2010年6月2日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
男性の手の湿疹、進行性指掌角皮症には女性と同様、ほとんど病名治療的に温経湯が効果を発揮する。
このことは昭和50年(1975年)前後に女性2名、男性1名の治験例を『和漢薬』誌か『漢方の臨床』誌に発表したものをそのまま拙著『求道と創造の漢方』の172頁に掲載している。
前略・・・大塚敬節先生のご研究により今や常識的なこととなり、今さら私ごとに若輩の屋上に屋を架す必要など微塵もない・・・後略と前置きを書いているように、温経湯に主婦湿疹や指掌角皮症というのは大塚敬節先生の功績である。
最近、久しぶりに男性の両手の湿疹、とりわけ右手の重症の湿疹の相談を受けた。
最強のステロイド軟膏を1日3回塗布しても治まらなくなっている。
諸症状と体質傾向から荊芥連翹湯10日では効果がはっきりしない。
そこで再度諸症状を確認すると手掌煩熱はないものの、唇口乾燥が年がら年中顕著であるということから、またもや男性でも温経湯の適応証であるかと10日分服用してもらうと、ステロイド塗布が2回に減って、3回塗っていたときよりも明らかに軽減しているという。
進行性指掌角皮症に温経湯が適応するときは必ず薏苡仁を加えて使用したものだが、今回は温経湯のエキス剤だけで様子をみてもらった。
上記『求道と創造の漢方』に記載している昭和51年の年末に相談を受けた看護婦さんの進行性指掌角皮症では、温経湯加薏苡仁の煎じ薬を飲んでもらっても、15日間はまったく効果を認めず、20日過ぎたころからようやく効果が出てきたという遅効例を記載している。
このことからすると、現在使用している某メーカーの温経湯エキス製剤がかなり優れた品質であることが想像できる。
それにしても、女性のみならず男性の進行性指掌角皮症にも温経湯という病名治療がかなり可能な面があり、手掌煩熱と唇口乾燥のいずれか一つでも認めればまず最初に試してみるべき方剤のようである。
このような病名治療的な素人でもやれそうな方法がある反面、気を付けなければならないのが、昨今、「酒さ」に桜皮が配合された十味敗毒湯が9割以上の人に即効があるとい情報に踊らされて、逆に悪化したり、まったく無効であったりした人などが遠路はるばる相談にやって来るケースが目立っている。
ネット上で「酒さ」には十味敗毒湯が特効薬のように書かれているといわれるが、当方では40年間、十味敗毒湯で「酒さ」が改善されたといケースはまだ一例も遭遇したことがない。
進行性指掌角皮症に温経湯という病名治療の確率よりも、はるかに劣るような気がするのだが・・・。
ともあれ、漢方薬でも稀な部分では、病名治療的な方法が通用することもあるのは確かだが、それはほんの限られた部分であるから、病名治療にばかり頼っていると足元をすくわれるので通常は安易に病名治療に頼るべきではない。
だから必ず専門家と相談しながら、臨機応変に配合変化ができる体制を取っておくべきである。
2010年6月2日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
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