やや高齢の人達によくフィットするのは、釣藤散+半夏白朮天麻湯+六味丸系列の方剤。
それより若い年齢層でも、半夏白朮天麻湯証を呈する人が多く、釣藤散の併用も必要なこともある。
世間で頻繁に使用されるらしい苓桂朮甘湯がフィットしそうな人は、以前から村田漢方堂薬局では、そのようなタイプの人は少ない。
以前から、重症のメニエール氏症候群には、釣藤散+半夏白朮天麻湯+六味丸系列の方剤という3種類の併用によって、しっかりフィットして、根治する人も多かった。
なお、ストレスに弱い体質者によくみられる、突然のメマイ・嘔吐・下痢など、自律神経発作症とも言うべき発作的に生じる諸症状も含めて、様々な領域の疾患に、柴胡桂枝湯の適応がないかどうかを考慮しておく必要がある。
ずいぶん昔の話だが、故相見三郎先生が、たとえば昭和46年発行の『漢方の臨床』誌の第200号記念特集号に、『傷寒論の特質と治療方針及びその診療の実際について』と題された中で、「正邪分争」など、傷寒論の条文のみならず、素問なども数多く引用されて、極めて詳細に論じられつつ、「小柴胡湯合桂枝加芍薬湯の自験に基づく傷寒論思想の理解」の項目中で、心臓神経症・自家中毒・チック症、夜尿症、円形禿頭、喘息、蕁麻疹、潰瘍性大腸炎,偏頭痛、パルキンソン氏病(パーキンソン病)、メニエル氏病、リウマチ、バセドウ氏病、無月経、月経困難症、手掌角皮症、腰痛、帯下、ノイローゼ、不眠症、神経痛、神経麻痺、胃潰瘍、てんかんなどに対する有効性を論じられながら、実際の治療統計を公表されていた。
小柴胡湯合桂枝加芍薬湯は、とりもなおさず、柴胡桂枝湯中の芍薬を2〜3倍に増量したものに過ぎない。
これで思い出したのだが、昔、故小曽戸丈夫先生が、苦笑を禁じ得ない表情をされながら、次のような面白いお話をされたことだった。
先生の知人の漢方薬局さんでは、どの相談者にも、まずは柴胡桂枝湯を最初に飲んでもらうことにしているという話だったが、上記の相見三郎先生の論説が発表されて5〜6年以後の話だったので、もしかしたら相見三郎先生の論説に基づいての安易な販売行動だったのかもしれない。
ともあれ、現代中医学では、考えられないような応用分野を切り開く、独特な日本古方派の人達が昔からおられ、しかも脈々とどこかで受け継がれているのだろう。
小柴胡湯合桂枝加芍薬湯という柴胡桂枝湯の広範囲な応用については、実に深い解釈と理解があって投与されているハズだから、素人や漢方初心者が安易にマネしても、実際に効果があるかどうかは別問題である。
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2010年9月15日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
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