年齢 : 60歳〜69歳
ご職業 : 自営業
簡単なご住所 : 関東地方
お問い合わせ内容 : ある病院で漢方医であるという医者から、高血圧の薬として漢方薬の「チョウトウサン」を処方してもらい、約6ヶ月ですが、いまだに血圧はさがらないのですが、医者に下がらないというと今に下がるというのですが?
このまま続けてもいいのでしょうか。
他の漢方薬にしてくれというのですが、これでいいのだ。というばかりです。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
頂いた御質問の文面だけでは、貴方に釣藤散が合っているかどうかまでは判断できませんが、たとえ釣藤散が適応する体質であっても、釣藤散製剤そのものの問題もあります。
釣藤散製剤中の釣藤鈎(ちょうとうこう)にもっとも優れた高圧作用があるのですが、とてもデリケートな生薬で、煎じ過ぎると効果が一気に損なわれる性質があります。それゆえ、使用されている釣藤散の製造方法の杜撰さによる効果の激減ということも大いに考えられます。釣藤散の製剤を他のメーカーに変えてもらうだけで、効果が出て来ることも大いに考えられます。
もう一つの問題は、しばしば遭遇するケースですが、たとえ釣藤散証があるにしても、同時に老化から来る腎虚も併発しているために、補腎薬を併用しなければならないケースです。たとえば六味丸系列の方剤の中から適切な処方を釣藤散と併用すべき体質であるということもあり得ます。
たとえば、体質によっては釣藤散合六味丸あるいは杞菊地黄丸ということは往々にしてみられるパターンです。さらに降圧効果を高めるために地竜を加えるなど、様々なケースが考えられますが、すべては中医学理論に基づいた弁証論治を正確に行ってはじめて方剤の配合や組み合わせがなされるべきです。
現実的には釣藤散証が歴然としてあるにしても、高血圧症などのような体質病のばあいには、釣藤散だけで解決できることは少なく、さらに体質的に複合している病機(病理機序)を正確に把握して、貴方に適切な方剤を複数併用することで、はじめて降圧作用とともに高血圧の根本治療が可能となるものです。
言い換えれば、釣藤散証に間違いない場合でも、釣藤散証を呈するようになった原因を中医学的に遡って詮索することも必要であり、また同時に並存する五臓六腑のアンパランスな連係部分を追及し、それを改善する適切な方剤を見出すことが必要であるということでもあります。
以上、やや専門的な話になりましたが、六ヶ月間も釣藤散を服用し続けても効果が見られないということは、使用される製剤の品質に問題があるのか、併用すべき方剤が不足しているのか、証がぜんぜん合っていないのか、のいずれかということです。
上記のことから結論としましては、受診されている病院を変えたほうが無難なような気がします。
以上、取り急ぎお返事まで。
頓首
【編集後記】 実を言うと今月に入る少し前から、ヒゲジジイ自身が釣藤散エキス製剤を服用中である。理由は、仕事が多忙を極めた日々が続き、しかも新人さんが続くので、無い頭を絞りすぎて、あるいは昨日もあったような家族に無理に連れて来られた意欲の乏しい御相談者をお断りする不毛な労力で疲労困憊、無駄な時間を奪われ続けたことから、急に高血圧気味になったようである。
幸い、現在は130〜70に落ち着いているが、先月末には早朝に後頭部の鈍痛で目覚め、仕事中のいつもとはちがうふらつき感に、サテはと自動血圧計ではかると180〜100。
乱暴な下げ方だが釣藤散・地竜・辛夷清肺湯・竜胆瀉肝湯・大柴胡湯・茵蔯蒿湯・味麦腎気丸・田七人参・牛黄製剤・麝香製剤を用いて一気に下げたら食欲が無くなった(笑)←こういう派手な配合は決して真似てはイケナイ!
このまま食欲の無い状態を続ければ、腹部肥満も解消することだろうが、食欲不振は鬱傾向をもたらすので、現在は釣藤散・地竜・大柴胡湯・茵蔯蒿湯・味麦腎気丸・田七人参・牛黄製剤・麝香製剤として、辛夷清肺湯と竜胆瀉肝湯は省略したが、血圧は正常に推移して今のところ再発の兆しがない。
ともあれ、釣藤散こそ猪苓湯のように各メーカー間によって優劣が大きく分かれる代表的な方剤である。その優劣の鈎(かぎ)は、釣藤鈎(ちょうとうこう)の扱いにあるということだ。
ラベル:高血圧