中国における標準的な黄耆の配合量は、1日量で30〜120gであるから、せめてそれに少しでも近づけるには、衛益顆粒(玉屏風散エキス製剤)を併用すれば、1日量に黄耆がさらに6g加わって、合計11gに増やすことができる。
補陽還五湯は、脳溢血で急性期を過ぎて出血がしっかり止まって以後の後遺症の治療目的として創方されたものであるが、各種の脳血管障害の後遺症に効果が期待できるもので、それ以外でも頚椎症による両手のシビレなど、様々な領域にも応用が可能である。
それゆえ、補陽還五湯だけを様々な角度から論じた書籍が中国で発売されており、極めて参考価値が高いだけに、日本語に翻訳出版が期待されるくらい重要な方剤である。
村田漢方堂薬局では、補陽還五湯がフィットしていると思われるケースで、期待するほどの効果を発揮してくれない場合には、必ず上記の衛益顆粒など、玉屏風散エキス製剤を併用してもらうことで、ようやく効果を発揮できたというケースもある。
但し、本来大量の黄耆が主薬だけに、気虚が明らかでない場合は、使ってはならない。
ともあれ、漢方薬は、適切な薬用量も重要だが、多くの場合、品質問題のほうが、より大きいケースも多く、それゆえに前回のブログで、重要な参考文献として
成川一郎氏の「漢方製剤の偽装」を読んで感じたこと
というリンクを貼り付けて、薬用量以上に、製造メーカーによっては、品質問題の方が重要ではないかという実例(保険漢方で効果がなかった茵蔯五苓散+猪苓湯が、保険適用外の二分の一濃度のエキス剤で著効を得たという証人の多い実例)に注意を喚起したものであった。
しかしながら、たとえ品質優良であっても、時に薬用量が足りないために、まったく効果を発揮していなかったというケースもあるが、これを見分けるのは比較的至難の業かもしれない。
最近遭遇した実例では、ご高齢者の進行した肺腺癌で、進行が早く、胸水が溜まってかなり呼吸が困難になりつつあるのに、五苓散料エキス製剤の通常量では、まったく効果を発揮しなかったのが、薬剤師のご家族の提案もあって、中国で一般的に使用される四分の三量まで増量したところ、一気に胸水が減じて呼吸が楽になったという報告を得たばかり。
日頃から定評のある五苓散料エキス製剤であったが、病状の内容によっては、品質問題のみならず、薬用量の多寡によって、無効か有効かの大きな分かれ目が生じるケースもあるのが現実である。
翻って、日本で販売される補陽還五湯は、方剤の趣旨から考えても、黄耆の配合量が極端に少な過ぎるので、せめて衛益顆粒(玉屏風散エキス製剤)の併用するなどの工夫は考えておく必要があるだろう。
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2012年04月20日の茶トラのボクチン(もう直ぐ8歳) posted by (C)ヒゲジジイ
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