2007年08月03日

特別デリケートなアトピー性皮膚炎の漢方薬の配合内容と配合比率

 たとえば、ある中年前の男性で、初回は黄連解毒湯・六味丸・猪苓湯(バックアップはイオン化カルシウムのみ)。
 これで顔面の赤味はかなり消失し、痒みも軽減するも不安定。

 次に実験と称して茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)と六味丸に切り替えてみると、黄連解毒湯がないと顔面の紅潮が再発したとて、4日後に再度黄連解毒湯を加え、黄連解毒湯・六味丸・茵蔯蒿湯でしばらく継続すると、消えにくかった身体中すべてに及んでいた湿疹が枯れ始めたと思ったら、雨天に影響してかまた舞い戻ってしまう。

 あえて三種類の方剤以内に限定して無理をしていたが、初回の猪苓湯を復活して黄連解毒湯・六味丸・茵蔯蒿湯・猪苓湯と四種類を揃えると、服用3日後から手の平返したように顕著な効果があらわれ、その7日後には腹部に蔓延していた派手な掻き毟った赤い発疹が、ほぼ全滅して黄土色の色素沈着を残すのみとなる。

 これでほぼ処方の骨格が決定したが、それまで10日毎に通い詰めてもらって68日目のことだった。
 今後は氷伏を警戒して、遅かれ早かれ血行改善と色素沈着除去に効果を発揮する体質改善三点セットのバックアップを追加する必要がある。

 上記の四方剤も、単に処方を選択するだけの問題ではなく、配合比率のデリケートな部分が常に介在しており、極めてデリケートな部分であるから、ここでは記載不能である。現実にヒゲジジイの神経質な漢方相談を受けている者のみがそれとなく看取できる深遠な哲理である(笑)。

 各種製剤の品質問題、同一処方でも微妙に異なる配合比率や配合分量などを計算し、信頼のおける製造元の漢方処方を使用して、御相談者それぞれの体質と病状に応じた適切な配合比率と方剤の選択など、いずれの疾患にも共通して行う分析ではあるが、なかでも特別繊細でデリケートな疾患は、アトピー性皮膚炎の右にでるものは無いだろう!

 二泊三日で来られる遠来の人では、上記のような10日毎に通える人の1〜2ヶ月分の微調整を三日間で行うのだから、長時間の相談を要して、多くの場合かなりなレベル実現しているはずなのだが・・・

氷伏について: 狭義の氷伏は、寒涼薬の過剰投与によって熱邪を一部に閉じ込めてしまう。こうなるとこれまで順調に効果が得られたものが、突然のように効果を失って、いくら継続服用してもまったく効果を示さずに次第に漢方薬服用以前の病状に戻っていってしまう。
 これを未然に防ぐには桂枝などの温性の活血作用の薬物を併用する方法があるが、アトピー性皮膚炎の場合は桂枝では逆効果になることもある。無難なところでは適当な活血化オの薬物を併用しておれば、かなり防ぐことが出来る。インチンコウトウ中の大黄なども代表的な活血化オ薬の一つであるが、体質改善三点セットはもっとも無難な方法である。

 なお広義の氷伏として、寒涼薬の過剰投与によって気血を凝滞させて様々な虚証を誘発する場合もある。もっとも多いのは衛気虚や腎陽の虚損であるが、前者では玉屏風散製剤や補中益気湯など、後者では肉桂や海馬補腎丸などが適応する。
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posted by ヒゲジジイ at 08:55| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする