自宅に帰って靴下を脱ぎ捨てる人々が増え続けている。この寒い真冬に信じられない行為だが、ご本人たちは至極当然のことと思われているらしい。
足が火照るからなのか、床暖房でもないのに裸足で過ごせるのだから羨ましいといえばウラヤマシイが、中医学的には陰虚火旺を疑わねばならない。
腎陰虧損による陰虚陽亢の六味丸のみならず、これに知母と黄柏を加えた瀉火補腎丸(知柏地黄丸)の可能性が高いのである。
これらの多くの人に、春夏秋の季節に問うた「足は火照りませんか?」という質問には「いいえ、ほてりません。冷えることがあります」と答えた人も多いのに。
「はい、火照ります」と跳ね返るようにお返事された人は、ほとんど即決で瀉火補腎丸が必要であることが類推できるので話は簡単だった。
春夏秋の季節にはちゃんと「冬場で布団の中で足が火照って無意識に冷たいところに足を置くことはありませんか?」という質問にも、否と答えた人が多い。
だから陰虚の存在が確認出来ている場合は、足が火照ると答えた人以外は、疑問の余地なく六味丸を他の併用薬とともに服用してもらって一定の効果は得られていたのである。
ところが、冬に差し掛かるや、たまたま自宅における生活状況の質問から、意外やイガイ、この寒い冬に向かって帰宅するやいなや、靴下を脱ぎ捨てて裸足生活が始まるというのだった。
朝はあさで、出勤寸前までハダシで過ごし、靴を履く寸前にようやく靴下を履くというのである。
六味丸を増強するか、多くは瀉火補腎丸に切り替えることで、アトピー性皮膚炎や高血圧が、一段と寛解する例をここ数ヶ月に何例経験したことか!
地球の温暖化によるものか? 飽食の時代なるがゆえか? 職場環境や生活環境における暖房設備の充実によるものか?
おそらくはそのすべての要因が輻輳しているに違いない。
時代は刻々と変化している。
従来から村田漢方堂薬局における六味丸の販売量は半端ではなかったが、次第に瀉火補腎丸と二分される勢いは止まりそうもない。
但し、六味丸系列の方剤には瀉火補腎丸(知柏地黄丸)のみならず、肺腎陰虚の八仙丸(味麦地黄丸)、肝腎陰虚の杞菊地黄丸などもあるので鑑別が必用である。
【関連する記事】
- 心臓・脳血管・腎臓を守る基本的な漢方薬
- 免疫力・抵抗力・健康維持に実績のある漢方
- 便利な柴葛解肌湯
- 困ったときの柴胡桂枝湯?
- 滅多に奨める機会がなっかった方剤だが、最近になって・・・
- あり得ない合方、とは言えない、大いにあり得る合方
- 懐かしい里帰りが続く
- メマイなど、ストレスの多い時代には
- 夏に多い冷たい飲食物の摂りすぎによる腰痛
- 令和2年の女性達は加味逍遙散がフィットする時代
- 四逆散で人生が、少しは、明るくなる人が多い
- 規定量よりも少量で、十分効果を発揮する一部の中成薬
- ネットでいくら漢方薬を調べても、一定レベル以上の頑固な疾患になると
- ここ数十年は寒鬱化火や湿鬱化火の証候を呈する人が多かったのだが
- 今年の新規相談者は、当然ながら、西洋医学では限界があり過ぎるものばかり
- 衛益顆粒が適応する玉屏風散証体質者は、折々に葛根湯証に変化する人が意外に多い
- 腸管免疫が人間の免疫の8割を占める、と言われるだけに暑いときこそ、必要に応じて胃..
- 消風散の配合内容は、どうしても好きにはなれないのだが・・・
- 四逆散と柴胡疏肝湯
- 猪苓湯は単なる膀胱炎の漢方薬ではない