2007年03月28日

漢方薬の品質やエキス濃度の問題

 漢方薬は煎じ薬に勝るものはないという馬鹿げた神話が信じ込まれているようだが、決してそんなことはない。

漢方薬は煎じ薬が一番よいという誤解!
 たとえば眼科系疾患に有効な杞菊地黄丸、あるいはその基本方剤である六味丸などは、わざわざ丸薬と名づけられている如く、煎じ薬としたものよりも、各生薬粉末を混合して丸剤に製したもののほうが、効果的なように思われる。
 エキス剤と粉末薬を比較した場合は、なおさらそのように思われる。
 実際にエキス製剤のものと、純粋に粉末生薬を混合して丸剤に製したものを、同一人物で比較実験した場合は、歴然とした効果の違いが感じられた。
 安中散という胃薬で有名な漢方処方などでは、煎じ薬と原料生薬粉末を混合して製したものの効能比較では、かなり歴然とした差が出る場合が多い。
 もちろん、処方名で指摘されている通り、粉末薬の方が優れている。但し、薬用量が余りに少ない市販品の場合では、二分の一濃度のエキス散(煎じたものをエキスにしたもの)の方が、はるかに有効であった。
 桂枝茯苓丸などは、長期服用の場合は、煎じ薬よりも慢性疾患を改善する上で、様々な面で合理的であり、効果も安定している。
 その他にも当帰芍薬散や四逆散・八味丸、平胃散、参苓白朮散、乾姜人参半夏丸など、本来、煎じ薬とすべきでない方剤意外に多い。
 とりわけ、牛黄や麝香のような高貴薬などは、煎じる意味がほとんど皆無であり、原料生薬をそのまま粉末などに製して服用するのが常識である。
 つまり、漢方薬は煎じ薬が一番だというのは、大きな誤解に等しいということである。


成川一郎氏の「漢方製剤の偽装」を読んで感じたこと
建築業界の耐震強度偽装問題になぞらえて「漢方製剤の偽装」という本の題名であるらしい。
 市販される各種漢方薬のエキス製剤や医療用漢方製剤の偽装問題、すなわち煎薬に比して、一日量があまりにも少なすぎて効力に疑問のある製剤が多いという問題のお話。
 このことには誰も気付いてなかったということだが、小生のような三十五年近い古株?にとっては、まったく常識的なことであって、今更何を、という感無きにしも非ず。
 葛根湯の力価ばかりを云々しても、はたして葛根湯がそれほど風邪に効きますかね〜〜?と、そちらの方に疑問を呈したほどだ。
 確かに漢方製剤の品質問題をこれほど徹底的に研究された成川氏には頭が下がり、この分野ではとても貴重な資料となっていることと思われる。
 それだけに成川氏に、もっと注目して欲しいものが、日本漢方で使用される生薬の錯誤問題である。このためにどれだけ漢方処方の効力を低下せしめているか、ということにも目を向けて欲しいということだ。

 生姜と乾姜と煨姜(わいきょう)モドキの錯誤問題。

 漢防已と清風藤の混同問題。

 桂皮と桂枝の錯誤問題。

 人参と党参と竹節人参の問題。

 蒼朮と白朮の錯誤問題。

 浜防風と漢防風の混用問題。

 これらを正しく使用するか、あるいはこれまで通り錯誤したままの漢方製剤が引き続き作られるとしたら、こちらのほうこそ重大問題であり、偽装問題以上の大きな問題が含まれているような気がしてならないのだが、どうだろう。
 ひるがえって、漢方製剤の優劣は各メーカー間でも、各方剤毎に異なり、また重要なことはエキス配合量が二分の一だからといっても、満量配合の製剤よりも効力が遙かに優れた製剤も多い事実をご存知だろうか?(猪苓湯などで顕著!)

 たとえば、これは既に十年くらい前に「和漢薬」誌などにも発表したことだが、顔面に生じた慢性の皮膚疾患に、医師の出された医療用のツムラ猪苓湯とツムラ茵蔯五苓散の配合で全く無効であったものが、市販されているエキス量二分の一の猪苓湯とエキスと粉末が混合された茵蔯五苓散の併用によって比較的速やかな効果を示した例など、患者さん御本人と、主治医に薬剤師2名によって、何度も確認したものである。
 さらに最近しばしば遭遇することだが、複数の女性が医療用のツムラ猪苓湯エキスを出され、小生から見ても適切な投与であると思われるのに、一向に効かないからもっといい漢方薬が欲しいという要求に、濃度は二分の一だが効力の点では長年信頼している某メーカーの猪苓湯エキス製剤を試してもらったところ、速やかな効果を得ている事実をどう解釈すべきだろうか?

 濃いければ良いという問題でもなく、配合生薬の品質問題にも大きく左右されることを忘れてはならないと思うのである。
 以上、様々なことを考えさせてくれる優れた書籍だけに、絶賛するだけに終わらずに、近接する諸問題にも敷衍させてもらった。

関連サイトの記事:http://m-kanpo.ftw.jp/u50272.html#60806
関連HP:間違いだらけの漢方と漢方薬
 上記の二つのブログを読んでもらえば少しは理解してもらえるかもしれないが、最近経験したことでは、たとえば皆さんご存知の四逆散製剤での出来事である。
 この皆さんというのは、村田漢方堂薬局で多くの人に利用してもらっており、その多くの人がこのブログを御覧になっているらしいので、村田漢方堂薬局で各種の四逆散を利用されている人に対する皆さんのことである。

 四逆散製剤だけでも三種類の製剤を利用しているが、例の最も濃度の薄い某メーカーの甘草(かんぞう)以外の柴胡(さいこ)・枳実(きじつ)・芍薬(しゃくやく)が同比率で配合された顆粒剤である。
 多種類の症状に悩まれるやや高齢の人に、これまでやって来られた間違った温め療法の数々をすべて中止してもらい、この四逆散製剤だけを服用してもらったところ、即座に現れた効果が、長年の不眠症が安定剤なしで寝つきがよくなり熟睡できるようになったこと。さらには快便となったこと。

 まだまだ他にも多種類の症状があるので、今後は次第に適切な方剤を加えて行く必要があるが、さし当たっては体質改善三点セットを追加しているところである。

 このようなアラユル医療の副作用で心身ともに痛めつけられた人には、あえて濃度の薄い漢方処方で対処したほうが、却って効果的なこともあるということだ。
 濃度的にも品質的にも最も優れた某メーカーの四逆散(エキスと粉末を合わせた製剤)を利用するばかりが能ではなく、適材適所で各種の四逆散製剤を使い分けるのも、技術の一つであるはずだ。

 でもやっぱり一番人気があるのは錠剤のエキス剤ですね。臨機応変の増減が出来ることにかけては、四逆散や黄連解毒湯に関しては、漢方薬といえどもヤッパシ錠剤に限るようですね。

 ともあれ、葛根湯であれ四逆散であれ、あるいは黄連解毒湯であれ、名前が同じなら効果・効能に優劣は無いと思ったら大間違いであることだけは知っておいたほうがいいだろう、いくら素人さんでもね。
 つまりエキス濃度が濃ければ濃いほどよいという問題ではなく、適材適所ということであり、濃度問題にも増して重要なことは、使用されている原材料(配合生薬)の品質の優劣と、その漢方処方内の配合比率などは、かなり重要問題なのである。

 ネットでいくら調べても、こんな漢方と漢方薬の真実を暴露するところはヒゲジジイ関連のブログやサイト以外には滅多にないと思いますよ手(チョキ)
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posted by ヒゲジジイ at 01:08| 山口 ☁| 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする