以下の拙論は、30年近く前に、月刊和漢薬誌に発表したものの、一部を補足・改訂してピックアップしたものであるが、今に至るまで、専門家でも理解できない人がいるくらいだから、真に理解できる人は、何度も繰り返し読んだ人に限られることだろう。
中医学では繁用されながら、日本国内では比較的流通量の少ない中草薬に「鬱金(うこん)別名:玉金」がある。性味は辛苦寒で、帰経は心・肺・肝・胆と作用領域が広く、効能については、@活血止痛・A行気解鬱・B清熱涼血止血・C清心開竅・D利胆退黄など、単味でこれほど多方面の効能を持つ中草薬も珍しい。
ところで、中医学における鬱金は、日本国内で「ウコン」の名で流通している健康食品類とは別物である。日本市場の「ウコン」は植物名をあてたもので、中医学では「姜黄(きょうおう)」に該当する。
中医学上の鬱金は日本の植物名における[1]ウコン(中国の植物名では姜黄)や[2]ハルウコン(中国の植物名では鬱金)または[3]ガジュツ(中国の植物名も莪朮)類の塊根(紡錘根)である。
いっぽう、中医学上の姜黄は[1]や[2]の根茎を指しており、これこそが日本国内における「ウコン」の名の市販品(健康食品類)に該当する。
なお、姜黄は、性味は辛苦温で、帰経は脾・肝、効能は@破血行気・通経止痛・A袪風勝湿などで、鬱金とは、寒熱が真逆であり、効能などでも異なる部分が多い。
また[3]の根茎は中医学・日本市場ともに莪朮(がじゅつ)である。
以上のように、中医学上の鬱金と姜黄の違いは、植物名の違いではなく、同一植物における薬用部分の違い なのである。
なお、中医臨床においては鬱金類の効能の特徴にもとづいて「広鬱金」と「川鬱金」の二系統に分類して使用され、前者は行気解鬱に長じる[1]の塊根であり、後者は活血化瘀に長じる[2][3]の塊根である。
ところで、広鬱金[1]の主産地は四川省であり、川鬱金[2]の主産地は浙江省であるから、川鬱金の「川」を四川省の意味に取ってはならないのだが、「中薬材」関係の書籍では[1]の主産地が四川省であることから、広鬱金であっても川鬱金と称することが多いので、決して混同してはならない。
中医学における鬱金の適応領域は多岐に渡っており、肝臓・胆嚢・胃腸・脳血管・心臓・肺臓・泌尿器系・婦人科系などの各種疾患、および各種の出血証に対する要薬であるだけに、日本の健康食品類のウコンと混同を避けるために、鬱金の別名である「玉金」と称したほうが無難である。
日本市場のウコンは中医学における姜黄であり、鬱金(玉金)とは寒熱が相反し、効能もかなり異なっているので、混同して用いてはならないのである。
参考文献:村田漢方堂薬局 製品開発歴
漢方薬のウコン(うこん:鬱金)と健康食品のウコンはどう違うのか?
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2010年8月31日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
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