2022年06月21日

いまさらながら、強く実感する初版本の問題

 書籍マニアの世界では、いまだに初版本が重宝されているのかもしれないが、いまさらながら、往々にして初版本には大きな問題がある。

 超有名な個人作家の初版本でも、大いにあり得ることだが、初版本には往々にして誤字脱字が付き物で、重版で間に合わなくとも、何度か版を重ねるうちに誤字脱字は解消される利点は大きい。

 文学作品など、高名な作家の作品であれば、誤字脱字の問題よりも初版本というものに価値を見出すのは分からぬでもないが、これが一般向けであれ、専門家向けであれ、学術的な書籍では大いに困ったことになる。

 たとえば張瓏英先生の名著『臨床中医学概論』は、せっかく優れた内容であるのに、誤字のオンパレードで困ったが、その何年後かに、同じ内容で出版社と書籍名を変えてリバイバルされた『新編・中医学 基礎編』では、すべて修正されているものと信じたい。

 これら自分の専門分野の書籍の問題はともかく、ここからが本題でもある。

 日本史の名著、中央公論社時代の『日本の歴史 全26冊+別巻5冊=合計31冊』は、1965〜1967年(昭和40〜42年)くらいが初版であるが、一般向けのベストセラーとなり、長く版を重ねること想像を絶するほどで、簡易包装版の中公バックスや文庫本にもなっている。

 のみならず、何年か前にも新装改版された文庫本も出版され、いまだに書店で新刊文庫として販売されているほどの名著の数々である。

 実際に内容は、小説を読むようにそれぞれの筆者の個性あふれる名文に遭遇して、我を忘れて没入できる数々で、それは同じ出版社による『世界の歴史 全17冊』と同様で、当時の学者さんたちの知識と表現力には、いまさらながら驚かされる。

 これが『世界の歴史』であれば、個人的には少々の誤字脱字は許せるのだが、日本史に関しては、漢字の間違いや読みの間違いは大問題なので、必ず何度か版を重ねて誤字脱字がしっかり修正されたものでなければならない。

 手元には初版の全31冊も、何度も数十版を重ねた全31冊も、ともに所持している理由は、誤字脱字の問題があったからである。

 実際初版のものには、途中からだったか、誤字脱字の正誤表が添付されているが、これを眺めているとため息が出るほど、初版には誤字脱字などが溢れている。

 ということで、初版の出版物なんて、実際には誤字脱字のオンパレードという問題を免れないのだから、とりわけ日本の歴史書関連では、できるだけ初版は買わないよう心がけている。
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2009年6月21日のボクちん(5歳)
2009年6月21日のボクちん(5歳) posted by (C)ボクチンの母
ラベル:初版本
posted by ヒゲジジイ at 14:20| 山口 ☁| 繊細でデリケートなヒゲジジイ | 更新情報をチェックする