2010年8月20日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
専門書を紐解けば分かるように、猪苓湯は単なる膀胱炎の漢方薬ではなく、応用範囲は多岐にわたる。
ところが大きな問題は、エキス剤においては、各メーカー間で優劣の差が激しいことである。
これまでも各所で記載してきたが、顔面の皮膚病で漢方に熱心な医院から紹介されて村田漢方堂薬局にやって来られた患者さんに、茵蔯五苓散+猪苓湯+イオン化カルシウムで即効があった。
そこで、紹介された医院にお戻ししたところ、イオン化カルシウムとともに医療用のツムラ漢方の同じ配合では3日で再発してしまった!
再度、こちらの自費の方剤に切り替えると、早速3日間で顔面の皮膚症状が消失するのである。
地元近辺の御高齢の婦人たちが、医療用のツムラ猪苓湯で効果がなく、病院で漢方薬を出されるくらいなら、漢方専門薬局の方が信用できるだろうとやって来られ、村田漢方堂薬局の自費の某メーカーの猪苓湯では超即効を得たことが続いた年があった。
ともあれ、泌尿器系疾患には必須の漢方薬ではあるが、その他にも少量の滲出液を伴うアトピー性皮膚炎などに対する応用機会は頻繁である。
大量の滲出液では、猪苓湯に加えてさらに衛益顆粒(玉屏風散エキス製剤)と適量の六味丸系列の方剤を併用する必要がある。
アトピー性皮膚炎でしばしば生じる凸凹を、平坦にする効果を有しており、時に優れた効果を発揮する。
また、ある種の大腸疾患にも有効性を示すことがあるが、これは意外に知られてない。
利水薬の配合が主体であるから、原因がはっきりしない浮腫にも、とうぜん有効性がある。
変わったところでは、チョコレート嚢胞や卵巣嚢腫に対して、適切な活血化瘀方剤とともに、猪苓湯を必ず併用してもらい、脇役として、過去大きな実績を残している。
まだまだ応用範囲は尽きないが・・・
配合される茯苓や猪苓には補益作用があるので、猪苓湯という単一方剤自身で扶正祛邪を体現しており、想像以上に疲労回復作用も発揮することがある。
そういう意味では五苓散も同様である。
猪苓は、現代中医学の教科書的には、補益性を認めない風潮にあるが、大いに疑義がある。
猪苓の補益性については、拙著の利水滲湿薬「猪苓」の補益性についてに詳しく指摘している。
利水滲湿薬は水道を通利し、水湿を滲出除去(滲み出させて除去)する薬物である。淡味の薬物が多いので淡滲利湿薬とも称し、服用によって小便が通暢して排尿量が増加するので利尿薬とも呼ばれる。
代表的な薬物に茯苓・猪苓・沢瀉・ヨクイニンなど、日本の漢方でもお馴染みの薬物が多い。
これら淡滲利湿薬のなかには補益性を有するものがあり、なかでも甘淡の「白茯苓」は利水滲湿・健脾補中・寧心安神の効能があり、甘で補い、淡で滲湿し、利水滲湿と同時に補脾益心の効能がある。
したがって、茯苓は正虚邪盛(脾虚湿盛)の病態に不可欠であり、作用の穏やかな扶正去邪の薬物として、中薬学における一般常識となっている。
ところで、不思議なことに茯苓と同じ甘淡の「猪苓」については、補益性が否定されおり、このことは現代中薬学の大きなミステイクの一つであると愚考している。
神農本草経には「久服すれば身が軽くなって老いに耐えるようになる」と述べられており、清代の名医葉天士は「猪苓の甘味は益脾する。脾は統血するので猪苓の補脾によって血が旺盛となり、老いに耐えるようになる。また猪苓の辛甘は益肺する。肺は気を主るので猪苓の補肺によって肺気が充実して身は軽くなる」と解説している。
このように、猪苓には単なる利水滲湿の効能のみならず、茯苓と同類の脾肺を補益する効能がある訳で、近年特に注目されている抗癌作用も考えあわせれば、もっと広く活用されてしかるべき薬物である。
━利水滲湿薬「猪苓」の補益性についてより
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2010年8月20日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
2012年8月20日のボクチン(8歳) posted by (C)ヒゲジジイ
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