御質問者:東海地方の内科医師
夜分に失礼いたします。一件、村田さんの解釈を伺いたいケースがあります。
30台の女性です、頭痛、頭部ふらつき、耳鳴り、めまい、むかつき感、生理の前に体調が思わしくない、など多彩な症状をもっているかたです。
基本的に、脾虚と腎陽虚があると考え、八味地黄丸・六君子湯を中軸として処方してきたのですが、最近寒いときに頭痛と頭部ふらつきが増悪され、手元にあった119を内服したそうです(花粉の頓服として処方していた)。
ほかにもいろいろ頓服を試したが全くだめで、119が著効したそうです。
私のような浅学ではちょっと理解困難ですので、村田さんのお知恵を拝借できれば幸いに存じます。
ヒゲジジイのお返事メール:119番は、苓甘姜味辛夏仁湯のことですね。
日本古方派では小青竜湯の裏の処方として珍重されており、小生も古方派時代には盛んに使用したものです。
この方剤を用いて、中年女性の喘息を根治、文字通り根治させた経験が三十年近く前にあり、確か「漢方の臨床」誌にも発表した記憶があるのですが、手元の自著を探すと見つかりません。
また、苓桂味甘湯や苓甘姜味辛夏仁黄湯など、この系列の加味方のすべての関係を「漢方の臨床」誌に発表した記憶があるのですが、いずれ書庫にいって探しておきたいと思います。
ともあれ、
>寒いときに頭痛と頭部ふらつきが増悪され
た状況に苓甘姜味辛夏仁湯によって効果が得られた仕組みは、辛温の性質の「細辛」にはかなり強力な去風止痛作用がありますので、ひとえに細辛の止痛作用のお陰であろうと推察します。また、もともと本方には吐き気や眩暈にも有効な半夏や茯苓が配合されておりますので、痰濁上擾による眩暈にも有効に作用したものと思われます。
漢方処方は一般で解説される効果効能以外の領域にも、広く応用可能なことは、猪苓湯においても既にご存知の通りです。葛根湯などについても葛根と麻黄・桂枝の配合比率次第では、各種の頚椎症など広い範囲の疾患に応用できるなど、配合中の薬味ひとつひとつの性質を深く研究されればされるほど、計り知れない応用力が付くものと思います。
と、エラッソウなことを書いた小生こそ、難問がなかなか解けずに思案し続ける御相談者が常時数名以上、毎日考え込んでは不眠症の日々を送っております(笑)
以上、取り急ぎお返事まで。
頓首
村田恭介拝
折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございました。
119のお陰で漢方処方の引出しが増えました。ありがたいことです。
2007年03月16日
苓甘姜味辛夏仁湯が頭痛や頭部ふらつきに著効を得た中医学的分析
posted by ヒゲジジイ at 01:07| 山口 ☔| 頭痛・肩凝り・むかつきや吐き気・嘔吐・めまい・ふらつき
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