2014年02月26日

舌の奥の黄膩苔は肝胆湿熱による茵蔯蒿湯証が内在していることが多い

2008年8月5日のボクチン4歳
2008年8月5日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

おなじみの東海地方の内科医の先生からの症例報告

64歳 女性
2012.6.4 「一ヶ月まえから右足の甲が腫れていて、足首も痛い。ひどい便秘もあるので直して欲しい」とおっしゃって受診されました。臍部から両側下腹部にかけて瘀血を認め、舌の中央から奥にかけて薄い黄色の舌があり、茵蔯蒿湯(T社)と桂枝茯苓丸(K社)を処方しました。

2週後 「排便は二日に一度になりました。でも足のほうは全然良くなっていない」と満足していない様子でした。しきりに、右足触りながら、「この浮腫がねー」と不満そうにしておられたので、「膝から下のむくみは防己黄耆湯」といつかの漢方研究会で聞いたフレーズを思い出して、「足の甲浮腫が取れるかもしれないので」と言って防己黄耆湯と桂枝茯苓丸を合方で処方しました。

2週間後、「先生は足の浮腫が取れるといったけど、全然よくなっていないよ」と凄く不満そうで、「足の裏がジンジンしてきたよ。冷房効いているとこはダメだね」とのこと。そこで、冷えで増悪しているとのことから、桂枝茯苓丸を桂枝加朮附湯に変更して、茵蔯蒿湯(T社)を3包に増量しました。

2週間後、「便通は変わらないけど、足のジンジン感は良くなったよ」と満足そうでした。すこし、こちらも胸を撫で下ろす気持ちになり、すこし気をよくして「じゃあ、毎日排便がでるようにしたいですね、20番を防風通聖散に変更します」といって帰宅を促しました。防風通聖散に変更した理由ははっきりしません。便秘・浮腫・下腹部がややぽっちゃりタイプでしたので、何となく変更したのかもしれません。

2週間後、 「便秘はまあまあで、足のジンジンもあまり感じないけど腕と脚が痒くなってきた。どういうこと?」組織内の水分を引っ張り過ぎたのか、と思いながら、桂枝加朮附湯を人参養栄湯に変更しました。

3週間後、「脚のジンジン感はほぼ無くなった。腕のかゆみがすこし残っている」といってあまり不満そうではありません。処方継続としました。

3週間後、「腕のかゆみも随分よくなった」と言ってようやく笑顔を見せてくださいました。「1ヶ月分お薬出します」といって内心ホットしました。

4週間後、変化なし。

4週間後、「インフルエンザをもらってしまったようです、のどがいたい! 早く直してください」とのことで検査したところ、A型インフルエンザで、イナビルと柴胡桂枝湯合桔梗湯を処方しました。風邪の症状ですんなりお引き取りいただけました。

4週間後、「このまえのインフルエンザは熱が出なくて治ってしまいました。漢方を続けて飲みます」とびっくりしておられましたが、こちらもびっくりでした。

8週間後、「5月の連休の頃から顔が赤くなって、今腫れて困っている。早くなんとかして! 腰も痛くて生活ができない」
と患者さんの表情が険しくなっていました。ちょうど花粉で顔から首にかけて発疹が出ていて清上防風湯で改善した方が幾人かいたことを思いだして、清上防風湯合茵蔯こう湯(O社)と牛車腎気丸合疎経活血湯に変更しました。

2ヶ月後、「顔の赤みと晴腫れは引いてきたが、排便が隔日しかでない。毎日だしたい」とのことで、茵蔯蒿湯(O社)を一日3包増量しました。

1ヶ月後、「・・・」 患者さんは何も訴えがないので、こちらから「お困りになっていることはありませんか?」とお尋ねしたところ、「別に変わりない」とのお返事で、前回症状は改善しているものと判断し継続投薬としました。

1ヶ月後、「この前に言うのを忘れていたが、便通が硬くて困っている」とのこと。腰痛よくなっているようであったので、疎経活血湯を麻子仁丸に変更。

1ヶ月後、「透明な鼻水がでる。毎年春は鼻がぐちゃぐちゃで困っている。何とかなりませんか」いつもと比べて神妙におっしゃった。「花粉に良く効くお薬を出しておきます」といって、辛夷清肺湯合麻黄附子細辛湯を1週間分だけにして、いつものくすりは4週間分処方した。

1ヶ月後、「便通も快便で、例年だとこのじき花粉の鼻水と鼻閉で大変だけど、何ともない。漢方は良く効くね。また続けて飲むよ」とおしゃってくださって、初めて満面の笑顔を見せていただくことができました。辛夷清肺湯合麻黄附子細辛湯は前回1週間分しか処方していませんので、常用薬である清上防風湯合茵蔯蒿湯(O社)と牛車腎気丸合麻子仁丸でアレルギー体質が改善している愚考しました。

 患者さんの訴えに対していろいろ思案して投薬を変更してきましたが、やっと体質のゆがみを少し修正できてアレルギー体質も改善できてよかった症例です。

 それにしても、茵蔯蒿湯(O社)は舌に黄色い苔があって便秘のときは適量(この患者さん場合1日3回)が必要であるという村田さんのお話に真実さを実感できた一例でもありました。

 患者さんの険しい表情を見なくてすむようになって村田さんに感謝します。
 またよろしくお願いします。

2008年8月5日のボクチン4歳
2008年8月5日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母

お返事メール:

 興味深い症例、とても楽しく拝見しました。

 茵蔯蒿湯を終始一貫投与されたこともさることながら、折々に臨機応変に行われた配合変化こそ興味深く、清熱剤とともに附子剤を併用するところなどは、附子瀉心湯という方剤の存在を考えると、実に奥深い配合をなされることだと感服申し上げました。

 今回もブログの継続にご協力頂けるものと感謝申し上げます。

 早速、明日のブログに掲載させて頂きたいと存じます。
 ありがとうございました。

2008年8月5日のボクチン4歳
2008年8月5日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母



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