2006年12月20日

「猪苓湯+茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)」と茵蔯五苓散の違い

御質問者:東海地方の内科医師

 氷伏については有益な助言ありがとうございました。

 当診療所では、アトピーの患者さんに対して、清熱剤+チョレイトウ+インチンコウトウの合方を処方することがありますが、チョレイトウ+インチンコウトウの部分をインチン五苓散にすると支障がありますでしょうか。
 
 チョレイトウのなかのカッセキ・アキョウ、インチンコウトウのなかのサンシシ・ダイオウがなくなりますが。ちょっと事情がありまして、ご助言をお願いします。

お返事メール:拝復
 あくまで一般論としてお返事させて頂くとして、猪苓湯を完全に外すのはまずいと思います。
 五苓散そのものにはかなり強い乾燥性があり、体質によっては粘膜組織まで乾燥させてしまいます。ですから、主軸は清熱剤と滋陰利水の猪苓湯として、氷伏を防げる桂枝の含まれた茵蔯五苓散を「適量」配合するのが無難だと思います。

 この「適量」というのがとても微妙で、製剤の満量を使用しては燥性が強すぎますので、半分量とか、あるいは三分の一量を加えるとかです。またこの場合、猪苓湯にしても満量使用して良いとは限らず、半分量に減量するというのもあり得るかと思います。
 つまり、五苓散には強い乾燥性がありますので、アトピー性皮膚炎には満了使用では利水力が強すぎて、ますます体表を乾燥させ兼ねない危険性があります。
 
 なお、長期に及んだアトピー性皮膚炎ではやはり影響が腎に波及していることがとても多く、体質によっては清熱剤が不要な場合もあり、また清熱剤の要不要に関わらず八仙丸などの六味丸系列方剤に猪苓湯の合方が主軸になるケースも多々あるかと存じます。
 ご存知の小生の拙論「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」について補足をしておきたいと存じます。本来ならあの拙論の続編として「脾肺腎病としてのアトピー性皮膚炎」を書く予定だったのですが、事情があって書かずに終わってしまいました。
 このタイトルの変遷にもありますように、病歴が長くなればなるほど「脾肺腎」の病としてのアトピー性皮膚炎が顕著になる傾向にあると愚考するところです。

 それゆえ、現在でも最も繁用する方剤は猪苓湯を中心に八仙丸を代表とする六味丸系列の補腎剤を加える方法が主流となっております。あくまで村田漢方堂薬局での話ですが(笑)。

 話は大分逸れましたが、アトピー性皮膚炎に五苓散を使用することは、たとえ茵蔯五苓散であれ、使用分量に対する配慮が必要であり、強い燥性に注意しながら、他薬とのバランスを考えて配合される場合は、氷伏を防ぐ桂枝が有効に利用できるかもしれません、というあくまで小生の個人的な見解です。

 以上、簡単ながらお返事まで。

村田漢方堂薬局 村田恭介拝

編集後記:理論的には長期間続いたアトピー性皮膚炎では、必ず影響が腎に波及しており、またその腎虚によって更にアトピーを悪循環に陥らすように思われる。
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posted by ヒゲジジイ at 17:43| 山口 | 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする