一時は8割以上緩解していたはずが昨今6〜7割の改善度にやや低下しているために、先日、効果を上げるべく試験的に使用してもらった猪苓湯の利尿作用が素晴らしく、というよりも効きすぎるので中止してもらったばかりだが、お互いに性懲りもなく今度は以前使用した六味丸では効果が薄かったので、杞菊地黄丸を試験してみるご相談である。
既に丸一年の漢方薬のお付き合いだが、基本骨格は柴胡加竜骨牡蠣湯とインチンコウトウおよび牛黄製剤。これは基本的なベースである。これだけではもう一歩の進展がみられなくなっているので、何が足らないのか思案し続けている。だからこの超美人の奥様もよせれば、約4名が難航中ということになってしまう。
こういう真剣・真面目な打ち合わせのはずが、いつしかこのブログの左に掲げているヒゲジジイの写真にイツワリあり、本物と違うじゃないかとクレームが出る始末。
そりゃ〜そうでしょうよ、あれは20年前の青海島の磯釣りの写真だからと居直っても許してもらえなかった。だから早く現在の写真に取り替えないと、いつまででもクレームがついたらかなわない。
ところでこのお電話でふと思い出したのが、猪苓湯中のちょれい(猪苓)には補益性が存在する専門的な論証を行った拙論をどこかに書いていたはずだがと探しまくって漸く発見したのだった。
これはヒゲジジイ自身が以前「和漢薬」誌に陳潮祖先生の『中医病機治法学』の翻訳連載を行っていた折の編集後記に記した拙文を漢方薬は中医漢方薬学派の漢方相談専門薬局サイト中に枯れ木も山の賑わいとばかりに投入しておいたものだった。
利水滲湿薬は水道を通利し、水湿を滲出除去(滲み出させて除去)する薬物である。淡味の薬物が多いので淡滲利湿薬とも称し、服用によって小便が通暢して排尿量が増加するので利尿薬とも呼ばれる。
代表的な薬物に茯苓・猪苓・沢瀉・ヨクイニンなど、日本の漢方でもお馴染みの薬物が多い。
これら淡滲利湿薬のなかには補益性を有するものがあり、なかでも甘淡の「白茯苓」は利水滲湿・健脾補中・寧心安神の効能があり、甘で補い、淡で滲湿し、利水滲湿と同時に補脾益心の効能がある。
したがって、茯苓は正虚邪盛(脾虚湿盛)の病態に不可欠であり、作用の穏やかな扶正去邪の薬物として、中薬学における一般常識となっている。
ところで、不思議なことに茯苓と同じ甘淡の「猪苓」については、補益性が否定されおり、このことは現代中薬学の大きなミステイクの一つであると愚考している。
神農本草経には「久服すれば身が軽くなって老いに耐えるようになる」と述べられており、清代の名医葉天士は「猪苓の甘味は益脾する。脾は統血するので猪苓の補脾によって血が旺盛となり、老いに耐えるようになる。また猪苓の辛甘は益肺する。肺は気を主るので猪苓の補肺によって肺気が充実して身は軽くなる」と解説している。
このように、猪苓には単なる利水滲湿の効能のみならず、茯苓と同類の脾肺を補益する効能がある訳で、近年特に注目されている抗癌作用も考えあわせれば、もっと広く活用されてしかるべき薬物である。





