昨日の冬の裸足生活者のブログは、とても反響が多かった。現在、六味丸を服用中の人から、意外にも寒い冬にもかかわらず自宅では裸足生活が日常だが、自分は瀉火補腎丸の方がよりフィットするのではないでしょうかというご質問ばかりでなく、すでに瀉火補腎丸を服用されている人からもおたよりがあった。
【補注:瀉火補腎丸=知母地黄丸のみならず三物黄芩湯(サンモツオウゴントウ)証の場合もある。】
おたより:北陸地方の鍼灸師
前略
お蔭様で腰は大分楽になりました。今朝のブログ私もその一人ですね(笑)
やはり、瀉火補腎丸を使用するということは、腎陰の虚が激しいということでしょうか?
自分は小さい時から、靴下をはくのがいやで、夜など足が火照って寝れないことがしょっちゅうでした。
先天的な問題というか、素因なども考えられるのでしょうか?
お返事メール:ほとんどの子供は本来、稚陰稚陽で、陽に傾きやすく六味丸証がベースにありながら、五臓六腑それぞれに寒熱虚実に個性をあらわすものと思われます。
言い換えれば、六味丸的な陰虚火旺の性質を持つのが幼児・子供の本性のはずですから、その後の生活環境によって、陰虚火旺・虚火上炎の知柏地黄丸証にまで発展するかどうかが左右されるように思われます。
環境因子が大きいのではないかと思います。
多くの子供は、靴下を履きたがらないことからも、総じて子供というものは稚陰稚陽で、陽に傾きやすい六味丸証を持っていることが言えるはずです。
ところが、昨今は大人になるにつれてますますエスカレートし、虚火が益々熾んになって瀉火補腎丸を必要とする人達が年々増え続けているように感じています。
つまり、子供の頃は冬でも靴下を脱ぎたがる傾向があった人でも、大人になるにつれて靴下を必要とするように稚陰稚陽も適度に安定に向かうものでしたが、昨今は成長するにつれ六味丸証よりも虚熱の勢いを増す人が増えているように思われるのです。
この現象が中年に差し掛かって、生理が終わった以降にガラリと体質を変え、若い頃の足冷えが一転、裸足の生活を好む野蛮化(苦笑)の道に嵌った人々にもしばしば遭遇する昨今です。
子供の場合は裸足の生活を好むからと言って、アトピー性皮膚炎でもない限りは瀉火補腎丸を使用すべきではなく、子供は稚陰稚陽なので、穏当な六味丸を主体に考慮すべきですが、大人の場合では同じ裸足生活人間ともなると、虚熱が強烈なことが多く、虚火上炎と言われるように、顔面紅潮や眼の充血や寝汗などが顕著に併発している人もあるくらいです。
蛇足ながら、愚妻も中年以降は突如として瀉火補腎丸の愛用者となっていますが、小生の場合は、冬ともなれば靴下をこよなく愛しております。奥ゆかしく上品な人間ですので(苦笑)。
【編集後記】 上記の赤文字部分を補足すると、稚陰稚陽というよりも稚陽稚陰として中医学世界では定着した熟語であり、子供の体質的な特徴を清の時代に呉鞠通が『温病条弁・解児難』で記した次の論説が出典である。
小児稚陽未充、稚陰未長者也。つまり「小児のおさない陽はまだ充実しておらず、おさない陰は成長していない。」というものである。
また、古くは朱丹渓が
陽常有余、陰常不足という小児の生理的な特徴を述べている。
つまり、小児は常に陽が有り余っており、陰は常に不足しているという意味である。
これらによっても分かるように、子供たちが靴下を脱ぎたがるのは当然の理であり、足が火照って家では真冬でも裸足で平気であっても何の不思議はないわけである。大人とは根本的な生理特徴が異なっている。
このように、生理と病理方面においても小児は決して大人のミニチアではないということである。
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