昨年はいろいろご教示くださいましてありがとうございました。本年もよろしくお願い申し上げます。
最近、ウチダ和漢薬の「和漢薬」に掲載されていました”中医病機治法学”のコピーを取り寄せ拝読しています。これから第二節 臓象学説に入りますが、興味深そうです。
さて、患者さんのご相談です。50台男性、鼻炎・副鼻腔炎があって、滲出性中耳炎のためにかなり慢性的に聞こえが悪い患者さんです。寒冷・疲労などによって増悪するようです。
どちらかというと消化器が弱く、腎虚もありそうです。耳鼻科で耳管の通気を対症的に受けているそうですが、一時的のようです。
鼻水は黄色調からやや緑色調だそうです。さいきん、ずいぶんお疲れのご様子でした。まだまだ浅学の頭ですので、十分に病機弁証ができません。
とりえあず、辛夷清肺湯+リョウケイジュツカントウ・八味丸を処方しました。
情報量がすくないかもしれませんが、ご推奨の処方をお教えくださいますと幸いに存じます。
お返事メール:新年おめでとうございます。
ウチダ和漢薬の「和漢薬」の拙訳”中医病機治法学”、陳潮祖先生の卓越した分析力と発想で書かれているだけに、中医学における名著中の名著だと思います。
ところで御案内の患者さん、ちょっと情報量が少なすぎます(笑)
舌象や舌の苔だけでも分かればと思います。
ただ、寒冷や疲労によって悪化するにせよ、「鼻水は黄色調からやや緑色調」ということからすると明らかな熱証であるわけですから、八味丸の投与に対してはやや疑問点なきにしもあらず・・・と存じます。ブシの辛熱が気になるところです。また、リョウケイジュツカントウ中の桂枝すら、やや気になるくらいですから・・・
もちろん経絡毎に寒熱が異なる場合もありますので、それを見極めますと、時に辛夷清肺湯とリョウケイジュッカントウはあり得るかもしれません。また、リョウケイジュツカントウに桂枝が含まれているのですから、多少の腎陽虚があっても六味丸でもよいのではないでしょうか?
もう一つの考え方としては・・・・
辛夷清肺湯に猪苓湯ではどうでしょうか? 小生の大好きな配合で、止まりにくい後鼻漏にも有効で、滲出性中耳炎にも猪苓湯が有効な場合があります。、必要に応じて五苓散や六味丸をなどを弁証論治によって加えることもあり得ます。
ともあれ、漢方の微妙さでは毎年苦労していますが、ブログ麦門冬湯 にも書いていますように、
耳に水分貯留を来たして、繰り返し水を抜いても、難聴傾向を伴って埒が明かなくなった中年女性に、あらゆる方剤が効果を示さず、喘息の持病もあることから、肺胃陰虚および腎陰虚の証候を確かめ、麦門冬湯と六味丸の併用で、驚くほどの即効を得て根治した例もあった。このように苦労した挙句に最終的に正解の方剤が、ちょっと信じられない配合だったりしますので、実に中医学・漢方医学はかなり繊細・デリケートなものだと感じます。
余談が長くなりますが、昨日、関東から来られたある種の不安神経症の方に、便秘症の問題が直結していることから、五苓散の単方のみ一日服用してもらったところ、本日の報告で二便伴にいつにない快便、快小便?で、漢方の鋭い効果に驚いておられました。
このように我が中医漢方薬学では、ある種の便秘症の方を五苓散で解決してさしあげることもシバシバですが、遠路はるばる来られた一見、難治性に見える方でも、もしかしたら不安神経症そのものが、この方の場合に限り、五苓散単独で良いのかも知れません。
以上、余談が多過ぎて恐縮ながら、取り急ぎお返事申し上げる次第です。
頓首
村田恭介拝
編集後記: 五苓散の応用については、
http://cyosyu.exblog.jp/i23/ 中でも
http://cyosyu.exblog.jp/1282253/ を参照されたし。
「五苓散の応用としては、頭痛・下痢というのは有名だが、意外にこの方剤で便秘症が治るタイプがある。」などと既に書いている。
ヒントとしては、水分過剰で体内に水分が停滞気味の状況下における便秘症である。
折り返しの頂いたメール:さっそくのお返事いつもありがとうございます。
次回患者さんが受診されたときに投薬の選択枝として、麦門冬湯、猪苓湯・五苓散(ちょっと頭に浮かびませんでした)を考慮してみます。
最近、アトピーの患者さんで、”氷伏”を考慮しながら投薬をしていますが、効果が復活して驚いています。また、症例によっては補中益湯も有力な働きをしてくれています。感謝です。
”中医病機治法学”のなかの臓象学説、結構面白いです。自分の頭のなかの断片的な知識が繋がってくれると助かります。