2008年02月21日

アトピー性皮膚炎の漢方治療に欠かせない食事制限

おたより:東海地方の内科医師

 久しぶりにメールさせていただきます。二点ほど感謝のご報告です。
 まず個人的な報告から。血圧・頭痛などに対して釣藤散・補腎薬を服薬しています。一昨年から花粉症になってしまいましたが、今シーズンは1週間でやり過ごすことができました。ありがたいことで感謝しています。

 自分の周囲にもいままで花粉症とは全く縁のなかったかたが、突然鼻水・くしゃみで花粉を発症してしまったとのお話をよく耳にします。ある知人のかた(山歩きが好きなかた)のお話では、「近場の手ごろな山に登ってこの地域を見渡しとときに、驚いた。以前では見受けられなかったことですが、都市の上に濃い雲のようなものが乗っていた。空気が汚染されているのは間違いないようだ」とのことです。

 私の父親もたまにその都市に出かけますと、帰宅した夜には必ず咳が悪化するそうです。この地域にもしっかり大気汚染が進行していりるようです。個人的な見解ですが、大気汚染が花粉とか喘息などの症状に関与しているのではと愚考した次第です。まったく住みにくい状況になってきたものです。

 もう一点はアトピーの患者さんについての感謝の報告です。12歳の男の児童ですが(数年の経過でステロイドを使用して軽快しては悪化の繰り返しだそうです)、それはひどい全身性の病変を抱えて母親とともに悲惨な表情で受診なさいました。お母さんによりますと、夜間のあまりのかゆさのために、一緒に寝ているおばあちゃんが掻いてくれているそうですが、毎晩のことで不眠になり調子がおかしくなってしまったそうです。

 詳しくは記しませんが(一応企業秘密かもしれないので、笑)、清熱剤・猪苓湯・茵蔯蒿湯(インチンコウトウと)補腎薬を処方しました。一時ステロイドの減量にともない、発疹はかなり悪化しました。悪化したときにはステロイド外用薬を適時必要な部位に塗るように説明しました。

 約1ヶ月して、やや発疹が落ち着き始め、2ヶ月目にはかなりかゆみが軽快し、発疹もキレイになってきました。この時点でステロイド外用薬は離脱できたそうです。そして、3ヶ月目には初めて診せていただいた発疹はウソのように改善し、本人は余裕の表情でした。

 何よりお母さんの喜びようがすごかったです。くわえて、おばあちゃんの不眠も解消し、お元気になったとのことです。おそらく、お父上とかおじいちゃんも心配なさっていたと想像できますので、漢方薬がアトピーを劇的に改善させ、このご家族に福音をもたらした印象です。

 注目できることとして、初診のときに食事にも十分注意してください(スナック菓子とか清涼飲料水を控えるように)とご説明したのですが、この児童はスナック菓子と清涼飲料水を絶ったそうです。よほど症状がきびしくつらかったものと思われます。
 しかし、見上げた根性です。脾と腎の手当てが極めて重要であることを改めて認識させられました。
 教科書的には皮膚の炎症(熱・湿)などに焦点を向けた方剤が有名ですが、本治的にはその背後にあるバランスの乱れを修正することの重要性をご助言くださった村田さんに深く感謝し、患者さんご家族に代わって御礼申し上げます。


お返事メール:おたよりありがとうございます。
 この度ご報告頂きましたアトピーの児童さん、漢方処方の配合もさることながら、嗜好品の制限がいかに影響力が大きいかを証明された典型例のように拝察しました。

 食糧が過剰な飽食社会で増え続けるアトピー性皮膚炎患者さんは、小生の観察するところ、相対的に痩せの大食い、ギャル曽根ちゃんモドキの男女がその8割以上を占めるのではないかと見ています。
 村田漢方堂薬局でも、大食を止めたアトピーの成人男女がともにかなりな成果が出ている人が目立ちます。

 以前、ブログでも取り上げた正月をきっかけに食事量を人並みの一食分に減らした男性の例では、昨年5月、村田漢方堂薬局に来るまで2年間、ステロイドを毎日塗り続けても暴れまくり、自殺を考えていたと語るほど全身に皮湿が蔓延していました。
 鼻炎も合併しており、漢方薬は黄連解毒湯・辛夷清肺湯・瀉火補腎丸・インチンコウ湯・猪苓湯・地竜・天津感冒片(2錠)・イオン化カルシウム、透明な鼻水が出るときだけカッコウショウキサンの頓服(一週間1〜2回のみ)ですが、正月をきっかけに食事を人並みの一食だけに制限したお陰で、今年になってステロイドの使用が皆無となり、保湿剤としては紫雲膏がピッタリ効くようになり、見かけ上は全身、ほとんど完治の様子に見えるくらいになりました。(この派手な配合の上に、さらに治療を徹底したいと体質改善三点セットまで所望するくらいのファイトマンですが、せっかく安定しているので、これ以上、加える必要もなさそうです。
 但し、菓子パンなどでも一つ食べただけで一時的に痒みが出てくるので、甘いものは敵だとして、菓子類を一切断つほどの勇者でもあります。

 ご報告頂いた児童さんも、

 注目できることとして、初診のときに食事にも十分注意してください(スナック菓子とか清涼飲料水を控えるように)とご説明したのですが、この児童はスナック菓子と清涼飲料水を絶ったそうです。

という勇気ある者だけが、真の改善が得られることを世の中のアトピー性皮膚炎で悩まれる多くの人に知ってもらいたいものです。

 そのほか、女性達も大食を止めることによって明らかな進歩を得ている人が続いていますが、甘いものが止められない人も多く、少し治りかけると変に洒落っ気が出て、茶髪を再開して、せっかく消えていたアトピーを真っ赤に再燃させる馬鹿な人もいます。

 茶髪による遅延型アレルギーの問題を強く指摘しても、馬耳東風の◎◎が後を絶ちません。実に困った女性達です。

 先生のご経験では、茶髪とアトピーの問題はどうとらえられているでしょうか?
この点についてもご見解をご教示願えればさいわいです。


折り返し頂いたメール:ご指摘の茶髪の件ですが、個人的にはあまり注意していませんでした。当クリニックには私の記憶の範囲ではあきらかな茶髪のかたが受診なさっていない感じです。もちろん、かるく脱色なさっている患者さんはみえますが。今後すこし注意して観察してみたいと思います。

 関係あるのかどうかよくわかりませんが、美容師のかたにおかれましては、接触性皮膚炎、これは遅延型のアレルギーを理解していますが、ほぼ99.9999・・・%の方が手から前腕部にかけて皮膚を荒れしておられます。
 シャンプー、使用するものの影響があるのかもと愚考しています。最近では黒い髪の毛のかたをお見受けすることがめっきり少なくなりました。

 かえって黒髪のかたのほうが目立つ印象です。世俗的な注目を希望なさっているのでしたら、黒髪を考慮してみるのもひとつの方法かもしれません。
 このようなアカデミックなブログの内容としてはふさわしくないかもしれませんでした(笑)。これも世相というものでしょうか。


折り返しヒゲジジイのお礼のメール:大変貴重なご見解を提示して頂き、ありがとうございます。

 確かにご指摘の通り美容師さんたちに多い接触性皮膚炎、看護師さんや介護師さんたちにも見られる接触性皮膚炎、手から前腕部にかけて・・・そういえば古方派時代には温経湯を用いて様々な手の湿疹類を治した経験例を拙著「求道と創造の漢方」(絶版)に掲載していますが、不思議なことに最近は手の湿疹に温経湯を用いる機会が激減しているように感じます。

 黒髪については、これこそヤマトナデシコの象徴、猫も杓子も茶髪で何の個性か、本当のオシャレを知らないおめでたい日本人ばかりが目立ちます。
 ご指摘の通り、昨今では黒髪こそ斬新なオシャレとなってしまいました!

 アカデミックどころか、結局はヒゲジジイの毒舌に終わってしまいそうで恐縮です。
 ありがとうございました。


【編集後記】 ブログに転載することも忘れて、本音のメールで「馬鹿」という言葉を連発してしまったが、馬鹿なヒゲジジイは、過去、タバコを止めずに喘息を治してくれと依頼する男性に、そういう条件なら根治は難しく期間もかかることを覚悟で、中途半端に終わるかもしれないが、という条件で、タバコを止めないまま喘息発作がでない体質に改善できた例がある。90歳を超えるまで、二度と発作も起こらず天寿を全うされた。

 最近でも、四十代の男性が、喘息発作が起こらなくなった途端、タバコを再開したが、既に二年間以上発作がでず、自己責任だから多めに見てあげている。

 タバコは「哲学の煙」だからといって理解を示しているわけではなく、無理な条件を提示された場合は、不十分な改善しか得られないことを覚悟の上なら、依頼者の自己責任で、あとあと苦情を言わない条件で行っただけのことである。

 アトピー性皮膚炎の場合でも、大食や甘いものを止めたくないので、漢方治療が不十分に終わっても自己責任で、あとあと苦情を言わないという約束が出来る人なら、漢方薬をお出ししてもよいのである。茶髪の場合も同様である。

 但し、通常なら半年から一年もあればかなり寛解するであろうところが、きっと3年以上の期間はかかるのではないかと思われる。

 当然、一定の寛解を得ても、徹底的な体質改善を要するので、上記のタバコを止めずに気管支喘息の漢方治療が成功した人たちのように、いつまでも延々と漢方薬を続けざるを得ないことになるだろう。
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posted by ヒゲジジイ at 00:41| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする