ある比較的得意分野の疾患ではあったが難航するときは難航するものである。でも、幸いなことに諦めずに根気よく頑張って下さり、毎日のように細かな変化の報告、上手な舌象の画像送信など、客観的な御報告のみならず漢方の世界ではとても重要な「主観的な感想」を送り続けて下さっている。
それでもなかなかピントがしっかり定まらず、日毎の変化の根本をもう一つキャッチできずにいたが、少なくとも湿熱の問題が大きく絡んでいることだけは確かだった。
20年前に愛用していた黄連解毒湯を主軸にすると、直ぐに氷伏しやすくなってどうしても不安定であった。時代の違いをひしひしと感じさせられる。
結局は傷寒論にある茵蔯蒿湯の条文、
傷寒論の陽明病編に
陽明病で発熱して汗が出るのは、これは熱越(裏熱が表に越して出る)であり、黄疸を発することはない。
ただ頭汗が出て身体には汗なく、頸をめぐって還り(汗が出るのは首まで)、小便不利で咽喉が渇いて水を欲しがる。これはオ熱が裏にあるからである。いずれは身体に黄疸が生じるはずである。こういう場合に茵蔯蒿湯を使うべきである。(原文の意訳)
というのを地で行くような症状発作であることを発見することとなり、茵蔯蒿湯を主体に適量の藿香正気散を加えることでようやくバランスが取れてきた。
しかしながら藿香正気散の量が多過ぎると黄膩苔が取れすぎてややバランスを失うので、強引に湿熱を除去せずに、微量の配合がちょうど良いようである。
まだまだ今後も微調整が必要でろうが、ようやく根拠のある茵蔯蒿湯と伴に、頑固な湿熱を除去する奥の手、「辛開・苦降・芳香・淡滲の配合法則」は間違いなく湿熱を除去する強力な手段である。
ちなみに今回の場合、辛開、芳香を藿香正気散が受け持ち、苦降は黄連解毒湯を廃止して茵蔯蒿湯が受け持ち、淡滲は猪苓湯とヨクイニンが受け持っている。
(これに体質改善力のある例の三点セットも併用してもらっている。)
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