ところが、一貫堂医学の中島随象先生は、1970年前後に開催された第21回日本東洋医学会総会研究談話会『癌と漢方治療』の中で、先生ご自身の経験から、乳癌や乳腺症には牡丹皮の入った処方は、増悪させることがあるので注意を要する、と警告されている。
ところが、この発言の前に、相見三郎先生が、過去、乳癌を桂枝茯苓丸(牡丹皮含有)で治癒せしめた経験を数例紹介してきたなどと、ハリー・エドワーズもびっくり仰天の様々な各種癌の臨床経験を他にも多数紹介されていた。
また、渡辺武先生も、生薬の制癌作用の動物実験で人参・柴胡・黄芩・黄連・芍薬・牡丹皮・薏苡仁・藤瘤・猪苓など、牡丹皮にも延命効果と細胞効果が認められたと述べられている。
ただ、その後も中島随象先生は、乳癌に牡丹皮は使用するなとお弟子さん達に強く言い残されている。
中国医学の各種書籍では、乳癌治療の筆頭に「逍遥散加減」と記載されるものが多いが、証侯によっては牡丹皮を用いた配合が、まったく無いわけではない。
とはいえ、ふと思い出してみると、この中島先生の遺訓を知る前までは、ホットフラッシュ的な症状のある人には、乳癌でリンパ節転移のある人にも、肝臓転移の末期癌の人にさえ、あるいは石灰化の沈着により癌化の心配を指摘されている人にも、加味逍遙散を主体に各種中草薬を飲んでもらうことで、十分な成果を得ていたのだった!
中島先生の指摘されているような不都合は、一度も経験するどころか、むしろ素晴らしい経過を辿った人ばかりを思い出す。それには多種類の中草薬類の併用、たとえば男性ホルモン様作用のあると言われる麝香などの配合薬などの貢献も大きかったかもしれない。
ともあれ、最初に述べたように、昨今、ネットで乳癌によい漢方薬を検索すると、加味逍遙散が紹介されることがあるのも無理もない話かもしれないのである。
しかしながら、高名な中島随象先生のお弟子さんに代々伝わる「乳癌に牡丹皮は使用するな」という遺訓を知ってからは、私自身、加味逍遙散は使わず、逍遥散や四逆散を主体に各種中草薬を加えることで、その後も、加味逍遙散の使用時より以上の、かなり優れたサポートを実現している。
すなわち、私自身は、中島随象先生の呪縛が解けないまま、乳癌サポートにはここ長い間、中医学の書籍でも推奨される逍遥散主体の配合や、あるいは四逆散などを薦めても、子宮癌や卵巣癌に加味逍遙散を薦めることがあっても、乳癌にだけは加味逍遙散は推奨しないのである。
ところで、考えてみれば、上記のように牡丹皮が含まれる桂枝茯苓丸で数例の乳癌の治験を報告されていたという相見三郎先生にしても、制癌作用の動物実験の報告をされておられた薬学系の渡辺武先生にしても、当時は中島随象先生に負けず劣らず高名な漢方家でおありだったのに、中島随象先生の遺訓だけにここまで拘泥するとは、もしかして、あらずもがなの呪縛なのかもしれない。
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2009年6月16日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母
ラベル:中島随象
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