。
誠に先生の仰言る通りで、きっと昔からの大きい薬局で、細かく調合して貰うのが一番良いのかなと思います。
国保の保険料を払って、自費診療を受けるのも、年金生活者としては、つい保険診療に走ってしまって、歯の治療等にも主婦としては、肩身のせまい思いで受けてをりまし
たので、中々踏み出せませんでしたが、ご意見に勇気を得て、近くを探してみようと思います。
貴重なご指導を頂き、誠に有難うございました。
【関連する記事】
- ワクチン接種を拒否せざるを得ない事情
- 目の下や唇の痙攣に対する漢方薬は、病因・病機によって異なるので、他の疾患と同様、..
- 急性外感病など急性疾患に見舞われたとき、日頃から常用している漢方薬類は・・・先急..
- 故張瓏英先生の著作物についてのご質問など
- いつも書いているように関東地方こそ、漢方薬局が犇めいているはずだが(多汗症のご相..
- 漢方の専門的知識の教授依頼
- 返信不可能な問い合わせメールがあまりにも多過ぎる
- 主訴が胃症状の場合は、しばらくは胃症状に対する漢方薬にだけに絞り込んでもらうべき..
- あらゆる薬に胃もたれを生じる虚弱体質者からのご相談
- 焦りは禁物
- 村田漢方堂薬局では「強迫神経症」を含めた精神疾患は最も不得意分野ですが、他所の漢..
- 芍薬甘草湯は、別名「去杖湯(きょじょうとう)」とも呼ばれ、朱氏集経方に「脚弱力な..
- 出された漢方薬が疑問であれば、遠慮せずに購入されたところで質問すべし
- 昨日の続き:中国の医療事情の一端
- なかなか見つからない頼れる漢方薬局についてのご相談
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯は「しもやけ」の代表的治療方剤でもあります
- そりゃ〜お返事は、あり得ません
- 漢方薬局のかかり方
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯は「しもやけ」だけのチャチな漢方薬ではありません
- 健康補助食品の乾燥ミミズ(田七人参含む)を服用して熱証から強烈な寒証に転じた人か..