
2009年6月6日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母
エキス製剤よりも煎じ薬の方が効果が高いという実に怪しい神話を信じる人が多いが、必ずしもそうとは言えない。むしろ原料の品質が優れている場合はエキス製剤の方が効果が高いことも多いが、それだけでもない大きな問題もある。
それについては、最後に再度、もう少し詳しく書くとして、まずは煎じ薬の利点と欠点である。
煎じ薬では、それをエキス製剤で多種類の方剤を併用するときでも、それらをまとめて一緒に煎じることができるので、煩雑さを省略できるということが最大の利点だろう。
ところが、この利点がそのまま欠点にも豹変する。もしもまとめて同じ袋に封じ込めて投与された場合、途中で一部の方剤や生薬を抜きたいというときにはそれがまったく不可能となる。
たとえば10日分以内の投与であれば、無駄になるのが少なくて済むが、しばしば見られるように最初から1ヶ月分まとめて購入させられた場合、3日も連用しないうちに却って逆効果で皮膚症状が悪化し、残りの27日分が返品もできずに無駄となったと悔しがる人が当方に移って来られるようなケースも珍しくはない。
このような無駄になることを最小限で食い止めるには、エキスの方剤や単味生薬製剤を組み合わせて出せば、思いがけず途中で一部に不必要だったり逆効果のの方剤や生薬が短期間で判明した場合は、すかさず該当する方剤や単味生薬製剤を急遽中止してもらったり、あるいは必要に応じて配合比率を急遽変更するなど、煎じ薬に比べてこのような迅速な対処が速攻で可能である。
上記のようなエキス製剤や単味生薬製剤による多種類の配合の便利さは、そのまま欠点ともなる。何でもかんでも一緒にまとめて煎じることが出来る便利さに比べ、エキス製剤類の多種類の配合は、たとえばエキス方剤3種類が必要な複雑な証候の場合、さらに単味生薬製剤の地竜やガジュツなど、さらに板藍根など単味で加えていくと、かなりな製品数となってしまう。
このようにエキス製剤や単味生薬の製剤の配合(組み合わせ)では、かなりな製品数となってしまう欠点があるとはいえ、また逆にそのまま大きな利点となる。
この方式であると細かな弁証論治に対応した複雑な配合と瞬時の臨機応変の配合変化が可能であるということは実に大きい利点である。
一度調剤されたら変更がきかない煎じ薬のように無駄になる部分がほとんど生じないのである。
最後に、エキス製剤よりも煎じ薬の方が効果が高いという都市伝説の問題である。
先日取り上げた温経湯でもあった例だが、同じ進行性指掌角皮症に煎じ薬では効果が出るのに20日もかかってしまった例があるかと思えば、優れたエキス製剤を使用すれば、10日以内に明らかな効果が出たという例。
最近、関東から来られた人から仕入れた実例では、多汗症に煎じ薬の防已黄耆湯ではまったく無効だったものが、エキス製剤の防已黄耆湯では明らかに一定の効果があったという信じられない報告があった。
何が問題なのか?
おそらく使用された原料生薬の品質問題が大きいのだろうと思われるが・・・いずにせよ、エキス製剤よりも煎じ薬の方が効果が高いというのは、実に疑わしい都市伝説に過ぎないとしか言いようがない。

2009年6月6日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

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