2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:70〜79歳の男性
【 職 業 】:医師
【 地 域 】:関東地方
【 具体的なご職業 】:内科医師。漢方専門医。肝臓専門医。消化器病専門医。
【 おたよりの内容 】:
いつも御HPを楽しく、また、味わい深く読ませていただき、大変勉強になっております。ありがとうございます。
先生の湿熱にたいする茵蔯蒿湯類のご解説には深いものがあり、いつも感心している次第でございます。
また、柴胡剤の使い方には啓発されることが多いと存じます。小生、30年以上前から、多くの肝疾患例に柴胡剤等を随証投与し、一定の効果を認めてまいりました(小著『証の鑑別を踏まえた 慢性肝炎・肝硬変漢方治療マニュアル』.現代出版プランニング 、2001)。
また、日本漢方の体質の虚実にあまりとらわれることなく、胸脇苦満や心下痞鞕などを目標に、大柴胡湯などを投与して良好な効果を認めることはまったく事実でございます。
C型、B型の慢性肝炎は最近の抗ウイルス療法の画期的な進歩によってほとんどが治癒ないしコントロール可能となり、C型ではHCVの消失(SVR)、B型では血中HBVの陰性化などがもたらされるようになり、長年、肝臓病に携わってきた医師にも患者さんにとっても今や夢のような良き時代となったわけです。しかし、治療前において肝臓の線維化のステージが進んだ例、肝硬変などの例では、ウイルスの消失後においても肝癌の発癌の可能性は多少、存在しますから、その後の経過観察が重要となっております。小生の場合は、抗ウイルス療法前から投与していた漢方(補中益気湯などの補剤や駆瘀血剤の併用などが多いのですが)を当分の間、継続させてもらっております。
今後、重要になる肝臓病としては、非アルコール性の脂肪肝、脂肪性肝疾患(NAFLD)やアルコール性肝障害とされています。食生活の不均衡、過度の飲酒が原因ですから薬だけでは治りませんね。おそらく飲食の不摂生によって湿熱が多く関係していることでしょうね。そして、肝鬱も絡んでいることでしょう。
NAFLDでは、脂肪肝のステージから次第に肝臓の線維化が進み、肝硬変、さらに肝癌にまで進展する場合がございます。この経過においては、おそらく、先生の強調されますような湿熱の病態が促進因子として働くことが考えられます。日常、過食、過飲にて舌質紅、白膩苔や黄膩苔といった湿熱の所見を多く観察するわけです。食生活改善は困難な例が多いわけですが、茵蔯蒿湯などの清熱利湿剤の重要性が高まってきた時代のように感じておりますが、いかがでしょうか。
駄文にてたいへん失礼申し上げました。先生の益々のご活躍、ご健筆を祈っております。
2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
お返事メール:
貴重なおたより、ありがとうございます。
肝胆系の湿熱の問題はご指摘の通りだと存じます。それゆえ、当方の薬局では、一般漢方製剤の中では、ダントツの量で日々、フル回転しているのが茵蔯蒿湯です(苦笑。
昨今増えている脂肪肝の人達こそ、多くは茵蔯蒿湯主体に雲南田七の併用のみで対処しています。
>C型、B型の慢性肝炎は最近の抗ウイルス療法の画期的な進歩によってほとんどが治癒ないしコントロール可能
とのご指摘の通り、以前多かった慢性肝炎で漢方相談に来られる人は、いつの間にか激減してしまいましたが、そのかわりにやはり肝臓癌や肝硬変の相談は相変わらずですが、最近はたまたまB型肝炎の既往歴のある人達の30代と40代の男女で、すでに原発巣も大きく、肺に転移していたり、あるいは各所に転移を繰り返している人など、この段階になるとなかなか困難とはいえ、中国の片仔廣(へんしこう)を模倣して、牛黄や麝香、雲南田七、蛇胆などを含有した製剤や製品を組み合わせることで、弱り切った体調だったのが、劇的な改善効果を得て、極めて良好な体調に改善することは可能でしたが、いずれも主治医のまちがった抗癌剤投与によって、台無しにされてしまいました。
それがなければ、もう少しは元気で長生きできたはずなのにと悔しい思いがありますが、一方では同じB型肝炎の既往歴のある高齢者が1cmほどの肝臓がんで、高齢ゆえに経過観察となったところへ、例によって牛黄を主体に中草薬類を補助として、丸一年の継続で完全に消滅した例がありますが、近藤誠氏に言わせれば、きっと「がんもどき」にされてしまうのかもしれません(苦笑。
C型とB型肝炎の合併があり、進行して肝硬変と腎不全を生じた人は、さいわいに上記のような多種類の配合によって、基本的に完全寛解となり17年後に突然の脳梗塞で亡くなられてしましましたが、この男性こそ、茵蔯蒿湯が高濃度で必要としたものでした。
いずれにせよ、いわゆる中草薬類も貴重なサポートとなることは間違いないと感じる昨今です。
ブログに転載させて頂きたいと存じます。貴重なおたより、ありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。
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2010年7月15日の茶トラのボクチン(6歳)の大あくび! posted by (C)ボクチンの母
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