2007年07月25日

アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法の精髄?

 アトピー性皮膚炎は他の疾患と異なって、極めてデリケートな皮膚病なので過剰なほどに神経を使う取り扱いに厳重注意の疾患である。
 温和な漢方薬治療においても、多剤併用すべき時が多いので、それぞれの方剤の配合比率の問題はトテモ重要である。
 ピントが合っているつもりでも、各方剤の配合比率の配慮がなされてなければ、不十分な効果しか発揮できないことも多い。常に細心の注意を払って、各種方剤は一部は多めに、一部は微量でと様々な配慮が要求される。
 その繊細微妙な配合に対する反応を微妙に感じ取ってアトピーに対する効果の優劣を報告できる能力が高い人ほど、よりピントの合った配合比率や適切な方剤の入れ替えがスムーズに行えるので能率が良い。
 すべてアナタマカセでボケーとしている人ほど、ピントの微調整が行いにくい。

 しばしば必需品の六味丸系列の方剤だが、足のホテリを感じる人には、六味丸そのものでは効果が弱く、知柏腎気丸製剤でなければならない。
 六味丸に黄連解毒湯の組み合わせで代用できるときもあるが、これに頼っていると、時にトンデモナイ失敗をしでかすことになる。

 例の体質改善三点セットを基礎に知柏腎気丸製剤でシャープに奏効している人に、さらなる治療効果倍増の要求に気軽に応じて黄連解毒湯製剤の通常の半量を加えたところ、せっかくの効果が激減した。
 結果論とはいえ、理由は明らかだった。その人の舌質が紅ではあっても全くの無苔であった。いくら舌が紅であっても無苔の人に黄連解毒湯はないだろう!

 足のホテリの聞き取りは重要である。体質改善三点セットを基礎に六味丸と猪苓湯で順調とはいえ、もう一つパンチに欠けるので、足のホテリにこだわって六味丸を知柏腎気丸製剤に切り替えてもらったところ明らかに治療効果が向上した。
 どこかのブログで日本漢方では六味丸はアトピーには使用しませんと書いている薬剤師さんがいたが、これが日本漢方の限界かもしれない。

 中医漢方薬学においてはアトピー性皮膚炎には効果・効能に湿疹が治ると記載される漢方処方は使用しない。
 その理由は、それらの方剤には温性の去風薬が多く配合されているので、却って痒みを増強し悪化させる可能性が高いからである。

 例外的に銀翹散製剤(天津感冒片など)は涼性の去風剤だから多くの場合は無難である。

 アトピー性皮膚炎がありながら髪を茶色に染めている女性が多いが、理解に苦しむところである。この問題を指摘すると実にイヤ〜〜〜な顔をする人もあるが、困るのは自分の方だろう。

 なお、シバシバ言われる漢方薬によるメンケン、いわゆる好転反応は否定的である。
 治癒機転が働く証拠として一時的に皮膚病が増悪するのは良い反応であるとされるが、これは結果でしか判断できない。だから、疑わしきは罰するのである。
 湿疹治療の効能が記載された温性の去風薬配合の消風散や十味敗毒湯などでアトピーが増悪するケースは日常茶飯事であろうが、あれは好転反応ではなく、多くは悪化させているのである。(だから中医漢方薬学派ではこれらを絶対にアトピーでは使用しないのである。

 配合上で治療効果にブレーキになるような方剤が見つかった時にも即、中止してもらう。上述の瀉火補腎丸(知柏腎気丸製剤)を増強するつもりで追加した黄連解毒湯のケースもその典型である。
 最近、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)と黄連解毒湯とイオン化カルシウムに粉末大黄で好転しつつある人に、ゴツゴツと隆起した部分の水湿を除去するために猪苓湯製剤を追加したところ却って効果を激減させたので、珍しく猪苓湯製剤を中止してもらった。
 希有のことであったが、アトピー性皮膚炎においては疑わしきは罰しておいたほうが無難なのである。

 なお、実火知柏腎気丸証の熱は虚火であり、黄連解毒湯証の熱は実火であり、似て非なるものであることは常識であるが、一人の身体で混交していることも珍しくないから、その区別を見分けるには綿密な漢方相談を必要とするのである。

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posted by ヒゲジジイ at 01:16| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする