2006年11月21日

蕁麻疹への中医的アプローチ

ご質問者:東海地区の内科医師

前略 最近、東洋医学学術社から発行された中国医学用語集と平易な中医の教科書を独学中ですが、孤軍奮闘しています。
 日本漢方では病態生理があまり重視されていないように思い興味深いです。
 また、西洋医学的病態生理とは全く基盤が異なり、ある病態を別の視点から理解できそうで、西洋医学的治療法では対応困難な病状を改善する重要な手段になりそうです。
 ただ、なかなか相手としては手ごわそうな印象です。

 例によって前置きが長くなってしまいましたが、蕁麻疹への中医的アプローチについてご教示いただけますでしょうか。
 定番のインチンコウトウ、インチン五苓散は確かに有効で症状は取れます。しかし、投薬をやめますと再燃することが多いようです。
 根治的に考えた場合にどうでしょうか。

 中医的には蕁麻疹の背景病態についてどのように理解されているのか、村田さんの病態論でも勿論結構です。
 お忙しいとは存じますが、難治性蕁麻疹の患者さんを抱えている者にお教えくださいますと幸いです。

お返事メール:拝復
 ちょうど、重篤化しかかた蕁麻疹の続続報
 この重篤化しかかった男性は、現在もなおインチンコウトウとウチダのイオン化カルシウムを継続して服用中です。アルコールを止める事が出来ないので、あるいは一生、インチンコウトウと離れられないかもしれないよ、と冗談めかして宣告しているほどです。
 最近はアルコールを服用しても殆んど再発しないのですが、夜昼不規則な勤務体制の仕事のためか、疲労が蓄積すると、ほんの僅かな再発兆候が見えますが、それでも直ぐに消失するようです。
 少し前、青魚を過食してムカついたのですが、インチンコウトウを増減することで回復しています。舌には黄膩苔の出没を繰り返していますので、頑固にインチンコウトウとイオン化カルシウムだけで押し通しています。

 過去の経験からも、シンプルな方剤で効果が得られる場合は、へたな弁証論治の裏読みはせず、頑固に押し通すことで8割緩解は可能だと考えています。
 慢性化した疾患は、真の意味で根治はないことが多く、表向き根治したように見えても、わずかな根が残っていることが多いものと愚考しています。
 慢性疾患が、たとえ中医学が素晴らしくとも、ほとんどの慢性疾患が真の意味で根治するものなら、人間様は半永久的に死を免れることになる理屈も成り立つことになるような気がします。とすると、多くの慢性疾患は8〜9割の緩解でしかないのではないかと考えるようになってしまいました。

 なにやら自分の腕の悪さを棚に上げて、ヒゲジジイ流の屁理屈が飛び出してしまいましたが、蕁麻疹にはシンプルにインチンコウトウだけで対処できるとは限らず、寒冷蕁麻疹やストレス性の蕁麻疹等様々に言われますが・・・

 中医学においても型に嵌った弁証分型がありますが小生自身は、蕁麻疹については中医学的な弁証分型は、あまり参考にしておりません。

 蕁麻疹に限らず 漢方と漢方薬の御案内 において陳潮祖先生の書籍をヒントに提示しましたように、

 病気を解決するための漢方薬の組み合わせの法則(配合法則)として、

 @病気の直接的な原因となっている「内外の病因」を除去する漢方薬。
 A五臓六腑の機能を調整する漢方薬。
 B体内に流通する気・血・水(津液)・精の疎通あるいは補充を行う漢方薬。

を基本に考えています。

 しかしながら、これまでの経験上、寒冷蕁麻疹などはシンプルに葛根湯や当帰四逆湯加味方などでアッサリ根治していますし、インチンコウトウ証の場合はなどでは、頑固に連用してもらうことで、現実には過去も多くの根治例が出ています。
 先生のおっしゃる中止すると再燃するのは、服用期間が短すぎるように思えるのですがどうでしょうか?
 
 今回もあまり参考になるようなお返事になってないようで恐縮ですが、当方ではどのようなタイプの蕁麻疹の患者さんが来られようとも、上記の三原則を念頭に臨機応変の漢方処方を考えるだけですので、特別なことはやっておらず、むしろ蕁麻疹のようなデリケートな皮膚病には、「なるべくシンプルな方剤を心がけている」という点が、他の疾患の対処方法と異なる点です。

 以上、やはり小生は、純粋中医学派ではなく、日本漢方に中医学理論を取り入れた「中医漢方薬学派」なのだな〜〜と、このお返事メールを認めながら、あらためて再認識した次第です。

 以上、お役に立てず申し訳ありません。
                          頓首


編集後記:重要な補足中医学は構造主義科学であるということ

 ところでアトピー性皮膚炎やアトピー型の気管支喘息の人達に必ず基本に据えている例の三点セットはアトピー性皮膚炎の漢方薬+自然療法 で書いている自然療法のことだが、アトピーや喘息に限らず、広く体質改善剤として応用している関係で、しばしば蕁麻疹が出やすかった人が、これを使用後は二度と出なくなったと言う人が多い。
 もともとI型とW型アレルギーに対する威力を感じているが、これらをベースに一般漢方処方を服用されている人が多いのが村田漢方堂薬局の特徴でもある。
 また、病気が改善するにつれて突如、超美人に変身されて驚くことがあった病気がよくなると超美人に生まれ変わる女性達!に共通するのも、これら三点セットである。
 こんな謎めいた記載を理解されるのは、現在、地元を初め全国各地から村田漢方堂薬局に直接来局された人の半数の方が、漢方薬服用のベースとしてこの三点セットを使用されているので、この方たちだけがこの駄文を理解されるはずである。(ちょっといやらしい思わせぶりな宣伝かも?)



折り返し頂いたメール:いつも丁寧に参考となるご教示をいただきまして感謝しております。

 ご指摘のようにインチンコウトウの服用ですが、蕁麻疹が消失すると(かなり早く消える場合が多い)ご本人が内服を中断なさってしまうケースがあります。
 それなりに長く内服していただくことによって寛解する症例があるそうですので、そのように指導してフォローしてみます。

 「へたな弁証論治の裏読みはせず、頑固に押し通すことで」というご指摘は、ある意味真実のように思いましたので、病状の反応を見ながら投薬してみます。
posted by ヒゲジジイ at 00:32| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする