2014年08月30日

アトピー性皮膚炎に対する漢方治療のデリケートさについて

2008年8月30日のボクチン(4歳)
2008年8月30日のボクチン(4歳) posted by (C)ヒゲジジイ
【ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:30〜39歳の男性
【 職 業 】:自営業
【 地 域 】:近畿地方
【 具体的なご職業 】:漢方薬局・鍼灸院経営 薬剤師・鍼灸師
【 お問い合せ内容 】:

 いつも先生のブログを拝見し、勉強させていただいております。
 以前も先生宛にメールにてお問い合わせさせていただき、ご返信をいただいた者です。

 先生のブログは非常に臨床的で、目からウロコの内容ばかりで、非常に勉強になっています。

 さて、先日のアトピー性皮膚炎の中で、アトピー皮膚炎の不思議な共時性という題名でブログをアップされていた方についてですが、その方は十中八九、僕のところに相談に来られていた患者さんです。

 先生のところに行かなければならないほど、状況を悪化させてしまい、本当に申し訳ございません。

 すべては僕の責任です。

 もし違ったらいけませんので名前は伏せますが、関西からの方は30代女性で結節性痒疹をお持ちの方、もう一人は20代女性で関東から来られ、肌汁が止まらない●●●の方だと思います。

 僕自身、この2名に対しては、非常に弁証論治に苦労し、自分の無力さ・浅学さを痛感し、来られなくなった時には、「治せなかったくやしさとお客さんに申し訳ない気持ち」で一杯でした。

 そしてその数週間後、村田先生のブログに「アトピー性皮膚炎の不思議な共時性」というタイトルで松寿仙とサメミロンを使った関西と関東の女性の内容を見て、すぐにこの2名の方だと直感しました。

 ブログの中で先生が、僕の提示していた処方内容をボロカスにいっていただいたことに、非常に大きなショックを受けると同時に「僕のような浅学者が、いくら考え込んでも、結局は独りよがりの根拠のない弁証論治であり、先生のような卓越した技術を持たれた先生からすれば、この大ばか者!漢方薬屋辞めてしまえ!」ということになってしまうのだと痛感しました。

 僕の中では、一生懸命考えていたのですが、それが結局間違っていては何の意味もありません。

 ただあるのはお客さんに迷惑をかけてしまうということだけです。

 こういうことを経験すると、自分のふがいなさ、センスのなさに嘆き、この仕事を辞めてしまおうかと真剣に悩みましたが、僕のようなものでも、「先生のおかげでよくなった」と仰ってくれる方もいるわけで、現実には止めることなどできません。

 僕自身、ウチダ和漢薬から資料を取り寄せ、先生が書かれた「中医病機治法学」を読み漁り、少しでも先生の考えの一端を知ることができるようにと勉強させていただいております。
 その中で先生が参考文献として挙げてくれた書籍も、中国の古書店に問い合わせて手に入れるようにしています。

 結節性痒疹の関西の女性にたいして「葛根湯証」にて対処しなければならないという内容のブログがありましたが、当然、僕の中では風寒邪の関与など頭になく、自分の無学さを知ったと同時に、他のアトピーの方に対しても、外感の意識を常に忘れてはいけないという教訓にもなったので、とても勉強になりました。


 わがままになってしまうのですが、今後、同じことを繰り返さぬように、後学の勉強のためにも、もし可能であれば、この2名の方の処方についてご教示できるものがございましたら、またブログにアップしていただけると非常にうれしく思います。

 また、そのお二人が先生のもとに行かれましたら、よろしくお伝えいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

2010年8月30日のボクチン(6歳)
2010年8月30日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:

 関西から来られている女性から、あとで知ったのですが、確かにご指摘通りの人でした。

 ただ、関東の女性は、職業はご指摘通りですが、年齢が異なります。
 また、関東の女性の場合、一度はそちらに行ってみたいと思ったことがあったものの、結局は一度も行かずに当方にやって来たのだと言われていましたので、別人だと思います。

 ところで、アトピーはいつもブログの各所で書いています通り、他の疾患と異なって極めて敏感で、変化が激しいので、相談するこちらでは、時間と労力を最も消費し、苦労の割には(下種な言い方をすれば)見返りが最も少ない仕事かもしれません。

 特に悪化した状態で来られる場合、しばらくは数日単位で配合変化を繰り返す必要があり、10日毎に通ってもらいながらも、折々にメールで頻繁なやり取りを繰り返し、配合変化の微調整というのは服用者のみならず、こちらの労力も半端ではありません。

 敏感なアトピーは、体質的な個人差が大きいので、皆に共通して液体の生薬製剤や健康食品をベースに敷くことには無理があるように思います。強いてあるとすれば、イオン化カルシウムくらいのものでしょう。

>この2名の方の処方についてご教示できるものがございましたら、またブログにアップしていただけると非常にうれしく思います。え

 とありますが、ここ二ヶ月間にも、頻繁な微調整を繰り返して、ようやく昨今、やや安定した方剤が見つかりつつある状態ですが、それまでの二ヶ月の配合の推移を活字に起こすこと自体、膨大な文章になりますので、途中経過の記載は現実的には不可能です。
 それほど苦労の多いのがアトピー性皮膚炎だと思います。

 関西の女性は、現時点では、柴胡加竜骨牡蠣湯、猪苓湯、衛益顆粒の三種類で比較的状態が安定しつつありますが、これも暫定的なもので、少し前までは高濃度の茵蔯蒿湯がフィットしていた時期もありましたが、今はお休みで、今回は上記の方剤に活血化瘀の生薬あるいは方剤をテスト中というところです。
 また、初期に即効があった葛根湯は、現時点では風寒証が去ってのち、衛気虚がメインとなっていますので中止していますが、適宜、葛根湯証が出たときのみ使用してもらうようにしています。

 関東の女性は、とても勘の良い人で、それでも最初は微調整に苦労しながらも、現時点では、茵蔯蒿湯、猪苓湯、知柏壮健丸、衛益顆粒の4種類がしっかりフィットして、滲出液もほとんど出なくなって、見かけ上も、とてもスッキリしています。
 但し、知柏壮健丸の服用量は微妙で、1回4丸にすると滲出液が流れ出るが、3丸に減らすとピタリと止まるという、このような微妙なところを、こちらのヒントをもとに、実に勘良く自身で見つけられています。

 アトピー性皮膚炎は、四季折々の変化が激しい傾向があり、また女性の場合は、生理との関係も大きいので、以上は、あくまで暫定的なものですが、お二人とも一定の効果が出ているので、少しはホッと一息がつけそうな段階に来つつあります。

 お二人とも、舌先の赤み具合など黄連解毒湯証は見られず、関西の女性は、舌の大きさから、常に気虚がベースであることは間違いないようです。

蛇足ながら、

>この仕事を辞めてしまおうかと真剣に悩みましたが、僕のようなものでも、「先生のおかげでよくなった」と仰ってくれる方もいるわけで、現実には止めることなどできません。

 これはお互い様で、(アトピー以外の難治性疾患では)毎年、こちらでも数人、びくとも反応してくれず、悪くもならないかわりに良くもならず、困惑して考え込んでいるうちに、いつの間にか来られなくなって、申し訳ないやら悔しいやら情けないやらの思いは毎年味わっています。

 それでなくとも、超高名な中医学の先生方のところで治らず、当方に来られるようになって治って行く人達も多いことから推測しますと、おそらく逆のケースもあるだろうことを思えば、やはりこれもお互い様のことだと思います。

 どんなにベテランになり、経験を積んでも、百パーセントの完璧はあり得ないので、最近では自分の無能を嘆くよりも、治せる人が多いことの方に喜びを感じるようにしています。

 以上、取り急ぎ、お返事まで。

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2010年8月30日のボクチン(6歳)
2010年8月30日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

2010年8月30日のボクチン(6歳)
2010年8月30日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

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