2012年09月25日

肝胆膵系統が弱い人が常用していた大柴胡湯製剤を他社に変更したら再発してしまったお話し

シジュウガラ(シジュウカラ)
シジュウガラ(シジュウカラ) posted by (C)ヒゲジジイ

 大柴胡湯が適応する人は、常々書いているように「がっしりとした体格で比較的体力があり」というのはまったく参考価値はない。

 当方の常連さんで中医学的な弁証論治によれば、肝胆膵系統が脆弱な女性が、しばしば心窩部がつっかえて食欲不振となり、背中が凝って疲労困憊状態に陥る。
 油ものに弱く、しばしば下痢をしたり便秘になったり排便は一定せず、いかにも虚弱そうな女性であったが、長年、大柴胡湯を主体に様々な方剤を併用することでかなり健康に自信を持てるようになっていた。

 ところが、某社の医療用の大柴胡湯に切り替えるチャンスがあり、少し節約になったと喜んでいたところ、次第に身体が重くなり、家事が大儀になるにつれ、胃部もつっかえて背中が凝る。
 日々の生活が次第につらくなって生きた心地がしなくなった。
 どうも調子が悪いので知識欲の旺盛な彼女は、大柴胡湯の中国における常用量に近づけても一向に症状が改善しない。

 一ヶ月経ってようやく気が付いた。もともと愛用していた大柴胡湯とは効能が違うのではないかと。

 あわてて残っていた従来の大柴胡湯に戻したところ、覿面、数日を経たずして諸症状は雲散霧消!
 同じ大柴胡湯であっても、製造元によってこれほど違うのかと恐ろしくなったと述懐される。
  
 不遜なヒゲジジイが腹立たしくて縁を切りたかった?らしいが、忘恩の無礼、天罰覿面、自業自得(呵呵。

 類似した話しでは、防風通聖散(ボウフウツウショウサン)製剤ナイシトールの過剰宣伝による弊害の事例なども決して珍しくない現象である。
 つまり同じ防風通聖散でも三社を使ってみたところ、一社のみ激しい副作用に見舞われてびっくりしたお話しである。同じ漢方処方名の製剤でも、製造元によってこれほど効能・効果・副作用の有無に違いがでるのが、天然生薬を原料とする漢方薬の宿命であろう。

 なかでも最も印象深い事例は、
成川一郎氏の「漢方製剤の偽装」を読んで感じたことでも取り上げている驚くべき現実。
 たとえば、これは既に十年くらい前に「和漢薬」誌などにも発表したことだが、顔面に生じた慢性の皮膚疾患に、医師の出された医療用の猪苓湯と茵蔯五苓散の配合で全く無効であったものが、市販されているエキス量二分の一の猪苓湯とエキスと粉末が混合された茵蔯五苓散の併用によって比較的速やかな効果を示した例など、患者さん御本人と、主治医に薬剤師2名によって、何度も確認したものである。
 さらに最近しばしば遭遇することだが、複数の女性が医療用の猪苓湯エキスを出され、小生から見ても適切な投与であると思われるのに、一向に効かないからもっといい漢方薬が欲しいという要求に、濃度は二分の一だが効力の点では長年信頼している某メーカーの猪苓湯エキス製剤を試してもらったところ、速やかな効果を得ている事実をどう解釈すべきだろうか?

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IMGP2752 posted by (C)ボクチンの母

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