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冷えが原因で生じた疾患でも、必ずしも温めたほうがよいとは限らない。
卑近な例では真冬にバス停で待っている間に冷え込んで膀胱炎になったという例でも、カイロで温めてばかりいると病院の猪苓湯では治らず、カイロを止めてもらって保険のきかない猪苓湯に切り替えたところ速治。
猪苓湯は水熱互結による湿熱に対する清熱利水、滋陰止血の方剤である。冷えで生じた膀胱炎であるのに、どうして清熱利水の方剤が著効を奏するのか?よく考えてみるがいい。
風寒湿邪が原因とされる関節リウマチでも、各地の病院や漢方薬局で附子剤ばかりを投与された人達が、次第に関節部に実熱としての熱性炎症を蓄えるようになって却って激しい疼痛が生じているケースも日常茶飯事。
困って当方にやって来られれば、寒熱錯雑証として扱いなれているので、ほどなく関節部の赤い腫れは消えて行く。
先日もアトピー性皮膚炎の女性が、地元の医師のところで数年以上、寒熱併用の方剤を様々に投与されいた。
そこまではまだよかったが、アトピーの原因は冷えにあると昨今流行の火神派にかぶれたか、附子剤や温補剤を投与されるので、却って痒みが取れなくなり、それを何度申告しても、冷えが原因だからと頑固に温熱薬の投与を押し通される。
辟易して遠路はるばる、当方にやって来られたという次第。
前置きがとても長くなったが、たとえ発病の原因や誘引が冷えだったとしても、温めれば治るというものではなく、温めてばかりいると却って逆効果になるケースも多いことを証明したかっただけ。
そこで表題の線維筋痛症の患者さんのケース。
どこの病院に行っても疼痛が取れずに当方にやって来られ、冷えの極限状態に近いため、真武湯に補血活血、袪風除湿の方剤を併用してもらうことで、順調に疼痛が取れつつあってとても喜ばれていたはずが、急転直下、上部の熱感と疼痛が勃発し、頭痛と吐き気すらともなうようになって来た。
あれほど速効がでて喜ばれていた真武湯であったが、直ぐに中止してもらい、清熱舒筋、補血活血、袪風除湿の配合に切り替えてもらったところ、次第に落ち着いて来た。
上焦の諸症状がしっかり落ち着いたところで、上熱下寒を配慮して、再度試しに真武湯の少量を再開してもらったところ、再び上半身が温まり過ぎて頭痛が生じる。そこで直ぐに真武湯をまたもや中止。
結局のところ清熱舒筋、補血活血、袪風除湿の配合で順調に疼痛が軽減しており、現在時点では到底、附子剤を使うほどの冷えは存在しなくなっていることが分かる。
陰陽寒熱は常々変転し流転するので、慢性疾患のほとんどが冷えが原因だからと言って、温めることばかりを考えることがいかに短絡的で幼稚な考であるかが分かろうというものである。
温めることばかりに専念していると、一時はよくても病状によっては陰陽寒熱が一瞬にして逆転し急転直下に病証が激変することもあるので、常々、陰陽寒熱の生々流転していく過程における現時点での病機をしっかり把握し、その時々に応じた臨機応変の配合が必須となる。
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