2009年6月6日の茶トラのボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母
加地伸行著『「史記」再説━司馬遷の世界』という面白いユニークな書籍。
司馬遷の大ファンとして興味深く拝読していたら、「漢代の呪術と迷信と」という箇所の最後で、
「陰陽五行説は、当時にあっては、或る意味では最新の科学的なものの見方と言えるが、今から見れば、呪術的思考というほかない」
というところに至って、目が点になった。
それは無いでしょう!
確かにあの時代、根拠もない様々な呪術や迷信が百出し、漢の武帝がそれらに振り回される有様を見事に描かれている加地氏は、目に浮かぶように活写されて説得力あるものの、味噌も糞も一緒にしてしまい、陰陽五行説まで同列に置くのは、如何なものか。
そもそも、高名な中国思想の専門家である加地氏ともあろうお方が、陰陽五行を単なる呪術的思考扱いされたのでは、現代中医学までが単なる呪術に堕することになってしまう。
26〜7年前頃だったか、当時の『和漢薬』誌上で、近畿大学東洋医学研究所の医師・遠田教授が、陰陽五行説を荒唐無稽だと断じておられるのに、ヒゲジジイが大反論の拙論を発表しているが、相変わらず日本の学者さんたちは、始末に負えない。
(参考文献:村田恭介著「遠田先生への反論及び中医学用語の弁護論」<「和漢薬」誌427号(1988年12月号)>ウチダ和漢薬発行)
氏等の論法によれば、親試実験と称して没理論に堕した吉益東洞一派の古方派漢方だけが「科学的」ということになる。
そんなバカなことは絶対にあり得ない!
加地氏は修士論文を執筆していた学生時代、「マルキストにして、かつ封建的な傲慢な帝国大学教授」に苛め抜かれた過去を持たれている。その「眼前のマルキストの非人間性によって、マルキシズムそのものを完全否定することとなった」と述懐されおられる。
反マルキストの先生にして、このような唯物論的な考えであれば、唯物史観を信奉するマルキストも多い他の中国思想の専門家の考え方も、思い半ばに過ぎるところで、日本の各大学の知的水準を疑わざるを得ない。
中国思想の専門家たちにして、この通りだから、広く敷衍して、各領域の大学の学問のありかた、あらゆる領域で、学問レベルに疑いを持たざるを得なくなる。
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