2010年12月23日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
昨日の新人さんは、20年間の病苦で、病院治療も病院漢方も無効だったというのに、10日分の漢方薬を一種類しか出さなかったところ、こんな安い薬で効くのか?と怪訝そうだったが、ものには順序があるので、今後の反応次第で、弁証論治が徹底してくると、併用方剤を追加したり、配合を変化させたり、様々な微調整がはじまるので、今回はテスト期間と思うべし、と強引に納得してもらった。
漢方専門の医師の投与する様々な漢方でまったく無効だったにもかかわらず、それでも漢方薬はツムラ漢方が最高のように思われているらしく、様々な点で、わざわざ海を渡って村田漢方堂薬局に来られる必要があったのかどうか、やや怪訝で、しばらくはなかなか噛み合わずに難儀した。
また、相変わらずアリガタメイワクな電話の問い合わせも多く、一度っきりで通う決心がつかない人達が、関西や関東から問い合わせがあって、混雑する発送の荷造りに繁忙を極めるのに、折々に仕事が中断されて受付嬢は疲労困憊となっていた。
疾患内容から考えても、遠路を来られること自体が、病状を悪化させかねないのに、何を無謀なことをお考えかっ!?という人など、この多忙な年末に、中途半端な電話だったら、かけないでほしい。
問い合わせフォームのメールで問い合わせれば済む問題ばかりである。
なかでも、薬局が断るなんてっ!?と信じられないという声を出す人が多いのは、実に噴飯物である。
「おたくは薬局でしょう?!」と、そんな怪訝そうな切りかえしには、ほんとうは噴飯物どころか、思いっきり憮然としてしまう。
ようやく本題に入ると、
苓桂味甘湯の正式名は、茯苓桂枝五味甘草湯あるいは桂苓五味甘草湯であるが、また苓桂五味甘草湯とも称され、出典は言わずと知れた『金匱要略』である。
出典である『金匱要略』に記載される正式名には、配合成分がしっかりそのまま記載された名称なので、長ったらしくもあるが、分かりやすくもある。
但し、桂苓五味甘草湯の名称は原典に記載があるにもかかわらず、日本では不思議と使用されないことが多い。
ともあれ、このたびコタローさんから、飲みやすいエキス顆粒剤として新発売され、市場では現時点では唯一無二の貴重な製剤である。
ヒゲジジイのたっての依頼に、快くこの困難な時代に実現してくれた貴重な方剤である。
この方剤の応用範囲は多岐に亘るが、しばらくはアトピー性皮膚炎に、方証相対すれば、どの程度の応用がきくか、とても興味深い。
{文献的な応用範囲は、気管支炎・気管支拡張症・肺気腫、脊髄小脳変性症、耳鳴り、耳塞ふさがり、難聴、酒皶(しゅさ)、アトピー性皮膚炎など}
都合のよいことに、昨日も苓桂味甘湯の能書に記載されている通りの、ほとんどピッタリの症状が出揃っている軽症のアトピーの人が来られた。
そこで、これまで飲んでいた複数の配合方剤をすべて中止してもらい、苓桂味甘湯だけで様子をみてもらうことになった。
苓桂味甘湯の【効能・効果】
体力中等度以下で、手足が冷えて顔が赤くなるものの次の諸症: のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感
以上の症状がほとんど全部出揃っている稀有な人であるが、効果・効能が、出ている症状とほとんどそっくりだからといって、絶対に効果が出るとまでは保障できないのが、漢方薬運用の難しいところである。
とはいえ、これらの効能・効果が、あまりにもこの人の症状とほとんどピッタリと一致するので、この人に限っては、苓桂味甘湯単独でテストしてもらうことになったのだが、万一、僅かでも逆効果を感じたら、即中止して、元の配合に戻すようにアドバイスしている。
期待通りフィットしていれば、数日以内に判明することが多い。
これで、苓桂味甘湯のアトピーへの応用例が3名となったが、1名は既に一定の効果が出ていることは既に先日述べた通り。
また同じアトピー性皮膚炎で、葛根湯が一定レベル効果を発揮している人は意外に多いが、皮膚の乾燥が目立つ人に、葛根湯を独活葛根湯エキス製剤に切り替えてテストしてもらったところ、あきらかに独活葛根湯のほうが、保湿効果も発揮して、痒みにも軽減効果を発揮する人もあり、それゆえ、葛根湯から独活葛根湯に完全に切り替えてもらった人もいる。
といっても、衛益顆粒、真武湯、柴胡加竜骨牡蠣湯やガジュツ末、イオン化カルシウムなどの併用方剤を必須とする人の話ではあるが・・・。
但し、同様に葛根湯が一定レベル効果を発揮している人でも、独活葛根湯では地黄が仇となって逆効果になり、フィットしない人もいた。
以上、中医学でもなく、また漢方医学でもなく、両者の好い所取りをした中医漢方薬学による、特殊方剤応用研究の途中経過である。
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