数年前のことだが、自動車を運転するのを止められたため、昔のようには直接来局されなくなって久しい。その頃からすべて電話相談に切り替えているので、何年も直接お会いすることがなくなっている。
糖尿病、高血圧、慢性腎炎、関節リウマチなど、病気の問屋さんのようなご婦人だが、二十年以上の漢方薬のお付き合いで、一人暮らしで持病を持ちながらもなんとか御達者である。
様々な漢方薬を長年利用されているので、そのすべてを公開するのは憚られるが、浮腫みだけがうまくコントロールできずに難儀していたことがあった。
腎炎と浮腫みに対して、茵蔯五苓散加山梔子製剤に猪苓湯、六味丸系列の方剤と補助的に五苓散などを常用しても、もう一つコントロールできない。つまり利尿作用がしっかり作動してくれず、いつも浮腫みっぽい。
直接来られるように言っても、もう運転しないからと拒否されるので、そのままの配合が長く続いていた。
その後、肝炎の数値が最近不安定だというので、茵蔯蒿(インチンコウ)の成分を増強する意味で、適量の茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を加えたところ、これが一気に効を奏して、長年の浮腫みの悩みが一気に解消して、様々の検査数値まで正常化してきた。
すでに服用している猪苓湯、五苓散、茵蔯五苓散加山梔子製剤に茵蔯蒿湯を加えたといっても、新たな生薬は大黄が増えたのみである。
事ほど左様に、ちょとした配合の工夫一つで、もう一つピントがくっきりと合ってなかったものが、ようやくドンピシャリの配合となったということなのだろう。
これまでの配合に、茵蔯蒿湯の少量を加えただけでこの通りであるから、いかに漢方薬の配合というものがデリケートで繊細なものかと、イヤになってしまうことがある。
といっても、皆がみな、このようにデリケートで繊細な配合を要するわけではないが、時にピンと合わせに難航するケースにおいてこそ、ほんのチョットした配合のずれから、期待する効果が得られてないのだろうと思われる。
実に、そのチョットした配合こそ重要課題なのであるが・・・・
【関連する記事】
- ネフローゼの再発で、入院治療を受けたら、ますます浮腫が悪化するのはなぜか?
- 高齢者の急な腎機能低下の問題
- 明らかな腎機能低下があると、いずれは透析だ、と脅される患者さんたち
- 比較的高齢者に多い腎機能不全や多臓器不全を防ぐには
- 多臓器不全で命を落とさないためには
- 繰り返す原因不明の微熱や発熱には、潜在的な腎盂腎炎を疑って対処できることも多い
- 漢方薬で体調が改善したところで遠距離の専門病院に転移癌治療のセカンド・オピニオン..
- 慢性腎炎に合併する花粉症で好酸球高値に対する漢方薬
- 石流茶(セキリュウチャ)は、とっても美味しいお茶代わり?!
- 東洋医学の権威者?のあり得ない発言
- 腎不全に対する漢方薬の有用性について
- 偶然同じ病気の人が重なる日、本日は腎不全やネフローゼなどの腎臓病5名
- 腎不全の漢方薬
- 利尿剤と利水剤の違いっ!←合成医薬品と漢方薬の大きな違いの一つ
- 腎不全に病院で投与された大黄甘草湯の問題点
- クレアチニンを下げる漢方薬はありますか?
- 腎機能低下(慢性腎不全)に対する中医漢方薬学