ご質問者:北陸地方の鍼灸師
村田先生
先日も丁寧な御返事、有難うございました。経過を報告させていただきます。
まず手元に釣藤散しかなかったので、それだけで服用していただきました。3回服用目ぐらいからめまいが落ち着いてきました。
しかし、まだ4割ぐらい残るとのことで半夏白朮天麻湯を追加で服用していただきました。
服用2日目あたりから気付かない間にめまいがなくなったとの事で喜んでくれてます。
のぼせ傾向と舌先の紅とソケイ部の湿疹での黄連解毒湯も通常の2分の1の量で服用してもらいましたが、2回飲んで2回とも下痢をしたとのことで中止していただきました。
現在は上記の2方だけ服用していただいてます。
ただ現在、頭をふると側頭部から後頭部にかけて頭痛がするのと、血圧が170/83と上がまだ高く、ソケイ部の湿疹も変わらず痒く、目が非常に疲れ、朝も目覚めが悪いとの事です。
舌象は苔は膩傾向はなく、奥の方が白苔が多い感じです。胖傾向、お点みたいなのが舌先にやはり少しある感じで、淡紅で舌先部はやはり少し紅いです。
もしかしたら腎陰虚で六味丸を考えたらよいのかと思っています。 先生の方法だと10日ごとに様子をみられておられるので、それを真似ておりますが、そのままで様子をみていけばよろしいでしょうか?
その辺の判断に迷っています。
なんか患者さんより焦っている感じなんですが、ご指導いただければ幸いです。宜しくお願いいたします。
あと全然違った質問なのですが、うちの患者さんで、ここ最近甘いものが欲しくてしょうがないという人がたてつづけにいたので不思議に思っています。
かと言ってその方達は肉体労働かといえば事務職で、パソコンとかが多いそうです。
目を使う事と関係しているのかと考えています。
中医学的になにか考えられるのでしょうか?重ねてお願いいたします。
お返事メール:拝復
風痰上擾は脾不運湿が根本原因であるとはいえ、往々にして肝腎陰虚が絡んでいることが多いものです。病変部位は筋膜ですので、筋膜組織自体が肝と最も関連が深く、脾不運湿による湿聚生痰の問題ばかりでなく、筋膜組織の栄養不足である肝腎陰虚を伴っていることがとても多いのが現実のようです。この場合は明らかな眼振を伴っていることが多いように思います。
ですから最初の御質問時に提示した症例
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/28065535.html における、
なお、釣藤散合半夏白朮天麻湯合六味丸により、一週間に三日は寝込んで眩暈・耳鳴り、嘔吐を繰り返し、ひどい眼振のあった中年女性の重度の持病が数年間の服用で根治させれた人もあります。前後10年は続服し、廃薬後も十年間、未だに再発はみられていません。釣藤散と半夏白朮天麻湯の合方は内風に効果のある釣藤鈎と天麻が配合されてとても重宝で、しかも両者の配合は脾虚不運湿による湿濁内停を排除するにももってこいの方剤ですが、長期間連用すると優れた燥性により組織液の損耗を引き起こす(釣藤散中の麦門冬くらいでは弱い)可能性が高いので、配合バランスの上からも六味丸系列の方剤の中で適切なものを遅かれ早かれ加えるべきだと思います。
風痰上擾による眩暈の重症例としては典型的でした。
ですから、お気づきの通り、さしあたっては六味丸程度を適量加えて様子を見るのが適切だと思います。でも眼精疲労が激しいのであれば、イスクラの杞菊地黄丸が最も適切かもしれません。
なお、パソコンなどがメインの仕事の事務系の人達の甘いものの嗜好は、中医学的に考えるまでもなく、小生自身が一日中、薬局閉店後も、各地の患者さん達と夜中まで微調整の為のメール交換の毎日で、無い頭を酷使し続けると、しばしば甘いものが欲しくなっていますが、西洋医学的にも脳内の疲労にはブドウ糖が必須であると言われることに該当する事例だと思います。
ちなみに高齢者の場合、軽度の糖尿病くらいのほうが頭がボケないということを、何かの本で精神科専門の医師、和田秀樹氏が書いておられました。
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介拝
折り返しお礼のメール:拝復
お忙しい中ご指導有難うございます。
先生ご指摘の杞菊腎気丸を使用してみようと思います。
あとダイエットのための扁セキも使用を考えています。(今まで使用したことがないです。少し調べましたら留飲に対する処方で過食による肥満からくる疾患に使用すると書かれてありました) ちょっと量が多く感じてますが…
ちょっと糖尿気味のほうがボケないという話しは大変面白いと思いました。
先生は甘いものが欲しくなるぐらい疲れたら、やっぱりいつものアレ(笑)ですね。 (哲学の煙も含め)。
頓首
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