過去、2012年7月に、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の中医学的分析 と題して、主として四川科学技術出版社発行の「中医方剤与治法」を参考にしながら、補中益気湯について記したブログ記事がある。
まだまだ血気盛んなエネルギッシュな時代に勢いに任せて書いているが意外に理解しやすいように思う(笑。
脾虚気陥の病機にもとづいて考案された益気昇陥法の代表的な方剤がこの補中益気湯。応援のクリックをお願いします
脾胃は中焦に位置し,気機が昇降する要衝なので、脾虚気陥を生じると,上部では息切れがして話すのも億劫になり、呼吸が苦しくなる。
また下部では子宮脱や月経過多となり、あるいは悪露が尽きないとか、小便が終わってもいつまでもチビリチビリと少量の尿が漏れ出てしまうなど。
さらには不正性器出血や帯下、小便の失禁があったり、あるいは逆に尿閉となるなど。
気虚による機能低下から来る便秘が生じたり、その逆に慢性の軟便が頻繁に生じたり下痢があったり、あるいは内臓下垂による脱肛などの症状が現われる。
いずれも中焦の気を補い下陥した陽気を昇挙して気機を正常に回復させる必要があり、配合方剤には補気健脾を土台として升麻・柴胡などの升陽薬を配合する必然性が生じる。すなわち補中益気湯である。
補中益気湯の特徴的な作用は,下陥した清陽を昇挙するもの。
清陽下陥により陽気が内鬱すると,身熱〔身体の熱感〕・自汗・口渇があり熱い飲物を好む・脉は大で虚などの仮熱の症候が現われる場合があるので,補中益気湯を用いて下陥した清陽を昇挙し,清陽を上昇させて陽気が外達すれば,熱象は解除される。これが「甘温除熱」のメカニズムでもある。
また補中益気湯は不正出血や痔出血、潰瘍性大腸炎の出血など、人体の下部で生じる各種出血性疾患に応用されるが、そのメカニズムは・・・・
人体の血液が経隧中を正常に運行して経脉から外溢しないのは,脾気の統血・摂血作用によるものである。「脾は統血を主り,気は摂血を主る」と言われように、脾虚気陥によって統血・摂血作用が失調したために人体下部から生じる各種出血性疾患に対する治療効果を発揮する。
ところで、日本で使用される補中益気湯の配合内容は、人参、白朮 各4.0 黄耆、当帰 各3.0 陳皮、大棗 各2.0 柴胡、甘草 各1.0 乾生姜、升麻 各0.5というように黄耆(オウギ)の配合量が少ないものや、止汗作用のある白朮(ビャクジュツ)が発汗作用のある蒼朮(ソウジュツ)で代用された製剤もあるが、これらはいずれも問題なしとしない。
さらには本来、大棗や乾燥生姜は余計な配合で不要である。日本のエキス製剤はいずれも不要な大棗と乾燥生姜が配合されており、これらの配合は間違いと言っても過言ではない。
蛇足ながら、唯一某社の製剤には人参のかわりに党参が配合され、大棗と生姜が省略されているので、アトピー性皮膚炎などでも比較的安心して使用できる。
【補中益気湯の方意】 脾虚気弱による病変では,甘温の薬物によって脾胃を温養し中気を補益すべきであるが,本証では脾虚ばかりでなく清陽下陥を伴っているので,補中益気と昇陽挙陥の二法を同時に行う必要があり,脾気を補充して清陽を復位させる。
清陽が復位すると陽気が内鬱しなくなって身熱が解除されるのであり,「甘温除熱」とはこのことを意味する。
今回このブログを書くにあたって参考にした四川科学技術出版社発行の「中医方剤与治法」の補中益気湯の配合内容は、
【成分】 黄耆30g 人参10g 白朮10g 甘草6g 陳皮9g 当帰10g 升麻6g 柴胡6g
となっており大棗と生姜が省略されている。
日本における使用分量より遥かに大量であるが、このような真似はしないほうが無難であろう。
かの国の水は硬水のため成分抽出効率が悪く、日本の軟水で抽出されるものと同一視できないといわれる。
方中の黄耆は,肺気を補い,皮毛を実し,中気を益し,清陽を昇らせるものであるから主薬として配合量が多い。
人参・甘草は補脾益気し,白朮は燥湿強脾し,これら三薬は黄耆に協力し,以上の四薬によって補中益気の効能を発揮する。
升麻は脾気を昇発し,柴胡は肝気を疏達し,これら二薬も黄耆に協力して昇陽挙陥の効能を発揮する。
利気醒脾の陳皮は,補気による気滞の弊害を防ぎ,養血調肝の当帰は,疏肝の柴胡による肝血の損傷を防御し,さらにまたそれぞれに一定の役割があるが,主体となる重要な役割があるわけではない。
2009年11月30日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:補中益気湯