2009年8月31日病み上がりのボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母
折り返し頂いたメール:
早速のご返信ありがとうございます。
当方で治せなかった女性の症状が好転しているということで何よりです。
また処方をご教示いただき誠にありがとうございます。
これは自分自身にとって、何よりも代えがたい勉強になります。
「関東の女性は、とても勘の良い人で、それでも最初は微調整に苦労しながらも、現時点では、茵蔯蒿湯、猪苓湯、知柏壮健丸、衛益顆粒の4種類がしっかりフィットして、滲出液もほとんど出なくなって、見かけ上も、とてもスッキリしています。
但し、知柏壮健丸の服用量は微妙で、1回4丸にすると浸出液が流れ出るが、3丸に減らすとピタリと止まるという、このような微妙なところを、こちらのヒントをもとに、実に勘良く自身で見つけられています。」
などについては、最近僕自身も経験したことですが、陰虚傾向があるからと言って補滋陰しても反って症状が悪化する場合、滋陰をメインにするのではなく、「脾の運化作用⇒肺の宣発粛降作用⇒腎へとつなぎ、腎の蒸騰気化作用で再び肺へと流れる気津の還流、そして全体の流れを調節する肝の疏泄」をもっと意識する必要があるのではないかと考えています。
つまり気の流れが弱々しかったり、どこかで詰まったりしているときに物質的な陰を補っても利用されず、反ってそれが邪気化し、皮膚症状を悪化させるのではないかと・・・。
そういう考えから、最近では明らかに気陰両虚傾向があった場合に、気虚先行型なのか、陰虚先行型なのかということをしっかりと把握し、それに基づいて配合比率を決めていくようにしています。
そうすることによって、これまで以上に症状が好転しやすいイメージがあるのです。
先生のおっしゃる通り、アトピー性皮膚炎は本当に難しいという実感があり、まだまだ学ばなければならない点が多くありますが、今回の先生からのアドバイスを自分の臨床に活かして、くじけずに頑張りたいと思います。
また今回の女性の症例の後に、黄連解毒湯の使い方などを何度も読ませていただき、自分の浅はかな処方構成を再認識いたしましたが、先生からのご返信の中にあった「舌先の赤味」、これは自分自身でも意識していたところで、先生の見解と現時点で一致しているので、「これで間違いない」という自信を持つことができました。
それまで舌表は色あせが強いのに、舌裏は赤味が強いタイプに対して、「衛気営血の中で、舌表を気分、舌裏を営血分と考え、気分の三焦と血分の心包との気血の還流が潰れてしまっている状況に対して、三焦の湿熱によって気分と血分の膜腠が閉塞され、熱が鬱した状況」と考え、黄連解毒湯を使用しておりましたが、黄連解毒湯の使用目標のブログを拝見させていただき、考え方を改めた次第です。
まだまだこれから先、学ばなければならないことが多すぎて、気が遠くなる毎日ですが、目の前の患者さんが少しでもよくなるように先生の提唱されている「中医漢方薬学」を自分なりに習得できるように頑張りたいと思います。
僕のような若輩者のためにご返信くださり、誠にありがとうございました。
2010年8月31日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
ヒゲジジイによるお返事メール:
関東の女性の知柏壮健丸についての配合分量について、御指摘の問題以上にもっと重要な部分があると思います。
それは季節的な問題が特に関連しているのですが、その前に・・・・
滲出液が多い人に、六味丸系列の方剤が必要になる重要な問題として、
2007年06月28日 昨日の続き:滲出液が多いアトピーに対する漢方薬の配合中に六味丸が必要となるのはなぜか?
という古いブログに書いていますように、
激しい津液の損耗から派生する腎陰虚が問題です。
腎は主水の臓であり、この主水の臓である腎陰の虧損によって体内の水分調節機能が破綻を来たしているため、六味丸を必ず併用しないことには茵蔯蒿湯や玉屏風散あるいは猪苓湯などだけでは体液の漏出をコントロールできないからです。
現実に六味丸を加えない時と加えた時の驚くほどの違いが生じた実例が沢山あります。
━2007年06月28日 昨日の続き:滲出液が多いアトピーに対する漢方薬の配合中に六味丸が必要となるのはなぜか?より
とありますように、猪苓湯+衛益顆粒あるいはさらに茵蔯蒿湯の併用だけでは、びくとも滲出液が止まらないのに、適量の六味丸系列の方剤を加えることによって、はじめて滲出液を止める効果を発揮するという実例を何度も経験しています。
透明な滲出液が多量に出て寒がる人には、茵蔯蒿湯はまったく邪魔で、かといって猪苓湯+衛益顆粒では効果はあまりにも弱く、六味丸を適量加えて、驚くほどの即効が出て、超即効という例も珍しくありません。
御指摘の関東の女性の知柏壮健丸の3丸や4丸の問題は、多分に高温多湿の季節的な問題の方が重要で、これが乾燥期の秋冬であれば、おそらく通常の6丸は必要だったと思われます。
同じアトピーで勘のよい薬剤師の女性の場合、六味丸・茵蔯蒿湯・猪苓湯、板藍茶でとても調子がよいのですが、初期の頃は梅雨時は六味丸は規定量の四分の一量でちょうどよく、秋冬になると規定量の2倍が必要であるという、季節的な調節を行うことで、次第に安定期に入って行かれた人もおられますが、ここまで極端ではないにしても、滋潤作用の強い地黄が配合された六味丸系列の方剤は、季節的な配合量というのは、かなり神経質に考慮する必要があると思います。
以上、少しでも御参考になれば幸いです。
2010年8月31日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
折り返し頂いたメール:おはようございます。
腎陰虚からの浸出液に対する詳細な解説、誠にありがとうございます。
現時点での僕の認識としては、これまでの経験上、滋陰の重剤である地黄を利用できる身体の土台がなければ、量に限らず生薬が反って邪気化するものと考えていましたので先生からのご指摘は、まさに目からうろこです。
また腎陰は身体の陰の根本であり、五臓六腑すべての陰虚は結局は腎陰虚へと波及するものの、陰虚という状況があった場合、やはり詳細に「どこの臓腑の陰虚が主体」なのかを考え、皮膚の乾燥の状況から、肺陰虚・脾陰虚、そして肝腎の陰虚と分けていき、それぞれの陰虚の状況に合わせた適切な方剤が必要と考えていました。
六味丸中の茯苓・沢瀉は、三焦の水分偏在に対しての配慮、山薬・地黄の粘膩性による水滞に対しての副作用予防として配合されているものと考えており、猪苓湯中の猪苓・滑石との大きな違いは、「津液などの上澄み液のみを動かすことができる」のか、「上澄み液のみならず、廃液などの濁液をも動かすことができるのか」という生薬特性に基づき、三焦空間における上水道・下水道通路に対しての作用の違いによるものと理解していましたが、腎の主水という観点、三焦の筋膜による気血津液の昇降出入の調節機能からすると、開・合・枢理論における、少陽・少陰の枢機能とがつながりを持っているのかもしれないという稚拙な考えも浮かんできます。
ブログを熟読するだけではなかなかイメージが湧かない部分がありましたが、今回の先生からの詳細な解説から、季節に応じての臨機応変の配合調節の一端を知ることができ、自分の臨床においても、この辺りをもっと突き詰めて研究して実践できるようになりたいと思います。
師匠よりよく「内因は変化の根拠、外因は変化の要因」ということを口酸っぱく教えられておりますが、季節の変化に伴う外因をより深く考え、五臓六腑の状況を間違った漢方の使用により逆に悪化させないようにしていく必要があると再認識させていただきました。
先生からのアドバイスをもとに、もっと深く思考を張り巡らせた臨床ができるように日々精進させていただきます。
今回は、誠にありがとうございました。
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2010年8月31日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
2010年8月31日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
ラベル:アトピー性皮膚炎
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