2007年07月23日

麻黄剤=麻杏甘石湯の継続使用の問題について

おたより:東海地方の内科医師

 最近この東海地方は急に蒸し暑くなってきせいか、アトピーの新規の患者さん(児童が多い)が受診されます。
 村田流の中医漢方薬学的治療ですこしでも改善していただければと思い、暑さゆえに思考力の低下してきた(笑)脳にカツを入れております。でも、着実に改善してゆかれる様子を見ることが多く胸を撫で下ろしています。

 近況報告でしたが、本日のご助言いただきたいことは、漢方薬を投与して改善し症状が全く消失してしまったあとの投薬の継続あるいは中止についてです。

 具体的には喘息の患者さんです。78歳の男性と16歳の女性です。いづれも炙甘草湯合麻杏甘石湯と補中益気湯合六味丸で症状は完全にコントロールされています。両名とも冬に増悪するようですが、現在は夏ということもあってか落ち着いています。
 78歳のかたはともかく、16歳のかたはできれば中止したいとの意向をお持ちです。

 継続にあたって注意することはどうでしょうか。とくに、麻杏甘石湯の場合、石膏がちょっと気になります。

 それから以前ご相談いただいた子宮筋腫の女性ですが、定期的に処方してフォローさせていただいています。触診の範囲では、治療開始当初観察されていた下腹部の腫隆はあきらかに縮小しているようです。婦人科でもホルモン療法を受けておられますが。現時点では正と邪を指向した治療(中医漢方薬学的治療合ホルモン療法)が効果を現している模様です。


ヒゲジジイのお返事メール: 最近、同年代の友人や注目していた学者さんが倒れられたことを知る機会が続き、人生の短さについて考えさせられています。
 チヌ釣り場での友人、同年の男性が3年音沙汰が無いので心配していましたら、3年前にたおれて再起不能であるとのお手紙を代筆の奥様から頂いて落ち込んでいます。昨日のことです。

 もう一つは、戦争続きの大長編で・・・・・・・・・サンスクリット原典語訳の「マーハーバーラタ」をちくま文庫が完結しないので不思議に思いっていたところ、遅れて入手した8巻目の巻末で、訳者の上村勝彦氏が58歳の若さで4年前に急逝されていたことを知り、身近?なところで五十代でたおれる人の話が続くと、明日は我が身かと覚悟を決めているところです。
 先生も既に五十代?、診療には無理をなさらぬよう・・・と、ちょっと暗い話で恐縮です。

 本題に入りまして、喘息体質は短期間で根治できるはずもありませんので、16歳の方も更に長期間、たとえ断続的にでも継続すべきだと思います。

 但し、ご指摘のとおり麻杏甘石湯のみ、寛解期には休薬しておくべきだと思います。理由は石膏の問題よりも、麻黄の問題です。エフェドリンを主成分とする麻黄は、長期連用によって効果が激減すると言われています。それゆえ、寛解期には中止しておくべきだと中医学でも指摘されています。
 そしてその寛解期には本治法として、麻杏甘石湯以外の方剤を継続使用されるべきです。

 中医学的には、喘息の場合は六味丸のところをさらに五味子と麦門冬を加えた肺腎陰虚を治療する味麦腎気丸(製剤では八仙丸)を使用するのが通常ですが、もちろん六味丸でも充分体質改善が可能です。併用されておられる炙甘草湯にも麦門冬が配合されていますので、杓子定規に味麦腎気丸を使用する必要も無いと思います。アトピー性皮膚炎の場合も同様です。

 麻杏甘石湯は、標治法の方剤ですので、まったく発作が起こらなくなっているのでしたら、麻杏甘石湯だけを一時休止し、運悪く発作が再発するようでしたら、その時にはすかさず再開されるというのが、一般的な公式見解だと思います。

 麻黄剤については以上が中医学の教科書的な公式見解なのですが、小生も標本同治法が好みですので、小生自身のやり方(中医漢方薬学流)では、麻杏甘石湯の配合分量を少量に落として継続使用してもらった方が安心であり、体質改善もスムーズに行えるように感じています。


折り返し頂いたメール:早速のお返事、いつも感謝しております。昨日メールをしたところですが、今朝、78歳のかたから。冷房が良く効いた部屋のなかで調子を崩していまった、と連絡がありました。結果として麻杏甘石湯を逆に増量しました。
 16歳のかたは標治薬を次第に減量してゆきたいと思います。
ありがとうございました。
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