2007年07月29日

保険漢方を3年以上、相変わらず治らないアトピー性皮膚炎の女性から久しぶりの御質問

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
お問合せ・ご連絡内容 : 1年ほど前メールでアトピーの相談をさせていただいたものです。
 その時のアドバイスどおり、地元の医師にかかり治療しておりました。
 なかなかピントが合わず、苦しい思いもしましたが、今年の2月頃より、桂枝加竜骨牡蠣湯と茵蔯五苓散と荊芥連翹湯の処方で調子が良くなってきておりました。

 ところがここ1ヶ月前位から、痒みが増してきて、医師に相談すると、汗が原因だからということで、黄耆(オウギ)を追加したり、茵蔯五苓散を五苓散や湯防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)に変えたりしました。
 しかし、悪化する一方で、五苓散を再び茵蔯五苓散に戻しましたが良くならず、試しに荊芥連翹湯を止めてみるとひどい痒みが収まってきました。

 そのことを医師に伝えると、そんなことは有り得ない、と言われました。
 今まで良かったものが、急に悪化の原因になることはないのでしょうか。
 以前に温清飲が合わず、痒みと動悸に悩まされたことがあったのですが、それと同じような症状で、自分の体感としては荊芥連翹湯が合わないのではないかと思います。
 もちろん、季節的に、長雨から高温多湿が続いたりして、そういう季節はいつも悪化するタイプのアトピーではあります。

 今回ご質問させていただきたいことは、ピントがあっていた漢方薬が急に合わなくなるということがあるのかどうか、ということです。
 村田先生の患者さんは、ピントが合った後はずっと同じ処方で完治まで行けるのでしょうか。

 私が感じているのは、漢方薬はピントがピッタリ合うととても調子が良くなるのですが、ちょっとずれるとだんだん調子が悪くなり、それでも飲み続けるとアトピー悪化はもちろんのこと、不眠や生理不順などに悩まされるようになる気がします。
 それが私の場合、頻繁すぎるのでしょうか。

 2月から6月まで5ヶ月というのは短すぎるでしょうか。そうだとすると、神経質すぎて漢方薬を服用するのは向かないのかと落ち込む今日この頃です。
 ちなみに今回の処方は十味敗毒湯と温清飲と桂枝加竜骨牡蠣湯です。


ヒゲジジイのお返事メール: 当方のブログの昨年5月、貴女との交信記録が3分の1近くを占めているのをざっと見直してみて、些か驚いている次第です。
 当時でも既に漢方治療を2年間受けておられ、こうして今回メールを久しぶりに頂いて、この時点で既に3年以上が経過している訳ですね!
 それでも一進一退で、あまり進歩が見られないご様子。ご苦労が殆んどみのっていないようでお気の毒です。

 御本人に直接お会いして親しく漢方相談を受けたわけでもないのに、言いにくいことではありますが、これまで受けられている漢方処方の配合の数々は、我々中医漢方薬学派からみれば、滅多に使用しない十味敗毒湯や荊芥連翹湯、あるいは桂枝加竜骨牡蠣湯など、考えられない配合です。
 とりわけ、今回ご報告の「桂枝加竜骨牡蠣湯・茵蔯五苓散・荊芥連翹湯」という三つの処方を配合されるべきアトピー患者さんの体質や病状のイメージを想像することすらまったく不可能です。

 つまり極論すれば、かなり支離滅裂、ヤケクソの配合ではないかと言いたくなるほどです。
 これが保険漢方の限界なのだと言えばそれまでですが、根本的にアトピー性皮膚炎に対する漢方医学的な考え方、あるいは知識や技術の点で、些かの疑惑を持たざるを得ない、と言えば言い過ぎかもしれませんが・・・

 さらには、現在服用中の「十味敗毒湯と温清飲と桂枝加竜骨牡蠣湯」、この配合でアトピー性皮膚炎が治癒するケースがあるとしたら、よほどの名医か、まったくの初心者のいずれかでしょう。
 このような三方剤の配合を必要とするアトピー患者さんを想像することすら不可能に近いのですが、これは小生の想像力の無さゆえかもしれませんが、貴女の過去の配合例をず〜〜〜と眺めて来ても、このような支離滅裂に近い配合を繰り返される限りは、あるいは永久に治らないだろうとさえ思ってしまいます。

 但し、これに類似した漢方投与は日本全国で常識的に行われており、十味敗毒湯や荊芥連翹湯、温清飲・消風散などはアトピーの漢方治療における代表的な治療薬であるとされ、一般教科書的な書物であれ、ネット上の案内でも、さらにはそれぞれの処方の効果・効能にも当然のように湿疹に有効であると記載されています。

 ところが、まったくの少数派意見に過ぎないかもしれませんが、中医漢方薬学派においては、これらの処方は、原則としてどのようなタイプのアトピー性皮膚炎患者さんであっても滅多に使用してはならない方剤の代表格なのです。
 アトピーを寛解させるどころか、悪化させる危険性の高い温性の祛風薬が多く配合されているからです。川芎(センキュウ)などは最も危険な生薬として警戒しています。

 過去には、荊芥連翹湯を御姉妹の子供さんにお二人ともに同一処方をお出しして、一人は有効で一人は悪化という事態、見かけも体質もそっくりさんでもこの通りで、あたるも八卦的な処方は、既に中医漢方薬学派では危険な処方として排除しております。(あくまでデリケートなアトピー性皮膚炎に限定した話ですが!

 昨年のメール交信を再読してみて、自費の漢方には無理がおありとのことですので、残念ながらこれ以上のアドバイスが不能な状況です。
 お役に立てずに残念です。


折り返し頂いたメール:お忙しい中、お返事いただきありがとうございました。
 医師も匙を投げているのかもしれません。下手に漢方薬を使用すると却って症状を複雑化してしまうようですね。
 ほんとうにこの3年で実感しました。
 いつもお忙しい中、親切にご相談にのっていただき本当にありがとうございました。


【編集後記】 ヒゲジジイとてあまり大きな口はきけないが、ことアトピー性皮膚炎に関しては、今回の女性のように地元で熱心に通い詰める状況にある人では3年以上も一進一退を繰り返すなどということはあり得ない話である。
 アトピー性皮膚炎は、中医漢方薬学派にとってはそれほど困難な病気ではない。

 細心の注意を要するものの、熟練すればそれほど難しい病気ではなく、真面目に通われる内に、むしろ一般の人よりもアトピー性皮膚炎の人たちの肌は、本来とてもキメ細かい美しい肌であったことが良く分る。
 それほどデリケートで繊細な肌であったからこそ、体質的な素因と相俟って外部因子に対する影響をデリケートに受け安かっただけで、正統な漢方治療によって正しく体質改善を行えば、本来の美しいキメ細かな肌が取り戻せる現実に、仕事が楽しくなるほど、中医漢方薬学にとってはかなり得意分野であることを長年実証してきたとの自負がある。

 ところが今回の御質問者のように、地元でせっかく熱心に通われていても、中医漢方薬学派からみれば、温性の祛風薬の配合された方剤や、腎陽を強く温補してしまう桂皮の配合された処方を重ねて使用するなど想像を絶する世界である。
 流派が異なるといえばそれまでだが、教科書漢方がそのような記載をされるからなのか?
 (よく調べてみると、この方から初めて御質問を頂いたのは、昨年4月21日掲載のブログ アトピー性皮膚炎の漢方薬の御質問 からであった。

 こういう事情から、頂いた御質問に対するお返事は困難であり、つまり、当方から見れば信じられない漢方処方の組み合わせを服用されている状況では、最早コメントのしようがないのである。

 現実には村田漢方堂薬局には、上記の女性のように保険漢方であれ自費の漢方であれ、各地で漢方薬を何年続けても好転せずに困惑され、結局はヒゲジジイの臨機応変の対処が可能な自費の漢方を求めて、毎月何人もの新しいアトピー性皮膚炎の方が二泊三日の旅程でやって来られ続けている。
一定期間の紆余曲折があるにせよ、ほとんどのケースで1〜6ヵ月以内に明るい未来が見え始めるので、やや自信過剰の表現さえ出てくるのである・・・笑。
 昨日も三日目のアトピーの漢方相談を終えて遠方に帰って行かれたばかりだが、これまでのジンクスでも下関に宿泊された翌日からそれとなく効果が出た例がほとんどである。

 石の上にも三年とは言っても、現実には目に見えた効果というものは意外に短期間で得られることも多いのである。比較的速効が得られた人の場合、こちらがいくら石の上にも三年だと吠え続けても、1年から1年半も経たぬうちにいつの間にか廃薬される。
 そして何年後かに再発して、慌ててやって来られる人もおられるので、しっかりと体質改善を行う上での石の上にも三年という意味も含まれているが、長年のアトピーの炎症に苦しまれて懲りた女性達は、完全寛解後も体質改善三点セットを延々と継続される人も多い。

 但し、自費の漢方薬は高くて続かないという人にはどうしようもない世界である

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posted by ヒゲジジイ at 01:31| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする