蓄膿系の後鼻漏には辛夷清肺湯などの適切な副鼻腔炎に対する方剤や六味丸系列の方剤とともに、止まらない後鼻漏の切り札的に猪苓湯製剤を加えて、しばしば穏やかな効果を発揮したり、時には偉効を奏したり、多汗症に対する応用はもとより、アトピー性皮膚炎、ストレス症候群など、本来の腎・膀胱・泌尿器系以外の領域にも様々に応用可能なのは、少陽三焦理論に基づくヒゲジジイの大きな開発と発明である。
ところが、判断ミスから失敗して結果的には不適応だった人に試してもらって顕著な利尿作用を発揮してしまい、ゴメンネとあやまる事態が生じてしまったのだった
一年も頑張ってくれているのに、いつもの東京の奥様。7割の改善以上の進展がないので、体内の水分調節を行ってみましょうということになり、10日分ほど愛用の某メーカーの猪苓湯製剤を試みてもらっていたところ、4日目にギブアップとのメールを先ほど頂いて、お詫びのメールをお送りしたばかりだ。
利尿が次第にかかり過ぎて、続けるにはトイレに行くのが頻繁すぎるということで、愛用の製剤がいかに良質であるかの証明をして下さったものの、ちょっと効き過ぎて困る位なので、服用量を減らすよりも、急性膀胱炎時に備えることとして、中断してもらうことになったのだった。
本当に無駄なテストをしてもらって申し訳なかったと平謝りだが、やはりあらためて威力のある製剤であることを確信させてもらった次第である。
一方では同じ製剤を使用しながら、東京の美人の奥様に対する効果の十分の一も発揮してくれないで、持久戦となっている人もおられるのだから、体質上の違いを見分けるのはとても骨が折れる仕事である。
とりわけ現在、やや難航気味なのが鼻炎に伴う頑固な後鼻漏で、蓄膿症に伴う後鼻漏ほどにはシャープさに欠けるのである。他薬との配合バランスの問題もあるので、様々に工夫が必要である。
ところで、失敗といえば愛用のアレルギー性疾患の補助にシバシバ使用する三点セットでもやってしまった。薬性としてはやや涼性(少し冷やすということ)であるから、虚寒性の人に使用するにはしっかりと温性の方剤と併用しなければならないところへ、その温性の方剤、補中益気湯をしっかり配合しているから安心とばかりに、三点セットの許容範囲内で分量を増やすようにアドバイスしたところが、バランスを失ってアトピーを一時悪化させてしまったのだった。
近年では珍しく虚寒性体質者のアトピー性皮膚炎の子供さんであったから、(アレルギーをぶっ飛ばすとはいっても)涼性の三点セットが虚寒体質には明らかにアダとなったので、直ぐに中止してもらい、補中益気湯の煎じ薬単独で続けてもらっって半月、今朝の薬の追加注文のお電話では、次第に好転して順調であるとの報告を得たばかりである。
それにしても、珍しく純粋に補中益気湯単独で押し通せそうな、典型的な舌象であったのだった。単方でアトピー性皮膚炎が治せそうな期待が大いにもてる症例であるから、今後が楽しみである。
あのマズイ補中益気湯の煎液をおいしいオイシイといってもっと欲しがるくらいだというので、飲み過ぎに注意を喚起しているほどなのだった。
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