2007年01月09日

頑固な浮腫に対する漢方薬配合の微妙さについて

 八十五歳近い常連さんのお話。
 数年前のことだが、自動車を運転するのを止められたため、昔のようには直接来局されなくなって久しい。その頃からすべて電話相談に切り替えているので、何年も直接お会いすることがなくなっている。
 糖尿病、高血圧、慢性腎炎、関節リウマチなど、病気の問屋さんのようなご婦人だが、二十年以上の漢方薬のお付き合いで、一人暮らしで持病を持ちながらもなんとか御達者である。

 様々な漢方薬を長年利用されているので、そのすべてを公開するのは憚られるが、浮腫みだけがうまくコントロールできずに難儀していたことがあった。
 腎炎と浮腫みに対して、茵蔯五苓散加山梔子製剤に猪苓湯、六味丸系列の方剤と補助的に五苓散などを常用しても、もう一つコントロールできない。つまり利尿作用がしっかり作動してくれず、いつも浮腫みっぽい。
 直接来られるように言っても、もう運転しないからと拒否されるので、そのままの配合が長く続いていた。

 その後、肝炎の数値が最近不安定だというので、茵蔯蒿(インチンコウ)の成分を増強する意味で、適量の茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を加えたところ、これが一気に効を奏して、長年の浮腫みの悩みが一気に解消して、様々の検査数値まで正常化してきた。

 すでに服用している猪苓湯、五苓散、茵蔯五苓散加山梔子製剤に茵蔯蒿湯を加えたといっても、新たな生薬は大黄が増えたのみである。
 事ほど左様に、ちょとした配合の工夫一つで、もう一つピントがくっきりと合ってなかったものが、ようやくドンピシャリの配合となったということなのだろう。
 これまでの配合に、茵蔯蒿湯の少量を加えただけでこの通りであるから、いかに漢方薬の配合というものがデリケートで繊細なものかと、イヤになってしまうことがある。

 といっても、皆がみな、このようにデリケートで繊細な配合を要するわけではないが、時にピンと合わせに難航するケースにおいてこそ、ほんのチョットした配合のずれから、期待する効果が得られてないのだろうと思われる。
 実に、そのチョットした配合こそ重要課題なのであるが・・・・