
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:40〜49歳の女性
【 地 域 】:とっても寒い地方
【 具体的なご職業 】:主婦(獣医師免許あり)
【 おたより 】:いつもブログを拝見しています。
貴重な御意見・経験を書いていただき、大変勉強になります。ありがとうございます。
証が複雑な私は自分の通える範囲では適切な治療をしてもらえる専門家に出会えなかったため、独学で中医学を学び、自己治療をしています。失敗しながらですが、大分臨機応変に証の変化に対応できるようになり、普通の生活が出来るようになってきています。
それとともに、中医学の奥の深さ、難しさ、安易な治療の恐ろしさも、嫌というほど実感しています。
ですので、私の行っている自己治療はブログで拝見する先生の主義とは異なると思い、御連絡するのはおこがましいと思っておりましたが、このたび「猫ちゃんたちに漢方薬を利用される貴重なお便り」を読ませていただき、メールさせていただきました。
私は体力がないので現在獣医業はしておらず、よって、中医学を知った後にルーティンに動物を診る機会がないので、あまり大きなことは言えませんが、それでも、イヌやネコなどに弁証を試みることがあります。
そして、これは明らかに陰虚の舌だ、とか、これは腎虚による脱毛だ、とか、肝腎陰虚が根底にある肝気欝結だ、などということが分かることがあります。私が現在飼っているハムスターの1頭は、明らかな脾虚湿盛タイプです。言ってくれないので難しいですが。
しかし、弁証できても、薬物の体内動態が異なることが多い動物に、人間に使うエキス剤などをそのまま使えるかどうかは分かりません。試しに使ってみたりはしますが、本当に手探り状態です。
臨床でエキス剤を使う先生もいらっしゃいますが、中医学的診断がはっきりしないので、その動物のどんな証にエキス剤がどのように使われどのような効果があったのかなど、私にはよく理解できません。
ただでさえ、日本では東洋医学的治療は人間の場合ですらあまりまともに行われているとは思えない現状ですが、人間の医学より遅れがちな獣医師領域では、動物の漢方治療はさらに遅れています。
近年、獣医師が中医学を学ぶ場が出来、私もそれにチャレンジしようかと思ったことがあります。
しかし、内容を見てみると、いかんせんレベルが低い。
これにお金を出して通うくらいならば、人間のほうの鍼灸や中医師の免許を取ったほうが臨床に役立つはずだと思い、パスしました。(それら資格をとる気は今のところありませんが)
この様な状況で、獣医師が、「漢方」や「中医学」を標榜するのは、早すぎると思っています。
獣医学領域の東洋医学の発達には、まず、人間のほうの中医学・・・というか中医漢方薬学の論理的思考が普及することが必要不可欠です。
自分のためにも動物のためにも、それを切に願っています。
乱筆乱文失礼いたしました。
その役割をになっていらっしゃる先生のブログを、陰ながら応援しています。

トラちゃんとシロちゃん posted by (C)ボクチンの母
お返事メール:おたより、ありがとうございます。
掲載した「猫ちゃんたちに漢方薬を利用される貴重なお便り」には続編があります!
後日掲載する予定ですので、こちらの方も是非ご覧下さい。
大変なご苦労を重ねながらも、物言わぬ猫ちゃん達にみごとに漢方薬を運用されておられます。
人間様相手に40年間、日々四苦八苦しながら弁証論治の毎日を送っていますが、物言わぬ猫ちゃん達に上手に運用されている人もおられるのですから、目が点になってしまう心地で、まことに脱帽ものです!
そんじょそこらの人間様よりもはるかに霊性の高い猫ちゃん達を嫌ったり虐待する日本人が実に多い昨今、このような奇特な方がおられるのはとても素晴らしいことだと思います。
ところで、独学で中医学を学ばれたそうですが、他ならぬ私自身こそ独学でまずは日本漢方を学びつつ、併行して中医学を学んできました。
●●さんも独学であることに何の引け目を感じる必要はまったくありませんので、自信を持って頑張って下さい。
「中医漢方薬学」については、日々の仕事は漢方相談が専門であるがゆえに、日本漢方の優れた点とともに、救いようのない欠点を発見し、一方では※中医学特有の構造主義科学理論としての優れた点に目覚め、両者を融合する道を構想し、情熱に燃えていた平成元年より数年前までは体系的な拙論を完璧に構築するつもりで頑張っていた時期もありました。
(※その他の参考文献;中医学は構造主義科学であるということ )
ところが、生来の怠け者ゆえ、日々の仕事に追われているうちに、いつもまにか「大それた構想を思い描いたまま」に終わってしまいました。
昨今は、一年半前に亡くなった「信じられないくらい霊性の高かった茶トラのボクチン」の写真をブログに貼り付けるのが唯一の生き甲斐となり、本末転倒したブログを続ける毎日となっています(苦笑。
●●さんも元気になられましたら、是非、本業に復帰され、猫ちゃんやワンちゃんの尊い命の救済に勤しんで頂きたいものです。
専門知識を活かされつつ、獣医学における漢方薬治療の道を開拓して欲しいものです。
おたより本当にありがとうございました。
なお、数日以内にブログに掲載させて頂きたいと思います。
ご自愛下さいませ。

2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
折り返し頂いたメール:お返事ありがとうございます。
温かいお言葉、大変嬉しく思います。(怒られるかと思っていました。スミマセン)
「前回の続き」、読ませていただきました。
猫後天性免疫不全症候群、俗に言う猫エイズは、機会があれば漢方でチャレンジしてみたいと以前から思っていた疾患です。
貴重な報告ですね。
後天性免疫不全症候群を発症してしまった猫は、気虚が根底にある、複雑な虚実挟雑の状態だと私も思います。
私自身は治療経験がないので、推測でしかありませんが、私であれば、補気剤を中心に補益剤を適宜使いつつ、板藍根などの抗菌・抗ウイルス作用のある生薬を含む製剤を併用することからはじめようかな、とは思います。
ただし、体温が低下している場合が多いので、寒性の板藍根などを使いすぎると余計に体温を下げてしまう恐れがあるため、適切な配合は必要でしょう。
もちろん、証次第ですし、適宜調整が必要でしょうから、固定した方剤は使えないと思います。
また、百会の経穴刺激は、猫後天性免疫不全症候群に対して使われています。
(*百会は人間と位置が違います。)
が、直接手で揉んだりすると、痛みがあって嫌がる場合があるので、鍼灸や電気刺激など他の手段を証によって選択して使うほうがよいかもしれません。
これらはあくまでも、「私だったら手探りでこうするかも」であって、果たして本当に有効なのかは分かりません。
一意見として、参考までに。
私自身のことですが、後遺症と先天的体質、及び、それにどこまで自己治療で対応できるかの見通しを総合して考えると、体力勝負の臨床に戻るのは難しいといわざるを得ません。
この状態で何が出来るのか、目下模索中です。
現在は、時々基礎の漢方講座などを開いたりしています。
いずれにしても、微力ながら、弁証施治の普及に協力できればいいなぁ、と思っています。
こちらは現在、猛吹雪で昨日から陸の孤島状態です。
うちはまだ大丈夫ですが、周囲は停電しています。
私は山口県出身ですが、温暖な山口の気候が懐かしいです。
とはいえ、山口も底冷えのする時期ですね。
大変お忙しいことと思いますが、どうぞ御自愛ください。

2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
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